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愛すべき『蟲』と迷宮での日常 作者:マスター
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第六十二話:デート(1)

愛すべき『ゴリフ』と迷宮での日常始まります(´・ω・`)
 デート…それは、男女が一緒に出かける事を示す。出かける場所が、迷宮であったとしても当の本人達がデートだと思えばデートなのだ。決して、狩りではない。

 まぁ、デートというよりピクニックといった方がしっくりくるがね。

 身だしなみ完璧、準備万全…この日のために用意したキングサイズのベッド程の特注の鉄板!! 何に使うかといえば、バーベキューに決まっている。食材や薪などは全て現地調達する。本日はゴリフターズが居るのだから、普段は食べられない迷宮のモンスター達が食卓に並ぶのだ。是非とも、龍種を食べてみたいね!!

ドラゴンステーキは、憧れの食べ物の一つである。

 待ち合わせの時間まで、まだ二時間もある。ギルドで軽く軽食を頂いておくか。ついでに、お店に寄って調味料も沢山買っていこう。むしろ、荷物は調味料だけで問題あるまい。他の物は、全て揃っている。

………
……


 建て直されたギルド本部は、新築という事もあり新築特有の香りを放っている。私を襲った冒険者の血と汗の結晶が注ぎ込まれていると思うと何とも言えない…考えようによっては、私の懐に転がり込んでもおかしくないお金だったはずなのにね。

善意という名の悪意で、冒険者の遺書を闇に葬って作り上げた『ネームレス』ギルド本部は死の神殿といってもあながち間違いではあるまい。ギルドの死神マーガレット嬢と死の神殿か…コンボが炸裂して並みの冒険者などイチコロだろう。

 噂をすれば何とやら…。受付に近づいてすらいないのに向こうから依頼書をもってやってくる。VIP待遇して貰えるのは有り難い事だが、持ってくる依頼は碌でもない物だろうね。

「レイア様、ギルドにいらっしゃっているならお声かけて頂ければよろしかったのに…朝食くらいなら経費でご馳走致しますよ」

「一部の冒険者だけ、特別扱いするのは止めた方がいいと思う。それと私の事は、空気だと思って気にしないでいただきたい。用事があれば、こちらから声をかけさせてもらおう」

「本日は、お仕事をお探しに来られたんですか? もし、そうでしたらレイア様向きのちょうどよろしいのが…」

 マーガレット嬢が依頼書を見せつけてきた。

 依頼内容は、実に私向けであった…予定期間を過ぎても帰ってこない仲間を探してきて欲しい。最悪、遺留品だけでもいいので回収として欲しいとの内容だ。生きている場合には、一人当たり500万セル…5人で行動しているらしいので、全員生存していた場合には2500万セルと悪くない額である。

お値段から察するに、ランクC以上の冒険者達なのだろう。生存していれば500万など出せない額ではないからね。嬉しい事に狩場としているのは、25層前後辺たりらしいのでトランスポートもあるし、楽勝だ。

だが、間が悪い。実に間が悪い!! まるで狙ったのごとくに!!

「マーガレット嬢が持ってくる依頼書にしても、今まで一番マトモだ…だが間が悪いね。今日は、デートなので完全オフ日だ」

「で、デート!? デートって、男性と女性が一緒にお買い物やお食事をするアレの事ですか!?」

 これでもかと言う程驚いている。

まさか、マーガレット嬢は20代にもなってデートという物を経験したものが無いのだろうか。この世界的に言わせてもらえば、マーガレット嬢も行かず後家の仲間入りである。人並み以上に優れた美貌を持っていたとしても年には勝てないのだ…フローラ嬢の義妹でもあるので良縁がある事を願っておいてあげよう。

「それ以外に有るはずがないだろう。マーガレット嬢、君は確か仕事もできるし人並み以上の容姿も持っている。だが、それは若さに依存している。先輩受付嬢のエリザベス嬢は、今度の休みに恋人とデートだそうだぞ」

