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愛すべき『蟲』と迷宮での日常 作者:マスター
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第七十五話:不穏分子(6)



 流石は、ギルド幹部の一人だ。持っていた情報は、質も量も優秀。余すことなく有効に活用させていただこう。特に此度の後継者争いに関しての支援者情報。ギルドを仲介して冒険者を雇った雇い主の素性などはありがたい。この情報と『ネームレス』で集めた情報を照合すれば情報の精度としては十分であろう。

 国内でギルドの息がかかっている貴族も割れる。数名は見せしめとして処断してもいいだろう。そのくらいの裁量権は私に委ねられている。だが、結構な数がいるので、どの程度まで許容するかはガイウス皇帝陛下にご判断願おう。決定に従い順次潰して回る。

「で、フローラ嬢の様子は?」

 フローラ嬢は現在、『ネームレス』の私がよく使う宿のスイートでお休み中だ。

 ゴリフターズと一緒に冒険者を肉団子にしてやって、蟲達の晩飯にした後に孤児院で独り寂しく待つフローラ嬢の下へ戻った。マーガレットの姿に戻り衣服も元通りにして、元気な姿で会いに行った。

 だが、残念な事に「ごめんなさいマーガレット…私は貴方につけていけないわ」と言われてしまった。ついに、マーガレットの真っ黒な部分がフローラ嬢に知られてしまったか…だが、マーガレットの事だから仕方がない!!

 『ネームレス』に帰る馬車の中では、会話一つできない。とりあえず、フローラ嬢が心身共に疲れきっているのは明白だったので、自作自演で申し訳なかったが、蟲を使ってフローラ嬢に手紙を届けたのだ。

 レイア名義で『フローラ嬢へ。とある筋からネームレスに来ていると聞いたので、お手紙を出した次第です。本来であれば、私が色々と街をご案内したいですが…私がフローラ嬢と直接会うと何かと迷惑を掛けるかも知れないのでこうして手紙だけを送る不甲斐なさを許して欲しい。代わりと言ってはなんですが、フローラ嬢の為に宿を一室用意させて頂きましたので自由に使って頂きたい。欲しい物や必要な物があれば、手紙を運んだ子が連れて行った絹毛虫ちゃんに伝えてもらえれば、すぐに用意しよう。それでは、良い休日を』という内容の手紙を送らせていただいた。

モナ(怪我一つありません。今は、お休みになられております。ただし、精神状態に若干の乱れが見受けられます。やはり、色々と衝撃的な事がありましたので致し方ありません。絹毛虫が一匹添い寝しておりますので明日には大分回復しているでしょう)

 蜘蛛という選択肢がまずかったのだろうか。同じ捕食する蟲でも蟷螂の方が良かったのだろうか。くっそ、やり直せるならやり直したい。蟷螂マーガレットならば、きっと受けが良かったはずだ。

 この私とした事が失敗した。

 フローラ嬢の事も心配だが…まずは、私達も行動に移ろう。善は急げ、悪人は逃げ足だけは早いと相場は決まっている。ギルド幹部との連絡が途絶えたとなれば、3日もすれば雲隠れする者達も出てくるだろう。

 いや…よくよく考えれば、ガイウス皇帝陛下の神器プロメテウスから逃れられるのかな。男一人なら何とでもなるが一族総出で国外逃亡となれば女も混ざるはず。すぐに場所が特定されて芋づる式に見つけられるだろう。

 まったくもって恐ろしい神器だ。



 私が借りている倉庫の一室で鍋を囲み、今後の作戦をゴリフターズと検討する。

「あの孤児院…堂々と運営していた。やはり、領主と癒着していると見て間違いないよね」

「そうでしょうね。道も整備されておりましたし、あんな目立つ建物が誰の目にも留まらない訳はありません。ゴリフリーテ、あそこから回収してきた資料には、何か情報がありましたか?」

 今では、資料などを全て引き上げてからゴリフターズに更地にしてもらったので何も残っていないがね。

「既に確認済みです。一言で言えば黒ですわね。毎年、結構な金額がギルドから領主に流れております。口止め料といった感じですね。このような施設が一つだけであるはずがありません。引き続き資料を確認してみます」

 ギルド傘下のお国ではなく、大国でそのような施設は止めて欲しいものだ。しかも、孤児院にいるのは冒険者達から攫った子供も混ざっているだろう。下手をすれば、知らないとは言え実の親子で殺し合わせるなんて事態も発生しそうだ。

