イエローヘッドジョーフィッシュの最終章
どうも千日です。口腐れ病にかかり、殆ど巣から出てこなくなってからは、うすうす覚悟はしていたのですが、とうとうその日が来てしまいました。
今朝カリビアンシーホースに餌を与えようと水槽を覗くと、イエローヘッドジョーフィッシュが逆さになって海藻の茂みに頭を突っ込んで動かなくなっていました。
前の晩には生存を確認しましたので、事切れてから数時間だと思います。
彼の魂は故郷のカリブ海へと還ったのだと、自分を納得させています。
今日はイエローヘッドジョーフィッシュのカテゴリー記事の最終章です。
海水魚の水槽での寿命と病気
海水魚の寿命の長さは様々ですが、サンゴと違って人間よりは短いです。自然界の海水魚は、捕食されることで命を落とす可能性が高いですが、水槽ではそのリスクはありません。
イエローヘッドジョーフィッシュの水槽寿命は4年から5年といわれています。千日の水槽にやってきたのが、多分3年前位だったと思いますから少し短命でしたね。
ありし日のジョーフィッシュです。
水槽で海水魚が命を落とす一番の原因は病気です。幾ら大きな水槽であっても閉じた世界ですからね。外から持ち込まれた病原菌の活性化と生体の免疫力の低下によって病気にかかります。
生体の免疫が強ければかかりませんし、かかったとしても生命力や抵抗力が強ければ治癒します。
ですから、病気に負けないように、生体を健康に保つことが飼育者としての努めです。
病原菌をシャットアウトすることはできない
病原菌に対して神経質になりすぎるのは考えモノです。様々な菌やバクテリアがせめぎあってこそ、環境のバランスがとれているんです。
病原菌やばい菌という言葉は、人間から見た分類です。人間の立場からそのように分類されているとしても、地球環境というくくりから見たら、菌に良し悪しなんて無いんですよ。
そして、水槽はその縮図だと千日は考えています。
一度千日の水槽にシアノバクテリアという鑑賞上、好ましくない菌が増殖したことがありました。でも、その時の水槽の環境がシアノバクテリアに適した環境だったというだけのことです。
水換えを定期的に適切に行うことで、いつの間にか姿を消しました。
イエローヘッドジョーフィッシュがかかった口腐れ病の病原菌とされる滑走細菌についても同じことなんです。千日の水槽の何かの要因が滑走細菌を活性化させたのでしょう。
口腐れ病は滑走細菌症菌の一種が口唇部に寄生して起こる病気です。尾びれにも寄生することがあり、その場合には尾腐れ病と呼ばれます。
この滑走細菌の発育は海水温30度、pH7が最適で、淡水魚がかかるカラムナリス病菌などとは違うものだと分類されています。
この細菌はタンパク質を分解しデンプンなどの多糖類を分解せず、細菌を溶解する作用(溶菌)があります。つまり、寄生した海水魚のタンパク質を溶かしてしまう恐ろしい病原菌なんです。
病原菌とニンゲンと環境危機時計
滑走細菌は宿主が生きていてこそ繁栄できるんです。
今回ジョーフィッシュが命を落としたことで、ジョー本人以外で、最もダメージを受けているのは千日ではなく、滑走細菌なのです。
菌に意思なんてないから、しょうがないでしょ。
そう思います?人間には意思がありますけど、宿主である地球環境を破壊しています。
地球環境の悪化に伴う人類存続の危機感を表す「環境危機時計」をご存知ですか?
- 0:01~3:00 ⇒「ほとんど不安はない」
- 3:01~6:00 ⇒「少し不安」
- 6:01~9:00 ⇒「かなり不安」
- 9:01~12:00 ⇒「極めて不安」
旭硝子財団は2015年9月8日、地球環境の悪化に伴う人類存続の危機感を表す「環境危機時計」の時刻は「9時27分」で、昨年から4分進んだと発表しました。1992年の調査開始以来、3番目に悪い結果で9時を回った現在は「極めて不安」な状態だそうです。
自称、最も高度に知能を発達させたヒトですら、この有様です。これに反論したい人の言いたいことは何となく分かりますが、何を言ったところで地球が住めなくなってしまえば全てお終いなんですよね。
生き物というのは、知能の有無に関係なく、そういう傾向を持っているんだと千日は思います。
水槽であっても喪に服すること
世界中の殆ど全ての地域、民族で共有されているのが『死者を弔わなければ生きている人に災いをもたらす』という言い伝えですね。
日本では喪に服するという形で死者を弔います。
- 今までありがとう。
- 安らかに眠ってください。
そんな気持ちを言葉や儀式で表し、一定の期間は慎ましく過ごすんです。
水槽であっても同じです。生体が病気で星になってしまってすぐに新しい生体を導入するのは厳に慎むべきだと、千日は思っています。
喪に服すること=殆どすべての人類が共有するしきたりであるということは、そこに合理的な生存戦略があるからだと考えています。
水槽の生存戦略=安易に生体を導入しない
病気の生態が死亡した直後の水槽は最も活動的となっている病原菌を多く含んでいる状態なんです。
そこに新たな生体を導入するということ、それは千日の目には病原菌に新たな宿主を提供することと殆ど同じです。
新たに導入される生体は輸送や環境の変化によって強いストレスを感じています。つまり、体力・抵抗力が最も落ちている状態なんです。
- 病気にかかる⇒落ちる⇒生体を買う
この繰り返しになっているアクアリストは少なからずいますよね。
海水魚を飼育しているのか、病原菌に餌をやってるのかどっちなの?
喪に服することは、こんな皮肉な状態にならないようにする為の極めて合理的な教訓なんですよ。
今日の水槽全景
- ジョーの老廃物で少し調子を崩したタコアシサンゴ(中央上)
- ジョーの老廃物を栄養として吸収して満開のカタトサカ(右側のピンク)
ソフトコーラルのカタトサカは比較的水質の悪化に強いソフトコーラルです。千日は密かに菜々緒さんと呼んでいます。
こんな小さな水槽でも、小さな生態系のサイクルが出来ているんですね。
以上、千日のブログでした。
《独白》
言いにくいことですが、ジョーフィッシュがもう長くないと悟った時に一番に気にしたのは、その腐敗による水槽の崩壊でした。
ジョーは巣からなかなか出てきません。発見が遅れれば、腐敗による老廃物が小型水槽の濾過能力を超えるかもしれません。
頼むから巣の外で…
私はそんな風に考えていました。彼はその通りにしてくれました。
ごめんね。
ありがとう。
2016年6月30日
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