平成28年6月28日(火曜日)
教育、科学技術・学術、その他
教科書採択の公正確保の徹底、佐賀県の教育情報システムへの不正アクセス、しんかい6500、北陸新幹線、英国のEU離脱
平成28年6月28日(火曜日)に行われた、馳浩文部科学大臣の定例記者会見の映像です。
平成28年6月28日馳浩文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
大臣)
冒頭、1点報告ます。
教科書採択の問題です。昨日、教科書協会の会長の交代に際して訪問された時に申し上げた通り、昨年度の義務教育小学校用教科書の採択を巡る一連の問題に引き続いて、高校用教科書についても採択の公正性、透明性に疑念を生じさせる、不公正な行為が行われていたことが明らかとなりました。その結果、就任4カ月で教科書協会の会長が交代するという異例の事態に至っていることについて、極めて残念であるとともに、率直に申し上げて激しい怒りを感じています。
本日午後、大修館書店から問題となった英語教材の事案についての調査結果の報告があるとともに、その他の発行者に対しても7月15日までに内部調査の結果の報告を求めています。
文科省としては、採択権者である教育委員会などの権限と責任において、その報告結果も踏まえて慎重に審議を行った上で、公正に教科書採択が行われることが不可欠であると考えています。このため、本年度については、翌年度に高校において使用される教科書の需要数の報告期限を、現在の9月16日から1カ月半程度延長する省令改正を緊急に行い、責任ある採決に向けた教育委員会等における審議の時間を十分に確保することとしています。
また繰り返しとなりますが、ルールに反する重大な違反行為を行った発行者や、現在、実施を要請している内部調査に誠実に対応せずに、7月15日以降に不公正な行為が明らかになった発行者については、児童生徒の学習活動に不可欠な教科書の作成に携わる資格はないと考えていまして、教科書発行者としての退場を含めて、厳格な対応を検討します。
以上です。
記者)
佐賀県の教育システムに不正なアクセスがあり、個人情報が流出していたことが明らかになりました。この件についての受けとめと、文部科学省として考えられている対策等ありましたら、お願いします。
大臣)
受けとめは、本当にあってはならないことが起きたと深刻に考えています。また、捜査が入っていると聞いていますので、事実関係をまず踏まえて、その上でです。17歳の少年がそういう能力を持っていることにちょっと驚くと同時に、何かの不正にアクセスする取っ掛かりがあったはずですから、まさしくそこがセキュリティの不備であったと言わざるを得ません。その詳細については捜査をされていますし、事実関係を調査していますが、そのことを踏まえて、文科省としても情報管理において、セキュリティ対策において、不備がないかを改めて見直したいと思います。
記者)
情報システムの関連で、この間の業務改善のタスクフォース報告でも、児童生徒の情報を一元管理できる情報システムの導入を提言されていましたが、そういう先進例の佐賀県でそういう事が起きてしまって、これから大丈夫でしょうか。
大臣)
それをまさしく今、お答えしたところでありますし、私も不安に思います。大丈夫かと。そして、ましては高校生ぐらいともなると不正アクセスについての一定の、また一定以上の知識や技術を持っていることが明らかになったわけです。万全なセキュリティ体制を築かなければいけないので、そういう意味では見直しをしなければいけないと思います。この見直しについては、どういう見直しが必要かを含めて、検討中です。
記者)
今の不正アクセスの件で、先ほど情報管理においてセキュリティ対策に不備がないか改めて見直したいと思いますとおっしゃられたと思いますが、もう少し具体的に言うと、例えば何かどのようにされるのかというところと、教育委員会に調査をかけられるのか、点検を呼び掛けられるのか、その辺お考えがあれば教えてください。
大臣)
まさしくご指摘の通りなので、実は調査段階ですから、事実関係を十分に把握している状況ではありません。何故どの段階で、どういうきっかけで不正にアクセスし入手したのか、また、その入手した目的は何なのかと、こういうことを含めて把握した上で、対応するべきだと思っています。今現在、聞いているところでは、不正にアクセスして入手した情報を、例えば転売した形跡もありませんし、それを使って何らかの犯罪に関わったということも聞いていません。したがって、腕試しのようにしてやったのかもしれないし、逆にそういう試みを可能にしてしまう不備があったと言わざるを得ないということです。それは人為的なものなのか、システムのことなのかも把握する必要があると考えています。
記者)
今の段階で、詳細はこれから捜査を待たないといけないと思いますが、そういうシステムが狙われたことで、各地でちゃんと点検して下さいとか緊急的に何か、例えば通知を出されるとか呼びかけを文科省の方からすることは考えていますか。
