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愛すべき『蟲』と迷宮での日常 作者:マスター
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第三話:未帰還者探索(3)

◆一つ目:ミーティシア


 『モロド樹海』の9層で私達のパーティーは10層への入口を探し回っていた。

 食料は、昨日の朝食に食べた乾燥した野菜の切れ端で尽きた。既に、メンバー全員が虫の息である。恐らく、後二日も持たないだろう。

 水に関しては、従者であるウーノが『水』の魔法が使えた事でギリギリ耐え凌げていた。しかし、度重なる戦闘でどうしても魔法を使う機会が多く、ついにパーティーの生命線を支えていたウーノが限界を迎え昏睡状態に陥った。自然回復を待つにしても、碌な食事すら摂れていない状態では回復すら見込めない。

 そして、今現在は戦闘の疲れを癒す為にひと時の休息をとっている。無論、早々に出口を探すべきではあるが、現在のコンディションでモンスターとの戦闘に陥れば、命に関わる危険性が高い。

「やはり、10層への入口の場所は、変わっておりましたか」

「大改変があったからな…パーティーメンバーが離散しなかっただけでも運が良かった。それで、ウーノの調子はどうだ? まだ、魔法は使えないか?」

「残念ながら、魔力を回復するにも碌な食事すら摂れていない状況では…」

 横になっている自らの従者であるウーノを気にかけつつ、今回のパーティーリーダーを務めているアーノルドと今後の方針をつめた。アーノルドは、ランクCの冒険者で斧を使う前衛職で中々腕が立つと今までの戦いから分かった。

ざざ

 その時、茂みから亜人の女性が現れた。『ウルオール』出身者の亜人…猫耳が特徴のタルトという女性である。タルトは、このパーティーにおけるサポーターを担当しており、亜人ならではの嗅覚で食べ物を探すのが得意。他にも、身体能力が優れている為、人間より遥かに多くの荷物を持てる。

「無理無理。食べられそうなキノコや山菜は、いくつか見つけたけど…どれもモンスターが陣取っている。あれを手に入れる為の労力を考えたら割が合わない」

「八方塞がりか…せめて、ザイールとミレアが生きていればな」

 ザイールはランクD前衛の片手剣と盾を使う冒険者、ミレアはランクD後衛の弓使いの冒険者であったが、両名ともに8層にて命を落とした。

 そもそも、このパーティーが現状に追い込まれた理由は、宝箱を発見してしまった為である。宝箱は、ゴミや金銀財宝だけでなく、トラップもあるのだ。即死するようなトラップは、現時点で確認されていない。

 冒険者である以上、宝箱を見つけたら開けるのが礼儀。しかも、今回は私の初の迷宮探索であったので縁起物として宝箱を開けない選択肢などあるはずがない。

 これ幸いとパーティーメンバーが全員合意の上で、開けたのだから誰も文句は言えない。今回、宝箱に仕掛けられていたトラップがモンスターハウスへの強制移動だ。

 モンスターハウスとは、その名の通り、モンスター達の巣窟。その階層に出現するモンスターが詰められている。そこからの脱出の際に殿を務めたのがザイールとミレアの二人であったのだ。

 モンスターハウスの位置は、先駆者が作り上げたマップにも流石に載っていない。そもそも、1層ごとの完全なマップなど存在していないのだ。マップには、階層ごとの入口から次の階層への入口まで先駆者が開拓した道が載っているだけであって、脇道などの記載はない。

 故に、迷子になり想定外の時間に食いつぶした。その結果、大改変に巻き込まれた。欲をかいた結果である。本来ならば、今頃は迷宮の外に休んでいる時間帯なのだ。

「私達は、このまま未帰還者として死を待つだけなのでしょうか」

 食料なし、現在地不明、パーティーメンバーは疲労困憊、装備品もボロボロ、状況的には詰みである。そんな状況を再認識する度に不安が募っていく。こんな事なら、『火』の魔法だけでなく『水』の魔法も覚えておくべきだったと後悔した。

「正直に言えば、生きるか死ぬかは半々だと思っている。そもそも、本気で詰みの状況なら俺…言っちゃ悪いけど、女性相手に紳士でいられないぜ」

 アーノルドの目つきが一瞬だが、女性を物として見るような嫌な目つきに変わったのが分かった。あの目は、社交界などで男性達が私に向ける目と同じ物だ。

 しかし、私とて理解がないわけではない。事前にギルドから受けた注意事項にそういった記述もあった。危機的状況で死ぬ事が不可避の場合に暴行事件が多く発生すると…。

 今の今まで信頼していたアーノルドを軽蔑の目で見てしまった。

「貴方が発言した内容は、女である私でも理解できます。では、なぜ紳士でいるんでしょうか?」

「そりゃ簡単さ…説明してやれタルト」

 内容がアレなだけに同じ女性であるタルトに言わせるあたり、十分紳士的である事が分かる。

「いいけど、ちゃんと周りを警戒しておいてよ。まだ、モンスターが沢山いるんだから」

「死にたくないからな、十分承知している」

 アーノルドは、このパーティーメンバーで唯一のランクC。ランクD相当のモンスターが出現するこの階層において1:3でも十分に立ち回れる程の実力者である。尤も、コンディションが万全であればだが。

