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愛すべき『蟲』と迷宮での日常 作者:マスター
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第六十話:感染拡大(6)

 『モロド樹海』は、表向きには未踏破の迷宮として名高い場所である。迷宮としての広さが、随一と言われており、仮に踏破できたとしても生きて出られないと言われる程である。金を湯水のように惜しみなく使えば、一定の層ごとにトランスポートの設置が可能になり迷宮を踏破する事も夢ではないのだが、現実的に折り合いがつかない。

 公式の記録では、『蟲』の魔法の使い手が持っている55層が最高とされている。

 現在、世界にいるランクA4人の証言によれば迷宮の最下層には、特別なモンスターが存在していると記録に残されている。最強の冒険者と名高い『闇』のグリンドール曰く…出会い頭に全力で魔法をぶっぱなしたら原型すら残っていなかったそうだ。『聖』の双子姫曰く…筋っぽい味だったそうだ。もう一人のランクA曰く…自分自身と戦う事になるとは思わなかったそうだ。という話が残されている。

 公式に残っている情報というだけであって、実は既に踏破されている迷宮があっても不思議ではない。

ギルドのランクA認定条件は、迷宮のソロ踏破…無論、生還してくる事は絶対条件である。更に、ランクB相当のモンスターが生息しており50層以上ある迷宮であるという定義も存在しているのだ。なぜなら、冒険者育成機関にある5層までしか存在しない『試される大地』を踏破してランクAと称されても困るからだ。

迷宮踏破は、自己申告制であり年に何人かの愚か者がギルドにランクA申請をしてくるそうだ。だが、そういった者は大体その日のうちに善意ある紳士達により二度と陽の光を見る事がない場所へと連れて行かれる。

そして、『モロド樹海』は踏破されている迷宮の一つである。

2年前までは、『モロド樹海』の最下層には、一匹のモンスターが居座っていた。長い年月誰も訪れる事がないその場所で静かに眠りに就いていたのだ。いつか来る者を待ち続け…ついに役目を果たしたのだ。

テスタメント…『モロド樹海』最下層である60層に生息する唯一のモンスター。体長40mの超大型の蜘蛛である。全身は、カニの外殻を持っており強度はオリハルコンに匹敵する。更に、全身を覆う剛毛はあらゆる衝撃を吸収し受け流すだけでなく、魔法に対する防御も極めて高く『火』『水』『土』『風』の魔法に関して一定威力以下の威力を全て無効化する事が可能である。また、強靭な足を使った移動速度は、『モロド樹海』の生息するモンスターにおいて最速で一度捕捉されたら逃げ切る事は、不可能である。毒などの小細工や特殊な能力を一切持たないが、それを補って余る程の戦闘力を有している。



 空が飛べないならば、飛べる蟲の特性を。

 猛毒が使えないならば、毒を持つ蟲の特性を

 あらゆる状況に対応できるように自らでカスタマイズすればいいのだ。それこそが『蟲』の魔法の特性なのだ。テスタメントの特性をベースに、私が持つ蟲達の中から選りすぐりの能力を付与する事で最強を目指す。

これこそが、私が最強へ至る道だと信じている。

 シュバルツの命令で放たれたバジリスタの矢を回避すべく、横へジャンプする。ギルド本部の支柱に固く結ばれた特殊網は、非常に丈夫だが・・・私の移動を遮る事は出来ない。私の拘束に利用していたギルドの支柱が文字通り砕け散ったのだ。

「支柱の強度より網の方が強かったか…ふむ、一気にぶち壊すか」

 第三形態となった私にとっては、特殊網など障害ではないのだが・・・引きちぎると帝国臣民の血税で補われる。物は大事にすべき。

 狙いは、支柱となっているギルド本部の柱。

 キィーーーー

「砕!!」

 バリバリバリバリーーーン

 ギルド本部にある陶器や瓶などが一斉に砕け散った。更に、ギルドを支える支柱も同様に粉々に砕けていった。

 指向性を持たせた音波による攻撃…魔法ではない純粋な蟲の技能を駆使した攻撃。魔法ならば防ぐ方法はあっただろう。または、視認できれば防げる者もいたかもしれない。支柱を砕くはずが…予想以上に威力があり、近場に居た冒険者達の鼓膜まで破り捨てた。

