スマホのゲーム、あなたは課金する派? しない派?
私のスマホは、Androidのバージョンでいうと「2.3.4」。最新版は「6.0」らしいので、もはや化石である。よってほとんどのスマホゲーは、やりたくても、動かない……。
課金する派、しない派、という分け方は、娯楽にお金を払うことについての抵抗感に関する話にもつながる。
抵抗感が強ければ、観たい映画があっても映画館には行かず、レンタルまで待つ。読みたい漫画があっても単行本は買わず、ネットカフェですます。
これらはまだ対価を払っているケースなのかもしれない。映画なら、ビックタイトルならいずれテレビで観られるかもしれないし、漫画なら、友人から借りるという手段がある。小説なら、図書館なんていう、作家からするとかなりしんどい施設まである。
数年前、地元の図書館では、私の小説が貸し出し回数で「年間ランキング一位」をとった。東野圭吾先生や宮部みゆき先生を抑えての一位だ。ビバ・地元!
が、当然ながら、百万回貸し出されても、私には一円も入らない。「図書館で読んだよ」という声に、基本的には喜ぶが、一抹のさみしさも感じてしまうのは事実だ。
「ぶつぶつ…(読んでもらえるだけまし…、読んでもらえるだけまし…。うーん、この人、いい時計してるなあ…)」
「日本人はエンタメに金を払う意識が低いせいで、エンタメが育たない」
かつて、とある演出家の方が飲みながらぼやいてらっしゃった。
海外の事情に疎いので、どれくらい違うのか私にはわからないが、現在、出版業界では本が売れず、市場は急速に縮んでいるのは事実だ。資金がなくては、小説も漫画も制作することが難しくなっていく。
ーーだなんていう現状にもかかわらず、「エンタメにお金を払わない派の人でも、読んでさえくれればいいから、とにかく来てみてちょうだいな」という漫画サイト&アプリがある。最近リニューアルしたので、今回の記事の題材としてふれてみたいと思う。
名を『マンガ図書館Z』(旧Jコミ)
もう市場から退いた過去の作品限定のラインナップなのだが、過去の作品であるだけに、基本的に完結済みの作品ばかりという安心感がある。前々回の記事のように、再開を待ちこがれるような状況にはなりえないのだ。
(参考記事:【連載再開】ハンターハンター、ベルセルクときたら、次は? 休載が多いが再開を熱望している漫画ベスト3)
なぜこんなサイトの設立が可能になったのかといえば、ざっくりといえば、広告収入というものが存在するからである。ただで見るのが当たり前の、民放放送局やYouTubeにおける、CMみたいなものだ。
そしてたくさんの読者が読んでくれれば、作者の利益にもつながる。YouTuberが、動画の再生回数に応じて利益を得られるように。
拙作『ベルモンド』を公開している私が、作家の立場からの意見を述べるなら、すでに過去のものとなった、「まったく利益を生まないはずの作品」に、あらたな利益を生む可能性を与えてくれることに、希望を感じる。
さらに、消えゆく運命にあると考えていた作品を、だれでも好きなときに読める状態で存在させてくれることに、感謝の念を抱いている。
前フリが長くなった。今回はそんな、読者にとっても作家にとってもありがたい存在として、もっともっと世に広く知られてほしいと感じている『マンガ図書館Z』から、自作を公開している私自身が、オススメ漫画を10作品、あげてみることにする。
『マンガ図書館Z』オススメ漫画、その1&2
まずは青年誌の位置づけから二作。
・『交通事故鑑定人 環倫一郎』(原作ー梶研吾/漫画ー樹崎聖)
カリフォルニアを舞台に、交通事故に隠された秘密を暴いていく「交通事故鑑定人」の活躍を、ミステリー調で描いていく。
まず舞台がオシャレで、いい車がじつに似合う。
車への造詣が深い、梶、樹崎両先生ならではの作品であり、車好きを自負する方には、レースや走り屋を題材にしたものとは違う、あらたな自動車漫画の世界を体験してほしい。
ものすごく「海外ドラマ」のにおいがするなと思ったら、実際にアメリカでドラマ化する話が、かなり進んでいたという。諸事情により流れたのが本当に残念だ。ティム・ロスあたりが主演を張れば、私は欠かさず観ただろうに。
『交通事故鑑定人 環倫一郎』は、眠れない夜にたっぷり楽しめる全18巻。
・『検察官キソガワ 』(鈴木あつむ 監修ー石井 誠一郎)
主人公の木曽川は、もともと検察官ではなく、学者であった。妻が検察官であり、生まれながらの悪人などいない、という崇高な信念を持っていた。
が、そんな妻が、ある事件で殺されてしまう。
妻の持っていた信念は、間違いだったのだろうか。いや、そんなことはない、と思いたい。木曽川は、信念を引き継ぐかのように検察官へ転身する。
どちらかといえば、対立する立場にいる「弁護士」が抱くような信念を、被疑者を責める立場の検察官が抱いているという点に、意外性とキャラクター性がある。
鈴木先生は司法の世界を、検察官とは正反対の位置に属する「弁護士」の側から描いた『ドーラク弁護士』という作品も描かれていて、これも『漫画図書館Z』で公開中である。犯罪というものを挟んで、同一の作者が両極をどう描いているか、比較してみるのも面白いかもしれない。
(『ドーラク弁護士』はこちら)
『検察官キソガワ』は、ひとつひとつのエピソードが重厚な全5巻。
『マンガ図書館Z』オススメ漫画、その3&4
つづいては、しっかり構築された世界観に、じっくり浸ってほしい二作品。
・『蝋燭姫 』(鈴木健也)
王の死に端を発して国を追われることになった姫、スクワと、忠実な侍女、フルゥは、辺境の修道院に入ることになる。
そこで出会う未知の人々、これまでとまったくことなる生活文化、必然的に起こってしまう騒動。そういったものを、シリアスでありつつも、軽快に描く。
私が個人的に中世、中近世といった世界が好きだからというのもあるのだが、丁寧に描かれている衣装や背景に魅了される。けっして写実的ではなく、漫画らしいポップさを保っているところに、とくに惹かれた。
あと、姫を慕う侍女がいじらしくてもう……!
