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愛すべき『蟲』と迷宮での日常 作者:マスター
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第五十三話:(里帰り編)お母さん(2)

◆瀬里奈さん


 可愛い私の子…レイアちゃん。

 同郷という事もあったけど、赤子の頃から計算すればもう20年近い付き合いになる。本当に格好良く成長した。アルビノ、『蟲』の魔法、高ランク冒険者、大貴族、イケメンとトリプル役満みたいな子だ。どこに出しても恥ずかしくない子である。

 要するに、目に入れても痛くない程のレイアちゃんにワラワラと寄ってくる虫共が沢山いる訳だ。

 母親兼父親として見定めねばなるまい。

その虫がたとえ、他国の姫様で、ランクAで、エルフ…更に双子を同時に娶る事になってもやる事は同じである。更に、傾国の美女であってもだ。

………
……


 改めて考えてみれば、レイアちゃんの嫁であるエルフは、優良物件過ぎて逆に怪しさが抜群である。

 まぁ、それはさて置き…一度言ってみたかったのね。「息子が欲しくば、私を倒してからにしなさい」と!! 雰囲気を出す為に、レイアちゃんから貰ったオリハルコン製のフルプレートアーマーを着用した。所々にミスリルなどが使われており、芸術品に近い仕様である。関節部分の隙間には、蜘蛛の糸からあつらえた肌着をつけており、防弾チョッキ並の強度を誇る。

 馬車の数は例年より少ない。その代わりにレイアちゃんが乗っていると思われる馬車は特段にでかい。そして、馬車から降りてレイアちゃんが元気な顔を見てくれた。いつもの笑顔でホッとする。

それに続いて…巨漢の何かが降りてきた。ズシリと重みで地面が凹む音がした。

今、目の前に物理的に国が傾きそうな巨漢…もとい、巨大なゴリラが居た。先日、餌を求めてやってきたグリズリー集団の親玉や生きた人間を盾にしていたオーク集団の親玉よりでかい。レイアちゃんと比べてみたら子供と大人くらいの体格差がある。

だ、騙されているわ!?

「ただいま、母さん。……なんとなく、言わんとしていることは分かるけど。違うからね!! 」

ギィィ『おかえりなさいレイアちゃん。大丈夫、全部理解しているわ。脅されているのね。大丈夫よ!! 母が成敗してくれる』

 たとえ、この身が砕け散ろうとも可愛いレイアちゃんは私が守る!!

「いやいやいや、本当に違うから。私の方から結婚を申し込んだんだよ」

ギギ『いくら私が人間でなくても、美的センスまではずれていないわよ』

 それにしても、エルフで、姉妹で、ゴリラ・・・・・・ゴリフターズとして命名しよう!! 我ながらネーミングセンス抜群だわ。

「お義母様、お初にお目にかかります。ゴリフリーナです」

「同じくゴリフリーテです」

ご、ゴリ?

もしかして、レイアちゃんと一緒になって渾身のギャグを言っているのだろうか。もし、そうだとするならばアカデミー賞ものである。冗談は、顔だけにして欲しい。

ギギギィ『よくも私の可愛いレイアちゃんを手篭めにしてくれたわね!! ここが墓場になると思いなさい!!』

「なんだか、穏やかな感じではないですね。何といっているのですか旦那様」

「え、えーーと…」

 最近、忘れがちだったけどレイアちゃん以外と意思疎通をするには筆談が必須であったのだが、衝撃的な出会いだった為完全に失念していた。すぐさま、事前に用意していた紙とペンを用いて筆談を開始した。

『レイアちゃんが欲しくば、私を倒してからにしてもらおう!!』

 本当は、もっと言いたい事があるが一言で纏めるとこうなる。

「あっ…」

「さすが旦那様のお母様。我が国の風習をよくご存じで。その挑戦、お受けいたしましょう」

「流石に二人纏めてというわけにもいかないでしょう。ゴリフリーテ…譲ります」

 ゴリフリーテと名のゴリラが肩に当てた瞬間、ドレスがパージされてアマゾネスみたいな格好に進化した。もう何を言っているかわからないと思うが、私自身理解が追いついていない。

 どこのボディービルダーですかと問いかけたくなるような肉体に驚愕の一言である。更に、見た事もないようなオリハルコン製の巨大ハンマーを持ち出してきた。あれ一つでお城が立つ価格である。

「やめて!! 私の為に争わないで!!」

 ゴリフリーテと名乗るエルフらしき存在から発せられる威圧感は、流石は世界で4人しか居ないと言われるランクA…普通なら裸足で逃げ出したくなるレベルである。見た目も!!

