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第百二話:憎しみの連鎖(4)
◇
金が金を呼ぶ法則。それは、色々あると思うが私の中ではこう考えている。莫大な金で経済を操作して利益を生み出す!!
新居の最上階から、100万に及ぶ蟲達が休む事なく働く様子を確認している。統率の取れた農作業は、凄まじいの一言だ。地面を耕すにしても木々を伐採するにしても、高ランクの蟲達にしてみれば楽な仕事だ。
そして、この最上階にある執務室には報告書並びに計画書が積み上げられている。これでも、厳選されているのだから驚きだ。100万近い蟲達からの報告がこの程度で済んでいると思えば安い物か。
ピッピ(お父様、第60~第70番地までの開墾が完了致しました。本日中に、残りの場所を開墾して作物を植え終えます。また、瀬里奈ハイヴの地下第10~第30農場では、収穫時期になりましたが、グリンドール様のお仕事が終える時期を見計らって収穫致します)
モモキュ(お父様、地下水を利用した自動水撒きシステムを作成するので各畑に配管を通したいのです。計画書と蟲員手配のご承認をお願い致します)
モナーモナ(お父様!! やりました!! ついに、ペニシリンの開発に成功致しました!!)
全く、出来すぎた蟲達だ。
………あれ? なにか毛色の違う報告が一件混ざっていたような。
色々と報告を受ける中で、蛆蛞蝓ちゃんが素晴らしい報告をしてくれた気がする。ペニシリンの開発に成功しただと!! アオカビから取れる物質から精製するとしか知らないので、それしか情報をあげられていないのに…。
「す、素晴らしい蛆蛞蝓ちゃん!! もう、全身を隅々まで手洗いしてあげちゃう!!」
モモナ(お父様の手洗い…いけない、鼻血が)
ピピ(そ、そんな蛆蛞蝓ちゃんだけなんて…)
モキュゥ(…はっ!! 今日から蛆蛞蝓ちゃんに改名する!!)
むむ、そうだった。
確かに、蛆蛞蝓ちゃんは偉業を達成したが周りの子達だって、今できる仕事を精一杯頑張っているのだ。それなのに、なんて事を…!! だけど、分体をグラシア殿に分けては居るが蛆蛞蝓ちゃんはユニークな存在なのだ。他の子達は、数が多すぎてそれを手洗いしてあげたら何年かかるか分からない。
というか、絹毛虫ちゃんに限って言えばブラッシングなども定期的にやってあげているんだがな。
だから、妥協案を提案しよう。
「すまない。お風呂は皆一緒に入ろうか。全員を手洗いする事は出来ないが同じ湯に浸かる事は出来る」
蟲達のやる気が向上したのが分かる。そんなに、一緒にお風呂に入るのが嬉しいのか。まったく、可愛い連中だ。
しかし、ペニシリンは役に立つ。まさか、このご時世で20世紀最大の偉業の一つを成し遂げてくれるとは。ペニシリンがあれば、ギルドがほぼ独占している治癒薬に代わる第二の薬となるだろう。
ペニシリンは、感染症などに有効な抗生物質だ。医療技術が極めて低いこの世界では、治癒薬に頼らざるをえなかった事がペニシリンの登場により、市場は一転するだろう。間違いなく、ギルドの売り上げに大打撃を与える。流石に、怪我の治癒には治癒薬に頼る必要はあるが、十分な効果である。
ギルドは、手持ちの残金が心許なくなれば間違いなく冒険者の必須商品に対して値上げを行うだろう。自己の負担を可能な限り減らす為に、糞高い治癒薬を更に高値で売るようになる。そこで、ペニシリンを大量に市場に流す!! 当然、直ぐには受け容れられないだろう…長年、治癒薬なんて魔法の薬に頼っていたのだ。新薬は、誰もが不安に思うのは当然。
だが、此方には素晴らしい広告塔がいるのだ。
至宝の双子と言われる『ウルオール』で尤も有名。更には、他国でもその名を知らない者は少ない程のね。あの二人を宣伝に活用して安全性と効果を説けば、間違いなく効果がある。治癒薬と違い、価格も1/100程度で提供する。その価格なら、お試しで購入できるレベルだ。
モモナァ(ふっふっふ…おっと、いけないわ。お父様、ペニシリンの試験テスト及び増産に伴う計画書並びに蟲員手配をお願い致します)
「瀬里奈ハイヴ並びに私の蟲から好きな者を連れて行くと良い。蟲員の手配だが…蛆蛞蝓ちゃんが選抜して構わない。そのレベルの話になると会話について行ける者は少ない。最優先で取り組んでくれ。資材も予算も無制限だ…好きにやりたまえ」
報告に来てくれた皆をナデナデしてからお仕事に戻って貰った。
ギルドの屑共が、何処まで此方の攻撃に耐えられるか見物だ。さてさて、南方諸国連盟に輸出する予定の商品リストのチェックをするか。
………
……
…
ゴシゴシ
目が疲れたのだろうか、何故か一項目だけ小さい文字で書かれている商品があった。筆跡から察するに誰が書いたか直ぐ分かる。いいや、筆跡で判断しなくても直ぐに分かるぞ!!『美少年の残り湯(至宝の双子ver)…一粒で二度美味しいお水』という商品が混ざり込んでいる。しかも、その計画書には生産・品質・販路までの詳細まで添えられており資料として申し分ない出来なのが恐ろしい。一体、何処にこんな恐ろしい資料を作る時間があったのだろうかと疑ってしまう。
だが、驚くべきはお値段の方だ…500mlで100万セル!? しかも、応募券を100枚集めてセリナ・アーネスト・ヴォルドー宛に送ると優先で10名の方に双子のサイン入り色紙が当たると…。
間違いなく今回販売する商品で一番の利益率を誇っている。売れればだがね…売れないよね。世の中、そんな変態淑女ばかりじゃないよね!!
