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第九十一話:戦争(3)
ヴォルドー領に大量の移住希望者が…嬉しい限りです。
蟲達を大事にしてくれそうな人が多くて、皆喜んでおります。
タルト「ヴォルドー領の移住申請を持ってきました!!」
レイア「私の領地には、『筋肉教団』の本拠地は建てさせんぞ」
タルト「ちがいますよ!! 私も出会いが欲しいなと…」
ムシュシュ(ついに、私に出番が!! 腐女子の中の腐女子である瀬里奈おばあちゃんの手によって、理想の男に生まれ変わる時か!! )
◇
あぁ、そういえばマーガレット嬢の想定外の来訪があったが…瀬里奈さんの偽装は、究極進化マーガレット嬢(笑)に設定していたな。マーガレット嬢に社交辞令で陣営の見学をする事を許したが、モンスターが蔓延る私の陣営を好き勝手に歩き回る事はあるまい。
飢えた狼の中を歩く羊となる事は間違いない。自殺行為にも等しいからな。
「どういう事だヴォルドー侯爵!! なぜ、あなたの陣営に多数のモンスターが居る。『蟲』の魔法についてはある程度理解している。だからこそ、蟲系のモンスターなら理解できる。だが、報告によれば多種多様なモンスターがいるそうではないか」
味方の陣営にご迷惑をかけないように本陣から離れた場所に陣営を張った。それなのに調査の手が及んでしまったようだ。というか、味方陣営の戦力調査に力を入れるより敵陣営の戦力調査に力を入れろよ。この無能共が!!
「それがどうかしましたか? 私は、財務大臣からのご命令で死力を尽くしてガイウス皇帝陛下に勝利を捧げる為に最善を尽くしたまでです。ちなみに、ヴォルドー軍の兵力5000は、全員がランクC以上です。まぁ、モンスターという事はありますが、些細な問題です。そして、ご存じだと思いますが…私の妻達であるランクAのゴリフリーテとゴリフリーナも参戦します。更に、私の蟲達も投入する予定でおります」
周りから響めきが聞こえる。モンスターの方に反応したのか、ゴリフターズ参戦に反応したのか分からないが…間違いなく、この戦場において私より戦力を揃えた者はおるまい。質も数も比較にならないだろう。
だが、何やら嫌な顔つきをしている者達もいる。
自らが支援する後継者の為に無理して兵や物資を用意した者達にとって、私は腫れ物という事か。別に、次期皇帝選において中立を明言している私にとってすれば、此度の戦争の手柄なんてどうでもいい。ガイウス皇帝陛下の勝利で飾る…それだけが目的だ。そんなに、手柄が欲しければ、敵将の首程度くれてやるわ。原型が残っていれば好きに拾ってくれて構わない。
「そういう事ではない!! もし、モンスター共が暴れて、味方に被害が出たらどうするつもりだ!! 責任は取れるのか!?」
「無論、取りましょう。それが、兵力を集めた者の責任という物です。ですが、私以外の諸侯達にも同様の条件が適用されるという理解でよいのですよね? 戦場で味方に被害を出した者が居れば、その者を任用した諸侯が責任を取る。まさか、私にだけ不平等な条件を突きつけようなどとお考えではあるまい」
こちらは、人より遥かに使い物になるモンスター達を苦労して集めたのだ。なぜ、それに文句をつけるのか理解に苦しむ。そもそも、財務大臣が死力を尽くせといったのだ…問題が起きたならばお前のせいだろうと言いたいが、紳士である私はそんな事は言わない。争いは何も生まないからね。
というか、この場はこれから行われる戦争について話し合う場の筈…なぜ、私を弾糾する場になっているのだろうか。一番大事な事は、この戦争に勝利する事だというのに。
なんで味方陣営に足を引っ張られるような事態にならないといけないのだ。ガイウス皇帝陛下が此度の戦争で一番の成果をあげる方法に他人の足を引っ張るのもありだといったせいで私の邪魔をする連中が多いのかな。何度も言うが、私は次の皇帝が誰になろうと興味はない!! 中立な立場を明言しているのだが、後継者の間では私が誰かの陣営に肩入れしているという疑心悪鬼が発生しているのだろうか。困ったものだ。
ざわざわ
それにしても聞くに耐えない。モンスター参戦に関する財務大臣の弾糾に乗じて関係ない事まで文句を言う輩まで現れた。以前に行われた大粛清でガイウス皇帝陛下の恩情で厳重注意のみで済んだ運のよい連中だ。