だが!! こちらとて負けてはいない!! 何十年とランクBモンスターとして過ごし、生き残る過程で得たモンスターソウルの恩恵により成長したこの肉体は、レイアちゃんの第一形態ともタメを張れるくらいの身体能力を有しているのだ。

更にモンスターで有りながらオリハルコン製の武具で身を固めた!! 並のランクBならば封殺出来るくらいだとレイアちゃんのお墨付きを貰った程だ。そして、暇を持て余して作り上げた新兵器のサビにしてくれる。

大型のムカデの口に手を突っ込み、新兵器を取り出した。

 ブォンブォン

振り回すたびに何やら近代的な音を発する。これぞ、ライトセイ○ーである。

「「「か、かっこいい!!」」」

流石、レイアちゃん…これが何なのかよく分かっているようね。尤も、本物と違ってオリハルコン製の円柱に蛍光色が強い虫の体液年単位で染みこませた物だ。この色合いを出すのに苦労したが中々の出来栄えだ。更に、効果音は、柄の所に内蔵した鈴虫ちゃんが頑張ってくれている。

………
……


あれ?今、レイアちゃんとゴリフターズ以外の第三者の可愛らしい声が聞けたような気がする。




 基本、無手が主流なのだが…あれは欲しいぞ。ロマン兵器じゃないか。それに、一本ではなく四本も持つとは…人間でないからこそ出来る技だわ。いや、真似ようと思えば、私も出来るかもしれないな。仮に増やせたとしても、扱いきれないだろうね。

 後、思い出せないけど敵役将軍でライトセ○バーを複数持った機械っぽい敵がいた気がする。まさに、瀬里奈さんと被るわ。

「後…ミルア、イヤレス。出てきなさい」

 全く、次郎の虚偽報告は、まぁ許そう。元々、あの二人の専属にして自由意思で行動を許している面があるからね。他の蟲達からの報告で途中から居るのはわかっていたけどね。

「お義兄様!! あれ欲しいぃぃぃ!!」

「二本とは言わないから、一本頂戴」

 全く、自由気ままな存在だな。可愛い親戚でなければ、間違いなくぶち殺していたよ。

 あ…瀬里奈さんの視線がこちらに向いた。私、ミルヤとイヤレスを交互に見る。

「母さん…この子達はね」

ギィ『こんな可愛い子が女の子のはずないわ!! 男の娘ね!!』

 あれ? 確かに間違っていないけど、よくわかるね。なにやら、とても嬉しそう。

というか、私とこの二人の関係は全く気にしていないあたり、どうなのだろうか。もはや、ゴリフターズを討伐するという無理難題に挑むという事で頭が一杯なのだろうか。

ギギ『ちなみに…非生産的な行為もありよ!! ホモが嫌いな女性はいません。それが美少年なら尚更の事!!』

 和気あいあいの雰囲気になった瞬間、瀬里奈さんがゴリフリーテに踏み込んだ。まさに不意打ち紛いである。足に履いている靴の踵はバネが仕込んである。故に、使い方次第では戦闘方法の幅が広がる。

 ゴリヴィエのようなランクB成り立てならば、この初撃で脳天をぶち抜けただろうね。だが、ゴリフリーテは…生憎とランクAというキチガイの領域にいる存在。その程度の攻撃でダメージを負うほど生易しい存在ではない。

 ゴリフリーテがご自慢のオリハルコン製のハンマーで軽く攻撃をそらす。瀬里奈さんも予想済みだったらしく、手数に物を言わせてライトセ○バーを縦横無尽に振るう。一撃一撃が岩をも粉砕する威力に加え、上下左右からのえげつないの攻撃である。

「一年前よりさらに強くなっているな」

 ブォンブォンブォンブォンブォンブォン

 この音もそうだが…先ほどから後方で演出効果を高める為に蟲達が総出で演奏をしている。臨場感半端ないわ。ラスボス戦の雰囲気満点なのだが、一体どちらがボスなのだろうか。

「いっけ!! お姉様に負けるな!! 」

「頑張れ。お義兄様のお母様!!」

 ゴリフリーテの弟達の応援が完全に瀬里奈さん陣営についた。瀬里奈さん陣営に加わった瞬間、蟲達がミルアとイヤレスに椅子とテーブル…更に飲み物まで持ってきている。敵の敵は味方という素晴らしい対応である。

 チラチラ

 瀬里奈さんとゴリフリーテ…更に、周りにいる蟲達が私を見る。

 私がどちらの陣営に付くか待っているようだ。や、やめてくれ…私にそんな酷な選択肢を迫らないでくれ!! 二人共大事に決まっているだろう。どちらかなんて選べるはずない!!

