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第九十七話:(ゴリフ外伝)ゴリフの結婚前夜(1)
いつもありがとうございます。
作者です。
この度は、ポイントが2万の大台に乗ったことを祝してお約束通りゴリフ外伝をやりたいと思います!! ささやかな内容となっております。
◆一つ目:ゴリフターズ父親
◆二つ目:ゴリフターズ父親
◆
娘が居る父親として、いつかはこの日が来ると思っていた。無論、その思いは娘の姿が激変した後でも変わる事は無い。どのような姿になれど、親にとっては可愛い娘である事には変わりは無い。
故に、外見や地位や権力でなく娘達の心を見てくれる理想の相手が現れると信じていた。
エルフという種族は、他の亜人と比較してもモンスターソウルを体内に取り込む際の効率が非常に高いと言われている。事実、エルフには他の種族では見られない変化が現れる事がある。冒険者として大成する一部のエルフは、極めて強靱な肉体を一夜にして手に入れた者がいる。
故に、女性エルフの冒険者や貴族は一定以上の成果を求める者が少ない。万が一、境界線を越えてしまえば、圧倒的な肉体を手にしてしまう可能性があるからだ。勿論、強靱な肉体を手に入れるというのは素晴らしい事だ。その為に、モンスターソウルを求めてモンスターの討伐をしているのだから…だが、限度を超えた肉体を求める者は少ない。
予想していなかった事ではないが、娘であるゴリフリーナ、ゴリフリーテはその一部に該当した。『聖』の魔法という特別な属性を有しているだけでなく、私と妻であるゴリフリーザとの間に生まれた子供だ。エルフの中でも屈指の才能を有していたのだろう。
娘達の幸せも考慮するならば一定以上鍛えるべきではないのだが、我々…『ウルオール』に選択肢は存在しなかった。『闇』という特別な属性を持つ冒険者を有する『聖クライム教団』に対抗すべく、娘の人生を国家の為に捧げたのだ。
国王の選択肢としては正しいであろう。だが、父親としての選択肢としては間違いである。憎まれる覚悟もしていたというのに、娘達は嫌な顔一つせず役目をこなしてくれた。「私達の人生で、お父様、お母様、弟達…ひいては、『ウルオール』の為になるならば」と笑顔で言い放ったのだ。
年端もいかぬ娘がだ!!
女性である者にとって、どれだけ苦しい選択を迫ったのか想像もつかない。変化が訪れる前は、傾国の美少女と言われるまでの容姿を持っていたのだ。それが一夜にして誰もが道を空ける容姿に早変わりしたのだ。
その出来事が、娘達の心にどれだけ深い傷を負わせた事だろうか…変われるものならば変わってやりたいと思っている。だからこそ、娘達には幸せになって欲しい!! その為ならば、多少の無理難題は通す。それが父親としての勤めだ。
娘の地位や能力にしか目をつけない屑共からの求婚に対しても、娘達が気に入れば矢も得ないと考える次第でいた。愛というのは、後からでも育む事はできるのだ。だが、お見合いを許して場をセッティングしてみれば…私達の可愛い娘達を見て、青ざめる者達。男の儂でも分かるような、拒絶感、嫌悪感…怒りを通り越して戦争へと発展した事もある。
だが!! しかし!!
そんな娘達にも、ようやく春が来たのだ。
そんな世紀の一大事の場面に居合わせられなかった事をこれほど後悔した事はない。しかも、聞けば娘二人に対して求婚したそうではないか…大衆の前でだ!!
