77/137
第七十七話:慈善活動(1)
三月末まで投稿話といったが…あれは、嘘になってしまった。
すみません(´・ω・`)
◇
圧倒的な左遷!! 『神聖エルモア帝国』が誇る未開の地!! モンスター蔓延る場所で帝国臣民の数も圧倒的に少ない僻地!! 税収も領地の中では、間違いなく最底辺!!
そんな場所へ移住する事になるのに着々と準備を進めている。ゴリフターズも私の処罰に関する一報を受けて驚いただろうが、移住場所を見てガイウス皇帝陛下の心の内を読み取ってくれた。おかげで、『ウルオール』と衝突も無く事が進んだ。だが、表向きには抗議を行っている。何事も貴族達や帝国臣民向けのパフォーマンスは大事だからね。
そして今まで住んでいた場所は、ガイウス皇帝陛下の直轄地に変わる。本邸は、ガイウス皇帝陛下の別荘としてご利用していただこう。
孤児達の処遇は迷うが…まぁ、第一孤児院の者だけ連れて行くかな。他の者達は、やっと農業が板についてきたのだ。これからガイウス皇帝陛下の財布としてしっかりと働いていただきたい。
雇っていたスパイのメイド達には、アイハザード伯爵家に出向させる。移住先の領地は規模から考えても仕事量は1/4程度以下になるだろから、長年雇っているベレスと執務を覚えた蟲達が居れば回せるであろう。伯爵領は、最低限今の水準を維持してやらねばならないからね。それなりに力を入れてやる必要があるだろう。
今後の計画を考えつつ『ネームレス』ギルド本部で軽食を食べているのだが…妙な視線を感じる。具体的には、壁際に立って募金活動とかいう詐欺紛いな事をしている10代前半未満の子供達からだ。
「恵まれない人達への募金活動にご協力お願いいたします~」
………
……
…
「飯が不味くなるな…」
ここは、この場にいる全員を代表して紳士であるこの私がギルドに抗議する必要がある。早々に、席を立ってマーガレット嬢がいる受付まで移動した。
「マーガレット嬢、何のつもりかは知らないが早々にあの集団を退場させたほうが良いと思うよ」
「あぁ…ギルド孤児院の子供達ですね。一応、ギルド長の許可も取っていますが、何か問題を起こしましたか?」
問題を起こしましたかとか…今現在、起こしている事に何故気が付けないのだ。
募金活動という性質を少し考えてみれば自ずと回答が出ると思うのだが…教養があるマーガレット嬢ですら、その考えに至らないとはね。
「ギルドの許可って…という事は、ギルドは遂に本性を表にも表し始めたか。逃げ隠れもせず、こんな真昼間から詐欺を許容するなんて…嘆かわしいね」
「さ、詐欺っていくらなんでも…」
「良いかねマーガレット嬢。考えてもみたまえ。あの場で一日立って声をあげて募金活動に励むより真面目に働いた方が儲かるに決まっているだろう。引率の大人も含めて15人もいるんだ…一人当たり時給500セルで計算しても、一時間で7500セル。10時間働けば75000セルにもなるんだよ」
丸一日、あそこで時間を無駄にしたとしても75000集まるとも思えない。要するに、冒険者が命懸けで稼いだお金を同情心に訴えて合法的に掠め取ろうという算段だ。
何も募金活動自体をするなと言っているわけではない。騙される方が悪いのは当然だが…公然の詐欺を許容するギルドもどうかと思う。
しかも、手の込んだ事に最初から募金箱には幾らかお金が入れられている。その為、この場にいる沢山の方にご協力頂けておりますので、まだ募金をされていない方もよろしくお願いしますという雰囲気を出している。
更に!! お昼時の一番人が多い時間帯であるのにもかかわらず、募金箱にお金を入れた人数と金額から平均を割り出して、時間を掛けても募金箱の中のお金と不一致している。本日が募金初日らしいので前日の募金金額ではない。
「レイア様の仰る事も一理ありますが…あんな子供ができる仕事なんてありませんよ」
「何を言っているのだね。マーガレット嬢、この私が何歳から冒険者をやっていると思っている。歩合制の依頼があるだろう。子供の頃に私でもできたのだ…当時の私より歳を食っている子供ができないはずがあるまい」
幸い引率の大人も居るのだから、充分働けるだろう。嗜好品であるハチミツなどを狙うなど的を絞れば十分に儲ける事が可能。
「レイア様の昔を私は知りませんから、何とも言えませんが…レイア様と同じとは無理だと思います」