恐らくは、ギルドからの定期収入がなくなったせいで、懐事情が寒いのだろう。これ幸いと溜まっている鬱憤を私に当てつけている。だが、あまり煩いと私の後ろに控えているゴリフリーテの堪忍袋の緒が切れるぞ。
「責任を取るとらないの問題ではない!! モンスターのせいで此方の士気が落ちるのでないかという事を問題にしているのだ」
「先ほどと言っている内容が違いますよ。責任を取る取らないの問題だったでしょう。では、私の陣営のモンスターが味方に迷惑をかけた場合には責任を取らないでもいいのでしょうか? 違うでしょう。まずは、この場にいる諸侯達にも責任を取らす事を確約してください。次の議題に移るのはそれからです」
なんで、地位ばかり高い連中はこんなにも話が通じないのだろうか。ガイウス皇帝陛下の爪の垢でも飲ませたいよ。
「言わせておけば!! 」
「落ち着いてください財務大臣。私は何も貴方と対立するつもりなど毛頭ありません。まずは、貴方が侯爵である私だけに開戦直前に付け足した条件を他の諸侯にも適用すると明言すればいいのです。その後で、士気云々について話をしましょう。当然、諸侯達に厳守させる上で貴方の手腕を期待しております。分かっていると思いますが…命がけですよ」
私にだけ無理難題を押しつけるようなら、文字通り命で償って貰おう。それが、上に立つ者の責任の取り方だ。
周りの諸侯達が財務大臣のせいで士気が落ちまくっている。責任を取るなどという言葉は、大嫌いな連中が多いからだ。利権は欲しいが責任はいらぬ…そんな都合のよい思考回路を持っている人物が沢山居ることを知らない財務大臣ではあるまい。
ヴォルドー軍のせいで士気が落ちると言うより、財務大臣の発言のせいで士気が低下している気がするのだがね。
それにしても、私の後ろに立つ人物がゴリフリーテだと気がついていないのだろうか。ゴリフリーテの機嫌次第で『ウルオール』の友軍が引き返す事だってあり得るのだぞ。そもそも、『ウルオール』が友軍を出してくれるのは、自慢ではないが私という存在のおかげである。
そんな人物に、文句を言えるような者など本来はガイウス皇帝陛下以外にいてはならないはずだが…。
確かに、本日のゴリフリーテの格好はいつもとは異なるので、気がつけない者もいるかもしれない。瀬里奈さんのオリハルコン製…近未来型外骨格。SFのロボットアニメに出てくるようなフルプレートだ。しかも、黒をベースとして赤い発光色のラインが入っている。塗装にも相当力を入れている。見たまえこの絶妙な輝きが実に素晴らしい!!それに、この流体美は攻撃を受け流す事を想定して作られた緻密な設計。流石は、瀬里奈さんだわ。
私も同じ物を装備したかったんだけど…私は変身すると体格に変化が大きいので、特殊仕様のハーフプレートだ。部位単位パージできるハーフプレートで接合部にちょっとした細工がされている。その機構のおかげで肉体の変化に合わせてサイズが拡張できるという優れ物だ。ほら、見てみなさい!! あのガイウス皇帝陛下の目の輝きを!! 子供が新しいおもちゃを見つけたかのような目をしている。わかる人には分かるのだ…この鎧の素晴らしさが。
ガイウス皇帝陛下が席を立つ。
「静まれ!! 今、この場はそのような事を話すところではない。よいか、あと二時間もすれば開戦。分かっていると思うが無様な戦いを見せる事は許さん!! 既に、各員の配置と作戦も決まっておる。配られた資料を熟読しておけ。ヴォルドー侯爵は、同盟国『ウルオール』から来た使者が待っておる。この後、儂に付いて参れ」
本当はガイウス皇帝陛下から激励のお言葉があるはずの会議がこのような形で終わりを告げる事になるとは残念極まりない。というか、空気読もうぜクソ野郎ども。ガイウス皇帝陛下のお話を邪魔するとか死にたいのか。
………
……
…
ガイウス皇帝陛下の後に付いて、『ウルオール』の使者が待つ天幕へとやって来た。ガイウス皇帝陛下の天幕同様に警備体制が凄いな。なかなか、凄腕の冒険者達が辺りを固めている。まぁ、中にいる人物が人物だから当然とも言えるがね。
「お義兄様!! お姉様~、助太刀に来ましたよ」
「お義兄様~、その鎧!! ほしぃぃぃ!! なにそれ、カッコイイ。どこでパージするんだろう」
「儂もほしぃぞ!! 後、ドラゴンにも乗りたいぞぉぉ」
ブォンブォン
ライ●セイバーをブンブン振り回しながら言うのは、止めなさい!! ガイウス皇帝陛下に当たったらどうするんだ。それに、勝手に私の後ろに回って鎧を脱がそうとするな!!