「いよいよ、明日ですね。心の準備は出来ましたか?」
「ゴリフリーザか…儂の事より、二人の様子はどうだった?」
女性にとっての一大イベントだ。父親である儂の心境より娘達の心境の方が気になる。なんせ、運命の相手に出会えたのだからな。
娘達の結婚相手は、隣国で4大国の一つに数えられる『神聖エルモア帝国』の一代貴族…いいや、今は侯爵だったな。しかも、世界に4つしか確認されていない特別な属性の一つ『蟲』を使う者。おかげで、真っ先に『神聖エルモア帝国』の陰謀を疑った。
他国の貴族…しかも、ガイウス皇帝と親密な仲にあると言われる『蟲』の使い手だ。疑うなという方が無理がある。
ギルドに金を払って、知りうる限るの情報を提供させた。情報を確認すればするほど浮き世離れした変人という印象だ。『ネームレス』に現れるまでの経歴は不明。ガイウス皇帝の生誕祭で突如サプライズで発表された事によりその名が知れる事になった。
「まだ、義理の息子になる彼の事が気になっているのですか? 多少、変わった性格をしているようですが、良いではありませんか。娘達が幸せになれるのなら。それに…女の勘ですが、悪い人じゃありませんよ」
「あぁ、その通りだ」
無粋な考えであった。どのような過去があったにせよ、娘達が嫁ぎたいと思った男だ…間違いなく、いい男だ。それに、このご時世にしては珍しく礼儀正しい。
武道会の後にすぐに儂達に挨拶しにきて、土下座してきたからな。そして、「娘さん達を私にください!! 必ず幸せにしてみせます」と言われた時には、頭の中が真っ白になった。
事前に事の詳細を聞いてはいたが、最初の一言がそれだとは思っていなかった。
それから、じっくりと男同士で話し合った。娘の何処に惚れたのか、娘を幸せにできなかったらどうするのかなど。だが、彼はその全てに対して儂の納得いく答えを出してきた。
「しかし、望めば『ウルオール』の次期国王にもなれたでしょうに…いらないなんて変わっていますよね」
「一部の冒険者は、地位や権力に興味を示さない者もおると言うが…その典型なのであろう」
ドドドドド
王宮を走る足音が聞こえる。この足音は…。
「お父様!! お母様!! 明日の洋服の準備が出来ました!!」
「これで完璧です!!」
ミルアとイヤレスが、純白のドレスを着込んで走ってきた。
うむ!! 間違いなく完璧だ。
どこからどう見ても客の視線は釘付けであろう。本当に、目に入れても痛くないほど可愛い息子達じゃ。
「あら、可愛いわね。でも、明日の主役はゴリフリーナとゴリフリーテよ。それに、その服…何処で調達してきたのかしら?」
ゴゴゴゴゴ
ゴリフリーザも息子達には甘いが…今日ばかりは少々お怒りのようだ。娘の晴れ舞台を邪魔するならば息子とで許さぬ所存であるのだろう。全く、いたずら好きな息子達じゃ。いたずらのためなら苦労は厭わないと自慢気にしておるからな。
「未来のお義兄様の蟲達が作ってくれました。いや~、頼んでみる物ですね」
「後、この子もいただいちゃいました。次郎って命名したので、王宮で見つけても虐めないでくださいね」
ギギ
次郎と名付けられた蟲が袋をもって此方に歩いてきた。そして、手紙のような物を口に挟んで渡してきた。
『お初にお目に掛かります。
『ウルオール』の国王であらせられるミカエル・ダグラス・ヴァーミリオン様。
王妃であらせられるゴリフリーザ・クリスト・ヴァーミリオン様。
私は、イヤレス様とミルア様へご奉公に出されました次郎と申します。
この度は、高貴な王族の方であられるお二人に仕えられた事を本当に嬉しく、命をかけて責務を全うする所存であります。
この私自身は、特別な能力を殆ど有しておりませんがお父様との連絡窓口や王宮に蔓延る害虫駆除を主なお仕事とさせていただければと思っております。害虫と言いましても、シロアリや蜘蛛などの皆様に好まれない者達と折衝を行い、引っ越ししていただく事で常に綺麗な空間を維持する事が可能です。
私のような蟲に国王様や王妃様がお声を掛けるような事は、殆ど無いと思われますが何か在りましたら気軽にお声かけいただければと思っております。
これは、お父様からお近づきの印として託された物です。女性に人気の化粧品グッツを揃えて参りました』
この手紙…もしかして、この蟲が書いたのか。随分とできた蟲じゃな。
ゴリフリーザが蟲からの贈り物を受け取りお礼を述べた。
「分かった。次郎とやら…息子達を頼んだぞ。後、ゴリフリーザは、イヤレスとミルアの明日の用意を頼んだ」
ギギ
本来であれば、王宮に使える者達の仕事なのだが…イヤレスとミルアに強く言える者達が居ないのが現状だ。ゴリフリーザに抱えられて二人が退出していった。
「これからは、息子達が王位継承権一位と二位か…しっかり者の嫁を探さねばな」