「ぐぅっ!! 化物が」

「ぎゃあ゛あぁぁぁぁ」

 痛みに慣れている冒険者や騎士団といえども、なかなか経験した事がない痛みであろう。

 この瞬間を痛みでのたうち回る者と痛みを堪えて脱出する者に分かれた。ギルド全体を支えている支柱を粉砕したのだ。故に、今この瞬間もあちこちで倒壊が始まっている。

「やはり、冒険者は動きが違うね…半数以上がこの場を離れたか。まぁ、糸はつけた誰一人とて逃がしはしないがな。逃げ遅れた騎士団諸君…運が良ければ、生き埋めになれるだろう…では、しばらくのお別れだ」

 騎士団の装備を考慮すれば、生き埋めになれる可能性はそれなりにあるだろう。まぁ、数人程度死のうが構わないさ。検体候補は、山ほどいるのだ。シュバルツは、部下をおいて私の変身を見た瞬間に窓をぶち破って逃げるあたり危機察知能力は優れていたのだろう。

 一番効率よく愚か者どもを抹殺する方法を考えているうちに倒壊してきた瓦礫のせいで出口がなくなってしまった。

 さて、少し走るとしよう。

 次の瞬間、ギルドの瓦礫が吹き飛んだ。そして、そのまま逃げる冒険者と騎士団を巻き込んでミンチが出来上がった。



 ついに手に入れた!!

 帝都で品薄で幻の逸品とまで言われているウ=ス異本。著者はSとだけ書かれており仲間内では神と崇められている。他の追随を許さぬ発想力、画力、ストーリー…一言で言えば腐っている。

 『ネームレス』での物価急上昇に伴い、知り合いが生きる為に血の涙を流して手放す事になった品を買う事が出来たのだ。一昔前の私ならば喉から手が出る程、欲しかったが決して手が届かない物であった。

しかし!!

高ランク冒険者になりゴリヴィエ様と一緒に迷宮に行くようになり懐事情がとても暖かい。これも、全ては日頃の行いが良いからであろうと思ってしまう。

「本日の天気は、雨かしらね」

 『ネームレス』にあるカフェのテラスで軽い食事をゴリヴィエ様と摂っていると雲一つない晴天だというのに雨が降るという。

「ゴリヴィエ様、いい天気ではありませんか。まるで、この私を祝福するかのような…さてさて、そろそろ御開帳といきましょう」

 たった、30ページしかないのにハードカバーのウ=ス異本。定価は、一冊5万セル…プレミアがついて私が買い取った値段は500万セル。某エルフの双子と触手物と極めてマニアックな一品がついに開かれる!!

 テーブルの上におき慎重に開き一ページ目を確認しようとした瞬間、急に暗くなったと思ったら人型サイズの何かがテーブルの上に落ちてきた。

「た…だぁ、のぉ」

 全身血まみれで、両足がない。更に、肋骨が飛び出ており虫の息状態だ。目があった瞬間、助けを求めているのが分かったが、それどころでは無かった。

 二度と手には入れないとも言えるマニアがヨダレを垂らすような一品がどこの誰かも分からない男の血でダメになってしまったのだ。

 許さん!!

 どこの誰かは知らないが、街中での乱闘など厳禁である。懐のナイフを抜き、このような事態を起こした者に説教をした上でギルドに突き出して詫びを入れさせる。

「足を地面に縫い付けて蹴り飛ばしたら、吹き飛ばないと思ったが…足がもげるとは予想外」

 急に真横から声が聞こえた瞬間、逃げ出したい衝動にかられた。

ランクBになり、亜人としての身体能力に更に磨きがかかり『モロド樹海』で寝ながらでも周囲を警戒できるようにまでなった。ランクBになって間もない私ではあるが、索敵能力に関してはランクBの中堅達に引けを取らぬと思っている。

「れれれれ、レイアささまぁぁぁ!!」

「ゴリヴィエとタルトか…そのナイフ。なるほど、雇われた口か」

 レイア様の容姿は、今までで見た事が無い姿であった。体格は、ゴリフリーテ様やゴリフリーナ様のようになり甲殻系の蟲が特有の外皮に覆われている。背中には、2枚の羽が対に伸びている。以前に見た姿を比較しても随分とシンプルになっているが…恐ろしさは何倍にもましている。

 チョロチョロ

 レイア様が手のひらをこちらに向ける。視界が真っ暗になり、今までの人生が走馬灯のように流れ始めた。

「お待ちくださいレイア様!! 私達は、ここで食事をしていただけです」

「それなら、そうと言ってくれよ。思わず殺しちゃうところだったよ。…あ、タルト君お手洗いはあちらですよ。それでは、これは回収していく」

 レイア様の影から蟲が現れて死にかけの男を引きずるように引っ張っていった。

「生きてる」

 レイア様の手のひらが離れて陽の光が目に入った。一瞬天国かと思ったが、濡れた下着の感じで生を実感出来た。

「食事の邪魔をしてしまったね。ここの支払いは私が持とう。後、ダメにしてしまった本も弁償しよう。幸い、著者に心当たりがある…とてもね」

 著者に心当たり!?