大臣)
もちろん考えています。
記者)
近いうちにやるということですか。
大臣)
近いうちに、速やかにということであります。
記者)
大修館の件ですが、昨日社長が大臣室に訪問された時に、社会的な状況も踏まえて責任をとってほしいと、かなり厳しい言葉をかけられていましたが、具体的にどういう対処が望ましいとお考えでしょうか。
大臣)
度重なる事案で、折に触れて教科書会社の社長さん方に来ていただいて、警鐘を鳴らしてきたこれまでの経緯を踏まえたら、一定の責任をとっていただきたいと思います。この責任の取り方まで私が言及する必要はありません。
記者)
向こうに一任するということでしょうか。
大臣)
もちろんそうです。したがって、おそらく社長も痛恨の極みだったと思います。自分がこういう事態で教科書協会の会長を引き受けたにもかかわらず、自分の会社の中でこういうことが出てしまったと、ガバナンスの点においても、おそらくじくじたる思いだと思います。したがってまずは、大修館という会社の中の一つのガバナンスの問題であって、モラルの問題であったり、ルールの徹底の問題ですから、そこはやはりしっかりと押さえていただく必要がありますし、こういうことが継続すれば、教科書発行会社としての資格はあるのかと問わざるを得ないわけです。1回や2回の非常ベルではないわけです。
記者)
冒頭に省令改正について言及されましたが、高校の場合、学校が選んだ教科書をそのまま教育委員会が認めるというケースが多いと思いますが、期間を延長することで、教育委員会にどういう役割を求めたいと思っていますでしょうか。
大臣)
これは一言、ルールを守ってくださいということです。
記者)
ルールを守らなければ退場してもらうということを昨日も今日もおっしゃっているかと思いますが、小中学校であれば、発行者の指定取消という手段も究極的にはありうるかと思いますが、高校の場合、そういう手段がない中で、どういう実効性のある対策を考えていますか。
大臣)
考えていますが、今言うべき段階ではありません。今、少し言いましたが、度重なるルール違反、ということはいわゆる社内でのガバナンスがとれているとは思えないという事案と言え、教科書を発行する会社として相応しいとは思えないという考えをベースにして、退場ということも検討しています。そういうことです。
記者)
7月1日に次世代深海探査システム委員会の方で、「しんかい6500」の後継機の来年度の概算要求のまとめが大体まとまる予定ですが、ようやく「しんかい6500」が就航してから26年、27年、28年、おそらく30年目位に新しい物が出来ると思います。それについてご感想というか、ようやく作っていただけるという感じですけれども、文科省としてはどうでしょうか。
大臣)
待ちかねていました、という一言ですね。深海探査はまさしく資源エネルギーの開発や海洋研究において極めて重要な、基本的な探査手法です。鉱物資源の開発であったり、水産資源の開発であったり、地球温暖化対策であったり等々、分野を超えた研究成果を得られるものですから、より一層の性能の高い海洋探査に資する機器の開発は待ったなしだと思っています。できれば世界をリードする技術であるべきだと思っています。待ちかねていました。
記者)
先日の日曜日に富山市での街頭演説で大臣がご発言されましたが、北陸新幹線の金沢から先の敦賀以西のルートについて、敦賀以西は若狭の方が良いと思っていると、京都駅を通って大阪へ繋がらなければ意味がないと、そういうご発言をされていると思いますが、大臣はこれまではどちらかというと、米原ルートを念頭にお話されていたことが多いと思いました。このご発言だけを捉えると、いわゆるJR西日本の小浜・京都ルート、これが大臣としては望ましいという発言に取れたのですけども、今大臣として、敦賀以西3ルートがあるのはご存じだと思いますが、どれが良いと思っているのかということと、そのルートがなぜ良いと思っているかという2点をお伺いします。
大臣)
文科省において答えるのはいかがかと思いますが、せっかくのご質問ですので、心を込めてお答えいたします。
昨年の段階においては、私は米原ルートが良いという考えでいました。理由はやはり財政的な問題、財源の問題、また東海道新幹線とのアクセスの問題等を含めて、地図を開いてみればお分かりのように、より早く繋いだ方が良いという一つの観点と、また北陸であるならば、関西はもとより中京地区との連携、高速鉄道による連携の重要性を考えた場合に米原の方が良いのではないかという考えでいました。これは事実です。
同時に、その後、様々な検討がなされる中で一番大きなポイントは、福井県の意向を私は尊重すべきという気持ちになってきています。我々石川県もそうですが、長年待たされたという認識がある中で、いかに新幹線が想像を絶する経済波及効果や地域に活力を与えるのかを目の当たりにした1年間でした。そういえば、国土の均衡ある発展という観点からも、福井県の意向を尊重すべきというのが第一です。第二は、建設財源を賄うのは1国費、2地元、3事業者でして、事業者であるJR西日本が小浜・京都駅を通るルートと、内々お示しをしていて、与党の検討委員会でもそのように表明しています。
