小原智恵
2016年6月30日11時58分
熊本県松橋(まつばせ)町(現・宇城(うき)市)で1985年、男性(当時59)が殺害された「松橋事件」で、熊本地裁は30日、殺人罪などで服役を終えた元受刑者・宮田浩喜(こうき)さん(83)の再審を認める決定をした。
地裁は、弁護団から新たに提出された約120件の証拠に基づき、裁判所による過去の事実認定を再検討する必要があると判断したとみられる。
弁護側の再審請求書によると、男性は85年1月8日、松橋町の団地で遺体で見つかった。3日前の夜に男性と口論していたとされた知人の宮田さんが、任意の取り調べの後に自白し、殺人容疑で逮捕された。
熊本地裁であった公判で、宮田さんは当初は犯行を認めていたが、途中から否認に転じた。地裁は懲役13年を言い渡し、90年に確定。宮田さんは服役した後も無実を訴え、2012年3月に再審請求を申し立てた。
再審請求審で弁護団は、判決が凶器と認定した小刀の形状と男性の傷が一致しないことを示す鑑定書など約120件を提出。小刀の柄に巻いて使ったとされるシャツの一部が、「燃やした」とする宮田さんの自白内容に反して存在することが初めて明らかになり、弁護団は「自白の信用性が揺らいだ」と主張していた。
一方、熊本地検の大久保仁視次席検事はこれまで、朝日新聞の取材に「非公開の手続きでコメントはできない」としている。弁護団によると、検察側は再審請求審で、弁護団の証拠について「いずれも新規性と明白性がない」と主張したという。(小原智恵)
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〈松橋事件〉 1985年1月8日、松橋町(当時)の団地で男性が遺体で見つかった。県警は同月5日夜に男性と口論していたとされた知人の宮田浩喜さん(83)が殺害を認めたことから、殺人容疑で逮捕。熊本地裁は懲役13年の実刑判決を言い渡し、90年に確定した。宮田さんは刑期を終えた後の2012年3月、熊本地裁に再審請求を申し立てた。
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