裁判所の令状なしで全地球測位システム(GPS)を使った捜査の違法性が問われた窃盗事件の控訴審判決が29日、名古屋高裁であった。村山浩昭裁判長は一審に続き、GPS捜査を「違法」と判断。その上で窃盗罪などで懲役6年とした一審判決を支持し、愛知県小牧市の被告の男(44)側の控訴を棄却した。
被告の弁護人によると、高裁でGPS捜査の違法性を認めたのは初めてという。これまでGPS捜査を巡っては、一審で大阪、名古屋地裁が違法と判断。3月の大阪高裁判決は「重大な違法とまではいえない」としており、司法判断が分かれた。
この日の判決は愛知県警が2013年6月から約3カ月間、被告が使用する車にGPS端末を取り付けるなどし、行動確認したと認定。計約1600回、GPSで位置情報を検索したことなどは強制捜査に当たるとの判断を示し、「プライバシー侵害の危険性が現実化したものであり、令状の発付を受けなかったGPS捜査は違法」とした。
その上で証拠排除すべきかどうかを検討。▽捜査目的は正当で、GPS捜査も必要だった▽警察官は、警察庁が任意捜査として規定していたGPS捜査の運用要領を念頭に置いていた――などの点を指摘。「証拠収集に重大な違法があるとはいえない」とし、証拠能力を認めた。
判決はGPS捜査全般について「過度の情報収集やGPSの位置検索精度の高度化などで、プライバシー侵害の危険性も一層高まる」と指摘。「新たな立法的措置も検討されるべきだ」と言及した。
昨年12月の一審・名古屋地裁判決は同様に「プライバシー侵害の恐れがあり違法」と判断。「捜査の目的自体は正当だった」として捜査で得た証拠を採用した。一、二審判決によると、被告は13~14年、愛知県のマンションなどに侵入し、現金を盗むなどした。