「ば、バカな!! エリザベス先輩にそんな気配なんて…」

 その言葉に、マーガレット嬢だけでなく周りに居た冒険者も驚いている。どうやら、本当に知らなかったらしいね。まぁ、この街で私が知らない情報など少ない。蟲達が毎日集めてくるからね。勿論、どうでもいい情報もたくさんあり、その中から取捨選択する必要がある。

「あの~レイア様。あまり、個人情報を漏らしていただきたく無いのですが…」

 こちらの声が聞こえたらしく、受付にいるエリザベス嬢から苦情が入った。若干、困った顔をしている。

「これは失礼したエリザベス嬢。侘びも兼ねて、この蟲蟹をプレゼントしよう。恋人と食べる鍋の具材にしてあげてくれ」

 元冒険者であるエリザベス嬢ならば、蟲蟹を美味しく頂いてくれるだろう。エリザベス上の手元まで蟲蟹が歩いて移動した。栄養価抜群…さらに副作用で白髪になるのを遅くしてくれる。要するに、染めなくても原色をいつまでも保てるのだ。既に、白髪になっている人には手遅れだがね。

「新作ですか…ありがたく頂かせていただきます」

「私には、何もないんですか!?」

 物欲しそうな目でこちらを見るエルメス嬢が居た。本来なら、完全無視一択なのだが…先日の感染症の件では、皇帝陛下への連絡という任を頑張っていたので個人的にお礼をしてもいいだろう。

「そうだな。では、この空気清浄をしてくれる蟲…エアー・ダスターをプレゼントしてやろう。部屋に置いておけば、いつでも清浄な空気を吸える。更に、掃除洗濯料理となんでもできるので留守番は任せておいていいだろう」

 実家のメイド達によって学んだ知識でメイドと遜色ない性能を有している。まぁ、買い物だけは苦手なんだけどね。お店の商品をつまみ食いする癖があるから…。それさえなければと思ってしまう。

「やったぁぁぁぁ!! よしよし~、今日からお姉さんと暮らしましょうね」

 流石は、陛下のスパイだ。本気で喜んでいるように思える。以前に後ろを付けられたときはクソ真面目な顔をしていたが…エルメス嬢は、こっちの能天気の方が素らしいね。恐らく、エルメス嬢の方がマーガレット嬢より先に結婚するな。男性受けが良い性格をしているしね。

………
……


 ふ、フローラ嬢に手紙を出してそれとなくマーガレット嬢にお見合いをセッティングして貰えるようにお願いしておくか。フローラ嬢も年頃の義妹が未婚じゃ可哀想だろうしね。

「あれ…私には何も無いのですか?」

「良い質問だマーガレット嬢…何もない!! 碌でもない依頼だとは言え斡旋してもらっていたのも事実だから、将来的に役に立つ事をしてやろう。それを潰すも活かすも君次第だ」

 マーガレット嬢は、何を言っているかわかっていないようだが…とりあえず、何も貰えない事だけは理解できたようだ。

 さて、待ち合わせの時間まで少しあるのでフローラ嬢宛に手紙を書くとしよう。お歳暮やお中元の時期以外に手紙を送ると驚かれそうだが、大丈夫だろうか。




 迷宮に向かう集団の中で圧倒的に異質なグループが存在した。食料や武器の類は一切持っておらず、荷物は鉄板とリュックに詰められた調味料のみ。テントなどの必需品すら持っていない。

 だが、その事に触れる者は誰もいなかった。無謀とも言える装備で迷宮に行こうとしている者達が、誰だか分かっていたからだ。冒険者としての知名度なら間違いなくトップ10入りする程の存在。余程、世間に疎い者でない限り知っている者であった。

「天気もよく、まさにデート日和だね」

「そうですわね。本日は、お誘いありがとうございます旦那様」

「こうして旦那様とお出かけする機会を頂けたこと嬉しく思います」

 ゴリフターズに手を差し出す。その手を二人がとり、いざ迷宮へと足を運ぶ…とりあえずは20層。そこから、食料を現地調達しつつ下へ下へと潜っていく予定だ。

………
……


 これは酷い。

 両手にゴリフを手にした私は文字通り手がふさがっており、迷宮でいいところを見せようと思ったが何もできない。というか、ゴリフターズが片手を振るうだけで木々が吹き飛び、地面が消し飛ぶ。

 モンスターの肉片が飛び散る。

ギギ(お肉をフライングGET!! はっ!? いつもより美味しい!!)

