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[FT]ファルージャ奪還も予断許さず 政治力学の変化必要(社説)

2016/7/1 14:15
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 イラク軍が今週、米軍の空爆支援を受けてファルージャを奪還したことは、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いにおいて最も重要な勝利の一つとなる。首都バグダッドから40キロの位置にあるファルージャは、2003年の米国主導のイラク侵攻直後にISの前身のアルカイダ系武装勢力に支配されて以来、イラク国内の紛争の戦況を示す存在となっていた。ファルージャ攻防戦は3度目だった。しかし、イラクの政治力学にも大きな変化が生まれないかぎり、これが最後とはなりそうにない。その政治の前線に、心強く思えるような兆候は乏しい。

ファルージャをパトロールするイラク政府のテロ掃討部隊=AP
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ファルージャをパトロールするイラク政府のテロ掃討部隊=AP

 ISは現在、14年にカリフ制国家の樹立を宣言した支配地域全体で軍事的圧力を受けている。シリア領内の支配地域では、ロシアの支援を受けるシリア政府軍が南西からISの主要拠点ラッカに向かって前線を押し上げる一方、米国の支援を受けるシリア反政府勢力が北から南下し、トルコ国境地帯のISの補給路を脅かしている。

 イラクではファルージャ制圧により、今後さらに厳しい戦いに臨むであろうイラク軍に必要な士気の高揚がもたらされる。特にISが本拠地とし、ファルージャの10倍の面積を持つモスルに照準が向けられるなか、イラク政府がファルージャ陥落後の人道危機にどう対応するかが、イスラム教スンニ派住民の信頼と支援を勝ち取るうえで極めて重要になる。イラク軍は、奪還したファルージャで宗派対立にこれ以上、火をつけずに治安維持ができることを示す必要がある。

 だが、これまでのところはお粗末だ。ファルージャでの戦闘が激しさを増すなか、アバディ首相は脱出する住民に安全な避難ルートを確保しようとした。だが、イランに支援されるシーア派民兵が陣取る外側の検問エリアで、恐ろしい虐待があったと報じられている。シーア派民兵は、一般市民であってもスンニ派を全てスパイとして扱いがちだ。2つの敵に挟まれた数万人の一般市民は、再定住先の確保とともに虐待からの保護を必要としている。

 中東域内、そして域外での情報機関による警戒の強化も求められる。トルコ・イスタンブールの空港で今週起きた自爆テロ事件が悲劇的にあぶり出したように、戦場でのISに対する圧力の揺り戻しがテロ攻撃の形で他国に及ぶ危険がある。

 より長期的には、過激主義の根源を絶つうえで、分断したイラク社会に一つの結束した国としての共通意識を高めさせる必要がある。現時点で各武装勢力──クルド人、スンニ派戦闘員、シーア派民兵、政府軍──が共通の軍事的目標を持っている。それぞれを支援する国外勢力についても同じで、その目標はISの撲滅だ。だが、政治的目標について同じことは言えない。このあまりにも大きな落差が残るかぎり、ISの脅威の根絶は見通しがたい。イラクで、そしてなかんずくファルージャでも繰り返し示されてきたように、シーア派至上主義の政策によって疎外されれば、スンニ派住民は政府の取り組みを支持しようとしない。

 この点に関する米国の影響力は、無謀な政策から自己満足の政策へと振れた10年の後で陰っている。だが昨年、危険な分裂を高めるマリキ首相が退陣するまで空爆支援を停止するとしたオバマ米大統領の判断は正しかった。後継のアバディ氏はマリキ氏よりもコンセンサス重視だ。しかし、アバディ氏は治安部隊の再編、北部のクルド人との石油取引の確保、腐敗政治家の追放とテクノクラートの登用において既得権益の壁に阻まれている。これらの改革が実行に移されれば、長年の宗派支配によって引き起こされた損害の回復につながりうる。ISとの軍事的戦いに焦点を合わせることは重要だが、それだけでは不十分だ。

(2016年7月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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