「ならば、娼館でも斡旋しておけ。特殊な趣味の連中も多いから、良い値段で雇ってもらえるだろう。本当にお金に困っているなら喜んで貰えるはずだ。もし、これで喜ばないのならば、辛い事は嫌だが金だけ欲しいというクソッタレな精神の持ち主ということだ。子供の頃からの躾は大事だと思うよ…お金を稼ぐというのは辛い事が伴うという経験を積ませるのも大人の仕事だと思うが」
全く、なぜこの私が受付嬢に対して世間の常識を説いてやらねばならないのだ。
私以外にも募金活動を快く思っていない連中も居るのだ。現に、食事をしている席にまでいって募金を強要する子供までいる。それを止めようともしない引率役は、まさに悪徳金融業者も真っ青なくらいの存在だ。
「わ、分かりました。とりあえずは、快く思われていない方もいらっしゃると言う事なのでギルド本部の外で活動をしていただきます。それならば、よろしいでしょうか?」
「落としどころだね」
流石は、マーガレット嬢。ギルド本部の外ならば許容範囲だ。依頼書を探したり、食事を摂るにしてもギルド本部内でやられては邪魔だからね。
◇
今まで、ギルド孤児院の連中がギルド本部で募金活動などする事は無かった。しかし、ここ最近になってギルド孤児院を取り纏めているロンド・グェンダル(蟲)の方針が変わって、補助金が大幅に縮小された。『孤児院の運営は、その国に所属する貴族の務めであり本来ギルドが行うべき事ではない』と明言している。
世間一般では、先日の『神聖エルモア帝国』『ウルオール』『聖クライム教団』で行われた招集に対する報復だと言われている。なぜなら、貴族がやるべき責務をギルドが一部肩代わりしていたのだ。無論、ギルドとしても大国にコネを作る的な意味である程度の出費は黙認していたのだろうね。
尤も今回の孤児院の一件は、私が裏から指示して『神聖エルモア帝国』『ウルオール』『聖クライム教団』にあるギルド資金で成り立っている孤児院を全てぶち壊す予定だ。ロンド・グェンダル(蟲)がギルド孤児院を取り纏める存在から別の部署へ異動になれば、新たな情報が手に入ってくるので可及的速やかに孤児院を綺麗に処分したい。
「でだ…マーガレット嬢、領地移動に伴い色々と忙しくなるので適当な依頼を消化して小銭を稼いでから帰ろうと思う。何か、おすすめは?」
「オススメの依頼をご提示する前に、少しお伺いしたい事があるんですが、よろしいですか?」
マーガレット嬢の顔がいつになく笑顔だ。こういう時は、間違いなく碌でもない事につながると相場が決まっている。
「答えられる範囲で答えよう。なんでも聞くといい。ここ最近は機嫌がいいから、素直に答えよう」
「ガイウス皇帝陛下から処罰を受けて辺境へ左遷となるのに、不思議ですね。まぁ、それはいいとして…先日、義姉さんが『ネームレス』に来たのはご存じですか?」
「当然だ。ギルドの職員寮の前でマーガレット嬢が待ちぼうけにならないように蟲を派遣してお見合いが中止になった旨を報告したであろう」
紳士たる者、女性を待たせるわけにはいかないからね。常識的な配慮である。
「では、先日発売された『受付嬢Mの秘密』という書物については?」
「無論、知っている。私の蟲達が見聞きした事を蟲達が綴った書籍だ。なかなか、よくできているだろう。ガイウス皇帝陛下に頼んで著名な文筆家に脚色してもらってもいるのだ。売れ行きは、ボチボチだな」
原案には、一郎を筆頭に幻想蝶ちゃん、絹毛虫ちゃん、蛆蛞蝓ちゃん達が名を連ねているのだ。そんな事、私に聞かずとも分かるだろう。著作者の所に名前を載せているのだからね。
幻想蝶ちゃんの目標であるモンスターと蟲が歩む世界。その一つとして可愛い蟲達が総力を合わせて書き上げた力作なのだ。お父様として、全面的に協力するのは当然である。直接の対話ではなく、まずは書物を用いて有名になる事から歩み寄っていく作戦らしい。急がば回れという事なのだろう。同人作家として、文筆家として、芸術家として様々な方面からアプローチも行っている。
『受付嬢Mの秘密』は、先日の出来事を真実9割と嘘1割…そして、ロンド・グェンダル(蟲)から抽出したギルドの黒い部分やギルドの資料庫で見つけた表に出せないような出来事を綴った書籍の1巻目なのだ。将来的には、10巻程度になる予定だ。あの同人作家で著名なS氏が挿絵まで描いてくれているのだ。これで幅広い層への普及を狙っている。書籍などは、やはり挿絵によって売上がかなり左右されるからね。ちなみに、登場するのが蜘蛛マーガレットではなく、蟷螂マーガレットになっているあたりはフローラ嬢への配慮である。内容は、ギルド受付嬢であるM嬢がギルドの闇に立ち向かう話である。悪役を文字通り食い散らす!!