「で、そこの領主の情報は?」

ギィギ(既に調べております。領主は、アイハザード伯爵。領民からは、なかなか好評を得ている人物で、『神聖エルモア帝国』の中でも顔が広いようです。領地の経営状況からお金に困っている様子はありませんが、なぜこのような愚行を行ったかは定かでありません)

 あぁ…一年くらい前に、迷宮から助けてやったあのクォーターエルフの父親か。ガイウス皇帝陛下生誕祭の晩餐会で見かけた記憶がある。

 なぜ愚行に及んだかといえば簡単だ。金は幾らあっても良い物だ。領地運営が順調でも拾える金があれば拾うものなのだよ。それほど恐ろしい物なのだよ金の魔力というものは。

「ガイウス皇帝陛下の意向を伺うまでもなく死罪確定だな。顔も知っているから直ぐに処理しよう。但し、領主が突然消えると国家に与える損失は大きい。当面は、生きる屍として働かせる。尤も、ガイウス皇帝陛下が代わりの領主を任命するまでだがな」

「良いアイディアです。しかし悪徳領主は居ても困るし、居なくても困るというのは本当に厄介ですね」

「それにしても旦那様の蟲の汎用性の高さに脱帽です。『神聖エルモア帝国』の掃除が終われば、『ウルオール』の掃除もお願いしてもよろしいでしょうか。弟達が継ぐ国を綺麗にしておかないと」

 そうだね。『ウルオール』にも何かとお世話になっているし、当然手伝わせてもらおう。だが、その前に集めた資料一式を複写して『闇』のグリンドールに送るとしよう。恩は売れる時に売っておかないとね!!

 グリンドール程の紳士だ。恩を売っておいて損はないはず。必ずやいつの日か役に立つ。

 大国から膿を排除する絶好の機会だ!! 『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』はこの私とゴリフターズが掃除をする。『聖クライム教団』は、グリンドールに任せておこう。塵一つ残らず掃除してくれるだろう。まぁ、最後の大国である『ヘイルダム』は…知り合いおらんし、どうでもいい。

「で、肝心のギルドが担ぐ予定だった後継者は誰だったのかな? ロンド・グェンダル君」

『王位継承権第6位のエリフリードです。私の手駒とギルド経由で雇った冒険者達で着々と武力制圧の下地を整えております』

 ロンド・グェンダル。脳内に私の蟲を寄生させる事で生きる屍と化した。もはや、生前の意識は残っておらず、蟲によって動くただの肉人形だ。だが、生前の知識はしっかりと吸い出せる。例えば、当の本人が記憶の奥底にしまっていた事であっても無理やり引き出すことが可能だ。

 しかし、エリフリードとはね。だいぶ昔にガイウス皇帝陛下に紹介された記憶がある。なるほど、見返りはなんとなく想像が付いたわ。

「女性の継承権持ちを狙ったという事は…ギルドとしては、お前が夫の候補だったということか?」

『その通りです。表向きの顔は清廉潔白。後ろ盾にギルドという看板もありますので、役不足ではないはずです…と考えておりますよお父様』

 ロンド・グェンダルの姿でお父様と呼ばれると寄生している蟲には悪いが、殺意が沸く。

 それにしても、傀儡政権どころか…『神聖エルモア帝国』を完全に乗っ取りに来るとは呆れてしまう。だが、この私がギルドの野望を完膚なきまでに潰す。

 皇族の処遇は、ガイウス皇帝陛下の判断次第で処置を施すかな。集められた冒険者達は、私の準備体操に付き合ってもらおう。ガイウス皇帝陛下の国を害なす事に加担する冒険者など不要だ。見逃せば他国でも同じような事に参加しそうだしね。

『後、エーテリア様とジュラルド様を雇おうとしている大商人の方にも裏から出資しております。また、王位継承権第6位以外にも予備を準備済みです。予備は、王位継承権第10位です』

 10位って…名前すら覚えてないぞ。誰だよ。

 それにしても内政干渉をやりすぎだろう。1人だけでなく2人も王位継承権持ちを取り込んでいたのか。しかも、『神聖エルモア帝国』の大商人ですら手足として使っているとか頭痛いわ。ギルドの魔の手が広がりすぎだ。

 本当に金の魔力は恐ろしいな。国家がこうも簡単に切り崩せるとはね。

 おまけに、殺しにくいポジションの者達ばかりを味方につけているよね。大商人を殺してしまえば帝都の流通が麻痺しかねない。さらに従業員が路頭に迷ってしまう。となれば、貴族と同じ方法で処置を行うしかないね。生きる屍になってもらい、時間を掛けて事業を縮小させて、他の商会に吸収合併でもさせてやろう。

