ネコは、撲殺しても、槍で刺殺しても、水没殺しても違法ではないー3
Domestic/inländisch
記事、ネコは、撲殺しても、槍で刺殺しても、水没殺しても違法ではないー1、ネコは、撲殺しても、槍で刺殺しても、水没殺しても違法ではないー2、の続きです。前回記事では、国会審議において狩猟鳥獣である「ノネコ」と、動物愛護管理法の保護対象である「ねこ」は「生物分類学上同一種であり、判別はほぼ不可能」とされたことを紹介しました。では、「猫」を殺傷した場合はどう判断すべきなのか、考察してみました。
記事、ネコは、撲殺しても、槍で刺殺しても、水没殺しても違法ではないー1、では、鳥獣保護狩猟適正化法では、①猟期内で、②狩猟可能区域内で、③法律で禁じられている猟法以外の自由猟具(棍棒で撲殺、槍で刺殺、タモ網で捕獲など)で狩猟鳥獣を狩猟することは合法であることを書きました。つまり、狩猟鳥獣であるノネコは、①②③の条件を満たせば、撲殺しても、槍で刺殺しても、水没殺しても罰することはできません。
しかし動物愛護管理法では、「ねこ」は愛護動物で、飼い主がなくとも保護の対象です。みだりに殺傷すれば、同法違反で罰せられます。
鳥獣保護狩猟適正化法による「ノネコ」であるか、動物愛護管理法の「ねこ」であるか、判別が困難な場合は、どのように判断すべきなのでしょうか。弁護士が「ノネコ」と「ねこ」の区分の神学論争に呆れています。愛護動物の犬、ねこと狩猟鳥獣のノイヌ、ノネコに関して 。こちらの弁護士さんも、「厳格に区分することは不可能」と結論づけているようです。
しかし当事者にとっては重大ごとです。その猫が鳥獣保護狩猟適正化法の「ノネコ」か、動物愛護管理法上の「ねこ」なのかで無罪になるか有罪になるかの差があります。また最高刑も変わってきます。
結論から言えば、私は判別困難である場合は、次のように理解します。「1、検察が動物愛護管理法違反で起訴した場合は、検察がその猫がノネコではなく動物愛護管理法上のねこであることの立証義務を負う」。「2、判別困難であれば、一般法である動物愛護管理法ではなく、特別法である鳥獣保護狩猟適正化法が優越する」。
「1、」については、刑事訴訟法上、犯罪の立証においては、起訴する側(検察)に、厳格な立証責任があります。「2、」ですが、「一般法と特別法の規定が反する場合は、特別法の規定が優越する」という原則があるからです。
仮に、この猫水没事件が、①猟期内で、②狩猟区域内で捕獲したもの、であり、③法律で許可される範囲内でこの猫を捕獲し、かつこの猫が「ノネコ」とすれば、この男性の行為は違法ではありません。もし検察が動物愛護管理法44条1項違反で起訴するのであれば、この猫が「ノネコ」ではない、動物愛護管理法上の「ねこ」であることを、検察が立証しなければなりません。
刑事訴訟法上、曖昧に「民家の近くで捕獲したものだからノネコではないだろう」では許されないのです。客観的に厳格に検察側が、その猫が鳥獣保護狩猟適正化法における「ノネコ」である可能性を否定する証明をしなければならないのです。 前回の記事では、「ノネコ」「ノイヌ」に対する国会審議議事録を引用しました。その中では、次のように述べられています。
獲物を山野で得て、山野で自生していくという状態におきましては当然ノイヌ(ノネコ)と解しております。
山からたんぼに出てきたらどうなるのですか。
その行動範囲の中で、たんぼ等へ出て参りましても、ノイヌ(ノネコ)であるということには変わりはない。
それじゃ家の中に入ったらどうなりますか。
家の中に獲物を探しに来るという場合もあるいはあろうかと思いますが、同然でございます。
もともと山野におりまして、生まれた子供がたまたまたんぼに来た、家の付近まで来たというのは、行動半径の中で行動したのであって、本来終始山野で生活している限りにおいてはノイヌ(ノネコ)であるというふうに申し上げた次第であります。
そうすると、はっきり言ってノイヌ(ノネコ)というのはどこにどうあってもそれは撃っていいわけですね。