だが、世界が残酷なのを知るのはもうしばらく後の事だった。
◇
葬式から四日目の朝、『闇』の使い手から一報が届いた。
15カ国からなる南方諸国連盟の内、4つの国で全ての湖並びに河川の流れを変え終えたそうだ。尋常ではない治水工事の速度だ。国家が数年単位でやることを平然と数日で終わらせるなんて恐ろしいな。
この調子ならば、一週間もしないうちに帰ってくるだろう。私が揃えられる最高の戦力を集めてグラシア殿の護衛に当たらせているのだが…『闇』の使い手からしてみれば不安なのだろう。
「幻想蝶ちゃん、地下通路を利用した輸出計画を進めてくれ。来週半ばには、出荷だ」
ピッピ(畏まりましたお父様。では、皆様にご連絡してまいりますね。えーーと、本日のご予定は確か、地下の室内プールで水泳だそうです)
うらやましいな…これから、糞暑い中、『闇』の使い手と合流するために国外に出立しないといけないのにプールか~。と、言うことは、女性陣営は全員水着だな。
グラシア殿の水着か…『闇』の使い手が聞いたら、羨ましがるだろう。まぁ、私のゴリフターズだって負けない。エルフ・人妻・高貴な身分・完璧なスタイル!! トリプル役満みたいだ。これだけでお金が取れる存在だ。世界の紳士達が、羨むこと間違いない。
「全員に昼食を取らせて、入浴後に出立する。何か困ったことがあれば皆で相談して決めるといい。それでも迷った場合は瀬里奈さんの判断を仰ぐこと…」
第2波であるイナゴの大発生。それは、私自身がイナゴを現地まで運搬しないといけない。勿論、瀬里奈ハイヴから飛ばす事も可能だが、イナゴの移動能力は長距離移動に対して優れていない。現地に着くまでに力尽きる個体や道中の作物を物色してしまっては『神聖エルモア帝国』にご迷惑が掛かってしまう。
それに、食事を終えたイナゴ達を可能な限り無傷で帰還させたい。イナゴの戦闘力は低い…高ランク冒険者が居れば、相当数が落とされるだろう。だが、イナゴの群れの中に私が混ざればその問題も解決する。ステルス機能全開でガチで行けば並の冒険者など挽肉にしてくれるわ。
イナゴ達での狙いは、作物だけで無く非常食もだ!!
「災害時の為の非常食…当然、領主ならば領民を一定期間食わせるだけの食料を備蓄しているのが当たり前だ。その為に、税収の使い道としてしっかりと明記されている。さて、何人の貴族達がそれを有言実行しているか楽しみだ」
手元の資料を確認した。
各国の貴族が非常食を保管していると言われている場所の地図だ。
ピッピー(非常食の維持管理がギルドとなっておりますが…大丈夫でしょうか)
良いところに気がつくね。そうだね、私個人で言わせて貰えばダメだと思うよ。
さて、蟲達への最低限の指示も出したし、予定通り合流しに行くとしよう。
◇
瀬里奈ハイヴを出立した翌日。万が一の可能性もないとは思うが、地上からの攻撃を想定して、ステルスで遙か上空から南方諸国に密入国した。地上を眺めているが…酷い有様だ。
「あそこが湖があった場所か…綺麗に抉り取られているな。それに、あっちの河川も平地に流れ込んで沼地に早変わりしている」
眼下では、冒険者らしい存在が魔法を使って河川を元通りに直そうと気張っているが…難しそうだな。ここまで大規模の治水工事は、一介の冒険者では荷が重い。ジュラルドだって息が上がるレベルだろう。
これもギルドという糞組織が起こした結末だ。誰が悪いかと言えばギルドだ。全く酷いことをするな。己の非を許容せず、強引な事ばかりするからこうなるんだ。
………
……
…
いやいや!! やっぱり、おかしいぞ!!