ガイウス皇帝陛下が義弟達に混ざって、さり気なく要求してくるあたり…童心が抜けない漢だ。だが、それがいい。
「このレイア、ガイウス皇帝陛下の引退試合を飾る為…あらゆる準備を整えております。既に、ガイウス皇帝陛下の寸法に合わせた特注の鎧を!! 色は、黒と赤では私達と同じになってしまうので、白と金になります。そして、ドラゴンに跨りたいと仰ると思い既にモンスターにも話を付けております。陣営に戻り次第すぐに持ってまいります」
「素晴らしい!! 流石は、レイアじゃ。で、どのような手段を用いてモンスター達を従えておる?」
この場にいるのは、ガイウス皇帝陛下、ゴリフリーテ、イヤレス、ミルア…問題ないな。全員身内みたいなものだ。しかし、どこに耳があるか分からないので蟲を使って外部に音が漏れないようにしておくか。
「我が母とゴリフリーテとゴリフリーナに協力してもらい、各地にいるモンスターと交渉いたしました。労働に応じた対価を支払う契約でモンスター達も納得しております。無論、ご迷惑をお掛けする事はございませんのでご安心ください」
「流石は、よい女達は違うの!! 実に惜しい…瀬里奈殿が人であったなら間違いなく口説いておったのにの」
そのお言葉を聞けただけでも大満足です。本当に、いつもありがとうございます。瀬里奈さんには、一字一句間違いなくお伝え致します。
「ずーるーい!! 僕達もドラゴンに乗りたい!! 後、鎧も」
「はっ!! ガイウス皇帝陛下の後ろに乗せてもらえばいいのか。ガイウス皇帝陛下~、後ろに乗せてください」
「はっはっは…ダメじゃ。儂の後ろに乗っていいのは、女性だけと決めておる」
お願いするミルアもアレだが…ガイウス皇帝陛下の断り方もすげー。義弟達の容姿は、男女含めたエルフの中でも間違いなく最上位。そこらに居る女性なんて目じゃない容姿をしているのだ。それを平然と断るあたり流石だ。
「ミルアもイヤレスもガイウス皇帝陛下に無理を言わないの。戦後に、何とかしてあげるわ。さて…そろそろ本題に入りましょう。お時間の都合もありますし、旦那様には陣営に戻って最終確認をしていただく必要があります」
「そうじゃったな。まぁ、『ウルオール』の使者と合わせる為というのは本当だ。しかし、レイアには別件の報告がある。ギルドに潜り込ませているスパイからの最新情報だ…『雷』の使い手アーブル・シトレイユ・ベルウッドが『聖クライム教団』側に参戦する」
また、ギルドか…。
「それは存じておりませんでした。ギルド幹部が『雷』の使い手と直接交渉していた事は知っておりましたが…という事は、この戦争はギルドも一枚噛んでおりますね」
本当に呆れるしかない。ゴリフリーテや義弟達も呆れている。一体、どれだけ他国に迷惑を掛ければ気がすむのだろうか。
「あいつらの辞書には、ルールを守るという事は載っておらんのであろう。何の目的で『雷』の使い手を送り込んだかは不明だが、考えられる可能性は三つ。儂、儂の子供、レイアのどれかであろう」
「このタイミングで私ですか? 私は、ギルドの依頼をこなす中で相当額の中間マージンを納めているはずです。更に、冒険者ドリームの体現者でギルドによい広告塔として使われております。私の働きでどれだけのギルド職員を養っていた事か…。故に、ギルドに売った恩は数え切れない程あります。恨みを買うような事をした記憶など片手で数えるくらいしかありません」
それなのに、何故かギルドが刺客を送りつけてくるんだよね。ギルドにとってすれば私のようなクソ真面目に働く冒険者は、大歓迎であろう。本当に、理解に苦しむ。
私がギルドにやった事と言えば、【暴露本出版】【幹部殺害】【大国大粛清】程度だ。だが、どれも身から出た錆であろう。このような逆恨みで私を恨むなどあり得るのだろうか…ギルドが私に行った非道の数々に比べれば取るに足らない事であろう。
「た、大変申し上げにくいのですが旦那様。旦那様が行われた【暴露本出版】【大国大粛清】によってギルドが被った損害は、大国の国庫を空にする程の損害です。その為、恨まれていると思われます」
