未完成で放置の建造物、再生提案 京都工繊大生が「造形遺産」展
巨大な橋梁、隧道(ずいどう)(トンネル)、ダムなど、膨大な資金を投入しながら、作ることも壊すこともできなくなった土木工作物を「造形遺産」と名付け、視点を変えて生かす方法を提起する展覧会が7日、京都市上京区のギャラリーで始まる。
取り組むのは、京都工芸繊維大の長坂大教授らの研究室の学生や院生たち。7年前、群馬・八ツ場(やんば)ダムの報道をきっかけに、未完成のままの構造物や、一定期間だけ使われたが、財政難で廃棄もできない建造物に注目した。全国から集まる学生の地元情報から造形遺産を「発見」し、調査。新たな機能や意味を持たせる第三の道を、各自リポートにまとめてきた。展覧会はそのうち25カ所を選び、模型や図面、計画の経緯、背景とともに発表する。
兵庫県姫路市出身の4年生中島みつきさん(21)らは、幼いころから見ていた姫路モノレールを取り上げた。1966年開催の姫路大博覧会に合わせ、市内1・8キロをレールで結んで運行したが、8年後に休止となった。現在、95本のコンクリート製支柱のうち、42本が町中に点在する。高さ20メートルにもなる支柱の撤去費用がかさむため、そのままの状態で景観やまちづくりの課題になっている。中島さんは、桁にツル性の植物を巻き付ける「街頭植物園」を提案。「各支柱で違う植物を使って、花を見たり、実に触れたりして楽しめる」と、町の周遊につなげる狙いだ。
明治~昭和期に木材運搬を担ったが、ユズ畑内に橋脚が残された林用軌道(高知県)は、木材の代わりに水を流す水路として再生。畑を巡らせ、ユズ狩り体験を盛り上げる仕掛けにする。ほかに、旧国鉄鉄橋や可動橋、採掘場、無線塔を題材に、いずれも周囲の地形や環境を生かしつつ、地域の歴史、記憶を掘り起こす妙案だ。大学院生の倉岡泰大さん(22)は「現実に使える形に近づけている。実際に関わる人はあきらめているかもしれないが、頭を柔らかくして見てほしい」と期待する。展覧会は12日まで、上京区堀川通丸太町下ルの「ギャラリーモーネンスコンピス」で。無料。
【 2015年07月06日 23時11分 】