トルコ空港テロ 安全対策の徹底検証を
またも空港での惨劇である。アジアと欧州の懸け橋とされるトルコ・イスタンブールのアタチュルク国際空港で、銃乱射と自爆によるテロがあり、多くの死傷者が出た。罪もない人々を無差別に殺傷する非道な手口に、改めて強い怒りを覚える。
同空港は欧州とアジア、中東などを結ぶハブ空港で、欧州地域ではロンドン、パリに次いで利用者が多いとされる。3人とみられる実行犯はタクシーで空港に乗り付け、いきなり銃を乱射、治安当局と銃撃戦になって次々に自爆したという。
今年3月にはベルギーの首都ブリュッセルの空港と駅で同時爆弾テロがあり、それ以来、各国の空港や駅などは警戒を強化していた。にもかかわらず今回のテロを防げなかった理由について、安全対策の徹底検証と見直しが必要だろう。
トルコでは昨年以降、過激派組織「イスラム国」(IS)やクルド系の武装組織「クルド労働者党」(PKK)によるテロが続いていた。今回の事件では犯行声明は出ていないが、ユルドゥルム首相はISが関与した可能性を示している。
ISはちょうど2年前(2014年6月29日)、シリアとイラクを中心とする国家樹立を宣言し、カリフを名乗るISの指導者、バグダディ容疑者に対して、全てのイスラム教徒が忠誠を誓うよう求めた。
それ以来、支配地を着々と広げ、欧州やアジアからも志願兵を集める一方、各地で無差別テロを続けてきた。しかし、イラク政府軍は26日、ISが支配していた拠点都市ファルージャの奪還を発表するなど、最近はISの衰えも目立つ。
アタチュルク空港のテロがISのしわざなら、反ISの前線国家トルコの観光に打撃を与える狙いがありそうだ。トルコは最近、ISと対立するロシアやイスラエルとの関係正常化を図る措置を取っており、これに反発した可能性も捨てきれない。
シリアに隣接するトルコは多くの難民を受け入れる一方、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国として、南部の空軍基地をIS攻撃の拠点として米軍に提供した。トルコは民生面でも軍事面でも、シリア内戦の重い負担に耐えている。
その一方で、エルドアン大統領は政府に批判的なメディアを政府管理下に置いて自由な言論を封じるなど、強権的な手法を取ってきた。テロ防止に努めるのは当然だが、強権政治が民衆の反発を生み、テロの土壌を形成することも自覚すべきである。
空港テロは決して人ごとではない。テロの「ソフトターゲット」とされる無防備な市民をいかに守るか、日本としても万全の対策を練っておきたい。