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金正恩氏「国務委員長」に就任 最高人民会議、独裁体制強める

2016/6/30 2:00
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 【ソウル=加藤宏一】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が絶対的な独裁体制を一段と強めている。北朝鮮メディアによると、29日に平壌で最高人民会議(国会に相当)を開き、国防委員会を国務委員会に改編して正恩氏が「国務委員長」に就く人事を決めた。会議には正恩氏も出席した。5月の朝鮮労働党大会を踏まえ、国家機関でも正恩氏を唯一の指導者とする位置付けを強めた。

 最高人民会議では国防委から国務委に改編する社会主義憲法の修正、正恩氏の「国家最高位」への推戴や、党大会で決まった「国家経済発展5カ年戦略」の徹底的な履行など6議案を議論した。

 新設された国務委の人事も議論され、同委の副委員長にはいずれも党最高幹部の政治局常務委員を務める黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長、崔竜海(チェ・リョンヘ)党副委員長、朴奉珠(パク・ボンジュ)首相の3人が就任した。

 委員には党副委員長の金己男(キム・ギナム)氏や李洙墉(リ・スヨン)氏のほか、朴永植(パク・ヨンシク)人民武力相らが就いた。国務委の人事では軍人に比べて党人派の起用が目立った。

 今回の国務委の新設には父の故金正日総書記の「遺訓」から脱し、正恩体制の確立を国内外にアピールする狙いがありそうだ。父が進めた先軍政治の下で膨らんだ国防委を事実上廃止し、国務委が軍事、外交、経済など国家全体に責任を持つ機関として位置づけられたとの見方もある。

 韓国統一省の関係者によると、今回の最高人民会議では1998年に廃止された中央人民委員会を復活させ、トップに正恩氏が就く可能性も指摘されていた。正恩氏の国務委員長就任は現在も北朝鮮で尊敬を集める祖父の故金日成主席の時代への原点回帰ともいえる。

 最高人民会議の開催は2015年4月以来で、正恩氏の体制下では今回が7回目だ。同会議は年1~2回のペースで開かれ、国防委員会や内閣などの国家機関の人事、国家予算などが審議されるが、正恩氏は15年4月と14年9月の直近2回の会議を欠席している。

 今年5月に36年ぶりに開かれた朝鮮労働党大会後で初めての開催だ。労働党を国家の指導政党と位置づける北朝鮮では党が国家機関の上位に位置しており、今回の最高人民会議では党大会での決定事項を追随する機関決定がなされた格好だ。

 北朝鮮は核と経済再建の並進路線を掲げ、4度目の核実験や各種の弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。国際社会が経済制裁などで圧力を強めるなか、党幹部をキューバやベトナム、ラオスなどに派遣して政府首脳と相次いで会談。制裁体制の打破に向けた外交を活発化させている。一方で経済面ではエネルギー不足などで目立った成果が出ていない。

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