 優柔不断と言われかねないが、選べないものはどうしようもない。

ギィギ『決定打に繋がらないなんて!? そのでかい体でなんて素早いのよ!!』

「流石は、お義母様だ。見事な棒術。実家の近衛達では相手にならんな」

 瀬里奈さんの攻撃を防ぐ度にゴリフリーテが地面にめり込んでいる。相当重い一撃を与えているのだろう。だが、ノーダメージである。更に言えば、ゴリフリーテは、『聖』の魔法を使っていないのだ。

 さて、そろそろ本気で止めに入るか。ゴリフリーテも対応に困っている。攻撃するわけにもいかないし、瀬里奈さんが直撃したら打撲程度にはなるだろう。

ギギギ『まだよ!! まだ、負けてないわ』

 瀬里奈さんがライトセ○バーの柄同士を繋げてツインブレイドになった。だが、四本を使った攻撃が決定打を与える事ができないゴリフ相手にツインブレイドのような扱いづらい武器ではカスリもしないだろう。

「「「超かっけぇぇぇぇぇ!!」」」

 男性陣営の声が完全にハモった。

 おっと、見惚れている場合じゃなかった。流石に、この状態であれに割り込むのは勇気がいるので第一形態に変身をしてから止めに入った。両手で瀬里奈さんのライトセ○バーを掴み取った。

 ズゥン

 攻撃の重さがよく分かる。素の状態だったら、骨が砕けていただろう。

「お母さん…これ以上は、止めて。本気で二人に惚れて嫁にしたんだよ。お母さんが、育ててきたこの私を信じて欲しい。大丈夫、しばらく一緒に過ごせばきっとこの二人の良さがわかるから」

ギギ『ぐぐぐぐぐぅぅ』

「お義母さん…旦那様を…レイアさんを幸せにするので、どうか私たちにください」

「「お願いします」」

ゴリフターズが深く頭を下げた。王族が頭を下げるのは、それ相応の覚悟が必要だ。仮にも国家運営をする者の頂点が私の母親だとはいえ、モンスター相手に頭を下げて懇願したのだ。

「今なら、あの二人が付いてくる。なんせ、あの二人の実の弟達だよ(ボソ」

ギギ『………そ、そんな餌に釣られ』

 とてつもなく心が揺らいでいるのが手に取るようにわかる。もうひと押しだろう。

「ゴリフリーテ、旅の疲れを取るのに温泉なんて最適だと思うだろう。ちょうど、ここの真下を掘れば温泉が湧き出る」

 二百メートル程掘ればだが…問題あるまい。

「えぇ、ですが…今は、お義母様の説得を」

「大丈夫だ。家族みんなで温泉に浸かればお母さんも許してくれるに違いない」

ギギ『か、家族みんな!? 勿論、あの二人も!?』

「当然だとも。ミルア、イヤレス…お前らも温泉に入りたいよな?」

「「勿論~」」

 瀬里奈さんの中で高速で思考が巡る。そして、一秒も経たずに回答が決まったのだ。

『レイアちゃんを幸せにしてね!! さぁ、急いで温泉を掘るわよ』

 温泉に浸かりつつ、私と義弟達に囲まれる映像でも想像したのだろう。口からヨダレが垂れている。

「「お任せ下さい!! 必ずや、旦那様を幸せにしてみせます」」

ギギ(今の方法ってさ、お母様が腐ってないと使えないよな)

ギギィ(馬鹿!! そこは黙っておけよ。とりあえず、俺らは盛り上げるように音を出しておけばいいんだよ)

ギ(それもそうか。さて、そろそろ勤務交代の時間だな。早く、交代要員来ないかな)

 瀬里奈さん配下の蟲達の微笑ましい会話が聞こえている。

「ゴリフリーテ…ランクAの全力を見せてやれ。それを見れば、きっとお母さんや配下の蟲達も素直になるだろう」

「お任せ下さい!! はぁぁぁぁぁぁぁああああ゛」

 ゴリフリーテの魔力で大気が震え始めた。『聖』の魔法の発動によりオーラを纏っている。

ギギ『世界観、違くないかしら?』

「規格外のランクAだから世界観も糞もないんじゃないかな」

 次の瞬間、震度6クラスの地震がゲルヘイス山脈を中心に発生した。

リアル忙しいです。
二連休なんて一ヶ月ぶり><

里帰りは、あと一話位の予定。さて、衛生兵もとい蛆蛞蝓ちゃんがフル稼働すると気が来たか
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