「端的に言えば、ミーティシアさんを救出に来る人を待っているんですよ。貴族であり、エルフとのクォーターである貴方をご実家やギルドが簡単に見捨てるとは思えません。今回の依頼は、ギルド経由でのメンバー斡旋です。それで、貴族のご令嬢である貴方を死なせたとなってはギルドも責任を取らされるでしょう」

「大改変後の迷宮ですよ…低層とはいえ、私達が未帰還者と判明してからこの短期間で救出が来ると?」

「確証はありませんがね。ですが、救出が来た時に貴方が見るも無残な状態であったなら間違いなく我々の首は物理的に泣き別れします。故に、貴方には五体満足で生きていてもらわねば困るんです。まぁ、依頼金も結構な額を貰っていますしね」

 自分の立場を改めて理解した。そして、この人達は、その可能性を信じているのだと理解した。

ブーン

 虫の羽音がしたので見てみれば、一匹の白い蜂が遠くからこちらを見ていた。見た事が無いモンスター…。

「アーノルドさん、今向こうの大きな白いハ…あれ、もういない」

「なんだ、空腹のあまりに幻覚でも見え始めたか?」

「違いますよ!!」

「ミーティシアさん、この階層に出てくるモンスターは9種類だけですよ」

 タルトの言う通りである。

 階層ごとで出現するモンスターは固定されている。故に、冒険者たちはその階層に適した装備で挑むのだ。1層では1種類。2層では2種類と階層と同じだけの種類のモンスターが出現する。要するに下層に行くほど、出現するモンスターが増えるという事だ…あらゆる状況に対応出来るだけの実力が求められてくる。

 尤も、外部からモンスターを持ち込んでその階層で繁殖させればそれに限らない。だが、自分達の危険を増やそうとする者は誰もいないし、仮に繁殖したとしてもすぐに淘汰されるだろう。

「いや、でも確かに…いえ、やはり見間違いだったかもしれません」

ざっざ

 再び音がした方を見てみると、徘徊しているゴウグリズリーを遠くに見つけた。

 9層における冒険者死亡率No1を誇る体長2mを上回る巨体のクマだ。獰猛で肉食、分厚い皮膚…加えて剛毛で刃物が通りにくい。おまけに、人間を餌としか思っていない為、狙われたら最後…殺すか殺されるかしか選択肢はない。

 距離にして20m程。

「まずい、並のモンスターなら今のコンディションでもなんとかなりそうだったが…ゴウグリズリーが出てくるとは。幸い、まだ見つかっていないな」

 しかし、不幸な事にその瞬間、ゴウグリズリーと目が合った。

 アーノルドが今も尚、昏睡状態にあるミーティシアの従者であるウーノを見た。その瞬間、誰しもが何を考えているか察する事ができた。生き残るためには最善の一手。これが、私自身ならば決して実行される事は無いが、ウーノは従者である。誰もが、主人の為に役に立てるならば本望であろうと信じ、己の行動を正当化した。

「ウーノを餌にして逃げるなど許しません。彼女がどれだけ、私達の為に尽くしたと思っているのです!!」

 『水』の魔法が使えるウーノは、間違いなくパーティーの生命線として多大に貢献した。治療しかり、水の補給然り…だが、現在はそんな事を言っていられないのも事実。不要な戦闘は、可能な限り避けて体力を温存が現状の急務なのも理解している。

「ミーティシアさん…冷たいようだけど、私達が生き延びる為にはこの手が最善なのよ。ゴウグリズリーは群れないけど、ランクD最強のモンスターと言われているわ。そんなモンスターと戦闘をしてアーノルドが再起不能になったら、それこそ帰還が絶望的になるのよ。お願いだから…」

 タルトの言っている事は正しい…しかし、主従関係ではあるが、長年付き添ってきたウーノは私にとっては姉妹も同然。見捨てて逃げる事は、命が懸かっている現状においても出来るはずがない。

「み、ミーティシア様…私を置いていってください。私は、もう一歩も動けません。ですが、最後にお役に立てて嬉しいです」

 今にも死に絶えそうな声でウーノが呟いた。喋る体力すら、殆ど残されておらず私を決断させる為に最後の力を振り絞ったのだと理解できる。どれだけ、長い間一緒にいたと思っているの。

「貴方を置いていけるはずないでしょう!! 」

「アーノルドさん…お願いです。ミーティシア様を連れて行ってください」

 これから死ぬかも知れないのに何故、そんな顔をしているのか分からない。ウーノには、もっと一緒にいて欲しい。迷宮からでて一緒にお祝いをするって約束したじゃない。こんな時まで従者の役割なんてしないでもいいのよと声をあげて叫びたかった。

