派遣社員と正社員の違い

      2016/06/08

スーツ姿の考える男性 [モデル:Tsuyoshi.](S)

派遣社員は正社員よりも給料が高いと聞いたけど、実際にはどっちが儲かるの? また、派遣社員の雇用は安定しているの? 派遣社員は技術力がなければ仕事を失うと聞いたけど、本当なの? 派遣社員から正社員へ昇格できるチャンスは?

このような疑問を持っている方も多いと思う。

今回は、そのような疑問を持つ人のために厚生労働省が平成25年9月5日に発表した「平成24年度派遣労働者実態調査の概況」(平成28年5月1日時点での最新情報)にもとづいて派遣社員の実態を解説していきたいと思う。

 

 

1.派遣社員の雇用理由と産業別就労割合

1-1.派遣社員の雇用理由

 

欠員補充など必要な人員を迅速に確保できるため (64.6%)
一時的・季節的な業務量の変動に対処するため (36.7%)
専門性を活かした人材を活用するため (34.2%)
軽作業、補助的業務を行うため (25.2%)
雇用管理の負担が軽減されるため (14.9%)
常用労働者数を抑制するため (14.6%)
自社で養成できない労働力を確保するため (10.2%)
その他 (5.7%)
勤務形態が常用労働者と異なる業務のため (4.7%)
社内を活性化するため (3.3%)

 

1-2.産業別でみた全労働者に対する派遣社員の就労割合

 

情報通信業 (9.0%)
金融業、保険業 (5.3%)
学術研究、専門・技術サービス業 (4.7%)
製造業 (4.6%)
建設業 (3.9%)
不動産業、物品賃貸業 (3.6%)
卸売業 (3.0%)
サービス業(他に分類されないもの) (2.8%)
運輸業・郵便業 (2.2%)
卸売業・小売業 (2.0%)
生活関連サービス業、娯楽業 (1.8%)
電機・ガス・熱供給・水道業 (1.6%)
小売業 (1.5%)
教育、学習支援業 (1.3%)
鉱業、採石業、砂利採取業 (1.1%)
医療、福祉 (1.0%)
宿泊業、飲食サービス業 (0.7%)

派遣社員の雇用理由として、欠員補充や一時的な業務量に対処する理由が最も多い。やはり、その背景には事業所側として雇用の調整が容易なためだと思われる。

しかし産業別でみた場合、派遣社員の割合が高いのは「情報通信業」や「学術研究、専門・技術サービス業」である。

これらの産業が派遣社員を雇用する主な理由は、専門的な技術をもつ人材を必要としているからだと思われる。

 

 

 

 

2.派遣社員の契約期間および、通算派遣期間

2-1.派遣社員の契約期間

 

1日以内 (0.3%)
2日以上1週間以下 (1.4%)
1週間を超え30日以下 (2.2%)
30日を超え2か月以下 (7.5%)
2カ月を超え3か月以下 (42.2%)
3か月を超え5カ月以下 (17.3%)
6カ月を超え1年以下 (14.8%)
1年を超え3年以下 (7.9%)
3年を超える期間の定めがある (0.5%)
期間の定めがない (5.9%)

 

2-2.通算派遣期間(契約が継続して更新された場合にはその契約期間を通算したもの、そうでない場合は現在の派遣契約期間)

 

1日以内 (0.1%)
2日以上1週間以下 (0.3%)
1週間を超え30日以下 (0.9%)
30日を超え2か月以下 (3.1%)
2カ月を超え3か月以下 (7.6%)
3か月を超え5カ月以下 (13.1%)
6カ月を超え1年以下 (20.1%)
1年を超え3年以下 (31.7%)
3年を超える期間の定めがある (17.2%)
期間の定めがない (6.0%)

契約期間では「2か月から3か月以下」が一番多い。また、通算派遣期間では、「1年を超えて3年以下」が一番多い。

契約期間と通算派遣期間のいずれで見ても、派遣社員の雇用は不安定だと考えられる。

 

 

 

 

3.派遣社員に対しての教育訓練・能力開発を行った事業所の割合

 

実施した (66.8%)
実施しなかった (29.7%)
不明 (3.5%)

派遣社員に対して教育訓練などを実施ている事業所の割合が高いのは、やはり「1-1.派遣社員の雇用理由」でみたように、専門性を必要とされているからだと考えられる。

 

