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第七十六話:不穏分子(7)
アイハザード伯爵を粛清して、ガイウス皇帝陛下に事の顛末を報告してから一週間。帝都に当主達が集められた。ガイウス皇帝陛下の命令であり拒否する者は、厳重に処罰する旨が通達されている。その為、緊急の招集にもかかわらず出席率はほぼ100%に近い。
数少ない欠席者は、私がこの手で粛清した連中だ。粛清した数は、当主だけ計算するとアイハザード伯爵を含みたったの5名だけに留まった。大なり小なりギルドと繋がっている連中が多くてね。アイハザード伯爵のように特に酷い事をしていた者をメインに始末していった。
繋がりの大小関係なく粛清したら国家が成り立たなくなるレベルだった。というか、この私のような清廉潔白で叩いてもホコリすらでない存在がまるで居ないのだよ。いつの世も政治の世界というのは怖いものだね。
殺し屋を育成するギルド孤児院を誘致していた者、瀬里奈ハイヴが存在するガイウス皇帝陛下直轄地の資料をギルドに横流しした者、ギルドの赤子すり替えを支援していた者、ギルドの手駒量産の為に国内に賄賂をばら撒いていた者、ギルドのスパイを率先して王宮に雇いいれていた者、そう言ったクズの見本達は本日ご欠席なのだ。
特に、瀬里奈ハイヴが存在するガイウス皇帝陛下直轄地に関する書類をギルドに横流しした者は一族郎党含めて皆殺しにしておいた。紳士としてあるまじき行為だったかもしれないが、瀬里奈ハイヴの存在は漏れてはいけないのだ。あそこは、私の大事な場所なのだからな。
反省はしているが後悔はしていない。厳罰があるなら甘んじて受ける所存である。
たった数枚の書類だったが、その重さは私が溜め込んだ全財産より重い物だ。ギルドとて馬鹿ではあるまい。何度も調査員が帰ってこなければ、より強力な者を送り込むだろう。最悪、瀬里奈さんに危険が及ぶ恐れがある。そのような状況を発生させた原因を許せるはずがない。
取り急ぎ、暫定対策を打った。
瀬里奈さんの下には、増援の為に私とゴリフターズによって鍛え抜かれた精鋭10匹を送っておいた。来る時に備えて屋敷地下で育てている『モロド樹海』最下層のモンスターであるテスタメントの複製体だ。その先行量産型であるので本家本元より劣化している。しかし、戦闘力低下を補わせる為に自己再生能力、擬態化能力、更に飛行能力まで多様な特性を持たせている。誰かに鹵獲された場合には、縮こまって鉄壁のガードで救助を待つように教えている。オリハルコンに匹敵する外皮だ。防御に重点を置けば、簡単には殺せない。救助が望めない場合には、自爆能力がお披露目されるのだ。正直、自爆能力を付与するのが一番苦労した。幾度となる実験で屋敷の地下が穴ボコだらけだ。
唯一の不安は、『瀬里奈お婆ちゃん~、孫達がお小遣い貰いに行くよ』といって飛んで行ったことだ。瀬里奈さんの前で年齢の話は禁物だというのに…お父様は、瀬里奈さんの折檻でズタボロにされても知らないぞ。まぁ、手土産は持たせたし無事を祈るだけだ。
話がそれたが、ギルドに情報を流した一族を除き、領主の悪行を知らなかった者や無視を決め込んだ者は全員無罪としている。通報するにしても、通報自体を握り潰せる連中が絡んでいるのだ。通報すれば殺される恐れがあったならば、無視するしかあるまい。
賛否両論に分かれるだろうが…私的に無視や知らなかったは有りだ。
なぜなら、そういった見えない犯罪を取り締まる組織は、どの国も存在しているのだから、不正を取り締まる連中が頑張るべき仕事なのだ。無駄に高い給料を貰っているのだ。そういう時こそ存在意義を見せて欲しいよね。不正を取り締まる連中の給料が高いのは、危険手当込なのだ。
死んでなんぼのもんじゃいだろう。
しかし、当主というのは年齢層が高い者が多い。私のように20歳で当主をやるような者のほうが極めて珍しい。生誕祭のパーティーが行われたホールに集まった当主達の数は、200名近い。そんな中、20代で当主をやっているような者は、王族の血縁者か広大な領地を持つ大貴族の子息達くらいだ。
情報に疎い者は、当主達が一堂に会すこの場を利用して挨拶回りをしてコネ拡大に努めている。しかし、「ガイウス皇帝陛下が後継者を発表するのではないか」「『ウルオール』と『聖クライム教団』でも大規模な招集がかけられている」「戦争でもする気なのか」などと囁いている情報通の者達もおり、こういう者達が最後まで生き残るんだよねと感心してしまう。
