「韓国人学校問題」の記事と政策デマについて
こちらでは告知していませんでしたが、5月末に「韓国人学校は優遇されている」は本当か?――都有地貸し出しをめぐる誤認という記事をシノドス(ウェブ版)に発表しました。
結局この韓国人学校への都有地貸与を推進した舛添知事は辞任し、次の都知事選に出馬を表明した小池百合子と桜井誠は「当選したら、韓国人学校への敷地貸与は白紙にする」と宣言しています(正確には小池百合子は白紙化、桜井誠は中止)。
この問題について、これまでどのような経緯があったのかをまとめた記事なので、今こそ読んでほしいと思い、このタイミングで紹介させていただきました。
5月末にヘイトスピーチ対策法が成立しましたが、その後は、今までヘイトデモを行ってきた「行動する保守運動」も、あからさまなヘイトスピーチは避ける方向にあるようです。
そこで最近の動きについて一番思うのは、「あからさまな「死ね・殺せ」系のヘイトスピーチは対策法で押さえ込めそうだが、今後はもっと巧妙な『政策デマ』に対処する必要がある」ということです。この韓国人学校の件も政策デマの一つです。
上記の記事にも書きましたが、「頑張れ日本」という団体は「韓国人学校のために、特別支援学校の建設は中止された」という嘘の内容のビラを新宿駅前で配布していました。何も知らない人が読んだら、別にレイシストではなくても「韓国人学校は優遇されているのでは……?」と思いそうです。記事にも書きましたが、特別支援学校は建設は遅れるものの、同じ新宿区内のもっと広い土地に建設されます。なお遅れる間の定員増加分は既存の特別支援学校を増築することで吸収されます。
このほか記事に書いたように、「韓国人学校はほかの外国人学校より優遇されている」など、差別者は政策デマを息を吸って吐くように次々に繰り出してきます。これに反論して「このような一見、韓国が優遇されているように見えなくもない政策は、実はこういう事情があって……」と、証拠を出して否定していくのは、とても手間がかかる作業です。この記事でもソースとしてあちこちに大量にリンクしていますが、リンク先の大半は東京都のウェブサイトです。つまり、東京都がネットで配信している情報をきちんと調べればそのほとんどには反駁できるのですが、そこまでする人はなかなかいません。
ヘイトスピーチ関連での最大の政策デマといえば「在日特権」ですが、これについては野間易通著「『在日特権』の虚構」という本が出ています。この本にも大量に注がついています。私が書いたテーマと比べて、「在日特権」はずっと古くからの政策デマで、内容も多岐にわたります。「在日特権」を定義することから始めてひとつずつ論駁していけば、当然本一冊分にもなるわけです。また内容は法律的・歴史的なことにも及ぶので、ソースはオンライン以外のものも多くなります。記事を書いていたときにこの本のことを思い出し、私が書いている記事一本分の作業と、内容は似ているかもしれないけれど、その何倍もの作業量だったのだろうなあと思いました。
国際政治学者である鈴木一人氏による「「デマ」時代の民主主義」という記事によるとイギリスのEU離脱をめぐる国民投票、アメリカのトランプ人気も、政策デマという意味では近いものがありそうです。移民は政策デマのターゲットになりやすいのでしょうか?
また、政策デマでも「桜井誠・在特会・行動する保守運動」系のものはある意味わかりやすいですし、今まであまりにもあからさまな「死ね・殺せ」系の発言やデモをやってきたので、彼らがいかなる人物・団体であるか、知っている人は多い。韓国人学校の記事を書いてよく分かったのは、「頑張れ日本・産経新聞・チャンネル桜(・一部の都議)」が互いに結びついていることで、今後はこちら系の巧妙な政策デマに気をつける必要があると思いました。