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第百八話:苦しみの向こう(4)
更新速度が遅くて申し訳ありません。
◆一つ目:クロッセル・エグザエル
◇
本来、居るべき人が居ない屋敷というのは寂しいものだ。地上にある屋敷や地下にある瀨里奈ハイヴは、いつも蟲達が徘徊をしているというのにここ最近は、影の中に避難させている。
エーテリアとジュラルドは、ガイウス皇帝陛下のお側についてもらっている。十中八九、瀨里奈ハイヴにいる我々が襲撃されるであろうが、万が一という事もある。ギルドが後先考えず暴走すれば、ガイウス皇帝陛下のお命という可能性もあり得るのだ。だからこそ、ジュラルドには神器テミスも持たせている。更に、王宮には騎士団という肉壁もいるからなんとかなるだろう。
私の自慢の妻達であるゴリフリーテとゴリフリーナも同様にこの地を離れている。今頃は、戦線のど真ん中であろう。怪我や病気にならないか心配である。ゴリフターズは、好き勝手に迷宮などで冒険に勤しんでいるこの私をいつも暖かく迎えてくれる素晴らしい女性である。
この世界では、夫が外で出稼ぎするのは当たり前である。その為、一般的にみれば普通なことなのだ。尤も、私が大貴族の当主であったという事実があるからそれに該当するかは微妙だ。外で稼がなくても内政に力を入れれば不自由ない程度には稼げる。
要するに、そんな愛する妻達との生活を守るため命を張ってもいいと思うのだよ。
って、人が真面目に話しているのにコタツムリちゃんが剥いた蜜柑を食べないでくれませんかね『闇』の使い手。瀨里奈さんが蟲を身に纏いたいというから、私が一から設計開発した究極の駄目人間製造器・・・その名もコタツムリちゃん!!
コタツムリちゃんは、私の蟲の中でも個体数がきわめて少ない。本来なら、もっと仲間を増やしてあげたいのだが、非常にデリケートな蟲を掛け合わせて作った物で個体数を増やすのも非常に苦労する。瀨里奈さんにプレゼントした子を含めて僅か3体しか居ないのだ。
絹毛虫ちゃんと蛆蛞蝓ちゃんの遺伝子を掛け合わせて生み出したコタツ型の蟲である。性格も言うことなく実に可愛い!! 愛らしい!! 更に、絹毛虫ちゃんの毛と同じ体毛を持っているので実にぬくぬくできる。蛆蛞蝓ちゃんの様に類い希なる性能を持っているわけではないが、毛布の中に入ると保温保湿効果もあり美肌効果をもたらしてくれる有能な子だ。最近では、瀨里奈さんに預けたこの子は、ウ=ス異本を執筆する際のテーブルになっているらしい。そのまま寝落ちしても安全だとかで重宝されている。しかも、言うまでも無く蜜柑の皮を剥くという素晴らしい特技まで持っているんだぞ!!
ピチュ(お父様も蜜柑をどうぞ。なんでしたら、私が綺麗に剥かせていただきます)
よしよし、なんて可愛い子だ。いいんだよ、お父様は自分で剥くからね。そして、食べさせてあげるからね。ほら、口をアーーンってしなさい。
ピッチュ(お父様・・・あーーーん。おいちい)
きゃーー、可愛い子だね。コタツの毛布をなでなでしてあげよう。ほら、向かいに座っている『闇』の使い手も剥かれた蜜柑を食べるだけでなくこの子にも分けてあげてください。グラシア殿なんて、猫じゃらしの様な物をもってコタツムリちゃんと遊び疲れてお休みになられて居るぞ・・・コタツムリちゃんに覆われて!!
