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第八十五話:(瀬里奈外伝)聖母SERINA(1)
時系列的に、レイアと出会う前のお話ですヽ(*´∀`)ノ
地方を彷徨う瀬里奈さんのお話(´・ω・`)
◆全部:瀬里奈さん
※どうでも良いですが、瀬里奈さん…美蟲ですよヽ(*´∀`)ノ
蟲的感覚で言えば。
◆
失敗した、失敗した、失敗した、失敗した、失敗した、失敗した、失敗した!!
完璧な計画を考えたというのに、何故成功しないの!? 今回考えた計画は、定番のテンプレートを使ったというのに…。基本が大事という世界の法則はどこに行ったのよ!!
ギッギ(そりゃ、介抱という名目で服を脱がしたり…寝ている横で包丁を研いだり…モンスターを食材にした鍋を食べさせようとしたら、人間なら逃げちゃいますよ)
服を脱がせないと恥療…じゃなかった、治療が出来ないでしょう。怪我をしていたら大変だから、全身を舐めるように診てあげないと!!
包丁は…モンスターをバラバラにして素材をプレゼントしてあげようと思ったから、切れ味を確認していただけなのよ。
鍋は、確かに忘れていたわ。モンスターの血肉は私達には平気だけど、人には毒だという事を。
ギッギー『それにしても酷いわ。折角、モンスターに襲われて危ないところを颯爽と駆けつけて助けてあげたのに…』
そのモンスターを誘導するのにどれだけ苦労した事か…やって来る冒険者の実力を考えて適度に痛めつけたモンスターを用意するのは本当に大変だったんだから!! 人の苦労も知らないで全く困っちゃうわ。
こんなにも苦労するのは、やはり言語の壁という一言に尽きる。
会話ができればお近づきになれる可能性も大幅に向上するのだけど…厳しいわ。ここ何年かで、言語の聞き取りは出来るようになって意味も理解できるようになった。但し、声帯の関係で人語を喋る事は、どんなに頑張っても出来なかった。
そこで考えたのが筆談だけど…これにも大きな問題があった。筆談をしようにも文字が書けないのよ。誰かに教えを請うにしてもそれを伝える手段もない。身振り手振りで『私悪いモンスターじゃないのよ』と伝える…いいや、無理でしょう。世の中、そんなに甘くはないわ。仮に、身振り手振りで理解して貰える事を前提で街にいけばどうなるか火を見るより明らかだ。本当に、どうしようかしらね。
ギィー(モンスターの人生は長いですし、気長にやりましょう。とりあえず、お背中の火傷の治療を致しますね。冒険者達から治癒薬をかっぱらっておいて良かったです)
ギッギ『悪いわね。全く、乙女の柔肌に魔法なんて酷いわよね。この玉の肌に傷が付いたらどうするのよ』
誰に自己紹介する訳ではないけど…この私、結城瀬里奈は異世界転生でモンスターに生まれ変わった。始めの頃は、そりゃ絶望したけど…まぁ、元々楽天的な性格であった為、深く考えるのはやめて前向きに生きる事にした。
なんせ前世じゃ、違法だったけど…今世じゃ規制する法律が無いのだ。だからこそ、美少年を全裸にして舐め回すように見ても罪にならない!! さらに言えば、モンスターに適用される法は存在しないだろうから、考えようによっては天国!!