どこにいてもノイヌ(ノネコ)はノイヌ(ノネコ)だ、どこで撃ったっていい。
「たまたまノネコが民家の近くに出没したものを、捕獲し、それを駆除した」。事実上、鳥獣保護狩猟適正化法上の「ノネコ」と動物愛護管理法上の「ねこ」は客観的に区別は不可能です。よほど飼い猫であるということが外見上明らか(目立つ首輪をしているなど)でなければ、その猫は、「ノネコ」である可能性は否定できませんのでそうなります。
繰り返しますが、検察が動物愛護管理法で起訴するとなれば、その猫が、鳥獣保護狩猟適正化法上の「ノネコ」である可能性を完全に否定する証明責任を負うのは検察側です。
つまり過去の、動物愛護管理法44条違反で有罪になった事件は、対象が明らかに元々人に飼われていた猫であるような場合を除き、無罪であるか(・猟期内で、・狩猟可能区域内で、・法律で違反しない猟法で捕獲した場合)、動物愛護管理法違反より軽い、鳥獣保護狩猟適正化法違反であった可能性が高いのです。
次回は、鳥獣保護狩猟適正化法と動物愛護管理法の規定が相反する場合は、どちらの法律が優越するかという問題について述べます。結論から言えば、特別法(鳥獣保護狩猟適正化法)は、一般法(動物愛護管理法)に優越します(続く)。
第043回国会 農林水産委員会 第17号 昭和三十八年三月十二日(火曜日)。
○湯山委員
狩猟鳥獣にノイヌ、ノネコというのがあるのです。
ノイヌ、ノネコという種名を持つ動物が日本にございますか。
若江説明員
ノイヌ、ノネコは、元来は家畜でございましたものが野性化いたしまして山野に自生いたしまして、野山におるというのを、のら犬、のらネコ等と区分いたしまして、この場合ノイヌ、ノネコと称しまして狩猟烏獣に入れておるわけでございます。
野山に自生しておりますノイヌ、ノネコを狩猟鳥獣に入れておるわけでございます。
ただしこれは動物学上の分類では区分がないわけでございます。
○湯山委員
ノイヌ、ノネコ以外の犬、ネコを狩猟すれば違反になるというけれども、狩猟されたものでノイヌ、ノネコと普通の犬、ネコの区別がつきますか。
○若江説明員
判別は生息状況によって識別するのが最も判然とするのでございますが、これが店先に並べられたときに、どれがのらネコで、どれがノネコかということは、判別が非常に困難であろうかと思いますが、医学的に胃袋その他を検査して、食性の種類等で判別しなければならぬのではないかというように考えます。
○湯山委員
判別困難だ。
解剖して内蔵を見ればわかるだろうといってもわかるものではありません。
ノイヌだって本来これは人になつく性格を持っていますから、野生化した犬だって、連れてきて飼えばけっこう役に立ちます。
だからその区別をつけようたってつきません。
○若江説明員
ノイヌ、ノネコとのら犬、のらネコとの識別は非常に困難でございますが、野生いたしておりますノイヌ、ノネコがいるということも事実でございます。
識別を十分行なうように考えて参りたいと思いますが、大へん困難な点はあります。
○湯山委員
犬、ネコの野生化したものですね、これは一体どの程度野生化したものをいうのですか、飼っている親が山に入って、山で生まれたその子はもうノイヌですか。
それがたとい町へ出てきても、あるいはどこをどう通っていても、ノイヌというのですか。
○若江説明員 野生のノイヌから生まれましたいわゆる子犬でございますが、これは獲物を山野で得て、山野で自生していくという状態におきましては当然ノイヌと解しております。
○湯山委員
山からたんぼに出てきたらどうなるのですか。
○若江説明員
その行動範囲の中で、たんぼ等へ出て参りましても、ノイヌであるということには変わりはないというふうに考えます。
○湯山委員
それじゃ家の中に入ったらどうなりますか。
○若江説明員
家の中に獲物を探しに来るという場合もあるいはあろうかと思いますが、それはたとえばイノシシが獲物がないために里山に来るというのと同じような現象であろうと思いますので、同然でございます。
○湯山委員
イノシシというのはイノシシという種類です。