本来ならグラシア殿もその程度では疲れてお休みならないのだが・・・今回は、仕方が無い。色々と強行スケジュールをお願いしてしまったからね。
だから、私も『闇』の使い手もちょこっとだけしか脚を入れていない。コタツムリちゃんもその事を気にかけて懸命にピチューーーって声を上げて体を広げようと頑張っていたが、止めた。淑女を優先するのは紳士として当然なのでグラシア殿のお休みを最優先にした。我々紳士は、無駄に肉体が丈夫だからね。真冬の海で泳いでも何ら問題ないほどに。
「予想では、そろそろクロッセル・エグザエルが訪れる時刻か。儂は、過去に二度ほどあったことがある。奇襲とはいえ、殺されかけたのだ実力の方は言うまでもないであろう。ランクAと呼ばれるに申し分ない。言わずとも理解していると思うが、『蟲』の使い手では分が悪い」
「面識がありましたか。まぁ、『闇』の使い手より若いとはいえ古参のランクAであるからその実力は私を凌いでいるのは理解していますよ。事実、この私が気配すら察知する事ができずに心臓を抉られましたからね」
出来る事なら過去に手違いでも誤射でも良かったので、殺しておいて欲しかった。きっと、殺し合いという出会いではなかったのだろう。殺し合いならば、現在クロッセル・エグザエルが生きているはずがない。おそらくは、グラシア殿が教祖をしていた時代に外交的な場で出会ったと見て間違いない。
「普通は、心臓がなければ死ぬのだがな。『蟲』の魔法は、特別な属性の中でも異質じゃな。魔法だけでなく、当の本人も常識とかけ離れている」
異質とは失礼な事を・・・理解不能な攻撃力を誇る『闇』の魔法の方がよっぽど異質だ。この私の『蟲』の魔法は、俗に言えば器用貧乏な魔法なのだよ。だが、私個人として凄く気に入っている。
「『闇』の使い手に褒められたと認識しておきます。まぁ、分が悪くても勝てない相手ではありませんよ。魔法が使えないというハンデを背負っている者です。そこにつけ込めば勝ち目はあります。それに、いくら身体能力が群を抜いていても、意味をなさない事など世の中いくつもある」
私の第三形態・・・魔力を消費し続けるという時間制限付きというデメリットがあるにせよ身体能力だけで言えば、全冒険者中間違いなくトップスリーに入ると自信を持っていえる。自信をもって、トップを言えないのはランクAの存在がいるからだ。その一人が間違いなく、クロッセル・エグザエルである。後、おまけで未だに実力が測定仕切れていない『闇』の使い手だ。
だがね!! それは地上戦に限った話だ。あらゆる環境下で十全な力を発揮できる私は、地の利というアドバンテージを最大限に発揮する事ができる。強者相手に同じ土俵で戦うようなナンセンスな事などしない。
「まぁ、期待して観戦させてもらおう。『蟲』の使い手には、まだ死なれては困るからな」
「私も死ぬ気はありませんよ。どのような結果になるにせよ、相手の手札は全部さらけ出して見せる。では、危なくなった場合にはよろしくお願いしますね」
「此度の報酬の件を度外視しても、今や世界を回す歯車の一つである『蟲』の使い手が居なくなっては世界が混乱する。無論、儂はそれでも構わぬ・・・どのような時代になれど、生き抜ける自信はある。だが、グラシア殿のお心や近い将来誕生するであろう儂らの遺伝子を持った子供は違うであろう。儂達の未来の為に手を貸しているのだ」
個人的に言わせてもらえば、貴方達の遺伝子をもった子供が生きていけない時代なんて、どこの世紀末だよ。どう考えても、恐ろしい戦闘力をもった子供であろう。
「なるほど、『闇』の使い手程の紳士にそこまで思われるのは悪くないですね。それに、未来に生まれる子供の為というならば、私も同じですよ。・・・・・・おっと、ご来客の到着みたいですね」
「知覚範囲は儂を超えてたか・・・。ふむ、『ウルオール』と南方諸国連盟との開戦と同時刻。二人が帰ってくる前に片をつける気だな。では、我々は離れるから好きにやるといい」
モッチュ(グラシア殿と一緒に避難。お父様、蜜柑を剥いてお待ちしております)
グラシア殿と『闇』の使い手がここが一望できる展望室へと移動していった。
クロッセル・エグザエル・・・いかに隠密行動に優れていたとしても、この屋敷と瀨里奈ハイヴではその性能も発揮仕切れないであろう。超音波センサーや温度監視、他にも床下や壁には蟲がおり、重さの変化を常に監視している。この世界では概念すら知られていない物だ。それら全てをクリアしてこの瀨里奈ハイヴの処刑場まで到達する事はできないだろう。