「わかった。必ず、生き延びてみせよう。君のような従者がいた事を私は忘れないだろう。私が先行する。タルトは、荷物を破棄していい…ミーティシアを担いででも連れて行くぞ」

 アーノルドの指示でタルトに担ぎ上げられた。無論、従者を置いていく事を是としない私が暴れる事を考えたのだろう。亜人の腕力に勝てるはずもなく、ウーノが遠ざかっていくのを見ている事しかできなかった。

 『火』の魔法を使えば、ゴウグリズリーが相手でも倒せる可能性はあるが…魔力が底をついてウーノの二の舞になれば目も当てられない。

 遠ざかる中、ゴウグリズリーがウーノに向かって腕を振り下ろすのが見えた。腕が空高く吹き飛び、血の飛び散る様がよく見えた。

………
……


 それから数分、全力で迷宮を駆け回り開けた場所にたどり着いた。最初は、10層への入口かと思ったが…世の中、そんなに甘くはない。むしろ、最低最悪の部類だ。

「冗談じゃねーぞ。なんで、モンスターハウスに辿り着くんだよ!!」

 流石のアーノルドも本気で叫んでいる。

 8層に引き続き9層でもモンスターハウスを引き当てるあたり、マイナスの面での運はかなりのものであろう。引き返して逃げるのも手だが…既に、モンスター達に気づかれており体力的な問題からも逃げ切れるとは到底思えない。

 誰かを餌にして逃げるにしてもモンスターの数は、数えたくもないくらいである…無理だと素人の私にも分かる。

「あちゃー、こりゃ覚悟を決めないとまずいね。ミーティシアさん、一人で生き残れる自信はありますか?」

「あったら、先ほど力ずくでウーノを助ける為にゴウグリズリーを倒しましたよ」

「そりゃそうだ。さて、死ぬのは確定かもしれないが…冒険者らしく一匹でも多く道連れにしてやるか。ミーティシア…『火』の魔法をあと何回使える?」

「良くて2回…いえ、振り絞れば3回です」

 3回使えば疲労困憊でウーノ同様に一歩も動けなくなるだろう。だが、使うしかない…さもなければ確実な死が待っている。

「上等。なるべく広範囲な魔法で雑魚どもを蹴散らせ。ゴウグリズリーは俺が引き受ける。タルトも悪いが戦闘に参加してもらうぞ。ミーティシアの魔法を掻い潜ってきたモンスターを相手にしてくれ」

「りょうか………? なにこの音?」

 私の耳には何も聞こえないが。聴覚の優れた亜人であるタルトには、何かが聞こえているようだ。モンスター達も何かを察したらしく、足を止めている。集中してみると私の耳にも音が聞こえた。

 このモンスターハウスを目指して一直線に進んでくる無数の蟲達の羽音や足音が。そして、後方をみれば、白い波のような物が押し寄せてくる様を確認した。

「音がどうした!! 今それどころじゃないだろう。さっさと、魔法を使え死にた…い‥のかぁ」

 アーノルド含む全員が背後から迫ってくる白い波を見て唖然とした。木々を飲み込むようにして接近してくる白い波には、深紅の赤い点が無数に存在しており何事かと思った。今までに見た事がない現象だ。

 モンスター達は、生存本能からか脱兎のごとく逃げ出し始めた。だが、時既に遅し。

「し、白い蟲…なにアレ。この階層にいるモンスターじゃないよ。アーノルド、あれはなに?」

 タルトに続き、私も確認できた。人間より視力がいい為、何が迫ってきているか視認できたのだ。迫り来る無数の蟲を見て、生理的嫌悪感から思わず『火』の魔法を撃とうと詠唱を始めた。

 しかし、アーノルドが強引に口を塞ぎ詠唱を止めた。

「タルト!! いいか、あの蟲達に何があろうとも手出しはするな!! 下手こけば巻き添えだぞ!! たとえ服の中を這いずり回ったとしても一歩も動くな。大人しくしていれば生き残れるぞ!!」

「わ、わかった」

 地面からは、蟻、百足、蜘蛛、蝗など様々な蟲が…空からは、蜂、蛾、蚊などの蟲達が無数にアーノルド達の横を通り過ぎていった。しかも、見た事が無い程の大きさである。そして、蟲達はモンスター達に襲いかかった。数の暴力…圧倒的な数に取り付かれて、モンスター達はあっという間に骨も残らない程になってしまった。蟲達に体を食い散らかされて悲鳴を上げるモンスター達を見て思わず目を塞ぎたくなった。

 モンスターハウスにいた数十もいたモンスター達が部屋を埋め尽くすほどの蟲達により蹂躙された。

ギィギィー

 蟲達がアーノルド達から距離を取った。

 そして、蟲達が現われた方向から一人の男性がまるで街中を歩くかのごとく近づいていた。低層とはいえ、あまりにも身軽であり、まるでお昼でも食べに行くかのようなスタイルに思えた。ただ、一つ言える事は、この場にいる蟲達同様に色素が抜け落ちて目が深紅であったという事だ。