「へ、へぇ~」
マーガレットの眉間がピクピクしている。何やら不機嫌そうだね…女性の日というやつなのだろうか。嫌ですね、ギルドの受付嬢たる者がそんな事を態度で示すようになっては。
「で、用件はそれだけか」
「そこまで聞かれて…レイア様。私に何か言うべき事があるんじゃありませんか?」
言うべき事か。心当たりが沢山あり過ぎて困るね。だが、一番言いたい事は…。
「マーガレット嬢。君は、君自身が思うより敵が多い。敵を作るのは構わないが、せめて周りに…具体的にはフローラ嬢には迷惑をかけないようにしてくれ」
マーガレット嬢のお見合いのせいで、フローラ嬢の身に危険が及んだのだ。私が偶然にもあの場にいなければどんな事になっていたか想像もつかない。人権無視上等のギルド幹部達に捕まったフローラ嬢の末路など考えたくもない。
「レイア様、本当は分かった上で仰っていますよね? 絶対にそうですよね? 私をおちょくっていますよね? お見合いの件がどうしても腑に落ちなかったので、先日、実家に帰ってみたんですよ」
「何が言いたいか見当もつかないが…まぁ、愚痴くらいは聞いてやろう。少なくともマーガレット嬢よりかは人生経験を積んでいると自負している。人生のアドバイスが欲しければ、ランチでもご馳走していただこう」
「実家に帰って義姉さんと顔を合わせたら真っ青の顔をされて『ごめんなさい。マーガレット。受け入れるまでもう少し時間を頂戴』と言われました。それっきり、義姉さんと一言も会話せずに帰ってきましたよ。何やら腫れ物を扱うように扱われて居心地が悪かったですからね」
「それは大変だったね。一体、何をやらかしたんだい? あまり、フローラ嬢の心労を貯める行為は慎んでいただきたいね」
こういう風に女性が聞いて欲しいという想いを察して、話の腰を折らずに会話を盛り上げるのも紳士の務めであろう。全く、こちらは暇ではないというのにね。
「するわけ無いでしょう!! 年に何度かしか会わないんだから、迷惑をかけるはずがないでしょう」
「まぁ、迷惑をかけていないと本人は思っていても相手が迷惑を感じている場合もある。気にするな…フローラ嬢の事だから、なにか思う事があるのだろう。時間が経てば受け入れてもらえるはずだ。で、依頼は?」
どうでもいいから、早く依頼を斡旋して欲しいものだ。仕事のせいで色々と鬱憤溜まっているのは分かるが…職務は、真面目にこなして欲しいね。
それにしても、マーガレット嬢が一向に依頼を斡旋する素振りすら見せない。
ここまでマーガレット嬢が不機嫌な理由が理解できない。
………
……
…
はっ!! そうかそういう事か。
金の匂いに敏感なマーガレット嬢だ。恐らく、この私がロンド・グェンダルと殺し合う前にお土産をあげてもいいと思った事を第六感で察したのだろう。これは、お土産の催促で間違いない。
この私も、色々と各方面へ忙しかったせいでお土産の件をすっかり忘れていたね。
確か、ロンド・グェンダルから押収した私財にオリハルコン製の饅頭があったな。1個あたりの重量1kgもある饅頭が12個も入ったいかにも賄賂用と言わんばかりの品物だった。光り物が大好きであろうマーガレット嬢だから問題あるまい。
すぐに蟲達に指示を出して倉庫からオリハルコン饅頭を持ってこさせた。
………
……
…
「何を苛立っているか知らないが、とりあえず土産があったのを忘れていた。とある場所からのお土産だ…饅頭だが気に入ってもらえるだろう。まぁ、受け取れ」
「饅頭? レイア様、私はですね…」
マーガレット嬢が蓋を開けた瞬間、目が点になった。
オリハルコン製の饅頭だ…貴金属が大好きマーガレット嬢の事だから、すぐに幾らになるか計算したのだろう。先程までの態度が軟化されて、薄ら気味悪い笑みまで浮かべている。いくら、私しか見ていないからって人様に見せられるような顔じゃないね。
まぁ、無理もない。軽く見積もっても10億セルだ。高給取りの受付嬢とて、生涯通じで稼げるような額ではない。