したがって、財源も負担し、ましてや事業者として収益を上げていくという事業計画を持つ当事者がその方向性を望んでいる、また私ども北陸の立場からすれば、京都駅を通らない選択肢はない、そう思っています。また、関西の経済界からも北陸新幹線が金沢駅止まりであっては困ると、会う度に言われています。事実、どうしても富山、石川の若者も新幹線を通じて東京に目が向きがちであり、足が向いているのは事実です。
そういう観点からも総合的に判断して、若狭の方が良いのではないかと思っています。同時に、この件については私は一国会議員という立場であり、大臣の記者会見で申し上げるのは僭越ではありますが、与党で検討委員会で議論されていますので、その検討の行方も注視しなければいけないと思っています。以上です。
記者)
先頃のイギリスでの国民投票で、EUからの離脱という結論が出ましたが、今回のこの国民投票の結果と、国民投票の在り方について、大臣はどのようにお考えですか。
大臣)
国民投票をすることを決定したキャメロン首相は、残留の活動を一生懸命されていました。本来投票を国民にお示しするならば、政治家はあまり賛成や反対を表に出さないはずなのに、残留派として活動されていたという事実を一つ見ただけでも、だったら国民投票をする意味があったのかと、率直に言ってまず思っています。これは1点目です。
2つ目は、結論は結論として、EUもイギリス国民も受け入れざるを得ないのだろうと思います。従ってこの事態、結果に基づく影響は、すでに為替相場や我が国の株式市場にも影響を及ぼしているのは事実です。私も昨日からどれだけの値動き、値幅かといったところには関心を持っていますので、改めて文部科学行政に影響があるのかどうかも含めて、我々政府の一員として、このイギリスの問題は注視していく必要があると思っています。改めて私も内閣の一員として、内閣、閣僚全てが緊張感を持ってこの事態に取り組んで行く必要があると思っています。
あえてもう一つだけ、申し上げさせていただきます。先般、G7教育大臣会合を行いました。フランス、イギリス、ドイツ、イタリアと、ヨーロッパの代表が口々に移民の問題と難民に対する課題、そして若者の失業率、またその根本的な問題である異文化、自分達とは違う言語の方々、そして若者の教育について、寛容の心であり、市民教育という表現をしていましたが、相互理解、そして若者にはきちんとした言葉の教育とそれを通じて異文化理解、その上で職業教育そして若者の失業率の改善、移民や難民に対する支援についての重要性の認識を一つにしたところです。
当時、イギリスのニッキー・モーガン大臣ともこの事については深く議論させていただいたという経験を踏まえると、今回の報道を拝見していますと、離脱をして次のシナリオが本当に描けていたのかと、非常にポピュリズムに走りすぎたのではないのかと、そういう意味では非常に懸念を持って注視をしているところもあると付け加えさせていただきます。我が国もそうですが、多文化に対する理解、共生の精神、寛容、包容力が教育の世界においては、極めて重要だということを改めて感じています。
記者)
冒頭の教科書採択に関する省令改正に関して、大臣は報告期限は延長するということですが、たぶんそこで十分な審議の時間をかけてくれということだとおっしゃいました。その心としては、不公正な行為があった会社について、その会社の教科書を使うことは考え直した方が良いということが含まれているのか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいのと、期限を延長する事で多少は印刷などに回すスケジュールもずれると思いますが、その辺りの影響はないのかをお聞かせ下さい。
大臣)
何が一番教科書を選ぶにあたって大切かということを、教科書を選ぶ先生方、その学校の校長先生、そして報告を受ける教育委員会の皆さん方にも考えてほしいという趣旨です。その中には、今おっしゃったようなことも的外れではないと思いますが、そのことが目的ではありません。なぜ、どの教科書を選ぶのかという原点について慎重に審議してくださいということであります。
改めて、教科書会社の社長さんは皆さん分かっていますが、社員の皆さんや現場で営業といいますか、現場に出ておられる社員の皆さんにも不用意な、あるいは前例主義なのかもしれませんが、ルールがあるわけですから、そのルールをしっかり把握した上で活動していただかないと大変な事になりますよと。なぜその教科書をどうして選ぶのか、そこがやはりポイントなので、少し期間を長くさせていただきましたということです。
(了)
大臣官房総務課広報室
-- 登録:平成28年06月 --
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