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◆
どのような方法を使っても構わないから、必ずセリナ・アーネスト・ヴォルドーを確保してこいと・・・生きてという絶対条件。
ギルドの命運を左右する存在ね~。確かに、そのセリナ・アーネスト・ヴォルドーが本当に『蟲』の魔法が扱えて、レイア・アーネスト・ヴォルドーの実母ならばの話だ。だが、ギルドはその可能性が高いと考えている。
本物であった場合には、人質としての利用価値は実に素晴らしいであろう。『ウルオール』とよい条件で停戦に持ち込める。さらには、『神聖エルモア帝国』からの食料輸入に関しても条件を大幅に緩和できるだろう。無論、非道外道と罵られるだろうが・・・今更、気にするような連中でもあるまい。
既に、いろいろな事が露見しているのだからな。
ギルドの連中など見捨ててどこぞに逃げるというのもありだが、一応世話になった身だ。腕っ節が強いやつの情報をいち早く手に入れられて、必要な物はなんでも揃えられる最高の環境であった。本当に、ずいぶんと楽しませてもらった。
この機に、『筋肉教団』という組織に乗り換えてもいいな。色々と、融通してくれるのならば汚れ仕事などを引き受けてもよいと思っている。だが、受け入れられないだろう。教祖と副教祖を始め主要なメンバー連中は、『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』の息の掛かった連中しかいない。しかも、レイア・アーネスト・ヴォルドーと近しい者ばかりだ。
よって、まだギルドに倒れられては困るのだよ。俺は、まだまだ遊びたりん。だから!! 何の恨みもないが、その身柄を確保させてもらうぞセリナ・アーネスト・ヴォルドー。
そして!! 先日、片腕を奪われた一件についてもお礼をさせてもらおうぞレイア・アーネスト・ヴォルドー。まさか、この俺が殺し損ねるだけでなく片腕まで持って行かれるとは予想外だった。ギルドの連中から、生存の報告を聞いたときは耳を疑った。心臓を抉られて生きている者など居るはずがなかったからな。だからこそ、今度はしっかりと殺そう。木っ端みじんになれば、いかに『蟲』の魔法といえど死ぬであろう。
「今朝報告のあった情報では、『ウルオール』側で懸念されていた『聖』の使い手二人を視認との事。更に、その傍らに希少種のモンスターも目撃されております」
「『聖』の使い手の情報だけで構わん。で、もう一つの懸念事項は?」
「『闇』の使い手の情報ですが、『聖クライム教団』で2日前に目撃情報がありました。本日、正午より教祖と会談を行うとの事です」
うーーーむ、臭いな。あの二人が行動を共にしていた事は、南方諸国連盟での被害状況から考えるに間違いない。こちらが襲撃してくる事など向こうとしても百の承知・・・なのに、別行動か。
考えられる可能性は、偶然南方諸国連盟を『闇』の使い手と『蟲』の使い手が同じタイミングで襲撃した。最悪なケースが二人が裏で組んでいる事だ。あの年寄りを殺すのは、流石に難しい。だが、仮に二人が組んでいるとしたらどうやって『闇』の使い手を引き入れたのだ。
「『聖クライム教団』で目撃された『闇』の使い手は本物か? 流石に、こちらが強襲をかけようとしているタイミングで懸念事項が全て解消されているのは些か腑に落ちん」
「目視したわけではなく報告書の記述では、そのような報告となっております。信憑性についても高いと思っていただいて構わないかと存じます。『聖』の双子が不在なのは紛れもない事実。この機会を逃せばセリナ・アーネスト・ヴォルドーの確保は事実上不可能になるかと」
その通りだ。だが、それを実現する上で最低限排除しないといけない障害がある。『蟲』の使い手だ。前回は不意打ちだったが、今回は正面切って戦うしかあるまい。負ける事はないであろうが、多少の損害は出るであろうな。
「まぁ、迷っていても仕方が無い。出たとこ勝負という事は往々にしてあるものだ。では、楽しい殺し合いをしようじゃないか。レイア・アーネスト・ヴォルドー」
スランプ気味でなかなか筆が進まない><
もうちょっとなのに・・・もうちょっと。
さて、次話で殺し合いを始めるぞ!!
偉い人は言いました・・・勝てばいいんだよかてば!!

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