 そうだな…迷惑を掛けた事だしフローラ嬢の嫁ぎ先にくれてやろう。事がうまくいけば、マーガレットの実家は大商会の仲間入りになれる。そうなれば、多少年齢が微妙でも縁談の話の1つや2つくらい来るであろう。

 あまりの気遣いにマーガレットは、私に足を向けて寝られなくなるだろう。



 流石は伯爵ともなると良い家に住んでいるな。私より爵位こそ低いが、何代も続く名家アイハザード家だけあってご立派な屋敷である。

 夜分遅くの急な訪問なので、失礼の無いようにしっかりと手土産も用意してあげた。私が厳選した手土産である。間違いなく喜ばれるだろう。

 身だしなみを整えて、力を込めて扉を叩く。

 バーーン

 扉にかかっていた鍵をぶち壊し、大きな音を立てて開けた。

「少し、強く叩きすぎたかな。まぁ、問題あるまい。これで中にいる者達も気がついたであろう」

 門兵などの罪もない皆様には、お休み頂いている。朝まで目覚める事はないであろう。

 扉が開かれる音に気がついた者達がロビーに集まってきた。武器を持っている者もいれば、箒などの掃除器具を持つ者もいる。確かに、無いよりマシだ。

「ヴォルドー侯爵…このような夜更けにご来訪されるとは伺っておりませんが」

 一人のメイドが前に出てきて一礼をした。そして、トゲのある言葉をプレゼントしてきた。

「当然だ。私とて来る用事など無かったのだがね。なんせ、至急の用件だ…アイハザード伯爵に取次ぎ願おう。後、武器を手にしている物はすぐにしまえ。誰を相手にしているか身を以って知ることになるぞ」

 この状況下でアイハザード伯爵に取り次がないという選択肢などないだろう。地位も武力も上の存在である私よりアイハザード伯爵が優れている事といえば、何代も続いているという歴史程度であろう。

「何事だ!! こんな夜更けに…」

 護衛の者に守られてようやく登場したアイハザード伯爵。しかし、私がニコリと微笑むとそんな護衛など意味がない事を悟ったのだろう。すぐに武器を下げさせた。

 なかなか、聡明なご判断だ。何事にも万が一がある。何かしらの拍子で私に攻撃が飛んできた場合には、戦闘開始の合図とみなすからね。

「お会いしたかったですよアイハザード伯爵。少しお時間をいただけますかな?」

「!? わかった。応接間までご案内して差し上げなさい」

 メイドが一礼をして、私達()の案内をしてくれるようだ。



 メイドに連れられて私達は、応接間へと通された。

 アイハザード伯爵は、着替え中との事でしばらく待って欲しいとのことなので快諾した。人前に出るからには身だしなみを整える時間は必要であろう。むしろ、寝間着姿で来られても困るからね。

 メイドがお茶を2セット置いた。

 私と連れの分だが…生憎と1セットで十分だ。

「悪いが、連れの分は下げてもらって構わんよ。飲めないからね」

「はい。かしこまりました」

 連れは、いまだにフードを取らずにいる。部屋の中だというのに礼儀がなっていないが…仕方がない。見た目は元通りにしてやったが、生憎と精神が完全に逝っているのだ。1年以上もあの状態が続いてから当然である。もし、平然としていたのならば私のほうが驚く。私の声に反応して歩くのがやっとなのだ。これ以上の回復は見込めないだろう。

………
……


 しばらく待つと、アイハザード伯爵とその娘のミーティシアまで現れた。呼んでもいない者をこの場に連れてくるとはどういうつもりだ。万が一の護衛にしては、頼りないどころのレベルじゃないぞ。

 パワーレベリングで以前より少しはましになっているようだが…まだ、小指一本で始末できるぞ。

「遅くなってしまい申し訳ないヴォルドー侯爵。失礼とは存じましたが、娘も同席させていただきたい」

「構わん。娘を連れて来たという事は、私の連れが何なのか見えたのだろう。先ほど、ロビーで驚いた顔をしていたからな。夜分遅く訪れたのだから心ばかりの手土産を渡そうとしよう」

 連れのフードを取った。

 フードを取って見せた姿は、私に無礼を働き蟲の巣にされたクォーターエルフのコミット…アイハザード伯爵の娘の一人である。何を持っていけば良いかと考えたが、これが一番だと思った。贈りものは喜ばれるものがいいよね。

