米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズに再びスポットライトが当たった。脚光を浴びたのは、自動車ビジネスに革新をもたらす成功物語ではない。むしろ、技術革新のスピードがはらむ危うさからドライバーの安全、そして企業の信用やブランドをどう守っていくか、という重大な問題だ。「自動運転中」のテスラ車で起きた死亡事故は、自動運転ブームに沸く自動車産業全体にも警告を発している。
■自動運転モードの安全性強調
死亡事故が起きたテスラ車は、セダン型の「モデルS」。ドライバーが「自動運転モード」を作動させている最中にトレーラーの下に衝突した。米メディアの間では、自動運転中のテスラ車の事故で死者が出たのは初めてと騒がれている。
事故がシステム上の不備によるものか分かっていないが、光が非常にまぶしい状態で、車両システムも運転手もトレーラーに気付かず、ブレーキがかかった形跡がなかったという。この事故規制当局の米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査に入っている。
「自動運転モードには1億3000万マイル(約2億1000万キロメートル)以上の走行実績があり、初めて死亡事故が起きた。米国では9400万マイルに1件、死亡事故が起きている」――。テスラはNHTSAの調査を受け、こんなコメントを出している。つまり、自動運転モードの安全性を強調しているわけだ。
■強気の姿勢にはリスクも
しかし、この強気の姿勢には、リスクがあるかもしれない。少しでも誤解を招けば、米国の消費者から強い反発を受けかねないからだ。
典型例が2009年から2010年にかけて米国などで大規模リコールを起こしたトヨタ自動車である。トヨタは米国内でも「品質の優等生」という評価を受けていたが、リコール騒動が広がるにつれ、トヨタに対する視線は厳しくなった。
米規制当局は、最終的にトヨタ車の電子制御装置に欠陥はなかったとの調査結果をまとめたが、一連の騒動はトヨタにとっては痛手だった。ある日本車メーカー大手の幹部は当時、「トヨタは最初の対応が遅れたのではないか。風向きが変わり始めたのは、(社長の豊田)章男さんが米議会で直接説明してから。米国の消費者がいったん怒ると、なかなか鎮まらない」と話していた。