此度の招集は、時期を同じくして『ウルオール』『聖クライム教団』でも同様のものが行われている。ギルドの膿を纏めて排除するべく調整したのだ。暴動に備えて『ウルオール』には、国王である両親を守る為にゴリフターズが出向いている。『聖クライム教団』では、教祖を守る為にグリンドールが自ら立ち会う事になっている。そして、『神聖エルモア帝国』では、この私とエーテリアとジュラルドがガイウス皇帝陛下のお側を護衛するのだから死角など存在しない。
暴動が起きても武力鎮圧できるだけのメンバーが揃っているのだ。個人的には、暴れた者が出たほうがありがたいけどね。ガイウス皇帝陛下に異を唱える愚か者を堂々と殺せるのだ。不穏分子も減ってありがたい限りだ。
我々紳士側とは打って変わってギルド側からしたら青ざめるレベルであろう。4大国の内3つの国が同時に大規模な招集を掛けたのだ。ギルドは当然、どのような目的で集められたか知っているだろう。更に、こんな短期間ではギルドといえども対応が採れるはずがあるまい。長い時間と莫大な金を使って築き上げた物が瓦解するのを見ているがいい。
メシウマ過ぎて困る。
「今更なんだが…アンタ一人でも問題なくなかったか。陛下だってかなり腕が立つだろう」
「何事にも万が一の場合があります。いいではありませんがエーテリア。報酬も美味しいですし、なにより膿が減れば将来的な安全が確保できるじゃありませんか」
エーテリアとジュラルドが暇を持て余している。まだ、定刻にはなっていないからもうしばらくの辛抱だ。パーティーであれば、飲み物なども振舞われるだろうが…生憎と、そのような場ではなく申し訳ない。
「ジュラルドの言う通りだ。短時間で楽な仕事だとでも思っておいてくれ…当然、報酬は金銭並びに安全な出産場所の提供。おまけで、私の倉庫から好きな物を各々に一品プレゼントしよう。エーテリアは、紫色の○イトセイバだっけ?」
エーテリアとジュラルドを雇うのには苦労した。何が一番苦労したかというと、見つけるのが大変だった!! ギルドに聞けば、エーテリアの実家に滞在していると回答があったので訪ねてみれば…1日前に『モロド樹海』で軽く遊んでくると出かけて行ったとエーテリアのご両親に教えていただいた。
エーテリアのご両親にお礼を述べてから、とんぼ返りして迷宮を下から駆け上がったのよ!! トランスポートを利用したのは分かっていたので、人海戦術で頑張ったが見つけるまでに3日も掛かった。最終的に40層でキャンプしていたところを見つけたからね。
それから、ちゃんとギルド経由で二人を雇ったよ!! 2人合わせて日当200万セルと現物支給でな!! 現物支給については、ギルドが仲介料を取れる物ではないからね。報酬が少ない依頼にはよく現物支給という物がある。農家だと食料、商店だと割引や特別な仕入れをしてくれるなどそういったサービスがあるのだ。そんな物に対してギルドが仲介料を取れるはずもない。ちなみに…一番人気の現物支給サービスは娼館からの現物支給だ。金銭的に割が合わない依頼でも飛ぶようになくなる。
今回、現物支給ありの依頼という事でマーガレットには嫌な顔をされた。
本来、本気の二人を雇うならば日当が10倍でも不思議ではないのだ。実際、日当2000万セルでも雇いたいというギルド幹部は居るらしい。しかし、ギルドに対して良い感情を抱いていない私が真面目にお金を払って雇ったのだから文句を言われても困る。本当なら、1セルと現物支給という形態で依頼を出しても良かったのだ。依頼料の下限が設定されていないので、このようなエゲツナイ手段も可能なのに採用しなかったのだ。
紳士として、個人的感情をあまり持ち込むのは良くないと思っているからね。それに、ギルドの何処かにフローラ嬢のような稀有な存在がいるかもしれない。また、今後そのような稀有な存在を雇うかも知れないと思うと払ってもいいかなと思ってしまう。
「よっしゃ!! あれ、欲しかったんだよ。偽物は、多く出回っているんだが、本物の出処がサッパリわからなくてさ…。色々とツテを使って調べたんだが、本物は『聖クライム教団』のグリンドールと『ウルオール』の双子ときた。ならば、出処は決まったも同然だろう」
確かにね。分かる人には誰が本物を世の中に提供しているかわかるものだね。グリンドールと私の間に交流があるのを知る者は少ない。なんせ、本気で殺し合いをした仲だというのに交流があると思う方がおかしいのだ。まぁ、義弟関係から当たれば遠からず誰が本物を流したかなんてすぐにバレるか。
