国土面積の0・6%の沖縄県に、米軍専用施設の約74%が集中している。あまりにも偏った基地負担の現実である。

 ところが最近、驚くべき出来事があった。在日米軍司令部がフェイスブックに「75%が沖縄に集中していると言われるのは事実ではなく、実際は39%」と投稿したのだ。

 施設数の割合だと39%になるというが、面積比で約74%というのも紛れもない事実だ。県も日本政府も沖縄の基地負担の重さを示す指標として約74%を使ってきた。とらえ方は様々あろうが、「事実ではない」と否定するのは理解に苦しむ。

 沖縄の過重負担への無理解と言われても仕方がない。埋めるべき溝を、いっそう深めることにならないか。

 沖縄県と日本政府、そして米政府。この3者に信頼関係がなければ日米安保は機能しない。

 一県に集中している基地の負担、たび重なる米軍関係者の事件・事故、安倍政権による米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた強硬姿勢……。どれ一つとっても、沖縄の現状は危機的と言わざるを得ない。

 日米両政府が直視すべきは、沖縄が反対する中で辺野古移設の実現は難しいということだ。日米双方の専門家の間でも、そうした見方がある。

 翁長雄志知事による辺野古埋め立て承認取り消しの撤回を求めた石井国土交通相の是正指示について、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」は6月、適否を判断しないと決め、政府と県に話し合いを促した。

 「いずれの判断をしても、それが国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」「普天間の返還という共通目標に向けて真摯(しんし)に協議し、納得できる結果を導き出す努力をすることが最善の道だ」

 政権はこの指摘を重く受け止めるべきだ。沖縄県との対話の努力を惜しんではならない。

 参院選でも与野党の主張が対立している。自民党は辺野古移設の推進を掲げ、民進、共産、社民、生活の野党4党は「沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の中止」を訴える。

 膠着(こうちゃく)状態を打開しなければならない。日米両政府は「辺野古が唯一の解決策」という思考停止から脱却すべきだ。辺野古移設を白紙に戻し、海兵隊の規模と機能を再検討し、県外・国外への機能分散を進めることだ。

 豪州やフィリピンへのローテーション配備を進めている海兵隊の実態を踏まえれば、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担を軽くする選択肢はあるはずだ。