 

 

 

4.派遣社員の中途解除理由

 

中途解除したことがあった

(全体)

(19.9%)
中途解除したことがあった

(技術・技能に問題があった)

(42.5%)
中途解除したことがあった

(勤務状況に問題があった)

(39.2%)
中途解除したことがあった

(欠員の補充が可能になった)

(9.8%)
中途解除したことがあった

(事業所の事業計画に急な変更・中止が発生した)

(8.6%)
中途解除したことがあった

(事業所の他の労働者との人間関係に問題があった)

(6.0%)
中途解除したことがあった

(その他)

(26.4%)
中途解除したことはなかった (73.8%)
不明 (6.3%)

派遣社員を中途解除したことがある事業所の割合は、2割程度でしかない。

しかし、中途解除した理由で割合が最も多いのは「技術・技能に問題があった」ということである。

ここでも派遣社員には専門的なスキルが求められていることがわかる。

 

 

 

 

5.正社員制度にする事業所の割合

 

正社員に採用する制度がある (13.0%)
正社員に採用する制度はない (82.9%)
不明 (4.1%)

派遣社員から正社員に昇格するチャンスはほとんど望めないということがうかがえる。

 

 

 

 

6.派遣社員を雇用している事業所の今後の方針

 

派遣社員の割合を増やす (3.7%)
派遣社員の割合を変えない (21.7%)
派遣社員の割合を減らす (18.0%)
未定 (51.4%)
不明 (5.2%)

派遣社員の割合を増やす事業所と派遣社員の割合を変えない事業所を合計しても、3割にも満たない。

派遣社員としての仕事は今後、期待しない方がよいと考えた方がよさそうである。

 

 

 

 

7.派遣社員の技術・技能の習得方法

 

派遣先で就業中の技能蓄積 (51.7%)
派遣先の教育訓練 (20.9%)
派遣関係以外の勤務地で就業中の技能蓄積 (18.4%)
独学 (17.9%)
派遣元の教育訓練 (15.2%)
通学制の学校・専門学校 (14.1%)
派遣関係以外の勤務地で教育訓練 (6.6%)
公的機関が実施する職業訓練 (5.4%)
その他 (7.9%)
不明 (12.3%)

多くの派遣社員は、派遣先での就業中と教育訓練で技術・技能を習得していることがうかがえる。

 

 

 

 

8.1週間の実労働時間数階級別派遣社員割合

 

働いていなかった (2.2%)
20時間未満 (4.9%)
20~25時間未満 (3.6%)
25~30時間未満 (3.2%)
30~35時間未満 (7.7%)
35~40時間未満 (29.4%)
40~45時間未満 (28.5%)
45~50時間未満 (11.7%)
50~60時間未満 (5.3%)
60時間以上 (2.0%)
不明 (1.2%)

※「 平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況 」より 

派遣社員の1週間の労働時間は「35~40時間未満」と「40~45時間未満」の割合が最も多く、正社員とあまり変わらないといえそうである。

 

 

 

 

9.平成26年9月の1カ月間の賃金総額階級別派遣社員割合

 

支給なし (3.4%)
10万円未満 (10.0%)
10万円~20万円未満 (43.5%)
20万円~30万円未満 (31.1%)
30万円~40万円未満 (7.0%)
40万円~50万円未満 (3.0%)
50万円以上 (1.0%)
不明 (1.1%)

※「 平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況 」より 

派遣社員の1カ月分の賃金は「10万円~20万円未満」が約4割と最も多く、年収で計算すると、だいだい「120万円~240万円」ぐらいになるといえそうである。

また、「20万円~30万円未満」が約3割で「30万円~50万円未満」が1割と、派遣社員の業務内容でも年収が大きく変わってくるといえそうである。

 

 

 

 

10.派遣社員の各種制度等適用状況割合

 

雇用保険 (83.8%)
健康保険 (81.1%)
厚生年金 (76.5%)
企業年金 (3.6%)
退職金制度 (10.9%)
財形制度 (4.0%)
賞与支給制度 (15.8%)
福利厚生施設等の利用 (26.6%)
自己啓発援助制度 (13.2%)
フルタイム正社員への転換制度 (4.7%)
短時間正社員への転換制度 (1.0%)