ジージ(本当だ!? ゴリフリーテ様、ゴリフリーナ様 だいしゅ…ガリ!? あばばばばば)

 あぁ~、食べながら喋るから舌を噛んで苦しんでいる。

「『モロド樹海』に潜るのは初めてですが…、『ウルオール』にある迷宮と比べて、自然が多いですね」

「ですね。幸い知らないモンスターは居ないので対処には困りませんがね」

 対処も何も近づくそばから消し飛ばしているのでそれ以前の問題だ。私と違い圧倒的な火力!! 圧倒的ではないか私の嫁は!!

ギィ(鉄板を運ぶ以外に仕事がない!! )

 大丈夫だ子供たちよ。お父様だって仕事がないんだよ。いや、一つだけある。人海戦術が出来る私にしか出来ない事。

「あぁ、ここから南方2kmの場所に次の階層への入口があるよ」

 蟲達を各方面に放ち、下層への入口を探すのだけは負けない。他にも、途中途中で山菜なども集めているので役には立っている。これって、お仕事的には冒険者よりサポータのする事なのだけどね。いや、むしろ冒険者より天職かもしれないわ。荷物運び、食事の準備、野営準備、道案内とどれをとっても間違いなく数多くいるサポータの中でも最高峰じゃないか。

 最強の冒険者を目指すより、最強のサポータなら直ぐになれそうだわ。

「折角ですし、ゆっくり行きましょう。蟲達もその方が嬉しそうですし…」

 まさに、その通りである。

 蟲達はゴリフターズによってバラバラにされるモンスターの肉片を美味しくいただくだけではなく、歌まで歌い始めた。まぁ、蟲達も殺伐とした殺し合いしかしていないから息抜きも悪くないよね。

ギィ(ある~日)

モナ(迷宮のなか~)

ピッピ(クマちゃんに…くまちゃん!?)

ギィーー(きたぁ!! ご飯 ごはん GOHAN!!)

 茂みの影から飛び出てきたモンスターが、こちらを見た瞬間すたこらサッサと逃げ始めた。そりゃ、見事なまでの敵前逃亡である。それを、追いかける蟲達…どちらが速いかといえば断然に蟲達の方が速いのだ。私の鍛え抜かれた蟲達は、20層程度のモンスターに遅れは取らない。

 グチャグチャベリバキ

 肉が引きちぎられ、骨が砕かれる音がする。10秒とかからず、なにも残っていない。

 生け捕りにして、バーベキューの具材になる予定だったのだが…試食と称して美味しくみなさんのお腹に収まってしまった。蟲達も食べるならオークとか人型モンスターにして欲しいものだ。クマとか動物系のモンスターは是非とも食卓に並べたいね。



 23層にて道中に深手を負った冒険者達が居た。

 疲労困憊、満身創痍、五体満足な者が誰もおらず、治癒薬と食料も底をついているように見受けられ助けを待っているご様子だ。『ネームレス』にいる仲間を信じてこの場に留まるというのは正しい判断である。全員が、五体満足ならばトランスポートのある20層まで駆け抜ける事も可能であろう。

 恐らく、マーガレット嬢が持ってきた依頼書の捜索対象の冒険者なのだろう。だけど、完全に真横を素通りする事にした。

 こちらを見た瞬間、今にも死にそうだった冒険者達の眼が輝く瞬間を見た。

「た、助かった!! あんたが来てくれたとなればもう安心だ。報酬には、色を付けさせてもらうから治療と食べ物を融通して欲しい」

 何を勘違いしたのか、私が依頼を受けて救助に来た者だと思い込んでいる。迷宮下層を狩場にしている連中だけあって、見覚えがある連中だった。どのような事態が発生したか知らないが、不手際なのだろう。

