今年の広島カープは5月過ぎても衰え知らずのことでして、例年のあきらめから来る弱気とはえらい違いで・・
「少々点差が離される位で無いと、試合が面白う無い!」などと、かなり贅沢な余裕で日頃の溜飲を下げるので御座います。
さてここは釣場、土日とも成りますと普段より多めの釣り師がたむろいたしまして、魚を釣ろう、出来ることなら他の釣り師を出し抜いてでも多く釣りたいなどと、顔に本心を露にして集って参ります。
釣場で釣り師が魚を釣っております。魚が釣れる時間帯は時合などと申すところで、ほんの少しばかりの間しかないところです。土日とも成りますと広島カープの試合は日中行われまして、釣り師にとっては魚の釣れぬ時間の暇つぶしと言いますところで、ラジオなど持ち込みまして、釣れない時間の間を埋める事で御座います。
若い衆になりますと「こする携帯」で、釣りそっちのけで動画に見入るなど致すところで、それぞれ楽しんで参ります。
釣場における平穏といいますのは、それぞれ そこそこに魚が釣れておる場合のみ成立するので御座いまして、瀬戸内海の海上は平穏無事、平和を絵に描いたような光景が展開されるのです。
釣場における平穏が崩れる・・・それはなんと申しましても「魚が釣れない」の一語に尽きるところで、その上カープが劣勢ともなりますと、野球選手に成れず釣り師にしかなれなかった輩の、かなり負け組みの本性が如実に表れてまいります。
「おい!ピッチャー代えろ!」「バントさせさせ!」「ピッチャー前田を呼び返せ!」
と監督に指図をするのから始まりまして。
「どけ!わしが打つ!」「わしのへなちょこ球ならプロは打てんだろう」
と代役を買って出る奴。
年を食った骨董品のような釣り師に到っては・・・
「外木場だせ!」「濃人出せ!」「安仁屋じゃ!」
など先が短いのに必死で現世に関わってまいろうといたします。
「ここはデュプリーよのう」
と、コアな奴まで現れる始末、釣り場は届かぬ歯軋りで賑わうのです。
「ばかたれ!石原! わりゃあ野球やめ!」
「ビクッ・・・」
「田中はよ走れ!右と左の足を交互に出すんじゃ!」「アウトかばか!」
「ビクッ・・・」
魚が思うように釣れぬ釣り師は人格を代えてやたら攻撃的に成って参ります。
馬鹿たれと言われたのは、カープの石原選手。
ビクッとしたのは釣り師の石原さん。
走れと言われたのは、カープの田中選手。
ビクッとしたのは釣り師の田中君。
石原さんに田中君、どちらも穏やかなところで釣りなどいたしますので、諍いにはなりませんが、自分と同じ苗字をこれ見よがしに嘲られるのは、決して気分の良いものではありません。
カープの選手と同じ苗字を持つ釣り師、シーズン中だけでも他県で釣りをしたらと思うことだ。