「そうなのか、酷いね。真実を一般市民に公開しただけだというのに。分かりました、『雷』の使い手には注意を払いましょう。幸い、魔法に対する対処方法は幾つか目処が立っております」
『雷』の属性…実際に検証を行ったわけではないが、十中八九その名のとおりであろう。雷なんて自然現象を見た事がない者は少ないだろう。それと、一致する特徴があるからこそ『雷』という名の特別な属性になったのだ。
「気をつけろよ。戦争では、どこから攻撃をされるか分からんからな。レイアに死なれては困る」
「ご心配ありがとうございますガイウス皇帝陛下。このレイア、ガイウス皇帝陛下のお許しなく死ぬような事は致しません」
しかし、私の事より心配すべきはガイウス皇帝陛下だ。無論、実力に関してはよく知っている。だが、戦場において絶対は存在しない。こちらの防衛網を突破して、本陣にいるガイウス皇帝陛下を狙う者がいないとも限らない。それを可能とする人物の一人は間違いなく『雷』の使い手であろう。
ここは、瀬里奈さんとゴリフリーナにヴォルドー軍を任せて私とゴリフリーテでガイウス皇帝陛下を守るのが理想であろう。『雷』の使い手とてゴリフリーテを前衛として私とガイウス皇帝陛下並びに護衛達が総出で後方支援に徹すれば、殺せぬ相手ではない。
寧ろ、私達が固まって行動していたら絶対に襲ってこない。勝てない戦に挑む馬鹿でもあるまい。
「大丈夫ですよお義兄様!! 僕達がガイウス皇帝陛下と一緒に行動するので、万が一の際には百戦錬磨の冒険者達がたっぷり時間を稼いでくれます。その間に助けに来てもらえれば十分です」
確かに、『ウルオール』の友軍には優れた冒険者が目立つ。20前後~40前後の女性が8割を占めている事から、この戦争をキッカケにあわよくば義弟達とお近づきになりたいと考える喪女達がこぞって集まったのだろう。まぁ、実力はあるようだし構わないけどさ。
油断は禁物。だが、義弟達の言う通り、時間を稼ぐには十分すぎる戦力が揃っている。むしろ、ワンチャンあるんじゃないかと思えるほどの戦力だ。
最悪でもゴリフリーテを残そうと思ったが、問題なさそうだな。
「分かった。何かあればすぐに駆けつけよう。最悪の場合は、ガイウス皇帝陛下と一緒に逃げろ。ドラゴンだけでは、逃げる手段として不安が残る…私のステイシスも何匹か置いていこう」
『雷』を冠する位だから、対空戦においても力を発揮される可能性があるので、ドラゴン以外にも逃げる手段は設けておくのがよい。これで、多少は安心できる。
「レイアよ…戦争が終わったら、瀬里奈殿を王宮に招待して盛大に飲み明かすぞ。ちなみに、ダンスもするぞ!! 瀬里奈殿のお相手は、当然儂じゃ!!」
「構いませんが母を口説かないでくださいよ。純情なんですからね。それでは、ガイウス皇帝陛下の最後の仕事を飾るに相応しい戦果をお持ち致します」
モンスターを戦場で利用するのが前代未聞ならば、王宮にモンスターを招待してダンスに誘うのも前代未聞だな。全く、困ったお人だ。
影の中にいる蟲達が早速瀬里奈さんのドレスをどうしようかアイディアを出し合っている。
◇
まもなく、ガイウス皇帝陛下の号令が掛かる。それと同時に敵陣営にぶち込むゴリフターズの盛大な花火!! あの教祖の出鼻を挫くには十分であろう。
第2波は、敵陣営の遥か上空には蟲によってステルス化したステイシス2000匹が待機している。更に、ステイシス達は、瀬里奈ウェポンで完全武装しており降下と同時に背負っている重火器の弾を大放出する。当然、ただの弾ではない!! 一発一発にブレインウォーカーを仕込んでおり体内に入れば自由を奪う。当然、外れた弾も時間が経過すると共に孵化して近くにいる人間達の頭脳を乗っ取りに向かう。
第3波は、当然私達が苦労して集めたモンスター大隊の出番である。己の種族の将来の為に命を賭して頑張ってくれる勇ましい連中だ。普段なら人を襲うと報復があるだろうが、今回は無い!! 満足するまで敵兵達を殺しまくるがいい。
「各種族に連絡用の鈴虫は?」
ギィィ『当然、手配済みよ。それにしても、超音波を使った連絡網ね…考えたねレイアちゃん』