「残念だが、救助の依頼は受けていない。だが、安心しろ…お仲間が『ネームレス』で依頼を出している。そのうち助けが来るだろう」

 私が救助してしまえば、依頼を受けた者が命懸けでここまで来たのに無駄骨になりかねない。それは、可哀想な事である。むしろ、救助がくる可能性がある事がはっきりとわかっただけでも御の字だろう。待てば、助けが来る事がわかったのだ。

 大事な事だが…冒険者が無償で働くのは基本的にあってはならない事だ。前例をつくると、『あの人は無償で助けてくれたのに』などと言われるようになり、冒険者全体に迷惑が掛かる。尤も、過去にギルドに無断で人助けしてしまい迷惑をかけた事がある為、言えた義理ではないがね。多額な迷惑料を払って事を収めたけど、本当に申し訳ないと思った…冒険者の方々に。

まぁ、ここらへんで狩りをする紳士な者なら分かってくれるだろう。

 それに、私は現在進行形で家族サービス中なのだ。そんな時間にお仕事を挟むなど言語道断である。この私の為に時間を割いてくれたゴリフターズに申し訳が立たない。

「っ!! わ、分かった。救助が来るまで待つ事にする」

「アレス!? それじゃ、仲間が…」

ズドン

 アレスというリーダー格らしき男性が、女性の腹部に腹パンを食らわせた。怪我をしている女性を腹パンで黙らせるあたり、どうかと思うが正しい判断だと思う。これ以上行く手を阻むようなら、どうしようかと思ったが…アレスというリーダーの顔を立てて見逃すとしよう。

 ちなみに、ゴリフターズも何も言わない。冒険者として私より先輩であるので、迷宮でのご作法はよく理解している。自己責任…それが絶対的なルールである。手助けをしてもいいのだが、怪我を装って逆に襲撃される事などよくある話だ。

 大事な事だが、このような九死に一生を得るような経験をしなければ身につかない教訓もある。今回の一件を励みにして今後頑張って欲しいものだ。まぁ、生き残りの半数を犠牲にすれば自力で生還できるだろうね。

 幸い、新鮮な肉は目の前に転がっているんだ。食い扶持を減らして、さらに食料を生産出来る最終手段。戦力低下は発生してしまうが、全員が飢え死ぬより遥かにマシである。生き残る為に、この手段をとった冒険者の話は年に何度か耳にする。そういったケースの場合は、大体が男性だけが生き残るんだけどね。

「目的の階層まで先がありますので、私達はこれで…ご武運を祈っております」

 ゴリフリーナが一礼をして通り過ぎる。

 これ以上、邪魔するようなら相手をしますわという意思表示の表れである。無論、それはゴリフターズだけではない。私の蟲達も早く目的地についてバーベキューをしたいと待っているのだ。可愛い蟲達のために、お父様は頑張っちゃうよ。

「まぁ、三日もすれば救助はくるさ…達者でな」

 迷宮に潜る準備などを考えれば妥当な時間である。一部、そんな事も気にせず潜れる者達もいるがね。

 こちらを見る冒険者達を背に次の層へと進む。一応、見えないように擬態能力の優れた蟲を何匹か残しておこう。うまくいけば、遺留品だけは回収できそうだからね。遺留品の届けは、たとえ依頼書がなくても受け付けているからね!!
投稿が遅れてしまった。
もうすぐクリスマス・・・『ウルオール』の壁ドン祭りにでも参加しに行こうかなヽ(*´∀`)ノ プロ壁殴りに混ざるレイアヽ(・∀・)ノ

これもPS4に夢中になっていたせいだ。申し訳ない(´・ω・`)
だが、おかげでDestinyのワロタ(笑)を撃破できたよ!!
楽しかったぜ。
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