一流の腐女子である私は、相手を傷つけるような事はしない。ただ、見るだけで満足!! もちろん、相手から迫ってきてくれるなら何時でもウェルカムよ。
ギーー(お母様大変です。冒険者達が徒党を組んでこちらに来ております。恐らくは…)
あらら、いつもの展開かしらね。
助けた冒険者が、町に戻って仲間を呼んできたのだ。恐らくは、ギルドという組織から斡旋された冒険者かしらね。以前にも同じような展開で冒険者が私を捕まえに来たのよね。
私は、モンスターでも珍しいアーマーキメラアントクィーンというらしく、なかなかの高額懸賞金がかけられているらしい。全く、迷惑な話だ…趣味に興じてひっそりと生きたいだけだというのに世知辛い。
はぁ~、では予定より少し早いけど撤退かしらね。
ギッギ『川を上るルートは見つかりやすいわね。山岳ルートで逃げるわよ』
本気を出せば、こちらに向かってきている冒険者を全滅させる事は可能だけど…それだとイタチごっこ。下手に全滅させて賞金額を上げられてしまうと、私でも手足も出ない冒険者がくる可能性もある。なんでも、ランクAと称される冒険者は単騎で国落としが出来るとか、冗談みたいな事を冒険者達が言っているのを耳にした事があるわ。
怪我をした冒険者達から剥ぎ取っておいた装備、薬、地図などの使える品をリュックにつめる。
ギー(やっている事が追い剥ぎと同じような…)
ギッギ(しーー!! それは気が付いても言わない約束でしょう)
ギィーー『助けてあげた正式な対価よ!! それに、これがないと今後の生活に困るでしょう』
少しでも人の情報を集めるには、このような方法しかないのだ。無論、文字は読めないが…図説がある本などは非常に役に立つ。特に、地図はありがたい。人の往来が多い場所を避ける事もできる。
ギッギ(安住の地は、遠そうですねお母様)
ギー『そうね…ハーレムまでの道は険しく遠いわ』
安住の地…そうハーレムのコトよね。私の子供達はよく分かっているわね。そう!! ハーレムへの道は険しいのよ。だけど、障害が多いほど燃えるものなのよ!!
◆
10m先すら見えない程の猛吹雪。
3000m級の人跡未踏の山脈…地図では、ここを抜ければ『ウルオール』という大国に着くはず。しかし、時期が時期だけに猛吹雪である。確かに、人の気配どころか動植物の気配すらない。
ギッギ『冬山の登山なんて無謀だったかしら…ぬぉぉぉぉ風がぁぁぁぁ』
ギー(こんな装備で大丈夫ですかと聞いたら、大丈夫って言ってたじゃないですかお母様!!)
ギッギ『大丈夫かと聞かれたら、大丈夫だ問題ないって答えないとダメでしょうネタ的に』
ギッギ(そのネタのせいで遭難しているじゃありませんか)
ギー(そうなんですか…いちゃい、ちょっと止めて…ごめん、冗談だから)
寒いギャグを言ったせいで一匹の子が皆からフルボッコにされている。余計に寒くなっただろうと。
しかし、可愛い子達20匹も連れての登山…少し辛いわね。まだまだ余裕はありそうだけど、そろそろ休憩を挟まないと下山するまで体力が持たないかもしれないわ。どこかに休めそうな場所は…。
ギーッギ『そんな都合よくあるはずないわよね。掘るかしら』
穴が無いのならば掘るまでよね…物理的に!!
魔法が使えたら便利なんだけど、生憎とモンスターは魔法が使えない。
魔法の存在を知ったその日から魔法が使えないかと何度挑戦した事か、数えるのも億劫になる程だ。何年も試した結果、使えない事を認めた。当然、その結論に至るまでには様々な考察とモンスター達との戦闘を要した。その結果から導き出した答えだ。
過去に戦ったモンスター達のどれもが、魔法を使ってこなかった。一番魔法っぽかったのが龍種のブレスくらいだ。それ以外は、モンスター特有の攻撃ばかりだ。毒とか粘液とか。
ギギ(おぉ、お母様が本日の宿を作るぞ)
ギィ(ささ、お母様ズバーーーンと決めちゃってください)
既に、今日の晩御飯を作る準備に取り掛かっている子達がいる。料理器具を取り出し、保存食を物色し始めている。全く、こういう時だけは動きが早いんだから。
子供達の期待に応えるべく。精神統一する。このモンスターの肉体になって分かった事だけど…モンスターは魔法が使えないけど魔力という物は持っている。それを消費して毒や粘液を生成している。
私の場合は、魔力を消費して蟻の子を産んでいるけどね!! まさか、相手がいなくても出産経験を積む事ができなるなんて…これ処女出産だから、聖女認定されるかしら。
おっと、話が逸れたわね。
それじゃ…本気で行きますか!!
ギギギギ『はぁぁぁぁぁぁ!! なんで、世の中の美少年が私に振り向かないねん!!』
この世の理不尽さを嘆いた痛恨の一撃。
地面に全力の拳をぶち当てると直径2m程、深さ30cm程の土が抉りとられた。
まずまずの威力だ。以前と比較しても少しずつだが成長している。やはり冒険者達が言っていたモンスタソウルという物は、モンスターであるこの身にも有効であるという予測は正しかったかしら。
まぁ、純粋に成長期だから成長しただけという可能性もあるけどね。
ギッギ(もっと深く!! お母様、さぁもう一発!!)