「義弟達とグリンドールのおかげで大人気になりましたからね。ロマン兵器に憧れるのは人の性ですので仕方がありませんがね。既にエーテリアの報酬の○イトセイバーは、製作者に伝えて鋭意作成中のはず。本件が完了次第、速やかに渡せるようにするのでしばしのお時間を。で、ジュラルドはどうする? 見る限り、装備も新調しているのであまり欲しい物はなさそうに思えるけど…。希望ある? 今じゃなくても、将来的にという感じでも構わないよ」
特にジュラルドは、素晴らしい。いつもと同じ魔法使いスタイルだが、白を基調にした立派なローブを羽織っている。ピュアミスリルを特殊加工して作られた至高の一品であろう。純粋な魔法使いにこれ以上ないという物であるのは疑いようがない。
エーテリアは、いつものスタイルだな。急所と関節部分には、オリハルコン製の防具が付けられている。尤も、エーテリア程の武器の使い手となれば防具でも立派な武器へと早変わりするから全身に武器をつけているようなものだね。肌の露出も少なく女性として当然の服装だ。
ガイウス皇帝陛下の護衛としてこの場にいるのだ。どのような事態にも対応できるように各々が理想とする格好が望ましいに決まっている。慣れない服装では、一瞬の遅れが生じてしまう可能性がある。
だが、二人とも場違いな格好なのは間違いない。
その為、かなり浮いているがその事を口出す者は誰もいない。この場において数少ない武器の携帯が許された者なのだ。それが意味するのは、誰を切ってもガイウス皇帝陛下が責任を取るという事を示唆しているのだ。当然、私も武器携帯が許されている者の一人だ。無手なので気づかない者が多いがね。
「そうですね。でしたら、絹毛虫ちゃんの香水一年分でお願いします」
全く、イケメンだな。なんでもいいというのに、香水を選ぶなんて…エーテリアへのプレゼントか。そんな紳士のジュラルドには、絹毛虫ちゃんの毛糸もプレゼントしよう。それで手編みの洋服でも作ってあげるといい。編み物なんて紳士の嗜みだから当然、ジュラルドも得意としている。
「すぐに手配しよう。むしろ、絹毛虫ちゃんをプレゼントしても構わないが?」
「…いいえ、それはやめておきます。絹毛虫ちゃんに構ってばかりで私の立場が危うくなりそうなので」
あぁ、そういう心配か。確かに無いとは言えないね。
「それは無いと言い切れないのが怖いな。…おっと、そろそろ時間か」
騎士団の団長と副団長が完全武装で会場の中に入ってきた。残念な事に、第四騎士団のシュバルツ副団長の後釜は決まっていないようで空席になっている。あのような不祥事を起こして、第四騎士団が解散されていないだけでも良しとしよう。
各々が持ち場に就くとエーテリアとジュラルドも持ち場に就いた。そして、ガイウス皇帝陛下のお側を守る為、私も移動した。騎士団を差し置いて、ガイウス皇帝陛下の護衛に冒険者や貴族であるこの私が出るのもおかしな話ではある。しかし、騎士団内部でもギルドと癒着していた者は存在していたのだ。だからこそ、この私達のような紳士淑女が出張っているのだ。
騎士団としても建前というものがあるので、事前のブリーフィングで文句を延々と言われた。だから、私、エーテリア、ジュラルドが一人ずつ騎士団の団長及び副団長を一斉に相手をして実力差を見せて黙らせた。
勝敗は言うまでもなく、紳士淑女達の圧勝である。手足がもげた者もいたので、勝負にかけた時間より治療などにかかった時間の方が長いくらいだ。
◇
ガイウス皇帝陛下と正室及び側室の方々。更には、御子息達が一斉に並ぶと凄いな。皇帝陛下としては、後世に世継ぎを残すのは当たり前の事だが…些か子沢山でしょう!! 大貴族なのに、嫁が二人しか居ないという方が世間一般では変人扱いされている私よりマシかもしれないけどさ。
そのせいか、今でも他国の貴族から娘を側室にどうでしょうかと伺いのお手紙を沢山頂く。なぜか!! 20歳を超えて、容姿が微妙な余り物臭が漂う地雷物件ばかりで笑うしかない。中には、小国の王位継承権第一位も混ざっていたよ…行かず後家のな!! 貴族達の間では、私はブス専熟女キラーと囁かれているようだ。ロンド・グェンダルの資料とギルドに眠っていた資料からそんなクソみたい情報を各国に売りさばいたのはギルドだと分かって、屋敷の壁を全力で壁ドンして本邸に大穴を開けてしまったよ。
「急な事とは言え、この場に集まった者達に感謝する。此度の招集が何のためか既に理解している者もおるじゃろう。そう!! 『神聖エルモア帝国』に忠誠を誓ったはずの者達の中にギルドに尻尾を振るどころか、国家に重大な損失を与えた者達がいる」