戦況とは常に変化する生き物だ。それを戦争開始前に読みきる事は、不可能。故に、その変化に対応すべき軍隊には、連絡要員が設けられる。連絡要員には、『風』の魔法を得意とする者が起用される。高範囲での探索などに向いている魔法が多いからね。だが、本当に珍しい事に私の軍隊には基本の四つの属性が使える者が誰もいない。
代わりに、特別な属性の『聖』と『蟲』がいる。
蟲を使った連絡を元にヴォルドー軍の拠点で頭脳明晰な幻想蝶ちゃん達が敵の動きを予想し指令を飛ばす。私やゴリフターズの指示ならば、モンスター達は嫌々だろうが幻想蝶ちゃんの言葉なら別であろう。そうなるように事あるごとに幻想蝶ちゃん達をモンスター達にお披露目してやっていたのだ。飯や風呂の連絡なども幻想蝶ちゃん達にやらせていたのはこのためだ。
そろそろ、定刻だな。
「そういえば、友軍でくると張り切っていたゴリヴィエの姿が見えなかったが…何か知っているか?」
『筋肉教団』設立に十分な署名は集められているが、この私への恩義に報いるために参加しますと言っていたはず。それなのに、私の陣営に挨拶に来ないってどういう事だ。
「ゴリヴィエですか。それならば、ミルアとイヤレスと別れた際にすれ違いましたよ。何でも、ミルアとイヤレスに特別顧問になってもらうとか何とか言っておりました」
義弟達を出汁に使って、未来の教団員を集める気か!! 『ウルオール』の各地に散らばる百戦錬磨の喪女冒険者達が集うこの場は、絶好の狩場という事か。全く、抜け目のない奴だ。
喪女達からすれば『筋肉教団』の活動内容は、素晴らしいの一言であろう。金に不自由しない連中だが、出会いに恵まれてなかった者達。そんな連中が右も左も分からない若いツバメに支援という名目で手とり足とり指導出来るのだ。当然、そこから結婚というゴールまでたどり着けるかは本人達の努力次第ではある。
若干ではあるが、『ウルオール』の未来が心配だ。エルフが死滅しなければいいが…。
「そ、そうか…まぁよい。では、予定通り広範囲で頼むよ」
ゴリフターズによる花火…今回は、可能な限り広範囲という依頼をしている。ゴリフターズの『聖』の魔法は分子間の結合を切断する。その特性を最大限に利用する。目標は、敵兵の皮膚を破壊する事だ。人は、皮膚の3割も消失すれば重傷なのだ。ミスリル並の外皮ですら一瞬でズタボロにしたのだから、ただの皮膚ならば1秒も触れればズタボロであろう。
なんせ、大国同士の戦争だ…力は温存する必要がある。
だから、広く浅く攻撃させる事で十分効果がある。その気になれば、人ごと消滅させられるだろうが、それでは力の無駄遣いだ。何事も効率よくいかないとね。
『神聖エルモア帝国』側の戦力42万、『聖クライム教団』側の戦力48万…数こそ負けてはいるが、士気は間違いなく此方が上である。次期皇帝が掛かっているのだからね。
開戦ののろしが上がる。
本隊が一斉に敵陣営に突撃を開始した。
「では、我々も始めるとするか。ヴォルドー軍は左翼担当だ。ガイウス皇帝陛下のご配慮もあって、左翼を守るのは我らのみ!!」
敵兵の左翼の戦力は、約10万…戦力差は10倍以上か。全く、酷いよね。私も本気を出させていただこう。空を、地を塗り替えるように蟲達が沸いて出てくる。
「数だけで言えば、此方は100万オーバーだ。さて、私達の家族の絆を見せつけるとしよう」
争いが同じレベルの者同士でしか発生しないという事実を『聖クライム教団』に教えて進ぜよう。
ギッギーー『ヴォルドー軍!! 進軍せよ!! 』
瀬里奈さんの号令でモンスター達が一斉に進軍を開始した。
「ゴリフリーテ、ゴリフリーナ…放て」
私の一言で敵陣に届けられる家族の絆…その光に包まれて地獄の苦しみを味わうがいい。そして、始まる…狩りの時間が!!
やっと、戦火が切られました。
次回から、家族の絆を見せつける番です。
おや、実家にギルドの強行部隊が…。
ピッピ(第四防衛ラインを突破されました。先生方お願いいたします!!)
もうちょっとで、2万ポイントの大台に乗れる><
500pt…壁は高そうだ。
2万に乗れたら、「幻想蝶外伝」か「ゴリフ外伝」をやろうかな。

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