※「 平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況 」より 

「雇用保険」や「健康保険」などの社会保険は充実しているといえそうである。

しかし、ボーナスなどの賞与支給制度を適用している事業所はほとんどないといえそうである。

 

 

 

 

11.派遣社員の苦情の申し出の有無について

 

苦情を申し出たことがある

(全体)

(14.1%)
苦情を申し出たことがある

(人間関係・いじめ)

(25.4%)
苦情を申し出たことがある

(賃金)

(23.0%)
苦情を申し出たことがある

(業務内容)

(21.6%)
苦情を申し出たことがある

(指揮命令系統)

(10.9%)
苦情を申し出たことがある

(就業日・就業時間・休憩時間・時間外労働・休暇)

(10.1%)
苦情を申し出たことがある

(派遣期間)

(2.3%)
苦情を申し出たことがある

(安全・衛生)

(1.1%)
苦情を申し出たことがある

(セクシャルハラスメント)

(0.8%)
苦情を申し出たことがある

(個人情報の保護)

(0.7%)
苦情を申し出たことがある

(妊娠・出産による不利益な扱い)

(0.2%)
苦情を申し出たことがある

(その他)

(3.5%)
苦情を申し出たことがある

(不明)

(0.2%)
苦情を申し出たことがない (84.9%)
不明 (1.0%)

苦情を申し出た派遣社員は1割近くと、ほとんどいないと言えそうである。

しかし、苦情で一番多いのは人間関係についてであり、その次は業務内容と続いている。

派遣社員も正社員と同じ悩みを持っていると考えられる。 

 

 

 

 

12.派遣社員の派遣元への要望割合

 

要望がある

(全体)

(48.8%)
要望がある

(賃金制度の改善)

(56.5%)
要望がある

(継続した仕事の確保)

(42.6%)
要望がある

(中途解除された場合、他の派遣先の確保)

(25.9%)
要望がある

年次有給休暇を取りやすくしてほしい)

(15.7%)
要望がある

(福利厚生制度の充実)

(15.3%)
要望がある

(苦情・要望への迅速な対応)

(13.4%)
要望がある

(教育訓練の充実)

(11.8%)
要望がある

(安全管理・健康管理の充実)

(5.5%)
要望がある

(労働・社会保険への加入)

(3.3%)
要望がある

(派遣前の事業所訪問等を求めないよう派遣先に説明してほしい)

(1.7%)
要望がある

(その他)

(5.3%)
要望がある

(不明)

(0%)
要望がない (50.8%)

派遣社員の半分近くが派遣元へ要望を申し出ている。その内容の多くが賃金に関することと、雇用についてである。

つまり、派遣社員の雇用は不安定であることがうかがえる。

 

 

 

 

13.派遣社員の今後の働き方の希望

 

派遣社員として働きたい (43.1%)
派遣社員ではなく正社員として働きたい (43.2%)
派遣社員ではなくパートなどの正社員以外の就業形態で働きたい (4.2%)
その他 (4.5%)
不明 (4.9%)

意外にも、派遣社員の4割ほどの人がいまの雇用形態を望んでいる。

派遣社員のメリットとして、好きな勤務地や勤務期間、勤務時間を選べることや、私生活との両立が図れること、仕事を選べることなどがその理由と考えられる。

 

 

 

以上である。

どうだろうか。派遣社員でも賃金に格差があることや雇用が不安定であること、正社員へ昇格できるチャンスもほとんどないことが見てとれる。

しかし、このまま派遣社員として働きたいと考える人もいる。

派遣社員として働くか、正社員として働くかは人それぞれだと思う。どちらの雇用形態で働こうか悩んでいる方はそれぞれのメリット・デメリットを比較検討し、ライフスタイルに合わせて決めてほしい。

 

 

 

 

まとめ

 

1. 派遣社員の約4割は、2か月から3か月以下で契約期間を結んでいる。

2. 派遣社員の通算派遣期間は、1年を超え3年以下が約3割で最も多い。

3. 派遣社員を正社員にする制度がある事業所の割合は、1割程度しかない。

4. 派遣社員の割合を増やす方針がある事業所は1割もない。

5. 派遣社員の多くの人は、賃金や雇用の確保を望んでいる。

6. このまま派遣社員として働きたいと考える人は4割ほどである。

 

 

 

 

 - 派遣社員