 紳士たるもの手土産にも全力投球は当たり前だ。今回は、私がアポもなしに失礼な時間に訪れたのからそれ相応の物を渡すのは当然だね。本当にまだ残っていて良かったわ。冒険者が消し炭にしていたらどうしようかと思ったよ。

 コミットは、焦点があっていない人形のような状態だが、間違いなく生きている。臓器などもしっかり機能しているので、介護すれば十分生かせる事ができるだろう。まぁ、食事から排泄まで全てをサポートする必要があるがね。

 アイハザード伯爵とミーティシアが涙を流す。

「ヴォルドー侯爵…ありがとう。ありがとう。どのような形であれ娘を元に戻してくれるとは」

「コミット!! あなたの姿をもう一度見られるなんて………ヴォルドー侯爵、コミットの心は」

「1年以上、蟲の巣にされ冒険者の案山子にされていたのだ、無事であるはずがないだろう。既に思考停止している。鮮度の良い死体と大差ない状態だ」

 受け入れたくないだろうが真実だ。

「っく!! それで、ヴォルドー侯爵は何用があってこんな深夜に訪れたのか教えていただきたい。私の娘を連れてくるだけの為に来たわけではあるまい」

「当然です。私は、ギルドがアイハザード領で運営していたギルド直轄の孤児院について少々お伺いをしたくてね。表向きは、孤児院だが中身はギルドの犬となる殺し屋養成所とは恐れ入った。で、何か弁明はあるかね?」

「何を言っているのですか。私の領地にギルド直轄の孤児院などありませんよ。書類上も」

 どこの書類の話をしているかは知らないがロンド・グェンダルがちゃんと持っておりましたよ。貴方との裏取引を記した書類をね。まぁ、ギルドにはその手の書類は存在しなかったけどね。恐らく、『神聖エルモア帝国』にもギルド直轄の孤児院の情報が存在を示した書類は存在しないだろう。

 それほど徹底している。

「確かに、『ネームレス』ギルド本部の資料庫にもその手の書類はありませんでしたよ。ですが、ロンド・グェンダルとお話をさせていただきまして、快く暴露していただけましたよ。親切にもご提供していただけましたよ。アイハザード伯爵の直筆サインがある密約書もね。認めたくないならそれでも構わない。だが…『神聖エルモア帝国』に膿は不要だ」

「遺言は、聞いてもらえるかね?」

 アイハザード伯爵は、この後どのような末路が待っているか想像がついているのだろう。私という人物を理解している証拠である。それ故に、素直に罪を認めて遺言を残そうとしているのだ。

 潔い人は好きですよ。

 まぁ、横に座っているミーティシアは理解できていないようだがね。コミットが気になって仕方がないようだ。まったく、酷い娘だ。親の最期だというのに、他の事に夢中になるなんてね。

「当然だ。無理のない範囲で叶えよう」

「ガイウス皇帝陛下に誓って、この件は娘には関係ない。この私の最期の頼みだ…娘達にご配慮頂きたい」

 金の為にガイウス皇帝陛下への忠誠心は売るが、父親としてはできる立派な男だということか。まぁ、よいだろう。

「条件付きで保証しよう」

 ガイウス皇帝陛下を裏切らないと被害が及ばないという絶対条件で大人しく貴族の責務を全うするならばね。

 指をパチンと鳴らす。

 影から蟲が飛び出してアイハザード伯爵の心臓を貫く。他の蟲達も一斉に飛び出して襲い掛かり、何もなくなった。

ギッッギ(一口だけ食べていいと聞いて…ゲプ)

 そして、美味しかったと一郎が呟いて影のなかに戻っていった。続いて他の蟲達もごちそうさまでしたとお礼をいって戻っていった。

「えっ…お父さん?」

………って!!

 ダメじゃないか。蟲達がみんな一口食べたら原型すら残っていない。流石に、何もない状態では元通りに戻すとか無理だ。まぁ、ミーティシアは無事だからそれでよいか。跡取りには困らない。予定とは狂ったが、当面はアイハザード伯爵の娘であるミーティシアに頑張ってもらおう。

「『神聖エルモア帝国』の膿は排除した。安心しろ。今は亡きアイハザード伯爵の遺言でもある…ガイウス皇帝陛下には、ちゃんと報告しておいてやる。本件に無関係であるミーティシア嬢は、ガイウス皇帝陛下から正式に伯爵として任命されるだろう。健全な領地運営を期待する。なにかサポートして欲しい事があれば頼ってくるといい。うちの優秀なメイドを何名か派遣しよう」