動物園の中にいようが、山の中にいようが、家の中にいようが、イノシシというのは、動物の一つの極数の名前です。
ところがあなたは、ノイヌというのは固定した種類の名前でなく、生息の状態であると言う。
だから家にいたらどうなるか、田の中にいたらどうなるか、山にいたらどうなるかをお尋ねした。
そうしたら今度はどこへ行ったってノイヌはノイヌだ――今度は種類になったのです。
それならノイヌとはどういう種類ですか。
○若江説明員
もともと山野におりまして、生まれた子供がたまたまたんぼに来た、家の付近まで来たというのは、行動半径の中で行動したのであって、本来終始山野で生活している限りにおいてはノイヌであるというふうに申し上げた次第であります。
○湯山委員
今おっしゃったのは家の中に入ってきてもノイヌはノイヌ、だとおっしゃったのですよ。
あなたのいう意味のノイヌの子を飼えば、とても利口でいい犬ができます。
それでもノイヌですか。
生まれたのは山で生まれたのです。
○若江説明員
狩猟家がノイヌをとりまして自分の家で飼養するということになりますと、それは飼養鳥獣でありますので、自己の支配下で飼養されているノイヌであるというふうに解釈されます。
○湯山委員
そうすると、はっきり言ってノイヌというのはどこにどうあってもそれは撃っていいわけですね。
どこにいてもノイヌはノイヌだ、どこで撃ったっていい。
○若江説明員
ノイヌという区分が動物学上にはないけれども、それが生息の状態からしましてノイヌと判定せられる犬がおる、それを狩猟鳥獣の中に入れておる、そのノイヌがたまたま山野から田畑の付近まで現われてもそれはまだノイヌであろう、こういうふうに申し上げた次第であります。
○湯山委員
間違ったら狩猟法違反に問われるわけです。罰金をとられるわけです。
だからそういう不明確なものは明確にする責任があります。
ところが明確にしようたってノイヌ、ノネコに関する限りは明確にしようがありません。
動物学者に尋ねてみましても、それはわからない、こう言うのが常識です。
もしあなた方がこの法律の中にある言葉だからあるいは規則にある言葉だからというので統一解釈をおつくりになっても、ほかでは通用しません。
その証拠には、狩猟されたもので、はたしてノイヌであったかどうかという区別はつかないのですよ。
ことに今おっしゃった内臓を抜いて皮と目だけにしてつっておけば、絶対区別がつく人はないでしょう。
○若江説明員
内臓を抜きまして皮だけぶら下げたというふうな仮定の問題では、ほとんど識別が至難であろうとは思います。
○湯山委員
ノイヌというのは区別がつかない。ましてノネコに至っては全くわからない。
○湯山委員
狩猟鳥獣にノイヌ、ノネコというのがあるのです。
ノイヌ、ノネコという種名を持つ動物が日本にございますか。
若江説明員
ノイヌ、ノネコは、元来は家畜でございましたものが野性化いたしまして山野に自生いたしまして、野山におるというのを、のら犬、のらネコ等と区分いたしまして、この場合ノイヌ、ノネコと称しまして狩猟烏獣に入れておるわけでございます。
野山に自生しておりますノイヌ、ノネコを狩猟鳥獣に入れておるわけでございます。
ただしこれは動物学上の分類では区分がないわけでございます。
○湯山委員
ノイヌ、ノネコ以外の犬、ネコを狩猟すれば違反になるというけれども、狩猟されたものでノイヌ、ノネコと普通の犬、ネコの区別がつきますか。
○若江説明員
判別は生息状況によって識別するのが最も判然とするのでございますが、これが店先に並べられたときに、どれがのらネコで、どれがノネコかということは、判別が非常に困難であろうかと思いますが、医学的に胃袋その他を検査して、食性の種類等で判別しなければならぬのではないかというように考えます。
○湯山委員
判別困難だ。
解剖して内蔵を見ればわかるだろうといってもわかるものではありません。
ノイヌだって本来これは人になつく性格を持っていますから、野生化した犬だって、連れてきて飼えばけっこう役に立ちます。
だからその区別をつけようたってつきません。
○若江説明員
