今回は日本酒の分類による違い、そして自分に合った美味しい日本酒銘柄を見つけるための基礎知識を『2016 ミス日本酒』北海道代表の瀬川理惠さんにわかりやすく教えていただきます。
日本酒初心者の方は純米酒とか大吟醸の違いがよくわからなかったりすると思います。そんなときは、とりあえずこの表をみてください。
この表から自分が求めている味がどの分類に当てはまるかを大まかに把握しつつ、さまざまな銘柄を飲んでみると、自分にぴったりの日本酒がきっと見つかるはずです。
自分に合った日本酒がわかり、料理によって飲み分けたりできるようになると世界が変わります。食事がもっと楽しくなります!
日本人の舌に合うのは、やはり日本酒
みなさんは、『日本酒』に対してどんなイメージがありますか?
すぐ酔っぱらっちゃう、分類が複雑でよくわからない、料亭とか小料理屋で飲むもの、敷居が高い……う〜ん、やっぱり日本酒って、なんだか難しいイメージがどうしても拭えないですよね。
しかし、瀬川さんはこう語ります。
「日本酒の主成分はお米です。お米を主食としている私たち日本人の舌に合わないはずがないと思いませんか?もっと日本酒を身近に感じてもらえたら…!」
と。
冒頭から日本酒愛が止まらないこちらの美女が、『2016 ミス日本酒』北海道代表の瀬川理惠さん。
ミス日本酒とは、日本酒を通して日本の魅力を国内外へ伝えるアンバサダーを選出することを目的としたコンテストだそう。
ミス日本酒の方々は、実際に日本酒の講義を受けたり、蔵元を訪問したりと、しっかりとした日本酒の知識をお持ちなんだとか。その他にも、生花や着物の着付けなど、日本文化を全般的に学ばれたという瀬川さんに、日本酒の基礎知識を教えてもらいます。
せっかくなら日本酒を飲みながらお話を……ということで今回お邪魔したのは、「日本酒BAR 塩梅」中目黒店。
今年の5月1日から、2,800円でプレミアム地酒の飲み放題が楽しめるプランがスタートしたとのこと。しかも、時間無制限らしいので、瀬川さんにたっぷり飲んでたっぷり語っていただきましょう!
日本酒を飲むなら絶対に知っておきたい「磨き」の重要性
~1杯目「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」~
———空前の「獺祭ブーム」でしたよね! 日本酒好きとしてはいかがですか?
瀬川さん:
いいことだと思います。色々な意見はありますが、それまで日本酒を飲む習慣のなかった人たちにも、美味しさをわかってもらえたことは、日本酒好きとして嬉しいですね。
———こちらは、「磨き二割三分」と書いてありますが、よく聞くこの『磨き』って何なんですか?
瀬川さん:
日本酒は、お米から作られますよね。そのお米の中心に、『心白』(しんぱく)という部分があって、ここが味わいの元になる部分です。
瀬川さん:
外側の部分は、お酒にしたとき“雑味”になりやすいんです。そこを削る作業を「磨く」と言うんです。
だから、洗練されたお酒を作るためにはたくさん削らないといけない、削るとお米はどんどん小さくなってしまう、そのためたくさんのお米が必要になる……だから、磨かれたお酒は贅沢なんですよね。
———なるほど! では、この「磨き 二割三分」というのは、かなり雑味がないんですね。
瀬川さん:
そうですね。しかし最近は、『80%精米』という、あえて磨きを抑えているものもあるんです。磨きすぎて甘みや旨味が失われることもあるので、それらを残す方向での酒造りも進んでいるんですよ。
———“とにかく磨けばいい”というわけではないんですね。
獺祭もそうなんですが、プレミアムと言われる日本酒を店頭やネットで買おうとすると数万円もしますよね。蔵元で買っても同じようにお高いんでしょうか?
瀬川さん:
蔵元や直接取引されている小売店様では基本的に定価で販売されていますが、販売されている店舗によって様々ですので一概にはお答えできないかなと思います。
多少お値段が上がっても召し上がってみたいという方々の熱い想いによって、数万という数字になっても需要があるのでしょうね。……あの、そろそろいただいてもいいですか?(笑)
———あ、すみません! どうぞ、召し上がってください!(笑)
「では、一杯目いただきます♪」
瀬川さん:
うん、やっぱりいつ飲んでも間違いのない味ですね。飲みやすくて、まさに日本酒初心者の方にオススメです。
———他にも、初心者が試しやすい日本酒はありますか?