「で、マーガレット嬢。依頼は?」
「こんなにいいお土産あるなら先に出して頂ければ良かったのに。依頼ですか? レイア様向けの良いのがございますよ」
すぐに、饅頭をしまっている。素晴らしい手のひら返しの早さだ。というか、それほどの価格のお土産をさも当然に受け取るマーガレット嬢の心構えも素晴らしいな、なんの警戒心すらなく受け取ったよ。別に構わんがね。
大事な事だが…その饅頭には、分かりにくい所にグェンダル家の家紋が小さく刻まれている。売る場合には、十分注意したほうがいい。何処かで足がつくと凄まじく面倒事に巻き込まれるぞ。
「報酬と内容は?」
「依頼主は、私達ギルド。依頼内容は、ゴミ掃除ですよ。報酬は3000万セルになります」
ゴミ掃除…なるほど、先程そこに立っていた連中を掃除しろという事か。だから、ギルドの外へと誘導するのも快諾したのね。ギルド本部を汚さない為に…流石だな。
狩場まで十メートル程度。作業終了までの時間3秒前後…報酬額3000万セル。本当に良い依頼だな。なぜ、そんな依頼が残っているか謎すぎるくらいに。
「本当に良い依頼だな。すぐに、表の連中を掃除してくる。金はすぐ用意しておけ」
「えっ!?」
マーガレット嬢が驚いた顔をしている。
何をそんなに驚くのだろうか。マーガレット自身がギルド本部を汚さない為に外に追い出すまでのお膳立てをしておいてこの期に及んで何をいう。
「掴んだ、服を離してもらえないかね? 仕事ができないのだが」
「いえいえいえ!! レイア様が盛大な思い違いをしている気がしましたので…ゴミ掃除をする場所は、迷宮低層ですよ」
迷宮低層…初心者向けの場所だ。『モロド樹海』においても人口密度は、一番多い。そんな場所でゴミ掃除なんて!! どれだけ、私に掃除をさせる気だ。
「ゴミの基準は?」
「こちらが似顔絵になっております。ここ最近、迷宮低層(1~10層)から帰還できない者達が増えてきており、ギルドが独自に調査した結果。その似顔絵になっている男女含めて3名の者が潰して回っている事が分かりました」
「迷宮内部でのいざこざには、不干渉が基本方針ではなかったのかね? 自己責任…確か、そのはずだが」
「レイア様の仰る通りです。しかし、ギルドとしても育つ前の雛を大量に殺されてしまっては困るんです。ちゃんと、卵を産めなくなった頃合で殺されるのでしたら歓迎するのですがね」
相変わらず、酷い組織だな。ギルド上層部もそうだが…末端にまでその精神が移ってきている気がする。
しかし似顔絵ができるまで、ギルドが犯人を調べ上げて掴められないなんてヘマをするはずがない。犯人の顔まで割れているのだ。ならば、迷宮から出てきたところを数に物を言わせて潰せばいい。それをしないという事は。
この依頼には裏があるという事だ!! 裏まで読み切ってこそ紳士であろう。
「引き受けた。低層を虱潰しにしよう」
「…本当にわかっておられますか?」
当然だ。こんな平凡な似顔絵だ…10人いれば5人が似ている。要するに、私の基準でこの誰にでも似ているような顔付きの男女を皆殺しにして欲しいという依頼なのだろう。男も女も少し化粧や変装をすればこんな顔になるしね。
大量に掃除する事になる割に報酬額が微妙だが…良いだろう。たまには後輩達の為に掃除をしてやるのも先輩である紳士の務め。
「大船に乗ったつもりでいるといい。盛大に、掃除してきてあげよう」
「…うむ? 盛大に?」
サービス精神溢れすぎかも知れないが…たまにはいいだろう。
見直し作業が難航する。
とりあえず、固有名称と誤字脱字の修正のみにしよう(´・ω・`)
もう手直しが不可能に近いレベルだ。
今もそうですが、一人称と三人称が適当だと直すに直せないぞΣ(゜д゜lll)

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。