マネー研究所

  • クリップ

もうかる家計のつくり方

甘えた意識に喝 義母の収入を当てにする家計 家計再生コンサルタント 横山光昭

 

2016/6/29

 「本当は投資とか格安スマホとかふるさと納税とか、いろいろ学びたいんですけど……。その前に家計のやりくりがうまくいかなくて」と家計相談に来たのは、パート勤務の主婦Sさん(44)。いろいろ学びたい気持ちはあるものの、この年齢になっても貯蓄を100万円程度から増やすことができず、将来の暮らしが心配だと話します。

 「本当は投資とか格安スマホとかふるさと納税とか、いろいろ学びたいんですけど……。その前に家計のやりくりがうまくいかなくて」と家計相談に来たのは、パート勤務の主婦Sさん(44)。いろいろ学びたい気持ちはあるものの、この年齢になっても貯蓄を100万円程度から増やすことができず、将来の暮らしが心配だと話します。

 SさんはIT系の会社に勤める夫(45)、私立中学3年生の長男(15)、義母(67)の4人家族。収入は夫とSさんの給料、義母からもらう生活費で合計51万6000円。4人暮らしには十分な収入ですが、毎月ほぼ使い切ってしまい、赤字になることもしばしばです。

 貯蓄は一時は600万円ほどありましたが、マイホーム購入の頭金や、長男の学校の費用に消えました。新居には義母が同居するので、いくらかマイホーム費用を援助してくれるのではないかと期待したそうですが、義母にはほとんど貯蓄がないことがわかり、がっかりしたそうです。だから、貯蓄が減ったことは仕方がないことだとおっしゃいます。

 でも、義母は息子夫婦に負担をかけているからと、食費や水道光熱費として生活費を入れています。年金受給額は月3万6000円ほどしかないため、パートで月5万円ほどの収入を得ています。パートは年齢とともに大変になってきているようですが、生活費を稼ぐためにあと8年、75歳くらいまで働きたいと言っているそうです。

 義母の収入で赤字の月の不足分を補ってもらっているので、Sさんも今までのように働いてくれることを希望しています。

 Sさんの話を聞いていると、端々に義母の話題が出てきます。「おかあさんから生活費をもらえなくなったら生活できない」「金銭的にもう少しおかあさんに頼りたい」と考えていることがだんだんとわかってきました。

 わずかな収入しかない高齢者の財布を当てにしていることに少しとまどいを覚えましたが、まずは、収入を使い切っているいまの生活を変えることが先決。そう思いながら家計状況を聞いていきました。

 住宅ローンはボーナス払いはありません。食費、水道光熱費をはじめ、全体的に支出が多いようです。支出を抑えようという意識がなく、必要だからしょうがないと言い訳しながら使っている印象を受けました。

 夫はボーナスが夏冬ごとに約60万円ずつ支給されますが、年払いの支払い(固定資産税、自動車税、自動車の任意保険、夫と妻の生命保険など)に消えている状態です。これでは貯蓄が増えるはずがありません。月々の支出をしっかり見直すことにしました。

 食費は週単位の予算管理を取り入れ、予算の中でやりくりするようにしました。すると、買い物をしない日をつくるなど、節約ができるようになりました。

 水道光熱費については付けたら消す、出したら止めるという基本を意識することによって削減につなげました。特に電気の消し忘れが多かったトイレについては照明だけではなく、家が無人になる日中の温水便座の電源を消すようにしたところ、結構、効果が出ました。

 通信費については格安スマホに以前から興味があったそうなので、お勧めするとすぐに行動しました。息子さんが新たにスマホを持つことになりましたが、それでも通信費は減りました。

 生命保険も見直しました。これまでは定期特約付き終身保険に加入していましたが、内容をよく調べると不要と思われる保障が付いていました。そこで、これを解約し、必要な保障に絞って1本ずつ加入するかたちに変えました。

 交通費は自動車でエコドライブを心掛け、ガソリン給油が1回分ほど減りました。被服費、娯楽費も要不要をしっかり意識し、優先順位をつけて購入するようにしました。

 削減が難しかったのが嗜好品です。Sさんはたばこをやめられず、なかなか減らなかったのですが、健康を考えて1日1箱を限度とし、何とか減らすことができました。家族からは「禁煙してほしい」という希望があるのですが、うまくいきませんでした。今後はぜひ、禁煙を頑張ってほしいものです。

 このようにして少しずつ全体的に支出を削減することによって、月7万9000円を削減できました。まだまだ削る余地はあるのですが、45万円ほどの支出で暮らせるようになり、義母からもらう生活費を当てにしなくてもよくなりました。

 Sさんのご家庭のように、親の収入を当てにして暮らす方がよくいます。ところが、その親御さんは年金受給額が少なかったり、年金分割制度がない時に離婚したために、ほとんど収入がないというケースがよくあります。

 家族で協力し合う姿勢は大切ですが、頼りあう関係のまま同居していると、バランスが崩れてしまう可能性があります。互いを尊重しながら助け合って暮らすことが、よりベターだと思います。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は7月13日付の予定です。

横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


  • クリップ

関連情報

マネー研究所新着記事