生物の遺伝情報をピンポイントで書き変える、驚異のDNA操作技術「ゲノム編集」。その最新モデル「クリスパー(Crispr)」がいよいよ実際の治療に使われようとしている。
●“Federal panel approves first use of CRISPR in humans” STAT, JUNE 21, 2016
各種の癌治療にクリスパーを応用するための臨床研究(事実上の治療措置)を、先日、米国立衛生研究所の「組み換えDNA諮問委員会(Recombinant DNA Advisory Committee:RAC)」が認可した。
今後、米FDA(食品医薬品局)による認可も必要となるが、まずは第一関門を突破したことで、実際に臨床研究が行われる公算が高まってきた。
ゲノム編集とは何か?
ゲノム編集とは、私たち生物のDNAに書かれた「ゲノム(G、A、C、Tの4文字で記された長大な遺伝情報)」を、自由自在に書き変えることができる驚異的な技術だ。
その研究開発は1990年代にスタートしていたが、当初のゲノム編集技術は「仕組みが複雑で、扱い難い」という問題を抱えていたため、あまり普及しなかった。ところが2012年頃に登場した「クリスパー・キャス9(Crispr Cas9)」(以下、クリスパー)と呼ばれる第3世代のゲノム編集技術によって、状況は一変した。
クリスパーは、専門家が「きちんとトレーニングすれば高校生でも使える」と太鼓判を押すほど、仕組みがシンプルで扱い易い技術だ。このため、従来の遺伝子組み換え技術よりも格段に短い時間とコストで、あらゆる動植物のDNAを自由自在に組み換えることができる。
クリスパーは爆発的に普及し、今や世界中の生命科学者が先を争うように、この研究開発を進めている。真っ先に、その応用が始まったのは農畜産業や漁業で、様々な農作物や家畜、魚などの品種改良にクリスパーが応用されている。
これらは未だ私たちの食卓にのぼるところまでは行っていないが、すでに日米欧中をはじめ世界の大学研究室などでは、「肉量を通常の数倍に増加した牛や魚」「腐り難い野菜」「収穫量を大幅に増やした小麦」「筋肉質なビーグル犬」など、多種多様な動植物の品種改良が行われている。
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