日本人の長時間労働は先進国でも最悪のレベルだ。働き過ぎの是正は労働者の命を守るのみならず、家庭と仕事の両立支援策としても有効であり争点の一つだ。
長時間労働などが原因でうつ病などの精神疾患となり労災請求した人が二〇一五年度、初めて千五百人を超えた。ここ十年で倍以上になっている。企業約千七百社が回答した厚生労働省の調査によると、「過労死ライン」の月八十時間を超えて残業した正社員がいる企業は二割超に上った。
国際労働機関(ILO)によると、週当たりの労働時間が四十九時間以上の長時間労働者の割合は、日本は二割超。フランスやドイツのほぼ倍だ。
政府は六月上旬に閣議決定した「一億総活躍プラン」に長時間労働の是正をうたい、「欧州並み」を目指すことを盛り込んだが、実現への道筋は見えない。
自民党は公約で「長時間労働を是正する」と記すのみ。公明党もプランを踏襲し、時間外労働規制について「検討を進める」とするだけだ。
対して、民進、共産、社民の三党は、残業時間の上限を法律で規制することや、勤務終了後から次の勤務開始までに最低十一時間空けなければならないとする「勤務間インターバル規制」を設けることを打ち出している。
日本では現行、労使が協定を結べば残業時間は“青天井”ともなる。野党が創設を訴える制度はフランスやドイツなどで、すでに導入されている。連合などは導入を求めるが、経済界は「事業の柔軟性を失う」と強く反発する。
長時間労働の是正は、働く人の命と健康を守るのみならず、親などの介護で仕事を辞める介護離職者を減らすとともに、仕事と子育ての両立を容易にする。少子化対策としても効果は高い。
政府が昨年提出した、働いた時間ではなく成果に応じ賃金を支払う「残業代ゼロ法案」について、与党は先の国会で審議入りを見送った。長時間労働を促すとの懸念が強く、選挙を前に争点化することを避けたのか。
同制度の導入について自民、公明の与党は公約で触れていない。 おおさか維新の会は導入に賛同している。導入に反対を明記しているのは、共産、社民両党だ。
暮らしを守る重要課題に、実効性ある対策を打ち出しているのはどの政党か。選挙戦できっちりと見極めていきたい。
この記事を印刷する