「い、いやあぁぁぁぁーーー」

 えっ!? ガイウス皇帝陛下にミーティシアがアイハザード伯爵の行為に無関係であった旨を報告するのが嫌だと!? さらに伯爵に任命されるのも拒むというのか。

 大丈夫か、こいつ。

 貴族だから教育は行き届いているはずなのだが…残念な人なのか。見た目とは裏腹にギャップが酷い。ガイウス皇帝陛下に私が弁明をしないという事は、ギルドの献金で未来の殺し屋集団を領地内で意図的に増産していた悪徳領主一家になってしまうのだぞ。今ならば、美談で世間をごまかせるというに。例えば、父親の凶行に気がついて娘が苦渋の思いで父親を止めたとかね。

 それに、アイハザード伯爵の遺言を叶えてやろうという私の心配りすら無碍に扱おうというのか。頭が痛いわ。

「そこまで覚悟ができているなら、何も言わない。用事も済んだので失礼させていただこう。色々と大変だと思うが、頑張りたまえ」

 席を立ち、扉を開けようとしたら背後から殺気を感じた。

「こ…殺してやる。お父様に一体何の罪があったというんですか!? ふざけないで!! 貴方は神にでもなったつもりですか」

「何の罪といわれても先ほど伝えたとおり、ギルドの手足となる駒を『神聖エルモア帝国』の知らないところで賄賂を貰って誘致していた罪だよ。死罪には、十分だ。納得がいかないかね? 証拠が欲しいならば、後日『ネームレス』を訪れるといい。アイハザード伯爵とギルド幹部ロンド・グェンダルの密約書を見せてやろう」

 後ろを振り向いてみれば、親の敵を見るかのような目で私を見てくる。しかも、美女だけに迫力がある。酷いね…間違ってはいないが、罪人を捌いただけで恨まれるなんて嫌な役割だ。

「お父様、そしてコミットをこんな姿にした貴方が憎い!! ですが、今この場で貴方をどうにかできるほどの力も権力も私にはない。だから、近い将来絶対に力を付けてあなたを殺してみせる」

「おやおや、美人に言われると凄みがありますね。分かりました。では、期待して待っておりますよ。その日が訪れるまでお元気で」

 応接間の扉を開けて外に出た。扉を閉めても中から泣き声が聞こえてくる。

「馬鹿ですかね。将来的に私を殺しに来ると聞いて生かしておくはずがないでしょう。コミットを伯爵に任命してもらって影から私が運営するとするかな。はぁ、領地運営って大変なのだが…ガイウス皇帝陛下の為に頑張るかな」

ギィ(夜のおやつがもらえると聞いて)

ジィィ(右に同じく…ですが、一郎様はダメです!! 先ほど食べたでしょう)

ギィィ(そんな酷い。うぉぉぉ、影の中に押し込まれる。お父様、た・す・け・てぇぇぇ)

モナァ(大人しく帰りましょうね。最近食べ過ぎですよ。ほら、体脂肪が一週間で1%も上昇していますよ)

ギギ(あれぇぇぇぇぇーーー………)

 一郎が蛆蛞蝓ちゃんに触手で影の中に引きずり込まれていった。他の蟲達がその様子をみて、取り分が増えたぜと喜んでいる。

「食べていいのは、ミーティシアだけだ。使用人達には、私から事の顛末を説明しよう。一人残らずホールに集めておけ」

 使用人達には、ミーティシアとアイハザード伯爵がギルドから不当な賄賂を得ていた事と孤児院で殺し屋を育てていた罪で亡くなった旨を伝えよう。そして、アイハザード伯爵の娘であるコミットが領主代理として当面の間領地運営を行うと教えておく。

 コミットには、ブレイン・ウォーカーを寄生させたとしても領地運営能力は期待できない。うちにいるメイドを3人ほど助っ人として呼びつけるかな。優秀だしなんとかなるだろう。それでも人数が不足する場合は、雇い主に掛け合わせて仲間を呼びつけさせる。

「これから、王位継承権を持つ者たちと話し合いもあるのに、仕事ばかり増えるな」

 夜食を待つ蟲達を放った。

 応接間から悲鳴と骨が砕ける音が聞こえる。この私を殺すと宣言した女だ…蟲達が苦しむように殺すだろう。全く、命を粗末にする者が多すぎる。なぜ、一つしかない命を粗末に出来るのだ。

 永遠の謎である。
死にたがりが多くて困る。

殺すと言われて、生かして放置するほどレイアは優しくありません(´・ω・`)
摘める時に摘む。育つまで待たないよ 常識的に考えてΣ(゜д゜lll)
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