「失礼、そこのお嬢さんがミーティシア・レイセン・アイハザードで正しいかね?」

 喋ろうと思ったが、呂律が回らなく頭を上下に振った。

「それは良かった。いやー、探しましたよ。8層で冒険者の遺留品を見つけた時は、既に死んでいると思いましたが、生きていてくれて本当に良かった」

 話を聞く限り、このアルビノの青年がアーノルドの言っていた救出部隊の人だと思って間違いないだろうと理解した。

「危ないところを助けていただきありがとうございます」

「いえいえ、仕事ですからお気にせずに。おっと、貴族のご令嬢相手に蟲達を出したままでは失礼でしたね。戻っておいで」

 その瞬間、蟲達がアルビノの青年目掛けて突っ込んでいった。まるで、先ほどモンスター達を捕食したかのような勢いだ。しかし、目を凝らせば、蟲達が影に吸い込まれているのが分かる。

「ランクB冒険者レイア・アーネスト・ヴォルドー…『蟲』の魔法の使い手。噂には聞いていたが、これがランクBの実力」

 圧倒的なまでの力量の差を見せつけられた。

 たった一人でランクD相当のモンスターが巣窟にしている場所を一瞬で制圧するあたり、常識から外れた存在だ。ランクBでこの実力…ランクCとは、一つしか違わないが超えられない壁を感じずにはいられない。

「一つ確認しておかないといけなかったんだ…ミーティシア嬢」

「は、はい。なんでしょう」

「貴方は、まだ清い体でおりますかな? 答えにくいかもしれませんが、本当の事を言っていただいて構いませんよ。万が一、彼に脅されて本音を言えないとかあっても気にしないでいいですよ。彼が何をしようと私のほうが先に彼を処理できますのでご安心を」

 レイアという冒険者の質問が何を意図しているか理解できた。

「だ、大丈夫です。アーノルドさんは、紳士でした!!」

 レイアがアーノルドとミーティシアを相互に見る。虚偽かどうか確認しているのだろうか。人の顔色一つでそこまで読み取れるものなのだろうか。

「ふむ、アーノルド君。今時、珍しい程の紳士ぶりです。いやー、良かった。ミーティシア嬢に万が一の事があれば…加害者には、生きてきた事を後悔させていいと言われたものでね」

 今まで命懸けで頑張ってきた仲間を悪く言うつもりはないけど、アーノルドが自暴自棄になって襲わなくて良かったと心の底から思っているのが、私にも手に取るように分かった。



 9層にいるならば下から上ったほうが早かったなと思ってしまうね。まぁ、生きて見つけられたから、結果オーライだ。

「あ、あのレイアさん。私達が今まで生き残る為に、従者であるウーノが尊い犠牲になってしまいました。せめて、遺留品だけでも回収したいのですがお手伝いお願いできませんか」

 何を言っているか理解に悩む。このような事態に陥ったにもかかわらず死んだ者の遺留品を探したいだと!! 『何言ってんだこいつ』と声をあげて文句を言いたいが紳士である私は、処世術も心得ているので嫌な顔を表に出さない。

「ここは危険ですので、一刻も早く迷宮の外に出ましょう。既に、10層への入口の位置は把握しております。あなたの帰還を今か今かと待っている人がいる事をお忘れなく」

「確かに、危険ですが。貴方程の実力者であれば、何が起ころうとも…」

 確かに、低層ならばどのような不測の事態でも私ならば対応可能である。だが、ミーティシアは大事な事を忘れている。私が冒険者である事を。無償で働く徳の高い人物では決してない。

 チッ

 高ランク冒険者をタダ働きさせようという見え透いた魂胆に嫌気がさしてしまい、思わず舌打ちしてしまった。

 影から無数の赤い光が見え始めた。無論、蟲達の瞳である。その様子をみて亜人であるタルトはいち早く身の危険を察した。

「ミーティシアさん!! だ、駄目ですよ。ほら、レイアさんも冒険者ですから無償というわけにはいきませんよ。まずは、迷宮の外に出て、それからギルドを通じて未帰還探索の依頼を出しましょうね!! そうしましょう。はい、決定!!」

「なら、お金は払います。ですから、ウーノの遺留品探しを一緒にお願いできませんか」

………
……


 美女の真摯な眼差しとは凶悪な武器だな。ギルド嬢といい、なぜ女はこんなにもえげつない攻撃を備え付けているんだろうね。まぁ、金をくれるというし。

「ランクB冒険者を雇うのは高いぞ」

「これでも、貴族です。お金は必ず工面いたします」

 こういう手合いは、必ず支払うだろうが。いつになるかわからないタイプで間違いないだろう。無論、実家はそれなり金持ちだろう…しかし、それは当主のある親の財産でミーティシア自身の金ではない事で間違いない。お小遣いという名目で貯蓄もあるだろうが、この私を雇うに足りるだけ持っているか疑問だ。