だが、どう探せば良いか迷う。二人の人気は、『ウルオール』国内だけで無く国外にまで及んでいる。雑誌デビューしたせいで伴侶にしたい種族No1に輝いたからな。そのせいで、王宮には毎日のように縁談の話が来る…中には、なぜか男からも来る始末だ。
◆
うまいな。
夜の更けたというのに寝付けなくて酒の力を借りるとは、情けない。明日は、娘の晴れ舞台だというのに。明日の結婚式は、王族としては極めて異例の親しき者達だけが集められて行われる。
その理由は、彼…レイア・アーネスト・ヴォルドーが招待客で呼べる者が極めて少ないからだ。それなのに、此方が国内外の者達を招待したら、ある種のイジメになってしまう。
まぁ、呼べる招待客がガイウス皇帝というだけなのもある意味すごいがな。明日の式には参列しに来るらしい。執務を放置してとの事だが…大丈夫なのか。
なんでも、「儂が参列しよう!! レイアと儂の仲じゃ、仲人は任せておけ」と言っていたとの事だ。
ガイウス皇帝の隠し子じゃないかと本気で疑ってしまう。寧ろ、その方がしっくり来る。一代貴族から侯爵への大出世。『蟲』の使い手である彼は、ガイウス皇帝がどこからか連れてきたという事だが…どうやって見つけたのだ。神器プロメテウスでは、男である彼を見つけ出す事は不可能であろうに。
コンコン
「お父様、まだ起きていらっしゃいますか?」
こんな夜更けに、誰かと思えば娘達であった。明日に結婚式を控えて不安なのであろう。
「あぁ、入りなさい」
二人が書斎の中に入ってきた。
不安げな顔をする二人を見て理解した。儂以上に、この娘達は不安を感じているのであろう。娘達が椅子に座ったので、コップを取り出して水を注いだ。
「ありがとうございます。お父様」
「ありがとうございます」
「この程度お安いご用さ。それで、明日に式を控えた二人がこんな夜更けにどうしたんだね?」
母親であるゴリフリーザの所に行かなかったという事は、父親である私に何か聞きたい事があると考えるのが普通か。男ってこういう時には役に立たないのだが。
「お父様に…いいえ、親としての意見ではなく男性としての意見をお聞かせいただきたくてここに参りました」
あぁ、やはりか…。
こういってはアレだが、儂は王族としては極めて珍しいタイプでゴリフリーザ以外に妻は居ない。要するに一人の女性を愛し続けた者だ。幸い、子宝には恵まれたからな…本当に運が良かった。そんな、儂に気の利いたアドバイスが出来るだろうか、ハードルが高い。
「なんでも答えよう」
「男性は、恋多き人が多いと聞きます。レイア様は、私達以外に誰も娶る気は無いと仰っておりましたが…不安で仕方が無いのです!! なぜならレイア様がお母様を見る目は、明らかにおかしいと思うのです。やはり、女性的な方がお好きなのではないかと」
「その通りです。初対面の時にお母様が自己紹介された時を覚えていらっしゃいますか。あの、眼差し…尋常な事ではありませんでした」
あぁ…確かに、儂もそれは気になった。ゴリフリーザは、30後半という年齢だが…その美しさは衰えておらず、今でも息子達の姉ですかと言われる程だ。
………
……
…
まぁ、それも既に確認した。
「安心しなさい。彼は、ゴリフリーザの容姿に反応しているわけではない。儂も気になって彼に尋ねてみたのだよ。名前に驚いたそうだ。知り合いではないが、とても尊敬している御仁と名前が被ったらしい」
なんでも、その御仁は指先一つで国を解体する事なんて朝飯前の強さらしいが…儂も知らぬような屈強の強者が世界には居ると言うことなのだろう。
「そうだったんですか、安心致しました。やはり、お父様にご相談して良かったです」
「それでは、明日がありますのでおやすみなさいお父様」
娘達が部屋を退出して帰って行った。
あれ? ここは、お父様と分かれるのが寂しいから結婚はやっぱり止めますなんて展開になるシーンじゃないの!?
おのれ!! レイアという若僧め!! 娘達を誑かせおって!! 毎年、年末年始に実家に返さないと乗り込みに行くからな!! 娘達の手作り料理を用意して待ってろよ!!
結婚前夜だからゴリフターズの話だと思った?
残念です><
前編は、ゴリフターズ父親の話でした。
後編は、レイアとガイウス皇帝陛下、ゴリフターズがメインで登場します。
後編の投稿は7/12 9:00の予定です。
作者の私事ですが…ターミネータ面白かったよ~。
やっぱりシュワちゃんいいよね。
PS:
ゴリフターズの母親のお名前…感想から素敵なアイディアを採用させていただきました!! ありがとうございます!!

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