鈴木先生は 『寒くなると肩を寄せて』という短編集もここで公開されている。
(『寒くなると肩を寄せて』はこちら)
『蝋燭姫』は、華やかな衣装に袖を通したくなる全2巻。
・『箱入り娘』(佐藤マコト)
映画化もされた 『サトラレ』で知られる佐藤先生の読み切り作品。単行本未収録作品までもを読むことができるとは、『マンガ図書館Z』おそるべし。
この作品、表紙をめくると、『サトラレ』の原点がここにある! なんてあおりがついている。これは読まずにいられない。
舞台は科学技術が現代よりも少し進んだ日本。ある研究室の、ある特別な部屋で、主人公の青年は、ある特殊な事情を抱えた少女と出会う。
今年は「VR(Virtual Reality)元年」といわれている。いくつかのIT企業がVRゴーグルを商品化する予定だが、この作品にも、同様のデバイスが登場する。
暮らしている世界と、VRの向こう側に見る世界、彼にとって、どちらがよりリアルなのだろう。
いま読むのが、ベストなタイミングの作品かもしれない。
佐藤先生は『逃亡医F』という作品も公開されている。(こちら)
『箱入り娘』は、プレイステーションVRがほしくなる読み切り漫画。
『マンガ図書館Z』オススメ漫画、その5&6
今度は、夏に読みたい二作品。
・『七つの海』(岩泉舞)
ジャンプにときおり掲載されていた短編をまとめたもの。連載経験のない作家の作品が短編集として出版されるのは、とてもレアなケースだ。それだけ、ファンの多い作家だった。
私もこのなかの一編『COM COP』をリアルタイムで読んだ当時、その優しさにあふれた描写に魅了されてしまい、連載がスタートするのを心待ちにするようになったものだ。
この作品が『マンガ図書館Z』のラインナップに加わったことを知ったとき、本当にうれしかった。また彼らに出会う機会があるとは思わなかった。
『マンガ図書館Z』には、そんなを機会を漫画読みたちに与えてくれる、優しくて頼もしいメディアになってほしいと願う。
『七つの海』は、冒険のおともに持っていきたくなる全1巻。
・『はるかリフレイン』(伊藤伸平)
この作品は、なんと、進研ゼミの「高一challenge」に連載されていたものだという。
ということは、リアルタイムに読むことができた読者は、かなり限定されていたことになる。そんな作品にも出会えるのが、『マンガ図書館Z』だ!
懐かしいむかしの曲も、YouTubeで検索すればだいたいひっかかるように、『マンガ図書館Z』の検索覧にタイトルを入れれば、むかしの漫画なら、ニッチなものでもだいたい読める、なんてところまで広がっていくといいなあ。
夏といえば、「タイムループもの」が読みたくなるのは、私だけだろうか。少年時代のあのころに戻りたい、という感情は、かならずしも、失敗をやり直したい、という理由のみに基づくものではなく、ノスタルジーを多分に含んでいて、それはセミの鳴き声なんかとともに思いだされる。
と、個人的な事情はさておき、この作品においては、ヒロインのはるかは必死である。 彼氏が、事故で他界してしまったのだから。
だが、とあるねこが現れ、気づいたときには、前日に戻っていた。もう二度と彼氏を失うわけにはいかない。はるかの奮闘が始まる。
シリアスになりすぎない心地よい緊張感が好感触。
都合のいい展開になりかねない「タイムリープもの」であるが、この物語においては、なんのためにタイムリープが起きたのか、を、読後にちょっとばかり考えたくなった。
『はるかリフレイン』は、夏が終わる前に読んでおきたい全1巻。
『マンガ図書館Z』オススメ漫画、その7&8
ふつうの設定では満足できないあなたへの二作品。
・『モンスターキネマトグラフ』(坂木原レム)
この作品は、なんの前情報もない状態で読んでもらいたいので、説明が難しい。
えっ、その設定をシリアス調で描くんですか? という驚きがあった。
舞台は、戦後の日本。どうやら坂木原先生はこのころを舞台にされることが多いようで、時代の空気がいろんな部分から、じつにうまく醸し出されている。
突拍子もない設定なのだが、けっして派手な展開にはいかず、小さなところにスポット当てているところが、とても好みだった。
説明不足で申し訳ないが、ネタバレはしたくないのである。表紙を見て想像をふくらませてほしい。
『モンスターキネマトグラフ』は、ちゃんとこっちの世界に戻ってきてね、な全1巻。
・『らんぷ ClararaBird』(河内実加)
20ページに満たないショートストーリーの一編。
不可思議な世界でありながら、語りすぎない見せ方によって、すっと抵抗なく引きこまれていった。
ねこバカの私は、表紙のねこに惹かれてページをめくったのだが、えっ、あれっ……?
