ゲノム編集で免疫不全のサル作製

ゲノム編集で免疫不全のサル作製
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これまでの遺伝子組み換え技術よりもはるかに正確に生物の遺伝子を組み換えることができるゲノム編集と呼ばれる技術を使ってサルの遺伝子を操作し、免疫の機能を低下させることに川崎市の研究所などのグループが成功しました。ゲノム編集の技術で霊長類の遺伝子を組み換え、実際に体の機能を変化させたのは世界で初めてだということです。
この研究を行ったのは川崎市の実験動物中央研究所と慶応大学のグループです。

グループは、小型のサルのマーモセットでゲノム編集の技術を使い、受精卵の中にある免疫に関わる遺伝子を操作しました。その結果、免疫に関わる細胞の数が、通常の5分の1程度しかできない免疫不全のサルが誕生したということです。ゲノム編集の技術を霊長類に応用し、実際に体の機能を変化させたのは世界で初めてだということです。

実験動物中央研究所の佐々木えりか部長は「ゲノム編集で、今までできなかった病気の動物を作ることができれば研究が大きく進展する。例えば、ヒトのiPS細胞から作った組織をこのマーモセットに移植して安全性や有効性を調べれば、再生医療の前進に役立つ」と話しています。

ゲノム編集の広がりと課題

ゲノム編集は、これまでの遺伝子組み換え技術よりもはるかに正確にゲノムと呼ばれる生物の遺伝情報を書き換えられることが特徴です。4年前コストを大幅に下げる技術が発表されて以降、世界中の研究者の間に急速に広がりました。

これまでに、高級魚として知られるマダイを通常の1.5倍程度の重さにまで大きくしたり、藻の遺伝子を操作して油を多く作らせたりすることに成功していて、アメリカではエイズ治療への応用も進められています。一方、中国ではゲノム編集の技術をヒトの受精卵に応用し、遺伝情報を書き換えたとする研究も発表されていて、世代を超えて受け継がれるヒトの遺伝子の改変をどこまで行ってよいのか、倫理的な議論も呼んでいます。