「悪いが、即金で頂こう。ミーティシア嬢が踏み倒すとは思っていないが、いつ金が手元に来るかわからないのは依頼とは言えない」

「わ、わかりました。手持ちの現金はありませんが、身に付けている宝石をお譲り致します。質に入れれば安くとも100万はするでしょう」

 貴金属は好きではないのだが…まぁ、安くても100万は悪くないな。なんせ、この依頼受けた瞬間に達成できるのだから。ボロ儲けだ。ミーティシアより身に着けていたペンダントと指輪を頂いた。

「まぁ、貴金属の類は好きではないですが…サービスしておきましょう。ちなみに、ミーティシア嬢は、ご自身の探索依頼に幾らの報酬がかけられているかご存知ですか?」

「いいえ。未帰還者の探索報酬は100万前後と聞いておりますので…恐らく、それくらいかと」

「随分とご自身を過小評価されていますね。まぁ、結構な条件を付けられましたが貴方に掛けられた探索報酬は、3500万セルですよ」

 ブゥーーーー

 アーノルドとタルトが金額を聞いて噴き出した。

 汚いな…まぁ、噴き出すのも無理もないと思うけどね。マーガレット嬢の話では、危険手当込みでアーノルド達が受け取っていた金額はパーティー全体で日当100万。ミーティシアと従者除く4人で分配していたから一人平均日当25万である。それと比べれば、たった数日の依頼で3500万セルを稼ぐとかアーノルド達にとっては夢のような話である。

「こ、これが格差社会」

「れ、レイアさん。サポーターとか必要じゃありませんか。馬車馬のように働きますよ」

「残念だが、間に合っている。で、ミーティシア嬢が言っているウーノという女性は、これの事かね?」

 私の影から巨大な蛞蝓が現れた。その口からゲロっと全裸のウーノが吐き出された。五体満足の姿で…。別に私が脱がせたわけじゃないのだが、全裸の女性を隠し持っていたと思われない事を願おう。

「う、ウーノ!? えっ!? でも、なんで裸!? 後、腕も確かにゴアグリズリーによって…」

「来る途中にゴアグリズリーに食われる直前だったので回収しておいた。本当ならば、蟲達のデザートにする予定だったのだが…喜べ、まだ生きているぞ。おまけに腕は、こちらで治療しておいたがまずかったか?」

 もっとも、治癒薬や『水』の治癒魔法なんて生易しい手段ではない。『蟲』の魔法での治癒だ。

 ミーティシアが涙を流して私に感謝を告げてきた。そして、ウーノを強く抱きしめて喜んでいる。気持ちは分からんでもないが、もっと壊れ物を扱うようにしたほうがいいと内心思った。まだ、治しきってないからさ。

 ボロリ

 ウーノの腕が床に落ちた。そして、腕の接続部からは白い蛆のような物がボロボロと落ちた。一瞬、何が起こったのか理解できなかったようだ。

「キャーーーー」

 ほら、腕がもげた。

「お、お嬢さ…ゴヴォ」

 乙女の悲鳴が迷宮に木霊した。

「あぁ、しばらく安静にしていないと腕がすぐ取れるぞと言っても遅かったね。折角、善意で治癒能力に長けた蛆蛞蝓ちゃんを使ってあげたのに。それと、治療魔法を掛けるなら早くした方がいいぞ。見つけた時ですら、半生半死だったんだ。治療無しでは長くは持たんぞ」

 蛆蛞蝓<<うじなめくじ>>…治癒能力に非常に優れた蟲であり、腕がちぎれた患者であろうとも遺伝子情報を読み取り再生させる程の治癒能力を持っている。無論、蛆蛞蝓の体を使っての擬似再生である。すなわち、蟲と体の一部を融合させるという事だ。腕程度ならば接合後、一週間程度安静にしていれば完全に元通りになる。素晴らしい事に見た目も完全に元通りだが…接合部は蟲から作っている代理品だ。まぁ、失った部位と寸分変わらぬ程の精度で復元するのだから、蟲と同化する程度の代償など安い。どうでも良い副作用だが…衣服だけ溶かす溶解液を分泌される。故に裸になるのだ。

「ひでぇ」

 アーノルドというリーダー格の男から信じられないような言葉が飛び出したのが聞こえた。無謀と勇敢を履き違えているとしか思えない。発言をする前に、それが言葉がどのような事を意味するか、よく考えて欲しい。

「迷宮で死にかけていた少女を救い。あまつさえ治療まで施し、生きて愛しの主君と再会までさせたのだ。それが酷いだと? そもそも、この状況を引き起こしたのはお前等だろう。責任転換も甚だしいぞ!!」

