事件が起きたのは、イングランド北部マンチェスターの路面電車だった。
ビールボトルを持った若者らが、自分と違う外見の男性を見つけて、こう叫ぶ。
「強制送還されろ!殺してやる!汚い移民め。アフリカへ帰れ。今すぐ電車から降りろ」
若者はビールを撒き散らし、乗客の女性が悲鳴をあげ、車内は騒然となった。
乗客は次々に、脅された男性に声をかけたり、若者に反論したりした。
「相手にする価値はないですよ」
「なんてひどい発言。あなたたちはイングランドの名誉を汚す存在です」
16〜20歳の男3人は逮捕された。
被害に遭ったのはアメリカ人のジュアン・ジャッソさん。18年近くイギリスに住み、友人も多くいて、自分の故郷のように感じているという。
テレビのインタビューにこう答えた。
「以前からこういう流れはあったと思いますが、国民投票の結果は、このような行為が許されるという考えを正当化してしまったのかもしれません。それでも、絶対に許されるべきではありません」
広がるヘイト犯罪
国民投票後、外国人へのヘイトクライム(憎悪犯罪)が広がっている。
国民投票の6月23日から4日間でヘイトクライム窓口には85件の通報があり、前月同期の約1・5倍に達した。
「EU離脱 ポーランド人の害獣はもういらない」。イブニング・スタンダードは、イングランド東部ケンブリッジシャーでこんなカードがまかれたと伝える。
カードを見つけた男の子(11)は3年前家族で移住した。父親はBBCのインタビューに語る。「恐ろしいことだ。税金も払っている。私の故郷はもうこの国だ。なんでこんなことになっているのか理解できない」
外国人差別を報告するツイートも後を絶たない。
「今晩、バーミンガムで娘が仕事を終えたとき、数人の若者がムスリムの女の子を取り囲んで『出て行け。離脱に決まったんだ』と叫ぶのを見たそうです。ひどい時代」
26日朝、ロンドンのポーランド社会文化協会の建物には「ポーランド人は出て行け」という落書きがされた。
犯罪に立ち向かう人々
だが、人々は黙っていなかった。この協会の建物には、地元小学校の子たちがハートのポスターを持って集まり、ポーランドの人たちとの連帯を示した。
全国から次々に届く花やメッセージ
インディペンデントはメッセージの内容を伝える。
親愛なるポーランド人のみなさん
建物への落書きの事件を聞いて、大変申し訳なく思います。イギリス(またはその一部)がEUを離れるということだけでも落胆しています。国民投票の結果が、人種差別や外国人排斥を許可するものだと解釈する人間がいるというのは、本当におそろしいことです。
ロンドンであった残留を支持する若者たちのデモでは、こんな大合唱が続いた。
「人種差別主義者 出て行け! 移民のみなさん 歓迎します!」