ギー(ファイト!! いっぱーーーつ)
ギギ『任せなさい!! 美少年とお風呂にはいりたーーーい!!』
更に地面が消し飛ぶ。
………
……
…
こうして完成した洞穴で家族揃って、食事に有りつけた。焚き火を囲むようにして皆で肉を貪る。冒険者達から剥ぎ取った保存食…塩肉だけど、安物ね。無いよりましだけど…これでは、栄養価が足りないわね。
ギィ(お母様、いつものお話の続きを聞かせて~)
ギィ(やめろぉ~!! 『腐ンデレラ』って絶対におかしいって!! 絶対にお母様の脳内で歪められた話だって)
ギッギ(そういう話だと思って聞けば、それなりに楽しい。まぁ、王子様がガラスの褌を履いた王子様を探すとか理解不能な領域もあるけど…)
ギィィ『改変!? そんな事ないわ。オリジナルが存在しない世界故に、これはお母様のオリジナルよ。ほら、一応面白いでしょう』
『腐ンデレラ』は、それなりの自信作だ。もっと、世界に広めたいけど…文字かけないしね。本も準備できないし、流通ルートも確保できないしね。
ギギ『まぁ、こまけー事はいいんだよ。それじゃあ、前回の続き…えっと、ガラスの褌を履ける美少年を探すところからだったかしら』
それから子供達が寝入るまで、物語を聞かせてあげた。
焚き火の火が消えないように適度に薪を補給しつつ、夜が明けるのを待つ。吹雪が止めば、山を越えることも出来るでしょう。出来ることなら、途中でモンスターでも狩って栄養補給もしたいわね。
◆
『ウルオール』…聞いた話によれば、亜人達が住む大国。中でも、エルフが統治する国家…じゅるり。エルフと言えば、何度か冒険者PTを介抱した際に見たことあるわ。アレはいいわ!! 最高だわ。思わず理性の吹き飛びそうになったわ。
くっそ…あの時、あと一枚下着を脱がせておけば。
ギッギ(お母様が血の涙を流しているわ)
ギー(どうせ、くだらない事を考えているんですよ。エルフのひん剥いてやりたいとか…)
ググ…鋭い。我が子ながら、お母様脱帽の洞察力。
ほらほら、そんな邪な考えをしていないで周りの景色を見てご覧なさい。この間まで彷徨っていた雪山と違って緑あふれる場所じゃない!! ほら、あそこにはクマちゃんが…熊!?
ギッギ『クマちゃんよ!! ほら、みんな今日の晩御飯よ!! 絶対に確保するんだから』
ギィーー(久しぶりの生肉!! にく!! にっく!! おにくぅぅ!!)
ギギ(肉よこせ!! 肉おいてけ~)
ギッギ(焼肉がいいかな、生もいいよね~)
さて、子供達の食事のためにも本気で行かせてもらいましょう。
冒険者から剥ぎ取った剣、クラブ、槍、盾を持ち。目の前を歩くクマへと歩み寄る。一瞬こちらと目があった…ニヤリと微笑むと脱兎のごとく逃げ出そうとした。
この距離でこの瀬里奈から逃げ出そうなど甘いわ!! 見るがいいわ、この瀬里奈の投擲技術を!!
ギー『シールドブーーメラン!!』
投げたシールドは、凄まじい速度でクマへと迫る。
ギッギ(そっちを投げるの!? 槍は!? 剣は!?)
ギーー(だけど、見事な投擲だよね。木々ごとクマが真っ二つ。あの丸盾は、お母様が改造して刃物が付いているよね)
あっ…投げ飛ばしたシールド回収に行かないと。ブーメランといいつつ、戻ってこないのは恥ずかしいわよね。もっと練習しないといけないわね。
さーて、腹ごしらえをしたら探さないといけないわね。
標的を!!
ギギ『ぐふ、ぐふふふ!! 待っていてねエルフの美少年達~』
3話か4話構成の予定です。

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