 私の苛立ちを感じ取り、千年百足がレイアの影から飛び出した。他にも、ジェノサイトキメラアント、アイアンキラービーが数百匹飛び出した。

 千年百足<<せんねんむかで>>…『モロド樹海』の42層に出現する超大型百足。体長30mにも達し、強力な顎で大木をも真っ二つ、強靭な外皮で鋼鉄製の武器では傷すらつかない、さらに鉄をも融解させる強力な毒素を振りまく。昆虫であるがゆえに痛覚がなく、殺しきるには魔法を使った火力でのごり押しが望ましい。

 ジェノサイトキメラアント…『モロド樹海』の39層に出現する殺人蟻。10cmにも及ぶ大型の蟻で、一度食いついたら死んでも離さない。異名通り、頭と体を物理的に泣き別れにしても死なずに、相手を食いちぎる。顎の力は、鉄の鎧がひしゃげる程である。ゆえに、軽装備でこの蟻を相手にするのは望ましくない。

 アイアンキラービー…『モロド樹海』の44層で出現する鋼鉄蜂。5cm程と普通の蜂と比べて少し大型である。大群で襲いかかり、相手を針で刺す事でアナフィラキシーショックを引き起こす事で対象を仕留める。何より全身が鋼鉄でできており物理攻撃や魔法攻撃の効果も芳しくない。その為、出会ったら逃げる事が望ましい。幸い、鋼鉄である事から移動速度は人間が走る速度より少し遅い程度だ。また、長距離の移動を行う事ができない為、巣からは離れましょう。

 本来、昆虫独自の色をしているはずだが全て真っ白で深紅の瞳をしていた。

 多少、こちらが甘い顔をすればつけあがる。依頼の救出対象であるミーティシアが言うから、多少は寛容であったが…救出対象ですらなく、このような状況を作り出した本人が言っていいセリフではない。

 そんなに死にたいのだろうか。

「も、申し訳ありません。全て、パーティーリーダーの私の責任です」

「忘れるな。ミーティシア嬢の救出は依頼されている。だが、他のメンバーについては、依頼すらされていない。次は、止めぬぞ」

 真っ青な顔をしたアーノルドが土下座して地面に額をこすり付けて血が滲むほど謝罪したので許した。謝罪がなかった場合には、残念ながら蟲達に美味しく召し上がられていただろう。

「おぃ、サポーター。早く、ウーノとやらを治療してやれ。治療薬くらい余っているだろう?」

「ご、ごめんなさい。ここに来るまでに全部使い切っちゃって。それに、腕一本を再生させられる程の治療薬はさすがに用意してないです」

 確かに、腕一本直すほどの治療薬ともなれば、軽く1千万はするだろうね。

「では、ミーティシア嬢…早く治癒を行ってください。今から急いで行ったとしても10層のトランスポートまでは2時間近くかかります。それまで彼女が持つとは思えません」

「わ、私は…治癒魔法は使えないんです。攻撃魔法しか覚えてなくて」

「そうですか、でしたら、従者が死ぬまでここで待ちましょう。せめて、最期くらいは主と一緒に居たいだろうからね。さぁ、心残りがないようにしかり言葉を交わしなさい」

 ミーティシアがウーノに「あなたのおかげで無事に外に出られます」と伝えられるだろう。これで従者も報われるというものだ。本当にいい事をした後は気分がいい。さて、遠慮なく最期の別れを告げるといい。

 きっと、この話をすれば『レイア様が紳士過ぎる』とギルド本部で話題になる事間違いなしだと本気で思う。

「えっ!?」

 私の発言に本気で不思議そうな顔をしているミーティシアがいる。例えるならハトが豆鉄砲を食らったような顔だ。何が言いたいかさっぱり理解できない。一分一秒を大事にしなければいけないこの時をそんな顔をして無駄にするのはどうかと思う。

「「……」」

 アーノルド、タルトともに無言を貫く。二人共何か言いたそうだが…何が私の地雷を踏み抜くかわからないので無言を貫いている。当然といえば、当然である。この場において、発言権があるのはミーティシアと私のみである。

「ウーノを助けてください。お願いします」

 恥も外聞もない…容姿端麗なエルフとのクォーターであるミーティシアが涙と流して懇願した。綺麗な顔がぼろぼろである。ここで、『なんでもします』なんて言ったら本当にエロゲー的な展開なのだがね。

「治癒魔法は、不得意でね。『蟲』の魔法による治療になるよ」

「か、構いません。ウーノが生きていてくれるなら」

 本人の了承もなしに私の『蟲』による治療を望むとは…存外鬼畜だな。まぁ、人体に有害な副作用とかはないからいいんだけどさ。後から本人が聞いて発狂でもしなければいいが、そこまでは責任をみきれないぞ。

「1000万セル…払える?」

「さ、先ほど貴方にお支払した貴金属以外に私に払える物は。迷宮の外に出た際に必ずお支払いいたします。ですから、お願い致します」

 いつでもニコニコ現金払いが信条の私である。しかし、死にかけの少女を腕に抱いて、容姿端麗の女性が涙を流して平に懇願してくるその様子…これでは、まるで私が悪役みたいではないか。