「さ、サイン入りを…」

「良いだろう。では、私はまだ狩り残しがあるので先を急がせてもらおう」

 地面がえぐれる音がすると同時にレイア様が風のように消えていった。そして、遠くでモノが吹き飛ぶ音と人間が宙を舞うのが見えた。

「どこの誰か知らないが、レイア様を怒らせるとは命知らずもいたものですね」

「えぇ」

「じゃあ、お互い下着を換えに帰りましょうか」

「えぇ…ゴリヴィエ様、命を助けていただきありがとうございました」

「パートナーですもの当然です」

 ゴリヴィエとタルトの友情が深まった。

 そのやり取りが行われる最中、蟲達が血まみれのテーブルを綺麗に磨き上げて、食事代をさりげなく置いた。まるで何事もなかったかのようになっている。



 脆い!! 脆すぎるぞ!!

 冒険者や騎士団の攻撃を回避しながら、軽く殴るだけで肉が飛び散る。本気で、顔面に殴ったら木っ端微塵に消し飛んでしまい蛆蛞蝓ちゃんをもってしても再生不能なレベルになった。

 高ランク冒険者達は、一定威力以下の魔法を全てキャンセルする特性に気がついたようで、『土』の魔法をメインに使ってくる。『土』の魔法は、他の属性と異なり質力を持つ土を操るので、魔法自体がキャンセルされても魔法によって放たれた土が止まることはない。

 だが、それに当たるほどノロマではない。

 並みの使い手の魔法など寝起き状態でも避けられる程、スローに見える。集中すればする程、それが顕著に表れる。

「とっさの判断はなかなかだ。だが、圧倒的な実力不足」

「あ゛あああああああぁぁぁぁっ!!」

 冒険者の手と足に触れる。その瞬間、触れた箇所がゴッソリと削り取られる。触れる事で影を作り出し、蟲達がそこから食い散らかすのだ。蟲達のお腹も膨れて、殺さずに捉えられる実に一石二鳥の手である。

「とった!!」

「くたばれ化物!がぁ!」

「死にやがれ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

残った冒険者13名と騎士団の半数が総出で魔法を放ってくる。仲間を囮にして、餌に食いついた瞬間に全力で攻撃する。実に良い手段だ。まぁ、分かっていたけどね。

これだけの規模の魔法攻撃…当たれば流石に、多少は突破されるだろう。確実に当てる為に、街中だというのに広範囲魔法を放つあたりどうかしている。私は、なるべく被害が出ないようにしているのにね。

 前後左右は勿論、上空へも逃げる場所はない。

 だが、地中という選択肢があるのを忘れないでいただこう。ムダなど魔力消費ご苦労様だ。地中に潜ると同時に爆音が響いた。建物が倒壊する音とそれに潰される民間人の悲鳴が聞こえる。

まさに、外道の所業である。

 第二第三の被害を防ぐ為、私が頑張るしかあるまい。孤立している冒険者のすぐ真横に飛び出して、耳の穴に小指を突き刺す。糸状の蟲がするすると入り込み。

「まずは一人。死んでも構わん。但し、民間人への被害が出るならば自害しろ」

 コクンと頷いた。現在、全身の動作確認中らしくビクビクと痙攣しているように動いている。

 敵を減らして仲間を増やす…実に効率的な手段である。しかも、魔法で掛けた洗脳ではあるが…とてつもなく物理的な洗脳である。故に、解除は不可能だ。脳内に侵入した虫を取り除けるのは私を他に居ないだろう。

「さぁ、楽しい狩りの時間だ」



 ギルド職員や冒険者が逃げた場所の広間には蟲達が運んできた冒険者や騎士団達が綺麗に並べられている。生きているのが不思議な状態で、すぐに治療しなければ死んでしまう程である。

ギィ(ひらめいた!! ここのパーツとこれを組み合わせていけば)

ギッギ(何してるの…パズル?)

ジー(なるほど…もげた手足を少しずつ集める事で死体が増える)

ギー(その通り!! という事は、これを繰り返せば…食べても検体は減らない!!)

ギギギギギ((((天才か!?))))