瀬川さん:
高木酒造の「十四代」ですかね。これを飲んで、私は日本酒に目覚めたので、オススメです。あとは、発泡清酒の「すず音」とかも、甘くて軽いのできっと飲みやすいと思います。
【覚えておこう】
何を飲んだらいいかわからない初心者には「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」か「十四代」がオススメ!
日本酒を飲むときには必ず「やわらぎ水」もいっしょに
~2杯目「醸し人九平次」~
———「かもしびとくへいじ」…ですか! 本当に日本酒の名前は面白いものがたくさんありますね。瀬川さんの印象に残っている変わった名前のお酒は何かありますか?
瀬川さん:
秋田の山本合名会社というところが販売している「うきうき山本」という日本酒がありまして(笑)。名前からは想像できないほど、味はしっかりとしていて、とても美味しいんですよ。
———厳格な日本酒のイメージが覆されました(笑)。
やはり、日本酒は小難しそうというか、お作法とかも厳しそうだなと思ってしまうんですが、その辺はどうなんでしょうか?
瀬川さん:
そう思われている人も多いようなんですが、実はそんなに厳しい決まりとかはないんです。もちろん、下品な飲み方はいけませんけど、常識の範囲内で美味しく楽しく飲めば問題ありません。しいて言うなら、こうして「やわらぎ水」をちゃんといただくことくらいですかね。
———「やわらぎ水」、初めて聞きました! 見たところ普通のお水のようですが…。
瀬川さん:
普通のお水です(笑)。
ただ、日本酒をいただくときはマナーとして、酔わないように、やわらぎ水もいっしょに飲むものなんです。こちらのように日本酒に力を入れているお店なら、必ず出していただけます。
【覚えておこう】
日本酒はやわらぎ水(普通のお水)をいっしょに飲んで酔わないようにするのがマナー
日本酒と合う食べ物は意外にも「チーズ」
~3杯目「澤乃井 純米 本地酒」~
ここからは、お酒とともにお食事も楽しみながら、お話を聞いていきます。
メニューを見ると、「全国蔵元めぐりと季節限定マリアージュ料理」という、月替わりで全国の地酒とそれに合うお料理を出してくれるというプランがあったので、お店の方にお食事のチョイスをおまかせ。今月は、東京・埼玉・茨城編です。
(※2016年5月取材時)
~高級魚「ぐじ」で作った板わさと澤乃井の大吟醸粕で漬けたわさび漬け~
瀬川さん:
大吟醸を作る際に出た酒粕で作ったということで、間違いのないマリアージュです。少し辛みのあるお酒とわさびの風味が、とっても合います。
~4杯目「澤乃井 蒼天 純米吟醸」と宇和島鯛の澤乃井煎り酒浸し~
瀬川さん:
白身のお刺身と相性抜群ですね。澤乃井本辛口で造った煎り酒が効いてます。
~5杯目「澤乃井 大吟醸 古酒」と梅クリーミーチーズ~
———ほぉ、日本酒にチーズですか! これは意外な組み合わせですね。
瀬川さん:
日本酒とチーズはとっても合うんですよ。私もおうちで飲むときは、よくチーズといただきます。特に、古酒の醸し出す熟成香の相性はばっちりだと思います。
———チーズといえば、当然ワインだと思ってしまいますが、日本酒とも合うんですね! 他に、「意外に日本酒と合うぞ」という食べ物はありますか?
瀬川さん:
チョコレートですかね。最近は、海外でも日本酒を置いているお店が多いのですが、そこではチョコレートをセットにしているお店が多いんですよ。また、日本酒風味のチョコレートなんかもこの頃は出てますよね。比較的どんな日本酒にも合いますが、ちょっと辛口なものと合わせるのがオススメです。
【覚えておこう】
日本酒(特に古酒)とチーズは相性抜群、海外ではチョコレートと日本酒のセットも一般的!
純米酒とか大吟醸とか…その違いは何なの?
~6杯目「秩父錦 特別純米酒」と鯖の千鳥酢 卯の花和え~
———日本酒を全く飲まない人間からすると、この純米酒や、先ほどの大吟醸など、どういう違いがあって、どう味が違うのか全くわからないのですが……。
瀬川さん:
居酒屋さんなんかに行くと銘柄も何もなく、ただ「日本酒」とメニューに書いてあったりしますから、そういう方が多いのは当然かもしれません。でも、原材料や製造方法、熟成の期間などもそれぞれ違いますし、もちろん味も大きく違うんです。
純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒といった、「純米」と付くものは、お米と米麹だけで作られています。逆に、純米の記載がないものには、品質やアルコール度数などを調節するために、糖蜜などから生成された醸造アルコールが混ざっているんです。
———つまり、純米と書いてあるものの方が無添加で上質だということですか?