ガイウス皇帝陛下が右手をあげると、控えていた執事の一人が此度の罪状をつらつらと読み始めた。誰が誰と行ったかいう情報は意図的に伏せてあるが。不正一件ごとを簡潔に纏められた概要が報告されていく。贈賄罪56件、機密情報流出23件、無許可の誘致等7件、脱税135件…その他諸々だ。その報告を聞いている者達の顔色が徐々に青くなっていくのが分かる。
だが、勘違いしないでいただこう。いま報告されているのが、ギルドに関する物だけだ。ギルド以外との不正やこちらが把握しきれていない不正も沢山あるだろう。貴族とは叩けばホコリが出る存在なのだ…特に、歴史が長い貴族程にな。
「皆の者…言っておくが、儂は別に今挙げられた罪を一つずつ裁くつもりはない。儂の神器プロメテウスの眼を盗む為に女を一切関与させずにやり抜いた手腕は見事とだけ褒めておく。それに、人である以上清廉潔白というのは難しい事であるとも理解している。不正がない国家など存在せぬからな」
まさか、お咎めなしだと!?
それはさすがに予想外だった。だが、ガイウス皇帝陛下にはきっとお考えがあるのだろう。
「だが、何事にも限度というものがある。限度を越した愚か者は、既に粛清されてこの世にはおらぬ。この場に集まった者達がその者達の二の舞にならない事を願おう」
すぐにこの場に居ない者が誰なのかを全員が探し始めた。恐らく、どの程度が上限なのかを見定めるためなのだろう。そういう事に関してだけは本当に優秀の極みだ。この私では足元にも及ばないだろう。
「続いて…残念な事に、儂の子供達にも国家に重大な損失を与えようとしていたものがおる。確かに、次期皇帝の座に着く為には国内での地盤固めが重要だとは言え…ギルドに尻尾をふる愚か者がおるとは思わんかった。現時点をもって、エリフリード並びにアールズの王位継承権を剥奪する」
貴族達もこれには驚きを隠せないようだ。普通、貴族達は罰しても王族は罰せられないという通例は存在している。だが、ガイウス皇帝陛下は常識を破ったのだ。まぁ、よくよく考えれば、不正を行っていたとは言え国家運営の役に立つ貴族と自らの汚点となりうる子供のどちらを取るといえば…指導者としては前者が正しい。
だが、王族といえども罰するガイウス皇帝陛下だ。貴族達への見せしめとしては効果的だ。
「ど、どういう事です!? なぜ、あの者達は罰せず…」
アールズという王族の一人が、ガイウス皇帝陛下に文句があるらしく近寄ろうとした。だが、エーテリアが大剣を突き立てて止めた。
「それ以上近づけば切る」
冗談でも脅しでもない。ガイウス皇帝陛下の5m圏内に入ろうものならば誰であろうと問答無用でぶち殺す。ガイウス皇帝陛下の御前で実の子供を殺すことなどありえるだろうかと思う者もいるだろうが…我々紳士達は、本気である。
貴様が死んでも代わりは居る。
「アールズ!! やめなさい…その者達は本気です」
「エリフリード姉さん」
ほほぅ、我々がどの程度本気か分かっているのだろうね。ロンド・グェンダルが選ぶわけだ…賢いな。そこまで賢いならギルドに尻尾を振らずに地道に頑張れば良かったものを。それに比べて、アールズと名乗る男の方はダメだね。ガイウス皇帝陛下には悪いが、国家を導く器ではない。
「くっそ!!」
「アールズよ。儂に文句があると言うならば、後で聞こう。では、続いてヴォルドー侯爵の処分を言い渡す」
何の事であろうか。事前の打ち合わせでは、一切そんな話はなかった。褒美でなく処分というからには、一族郎党皆殺しにした件であろうな。
「ヴォルドー侯爵、儂が許可を与えていたとは言え国務次官のハンブラー家の者を一族郎党皆殺しにしたのは、やり過ぎである。だが、此度の不正発覚に大きく貢献した事と今までの成果から降格は行わない。だが、領地移動及び粛清されたアイハザード家の次期当主の後見人に命ずる。アイハザード家を今まで以上に発展させるように努める事を期待する」
「その処分甘んじて承ります。ガイウス皇帝陛下、私から一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わぬ」
「移動先の領地は、何処に?」
「『神聖エルモア帝国』と『ヘイルダム』の国境付近にある儂の直轄地だ。小さい農村が少しある程度の辺鄙な場だ。今までとは比較にならない程に税収も落ちるだろう。此度の処分だと思って甘んじて受けるように」
さ、さすがガイウス皇帝陛下!!