 おかしい…遺留品どころか、生きたまま従者と再会させてあげて最期の別れを言う機会まで作ったというのにどういう事だ。まるで理解できない。迷宮では何が起こるか分からないというが、今まさに何が起こっているか理解できない。

 ランクAに最も近い冒険者の一人である私が低層において不測な事態により混乱していた。流石は、神が作ったと言われる迷宮である。

「はぁ~、仕方がない。助けましょう。男性に生まれなかった事を感謝するんだね。涙は女の武器か、本当に厄介だ…後、お金は迷宮を出たらご両親にすぐに依頼してくださいよ」

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 再び蛆蛞蝓ちゃんを呼び出し、ウーノを飲み込ませた。どこからどう見ても捕食されているように見えるが、治療の一環です。ウーノを飲み込んだまま、影の中に潜り込んだ。

 異物と一緒に長時間格納するのは、気分が悪いから大嫌いなんだが…蛆蛞蝓ちゃんを引き連れて歩くのも大変だ。金の為だから我慢しよう。



 ぐぅ~

 出口に向かい歩き出す事、30分。道中のモンスターたちは悉く私の蟲達の餌食になり安全で快適な旅である。

「なんだ、腹をすかしていたのか。水も食料もあるが食べるかね?」

「昨日から殆ど何も食べてなくて。ウーノの治療に加えて、本当にありがとうございます」

「ありがとう。もう、おなかペコペコで歩くのも辛かったんです」

「あっ、お、おれは大丈夫です。後2時間くらい余裕です」

 アーノルドだけが察した。仮にも私の事を知っていたのだ。その私が食事と言ったのだ…何が出てくるかを知っていたのだろう。

「水、炭酸水、レモン水なんでもあるぞ。流石にアルコール系は、持ち合わせていないがな。後、食い物はタンパク質が豊富な物が沢山あるぞ」

 その瞬間、私の影より奇怪な蟲が飛び出してきた。品種改良を繰り返し生み出す事に成功した、美味しく食べる事ができる蟲達だ。地球には、腹に蜜を貯める蟻が存在していた。地球の蟻にできて、この世界の蟻にできない事はない。という事で試行錯誤の上で作り上げた蟲達だ。しかも一匹当たり一リットル以上の水を貯める事ができる。しかも大気中の水分を集める能力を保有させる事で水に困る事はない。

「安心しろ。モンスターは毒素を含んでいて食べられないのが殆どだ。しかし、蟲系は数少ない例外にあたる。品種改良も行っているし、ちゃんと『水』の魔法が使える奴にも調べてもらって飲料水として問題ないと太鼓判をもらっている」

 むしろ、モンスターが持っている魔力を吸収できると嬉しい副作用もあり魔力回復が捗る。

「わ、私、急に喉が潤ってきましたのでタルトさん、どうぞ」

「私も後2時間くらい余裕です。さぁ、頑張って外に行きましょう」

「そうか、少ないながら魔力回復もできる一粒で二度おいしい飲料水なんだが。じゃあ、飯でも食べるかね? 食べやすいようにチャーハン味やカレー味の物を用意しているぞ。無論、副作用として若干だが治癒薬と同じ効果が得られるが…」

 タルトとミーティシアが私の足元にいる大型の蝗を見た。おなかが膨れており…それを見ただけでこの後の展開が読めるあたり、冒険者として一歩成長した事が示される。

「「大丈夫です!!」」

 この万人に受けない蟲達こそ、私が『モロド樹海』における滞在時間の秘密である。食糧に困る事がない…しかも腐らないというか、いつでも鮮度抜群、素晴らしい副作用。昔、これを商売にして儲けようと思ったが、依頼で従軍した際に絶大な不評をかったので市販をするのをやめた。




 10層のトランスポートより無事に帰還が果たされた。

「ミーティシア嬢分は、依頼料に含まれているからいいが。お前等は、ギルド本部経由で私に金を届けさせろ」

 トランスポートの使用料金までモンスターから逃げる際になくしてしまい無一文だったこいつら分を私が立て替えてあげた。無論、代金を踏み倒す気はないだろうが一応警告しておく。

「間違いなく、確実に代金を届けます。むしろ、今すぐ持ってきてギルド本部で確実にお渡し致します!!」

「右に同じく!!」

 アーノルドとタルトは、全力で首を縦に振った。

 ミーティシア含み涙を流すほど感動しているのはいいが、さっさとギルド本部に報告に移動したい。そして、早く私の影の中にいる蛆蛞蝓で治療を受けているウーノを吐き出して宿で眠りたいです。

 そして、ミーティシアを連れて、ギルド本部にやってきた。

 ギルドについた途端、マーガレット嬢が『お待ちしておりました』とミーティシアと一緒に別室に通された。その先には、マーガレット嬢とギルド長、やたら偉そうな貴族のおっさん…恐らく、ミーティシアの父親と思える人物が待っていた。