 蟲達がその発想は無かったと驚く。そして、美味しく頂かれていく。その様子を見た冒険者達は、死にかけの体にムチを打ち這いずるように逃げ出そうとする。

「わずか10分足らずで、高ランク冒険者と第四騎士団が壊滅するとは…」

 マーガレット嬢も呆れてものが言えないといった感じだ。国家防衛の要である騎士団をまるで障害としないその強さは、まさにキチガイと呼ぶにふさわしい。

「違うなマーガレット嬢。この程度を捕らえるのに10分も掛かってしまったのだ。グリンドールやゴリフリーテ、ゴリフリーナならば早く終わるだろう。一番、楽な手段は『ネームレス』を地図から消す事だ。そうすれば、必然的にこいつらも死ぬからね…恐らく、5秒とかからんぞ」

「5秒って…冗談ですよね」

 その通り冗談である。2秒あれば事足りる。

「さて…本日のメインディッシュのシュバルツ副団長に出てきて貰うか。まさか、逃げ出すと同時に騎士団装備を脱ぎ捨てて民間人に混ざるとは随分と生存能力が高いですね」

 避難所の中にいる一人の男性を指さした。

 普通なら見逃しかねないが、既に私の蟲センサーによって位置把握が可能になっているシュバルツに隠れる場所など無いのだ。

「それ以上近づくな化物が!! 一歩でも近づいてみろ、コイツを道連れにしてやる」

 化物とは酷い言いようである。この美しいフォルムが理解できないとは残念である。

ついでに言えば、化物と言わず紳士と言って欲しいものだね。私は今回の一件で国家や『ネームレス』に貢献しかしていない。病の収束に尽力し、騎士団の横暴を懲らしている。街へ出た被害も私が出した分については全て補填している。当然、迷惑料を上乗せしてだ。

「天下の第四騎士団副団長様が民間人の少女に刃物を突き立てるとは…堕ちたものだね」

「黙れぇ!! 確実に貴様を捕らえて合法的に粛清してやるつもりが…ふざけるものいい加減にしろ!! 貴様みたいな冒険者がいるから」

 居るからなんだというのだろうか。私以上に皇帝陛下に忠誠を誓い。身を粉にして働き者はいないと自負している。

「言っておくが…私はテロリストには屈しない。あれ?その少女の顔に見覚えが…」

 私の記憶が確かならば、スラムであった少女である。騎士団に暴行され、私が渡した賠償金と迷惑料と騎士団に巻き上げられ、今度は人質に…運命とはひどい。というか、騎士団の連中がワザとやっているとしか思えないほどに。

 よく見れば、顔に殴られたような痣が見える。恐らく、あの様子では顔だけでなく全身に痣があるだろう。

「よーーし、一歩も動くなよ」

「まぁ、どうでもいいがね」

 可愛い蟲が人質なら考えなくもなかったが…所詮は知らない少女である。

 ズドン

 地面が割れるほどの踏み込み速度…シュバルツが指一本動かすより早く懐へと飛び込んだ。人差し指を胸に突き刺す。まるでプリンにスプーンを突き立てるより簡単にずぶりとめり込む。

「ぐがぁぁぁ」

「今の今まで黙っていたのですが…実は、騎士団が食べる食事の全てに蟲を仕込んでおいたんですよ。だからね…」

 シュバルツが身の異変を察したようだが既に遅い。

「ぎゃあ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 悲鳴と共に、私の可愛い蟲達が大量に産声をあげる。

ギェェ(私!! 爆誕!!…お父様、お会いしとうございました)

ジー(抱きつくのは先よ!! はっ!? 血まみれだと、お父様を汚してしまう)

ギィィ(あら、こんなところにタオルが)

 蟲達が、少女の衣服に体をこすりつけて血を落とす。

 少女の顔は、既に真っ青を遥かに通り越して真っ白であった。まるで死人のようで瞳孔が開ききっている。一体、シュバルツがどれほどまでにこの少女の心に負荷をかけたのか見当もつかない。

「これはいけない。迷惑料も兼ねて大至急治療せねば」

モナー(お任せ下さい。この私が完璧に治療をいたします)

 蛆蛞蝓ちゃんが大きな口を開いて少女を丸呑みにした。

 これで一安心だ。手足がもげていようと生きてさえいれば何とでもしてみせよう。

「冒険者と騎士団による街への被害…相当な被害だな。まぁ、冒険者は高ランクだったし身元を洗って倉庫の品を徴収でいいだろう。騎士団が出した被害は、ガイウス皇帝陛下に請求書を回さねば」