瀬川さん:
そういうことでは全くありません。あくまで製造方法の差であって、そこに優劣はなく、好みの問題だと思います。
———なるほど。素人はすぐ優劣をつけたがっていけませんね……。
味はそれぞれどのように違うんですか?
瀬川さん:
本当に日本酒はそれぞれ味も風味も異なるので、一概には言えないのですが、純米系=濃くて甘め、本醸造系=薄口で辛めといった傾向にあると言われてはいますね。また、古酒や大吟醸などの熟成期間の長いものの方が、香りが強いとされています。
瀬川さんのお話をもとに、わかりやすく表にまとめてみました。
先ほど瀬川さんが仰った通り、これはあくまで傾向。「純米だから必ず甘い」というわけではありませんが、初心者の方は一つの目安として参考にしてみるのもいいでしょう。
「味は、実際に飲んでみて、ぜひ自身の舌で判断してほしいです!」
【覚えておこう】
純米系=濃くて甘め、本醸造系=薄口で辛めの傾向にあるが、一概には言えない部分も。最後は自分の舌で判断しよう!
若い蔵元が増えてきた「日本酒のイマ」
~7杯目「来福 純米酒 生酛造り」と雑煮~
———最近はワイングラスで日本酒を飲んだり、色々と楽しみ方が変わってきているような印象がありますが、いかがですか?
瀬川さん:
そうですね。どんどん若い蔵元さんが増えてきたことで、色々変わってきていると思います。一つは売り方。今はほとんどの蔵元さんがホームページを持っていますし、ネット展開をしているところが非常に多いです。
あとは、ラベルのデザインにすごくこだわっていたり、化粧水を製造していたり、蔵元にカフェを併設しているところなども増えてきています。
———蔵元にカフェですか! そうした変化を日本酒ファンたちはどう捉えているんですか?
瀬川さん:
変化があれば批判する人や、古いものを守ろうとする人がいるのは当然ですよね。しかし、どちらがいいということではなく、いいところは残して、時代に合わせる部分は挑戦していけばいいのかなと。
また、最近は全体的に、海外発信に積極的な蔵元さんがとても多くて、私もミス日本酒として、世界に日本酒を広めたいと思っているんですが、日本国内でも日本酒がもっと飲まれるようになっていくといいなと思いますね。
———なるほど。さすがミス日本酒、普及させたい想いが熱いですね!
今日は関東のお酒を中心に召し上がられましたが、瀬川さんの地元・北海道の日本酒は、美味しいんですか?
瀬川さん:
「日本酒の名産地」というイメージはないかと思いますが、実は北海道の酒米はとても優秀で、有名な日本酒に使用されているんですよ。
寒冷地で、あれだけ広大な土地がありますから、美味しいお米を作る環境はバッチリ整っているはずなのに、なぜかこれまで日本酒にあまり力を入れてこなかったんです。
でも、ポテンシャルは間違いないので、これからどんどん北海道産の美味しい日本酒が出てくると思います! それに、「国稀」(くにまれ)や「福司」(ふくつかさ)といった素晴らしいお酒もすでにたくさんあるんですよ!
「北海道も、よろしくお願いします」
ミス日本酒の話を聞いてわかったこと
・「磨き」というのは、お米の雑味部分を削る作業
・日本酒は酔いやすい=やわらぎ水を飲むべし
・日本酒×チーズ、日本酒×チョコレートは意外に合う
・純米酒や大吟醸などは製造方法や原材料で区別されている
・北海道の酒米は優秀
・ほろ酔いのミス日本酒の可愛さはヤバい
【今回ミス日本酒が飲んだお酒リスト】
「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」
「醸し人九平次」
「澤乃井 純米 本地酒」
「澤乃井 蒼天 純米吟醸」
「澤乃井 大吟醸 古酒」
「秩父錦 特別純米酒」
「来福 純米酒 生酛造り」
こんな豪華なラインナップでも2,800円とは驚きです!
……というか、こんなに飲んでも、まだほろ酔いだというミス日本酒。飲み放題プランにしといてよかった……。
時間無制限日本酒飲み放題実施店舗
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。
著者・SPECIAL THANKS
瀬川理恵
2016 ミス日本酒 北海道代表。
日本酒とアートのお仕事してます。趣味は美味しい日本酒を父と飲むこと。お酒を愛しすぎてお酒になりたい。
twitter: https://twitter.com/kyunpoy24/
監修/一般社団法人ミス日本酒 www.misssake.jp
執筆・編集/堀川あすみ(Concent)
撮影/西本龍太郎(Concent)