戸惑いの理由は、ごく短い作品なので、ご自分で確認してくださいませ。
もとは河内先生が、同人誌として描かれたものであり、河内先生はほかにも何作か公開されているが、作風のあまりの違いに、いい意味で驚く。
『らんぷ ClararaBird』は、魅惑的な世界に引きこもりたくなる一話の短編。
『マンガ図書館Z』オススメ漫画、その9&10
最後は、魅惑の女子たちに翻弄されたい二作品を。
・『花とミツバチ』!(安野モヨコ)
こちらは、PC版『マンガ図書館』では読めない、アプリ版『マンガ図書館Z』専用タイトルである。
そしてこのアプリを通した場合、無料で読めるのは、一日につき100ページとなっていて、それ以上読むなら課金、もしくはスポンサーが提供するアプリをダウンロードしてポイントを回復させる、といった手段が必要になる。
課金しなくても、翌日になればまた、100ページ無料で読めるようになる。のんびり読み進めるのなら、課金しなくても最後まで読めるということだ。今回の記事の冒頭でふれたスマホゲームのように、課金派も課金しない派も、好きな方法を選択すればいい。
この作品の内容は、「イケてる女子による、イケてない男子への、恋のスパルタ教育」である。イケてない主人公、小松のイケてないっぷりに笑いつつも、共感してしまう自分にまた笑う。イケてる女子、サクラの、冷たさのなかに垣間見える、ほんのすこしの優しさに、惹かれる。
舞台が高校ではなく会社であったなら、ドラマ化もできただろうと感じる漫画だった。
安野先生の作品はほかにも公開されていて、女性なら、おなじくアプリ版限定公開の『ハッピーマニア』をオススメ。
『花とみつばち』は、読めば男子力あがるかも、な全7巻。
・『きまぐれオレンジロード』(まつもと泉)
こちらもアプリ版限定公開作品。
私の人生において、フィクションの世界の女性に惹かれたのは、この作品のヒロイン、「鮎川まどか」が初めてであったと思う。
気持ち悪いだって? いやいや、おなじ思いをした当時のティーンエイジャー、現在のアラフォー男は、たくさんいるはずだ。
世間では不良として認識されている、クールな女子でありながら、本当はけっして冷たくはない鮎川まどかのオンとオフに、やられたわ。
ダブルヒロインであり、ひかる、という女の子もいたのだが、私はなんの感情もわかなかった。だが、「ひかる派」というのも存在したのだろうか。ご意見をうかがいたし。
『きまぐれオレンジロード』は、鮎川のような女子と出会いたくなる全10巻。
ーーということで、『漫画図書館Z』オススメ漫画10選、は以上である。
ざざっとかんたんな解説文で申し訳ないが、独断と偏見で選んでみた。まだ読んでない作品がわんさかあるため、これ以上の選別作業は、またべつの機会にでも。
えっ? 10番目は自分の作品を選ぶボケがあると思ってた、って?
いやいや、さすがにそれは。前回の記事において、アホな感じで盛大にフィーチャーしたし。(参考記事:漫画家「読者も忘れてよ…」 漫画の中で作者に忘れられた設定たち!)
でも、まあ、入口だけでも小さく作っておくことにするか。
『漫画図書館Z』オススメ漫画、選外『ベルモンド』(石岡ショウエイ)
今回の記事を読んで、すでに『マンガ図書館Z』を熟知している方のなかには、「あの作品を薦めずにどうする!」と異論をお持ちだったりする方もいらっしゃるだろう。そういった作品の宣伝普及活動は、ぜひともみなさんに引き継いでいっていただきたい。
なにしろ『漫画図書館Z』は、ただでいいからとにかく読んでくれ、と作者自身も思っているサイトなのだから。
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ゆる四コマ『ペットボトルくん』
その31
このブログをずっと読んでいる方にしかわからない話だが、またもや、このブログを経由して、Amazonでペットボトルのドリンクをたくさんご購入された方が。
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