まさか、このような理由で私を左遷してくださるとは。他の貴族達から見れば、辺境への左遷。しかも、今まで耕した領地は全て王族が取り上げると見える。これにより、ガイウス皇帝陛下が私を贔屓しているという噂は死に絶えるだろう。更に、今度何かをやらかせば領地が没収されるという貴族達に見せしめにもなる。
貴族達への見せしめ二段構えで来るとは恐れ入った。
しかし私にとっては、願ってもない事だ。元々、今の領地はゴリフターズを娶る為に頂いた場所だ。緊急時にはお互い助け合いましょうという事で『ウルオール』に一番近い場所だったが、処分で領地が移動になるならば仕方がないと『ウルオール』側も受け入れてくれるだろう。
そろそろ、ゴリフターズのご両親にも瀬里奈さんをご紹介しないといけないと思っていたし、移住先が瀬里奈ハイヴのある場所なら一石二鳥どころではない。
「承知致しました。領地に戻り次第、荷造りを始めて半月以内に引き払う手続きを致します」
引っ越すにあたり、屋敷の地下にいる蟲と卵を全て引き上げないといけないね。それから、瀬里奈ハイヴの上に家を建てないとね!! 蟲達に全力で建てさせるかな…二世帯住宅になるのだ、遠慮など不要であろう。
それにしても陛下は全く、お人が悪い…こんなサプライズのプレゼントをいきなりくれるなんてね。もう、どこまでも仕えていきますよ!!
◇
晩餐会などは開かれもせず、無事に本日の招集が終わった。そして、我々は控え室へと招かれた。
「ふぅ…もう、ここには儂達以外は誰もおらぬぞ」
「流石!! ガイウス皇帝陛下!!」
モキュ(私達にできない事を)
モナー(平然とやってのける!!)
ギィィ(そこに!!)
ジッジ(シビれる!!)
ピッピ(憧れるぅぅぅ!!)
蟲達が影から飛び出して、一斉にガイウス皇帝陛下コールをする。
「当然であろう。儂にかかればこの程度当たり前のことだ」
「このレイア…いつまでもお供いたします!!」
エーテリアとジュラルドは、さすがに何を言っているか理解できないようだ。本来、左遷といっても間違いない処分なのに喜んでいるのだから、何がどうなっているのか分からないだろう。
それも当然。瀬里奈さんの存在を知らないんだからね。
「ふむ!! わかんねー。まぁ、どうでもいいけどな。陛下と揉めるかと思ったが、そうじゃなさそうだしな。ジュラルド、そろそろ帰るか」
「そうしましょうか。何事もなく楽な仕事でした」
帰ろうとするエーテリアとジュラルドを引き止めた。ガイウス皇帝陛下が晩飯食べに行くぞと仰ったのだ。これに便乗せずしてどうする!! お代は、当然ガイウス皇帝陛下持ちだ。ガイウス皇帝陛下先導の下、全員が窓から飛び出す。なんでも、これが街にいく最短ルートらしい。
全く、ここが一体何階だと思っているんだろうか。
翌日には、『神聖エルモア帝国』でこの度の出来事が大きく取り上げられた。ガイウス皇帝陛下の忠臣とも言えるこの私に重い処罰を与えて、ギルドと不正を行っていた大半の貴族達を無罪とした事についてだ。
当然、情報操作した上での帝国臣民への告知である。
おかげで、帝国臣民達はこんな腐った貴族ばかり居るからガイウス皇帝陛下や真面目に働いている貴族が迷惑を被るのだと不正を働く貴族へのバッシングだ。もちろん、ガイウス皇帝陛下と私のポケットマネーで雇ったエキストラ達が広めているのだがね。
これで臣民達の監視の目が不正を働いた貴族達に向けられるだろう。タダで万人に等しい監視の目がつくのだ。こちらとしては、美味しい限りだ。今後は、真面目に働くようになることを切に願おう。
さて、そろそろ迷宮に帰ろうかな(´・ω・`)

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