ノイヌ、ノネコとのら犬、のらネコとの識別は非常に困難でございますが、野生いたしておりますノイヌ、ノネコがいるということも事実でございます。
識別を十分行なうように考えて参りたいと思いますが、大へん困難な点はあります。
○湯山委員
犬、ネコの野生化したものですね、これは一体どの程度野生化したものをいうのですか、飼っている親が山に入って、山で生まれたその子はもうノイヌですか。
それがたとい町へ出てきても、あるいはどこをどう通っていても、ノイヌというのですか。
○若江説明員 野生のノイヌから生まれましたいわゆる子犬でございますが、これは獲物を山野で得て、山野で自生していくという状態におきましては当然ノイヌと解しております。
○湯山委員
山からたんぼに出てきたらどうなるのですか。
○若江説明員
その行動範囲の中で、たんぼ等へ出て参りましても、ノイヌであるということには変わりはないというふうに考えます。
○湯山委員
それじゃ家の中に入ったらどうなりますか。
○若江説明員
家の中に獲物を探しに来るという場合もあるいはあろうかと思いますが、それはたとえばイノシシが獲物がないために里山に来るというのと同じような現象であろうと思いますので、同然でございます。
○湯山委員
イノシシというのはイノシシという種類です。
動物園の中にいようが、山の中にいようが、家の中にいようが、イノシシというのは、動物の一つの極数の名前です。
ところがあなたは、ノイヌというのは固定した種類の名前でなく、生息の状態であると言う。
だから家にいたらどうなるか、田の中にいたらどうなるか、山にいたらどうなるかをお尋ねした。
そうしたら今度はどこへ行ったってノイヌはノイヌだ――今度は種類になったのです。
それならノイヌとはどういう種類ですか。
○若江説明員
もともと山野におりまして、生まれた子供がたまたまたんぼに来た、家の付近まで来たというのは、行動半径の中で行動したのであって、本来終始山野で生活している限りにおいてはノイヌであるというふうに申し上げた次第であります。
○湯山委員
今おっしゃったのは家の中に入ってきてもノイヌはノイヌ、だとおっしゃったのですよ。
あなたのいう意味のノイヌの子を飼えば、とても利口でいい犬ができます。
それでもノイヌですか。
生まれたのは山で生まれたのです。
○若江説明員
狩猟家がノイヌをとりまして自分の家で飼養するということになりますと、それは飼養鳥獣でありますので、自己の支配下で飼養されているノイヌであるというふうに解釈されます。
○湯山委員
そうすると、はっきり言ってノイヌというのはどこにどうあってもそれは撃っていいわけですね。
どこにいてもノイヌはノイヌだ、どこで撃ったっていい。
○若江説明員
ノイヌという区分が動物学上にはないけれども、それが生息の状態からしましてノイヌと判定せられる犬がおる、それを狩猟鳥獣の中に入れておる、そのノイヌがたまたま山野から田畑の付近まで現われてもそれはまだノイヌであろう、こういうふうに申し上げた次第であります。
○湯山委員
間違ったら狩猟法違反に問われるわけです。罰金をとられるわけです。
だからそういう不明確なものは明確にする責任があります。
ところが明確にしようたってノイヌ、ノネコに関する限りは明確にしようがありません。
動物学者に尋ねてみましても、それはわからない、こう言うのが常識です。
もしあなた方がこの法律の中にある言葉だからあるいは規則にある言葉だからというので統一解釈をおつくりになっても、ほかでは通用しません。
その証拠には、狩猟されたもので、はたしてノイヌであったかどうかという区別はつかないのですよ。
ことに今おっしゃった内臓を抜いて皮と目だけにしてつっておけば、絶対区別がつく人はないでしょう。
○若江説明員
内臓を抜きまして皮だけぶら下げたというふうな仮定の問題では、ほとんど識別が至難であろうとは思います。
○湯山委員
ノイヌというのは区別がつかない。ましてノネコに至っては全くわからない。
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