「ミーティシア!! よく無事に帰ってきた」

「お父様、お父様、お父様」

 どうやら、ミーティシアは父親の方がハーフエルフだったのか。珍しいな…ハーフエルフは女性が相場と決まっているが、こういう事もあるのか。というか、ハーフエルフで見た目がおっさんという事は、何歳だよ…この父親は。

 生存が絶望視されていた娘との感動の再会だ。いやー、本当にいい事をした。

 感動の再会シーンの裏で、私は親指と人差し指で円を作り『金の準備はできているか』とマーガレット嬢に密かにサインを送った。マーガレット嬢もこちらの意図をくみ取り、軽く頷いた。

「レイアといったか。娘の救出していただき感謝する。この場にいるのが娘だけだという事は、ウーノは逝ったか…」

「いえ、お父様。ウーノは、生きております。ただ、ちょっと……」

 チラチラ

 なぜか、私を見てくる。まさか、私にウーノの状態を説明しろというのか。いや、まさかそんなはずはないよね。マーガレット嬢がこのやり取りでどういう状況にウーノが置かれているかなんとなく察したようだ。


 『ギルドの不手際でこうなったんだ。マーガレット嬢が説明しろ』と目で訴える。

 『いやよ!! どうせ、レイア様の蟲の中にいるんでしょう。娘さんの従者は、大怪我したので蟲を使って治癒させちゃいました!! なんて言えるはずがないでしょう。年頃の女性が肉体の一部とはいえ、蟲と同化したとか説明できないわよ』と目で言い返される。

「なんだ、どうした?ウーノは生きているのか。ならば、声を掛けてやらねばいけないだろう。お前を守る為に、きっと無理をしたのだろう。貴族以前にお前の父親として感謝の言葉をかけてやりたい」

 やばい。この人、想像以上に良い人だ。話を聞いていると義理と人情のある人だとよくわかる。

 とはいえ、そんな事が私に関係あるわけじゃないのでね。

 報酬の件もあるし、面倒だけど説明することにした。

「ウーノという女性ですが、私が発見した時には既に死にかけておりましたので、私の魔法を用いて治療をいたしました」

「そうかそうか、貴殿に感謝を。ウーノの治療については別途報酬をだそう。いくらだ?」

 冒険者というのをよくわかっているご様子だ。報酬の話をすぐにしてくれるのだ。うれしい限りである。

「報酬額については、ミーティシア嬢と既にお約束しておりますので、直接伺ってください」

 父親の目線がミーティシアに向かった。当然、報酬はいくらかと聞いている眼である。

「い、1000万セルです。お父様」

 この額を高いか安いかで見るかは、相手次第である。たかが従者に一千万…しかし、『水』の魔法が使える事を考えれば悪くない額ともいえる。

「ふむ、良いだろう。私がその1000万セルを立て替えよう。ウーノには、これからもミーティシアの従者として頑張ってもらわねばならないからの。ミーティシアとの関係や『水』の魔法が使えるあたり、1000万で命が救えたのなら安いもんじゃ」

「ありがとうございます。報酬につきましては、ギルド経由にて私宛に」

 こうして、貴族のお偉いさまとの面談を終えた。その後、すぐにウーノをギルドの一室で吐き出して、ギルドお抱えの治癒魔法の使い手に委ねた。



 ミーティシアと別れた翌日、報酬を受け取るべくギルド本部に訪れた。

「報酬の3500万に加えて、1000万…さらに、ミーティシア嬢から100万相当の貴金属を巻き上げたそうね。呆れるわ」

 たった数日で、悪くない報酬額だ。ギルド本部にいる連中がカウンターに置かれた金を見て思わず息を飲む。金額に目がくらみ、ギルド本部を出たとたんに闇討ちをかけてくるバカも少なからず存在する。だが、そんな連中は悉く謎の失踪を遂げる事になった。

「労働に対する正当な報酬だと認識しているが。嫌なら、依頼しなければいい」

「それが出来ない状況と理解した上で報酬額を釣り上げてきておいて、よく言うわ。まぁ、一応こちらの無理な依頼を引き受けてくれたんだから感謝しておくわ」

「急にデレても私は落とせませんよ。そんな安い男じゃないもんでね。後、美味しい依頼ありがとうございました」

チッ

 マーガレット嬢の舌打ちが聞こえた。

 迷宮から救った者たちが今後どのような生き方をするかしらないが、再び迷宮に潜ることがある場合には、今回の事を教訓にし、無理のない迷宮ライフを過ごすことを望む。
未帰還者探索については、これにて完了です。

一旦は、連続投稿がストップします。次の題材とある程度執筆が完了したら投稿を開始致します。

この世界における魔法の紹介は、ご紹介する予定はありますので
しばらくお待ちを。
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