 なにやら、周りから視線を感じる。

「あの~レイア様。あそこに横たわっている者達はどのように…」

「『ネームレス』に広まる病を収束させる為に人柱になる予定だが…不都合でもあるのかね?おっと、そろそろ診療の時間だね。診て欲しいものは並ぶといい」

「そ、そのお姿で見られるのですか…こ、この距離でも息苦しいのですが」

 可能な限り威圧感は抑えているが、これ以上はどうしようもない。

 それに、この状態を解いてしまえば全裸になってしまうのだ。私に全裸で診療をしろというのだろうか…マーガレット嬢にそんな趣味があったとは予想外だ。女性の性的嗜好は、墓場まで持っていくとしよう。



 数日後。

 蛆蛞蝓ちゃんにより、感染症の特効薬が完成した。これも全ては、自ら身を捧げてくれた冒険者及び騎士団と感染源を携えて迷宮より帰還してきたエーテリアとジュラルドのおかげである。

 元凶となった病原菌を持つ者のおかげで特効薬は完璧な物に仕上がったのだ。

 『ネームレス』ギルド本部は、今回の件に関わった冒険者の私財を率先して任意整理を行った。そのおかげで、急ピッチでギルド本部の再建が進められている。しかも、再建されるギルド本部は、二倍の大きさらしい。内装も金を掛けると言っていた。

 余程儲かったらしい。

 受付嬢達には、臨時ボーナスが配られたとか。

「もっと早くに、処理すべきであったな」

「残念ながら、私もそう思います。騎士団が出した被害額は、第四騎士団の年間維持費を超えております。しかし、ガイウス皇帝陛下が気に病む必要もありません。良い人材もいれば悪い人材もいるのです」

「その通りだな。来年の採用は、採用基準を厳しくさせよう。レイアが立て替えた金額については、後日届けさせる。迷惑をかけたな」

「滅相もありません。全ては陛下のため…私で力になれる事がありましたら、いつでもお申し付けください」

 今回の一件、表向きには第四騎士団が『ネームレス』を封鎖し病を押しとどめる事に成功した。そして、尊い帝国臣民を守る為に自らの身を差し出して特効薬開発に殉じたと言う美談で終わる事が決まっている。

 まぁ、多少は真実が漏れるだろうが…大多数の人間が美談の方を信じればいいのだ。陛下とて、全ての臣民が騙せるとは思っていない。

 ムシャムシャ

「それと、話は変わるがレイアよ…この蟲は旨いな!!」

「でしょう!! 南方諸国で獲れる高級食材である蟹の味を完璧以上に再現させました。その名も蟲蟹!! まぁ、蜘蛛も蟹も見た目的に考えれば親戚みたいなものでしたからね。特に、蟲ミソが美味しいんですよ!!」

 今現在、私の倉庫で陛下と鍋を囲んで今回の一件を振り返っている。全くもって酷い事件であった。その為、今度騎士団の行動を監視する部署を新たに新設する事との事で、さり気なくローウェル君達を勧めておいた。実力的には、まだまだ発展途上だがクリアな思考回路は今の国家に必要な人材であろう。

 コンコン

 倉庫の扉を叩く者がいる。

 扉を開けてみるとそこにはエーテリアとジュラルドが居た。どうやら、匂いに釣られてきたようだ。

「美味そうな匂いがすると思えば、差し入れ持ってきたのでアタイらも混ぜてくれよ」

 陛下の方を見ると、構わぬと仰っている。むしろ、エーテリアが持っているお酒を狙っているようだ。残念な事に私の倉庫には、お酒の類は殆どない。あまり飲まないし、酒はしっかりと管理しておかないと味が落ちるからね。

「大歓迎さ。鍋はみんなで囲んだほうが美味しいからね。それに今回の1件を振り返っていたところなんだ。是非、二人の話も聞かせてくれよ」

「ご相伴に与りますとは言っても、今晩には出発するので数時間ですが…」

 全然問題はない。飯時の会話のネタとしては十分だ。さて、鍋奉行として働かせていただこう。

 熱々の鍋を囲む紳士淑女が集う。
やっと収束したヽ(*´∀`)ノ
これで一安心だわ。

さて、閑話として領地のお話を少し混ぜてから・・・何を書こうかな。
ゴリフターズを連れて遠足にいこうかな。
諸悪の根源のギルド総本山について語ろうかな。
聖クライム教団の使者が訪れる話にしようかな。
という候補を元に考え中です。
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