なぜ、こんなにも早く冒険者が現地に出張ってくるのだ。誰かがギルドに依頼したにしてもここまで迅速に人が集まって現地でせっせと労働にいそしむはずが無い。
裏があるはずだ。善良な冒険者なんて事も考えたが、あり得ない。そんな希有な人材がギルド総本山の勢力下であるこの国に居るとは思えない。
「『闇』の使い手との待ち合わせ時間まで40分…移動時間を考慮すれば、10分程度は大丈夫か…」
私の想像通りの連中ならば、肥料に変える。それ以外ならば、記憶を操作して放置しよう。
◇
「時間通りかな」
『闇』の使い手に預けている蟲から超音波連絡を貰ったので待ち合わせ場所に来てみれば、以前に絹毛虫ちゃんがプレゼントしたフードを深々と被っているジェントルマンが一人居た。漆黒のコートからはみ出ている赤い光を放つライ●セイバーが目立つ。
ヴォン
ジェントルマンが懐から赤いライ●セイバーを取り出して、構えた。滲み出る紳士のオーラにそのフード…そして、ライ●セイバーまで持っていると本当に似合うわ。
だが、此方だって負けていないぞ!!
『闇』の使い手の漆黒のコートに対抗してと言うわけではないが、私は純白のコートに緑のライ●セイバーを二本持ってきたんだぞ!! いつものスタイルだとバレると思ってね。二本のライ●セイバーの柄同士を繋ぎ合わせた。これぞデュアルセイバーだ。多少、血で汚れているが問題ない。後で、綺麗に洗浄しておこう。
ヴォンヴォーン
………
……
…
謎のお茶目な挨拶を終えたので真面目にいこう。
「定刻通りだな。既に計画の第1波の消化率は50%だ。残りは、『蟲』の使い手の第2波と共に行おう」
「素晴らしい。予定より2割も早い。それと報告だが…ここに来る途中で冒険者を幾人か処理した。この謎の災害の調査が行われているのであろうと思ったが違った…。尤も、原因が分かったところで止めようがない。そうそう、これはグラシア殿から預かった弁当だ。日持ちする素材で作っている上に、保冷していたから大丈夫だろう」
「頂こう」
我々の道を阻む冒険者は、世界平和の礎になって貰おう。多少の犠牲は何事にも付きものだからな。後で身元を調べて、親族が居る場合にはアフターケアー位はしよう。せめてもの弔いだ。但し、ギルド関係の者で無い場合に限る。
「昼食後で構わないので、少し寄り道をしたい」
「寄り道? 先ほど言っていた冒険者の一件か。一刻も早く儂は帰りたいのだが…」
そんな邪険にしないで頂きたい。『闇』の使い手だって無関係では無い。
「ここから、南西に15km行った場所に非合法病院がある。当然、運営はギルドだ」
「秘匿施設は、この国にはなかったはずだ。『蟲』の使い手がそう言っていたはずだが…どういう事だ」
その通りだ。だが、冒険者達から吸い出した情報では、ここ最近新設された施設だった。私の情報が古かったの謝ろう。まさか、こんな秘匿施設をポンポン作るなんて思わないでしょう。
グラシア殿との契約に基づきギルドの秘匿施設に拉致監禁されている者達を救う。それは、あの時点で私が知っていた施設だけでも十分かも知れないが…後から知った施設も救わねばなるまい。それが、淑女と紳士の契約だ。
「私が知っている時点での情報では、この国にはなかった。だが、秘匿施設が建造されたのは一ヶ月前だ」
「では、儂が通ってきた4つの国でも秘匿施設があった可能性もあると…」
残念だが、肯定だ。
「その通りだ。だが、計画は進行しているから、大幅な変更は行わない。今回、知ってしまった秘匿施設は食後に襲撃する。こういう場所が出てきた以上、他にも新設されている施設はあるだろう。だが、場所が特定出来ない。故に、全ての計画が終わった後にギルドの書類及び幹部の脳から情報を抽出して救いに行く…それで構わないかな?」
南方諸国連盟でやる仕事が少し増えてしまった。
私がわざわざ南方諸国まで来たのには、『謎のイナゴの大発生』以外にも理由がある。それが『謎のギルド秘匿施設襲撃』だ。『闇』の使い手の魔法では、治療は行えないからね。後、治療対象を持ち運ぶのも大変だ。そこで私の出番なのだ。
「そういう事ならば、仕方が無い。グラシア殿が望んだことだ。儂も全力で手を貸そう」
「心強い。では、始めましょうか」
世界最強の冒険者である『闇』の使い手。臨時とは言え、これ以上望めない程の相方だ。敵にすれば恐ろしいが味方であるならば、心強い。どのような敵が出てきても一発だ!!
そろそろ、本格的な大掃除を始めよう。
書きたいことはあるのだけど、なかなか纏まらないって大変ですよね><
さて、謎の大災害の幕開けといこう。

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