2016年06月29日

任天堂株主総会レポート2016


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今年もこの季節がやってきた。
株主総会への参加は4年目。岩田さんがお亡くなりになり、君島社長が就任して初の株主総会となる。

過去の記事はこちら
任天堂株主総会レポート2013 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2014 | N-Styles
任天堂株主総会レポート2015 | N-Styles

すれ違い通信はさすがに下火

昨年は雨の中での開催だったが、今日は曇り。 今回は、本社そばにある研究棟での開催となって3年目となる。

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開始時刻まで時間があるので、資料を読みながら待機。
今回の争点としては「スマホアプリ進出の進捗」「ポスト岩田体制の成果と展望」あたりがメインで、時事ネタとして「英国のEU離脱に伴う経済混乱への対応」が入って、「NX」についてはいつものように「現在はお話できる段階ではありません」とはぐらかすことだろう。

毎年、いい大人が揃って3DSを取り出してすれ違い通信を楽しみながら開会を待つのだが、さすがに今年は少なくなってて、スマホをいじってる人の方が多い。
それでも結構な人数とすれ違ってて、2回目・3回目のすれ違いの人が多数。毎年持ってきてる人達だ。あいさつも株主総会仕様になってる。「岩田社長ありがとう」のメッセージにしてる人も…。

事業報告は動画で紹介

君島社長の挨拶から株主総会がスタート。
まずは、監査役から監査報告。続いて、事業報告となるが、例年議長(社長)がスライドと口頭で説明していたのに、今回はナレーション付きのスライドでの紹介となった。この点については後ほど質疑応答でも指摘があった。

毎度のことだが、現地での不正確なメモを元に記事を書いているのため、聞き間違いや誤解が含まれる可能性があります。後日任天堂のサイトに議事録が掲載されるので、正確な情報を知りたい場合はそちらをご参照ください。

ナレーションで説明された事業報告の要点としては以下のとおり
・3DSはヒットタイトルは複数あったものの、前期で出たポケモンやスマブラのような大ヒットタイトルがなかったので前年割れの不振
・Wii UはSplatoonとマリオメーカーが大ヒットし、プラットフォームの活性化に貢献
・ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスHDが好調
・amiiboの販売の勢いがある。フィギュアが2,470万体、カードが2,890万枚
・ゲームの追加コンテンツなどのダウンロードコンテンツが439億円に達した
・Miitomoは順調なスタートを切った
・前期よりも営業利益は改善したが、為替差損により純利益はマイナス
・純資産も円高の影響でマイナス
・今後対処すべき課題としては、ゲーム人口の拡大を基本戦略としていたが、今後はさらに任天堂IPに触れる人口を拡大することに注力する
・3DSではポケモンサン/ムーンを11月に世界で発売し、数多くの自社タイトルと他社の有力タイトルもリリースする
・Wii Uは来年にゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルドをリリースするなど、すでに本体を持っている人たちに継続して遊んでもらえるようにする
・新ゲーム機NX(開発コード名)を2017年3月に発売する予定。ゲームプラットフォームビジネスは今後も中核としていく
・amiiboを使った提案をして販売を拡大する
・スマートデバイス向けアプリは秋にファイアーエムブレムとどうぶつの森のアプリを配信予定
・My Nintendoでスマートデバイス向けビジネスとゲーム専用機ビジネスの相乗効果を狙う

気になった点としては、Wii Uに関して本体の普及に対して言及がなく、すでに所有している人たちに継続して遊んでもらう施策しかなさそうな印象を受けた。まあ、NXが控えているのでしょうがないか。それでも来年発売のゼルダぐらいしか触れていないのはあんまりでは。

その後、定款の変更や取締役選任に関する議決事項の説明後、質疑応答に入る。
質疑応答の内容を全て書き出すと結構な量になるので、気になった質問だけピックアップする。

女性取締役について

株主「20年来の株主だが、3号議案(取締役選任)には賛成出来ない。男性の経営者しかいないので今の世の中についていけないのではないか」

君島「取締役を選ぶ上で年齢や性別、国籍を判断材料に入れていない。現時点では女性の取締役はいないが、女性社員は多数いて、意見を吸い上げながら商品開発している。取締役を任せられるような女性社員を育てる努力はしていきたい」

これに関しては、女性取締役ありきで登用するわけにはいかないので、社内でその役職に見合う人材を育てるか、外から呼ぶしかない。
この件について、別の質問時に宮本さんからのフォローも入っている。

Brexitの影響

株主「EUからイギリスが離脱の国民投票結果が出ているが、このまま離脱するとなると、任天堂にどのような影響があるか、あるとすればどのような対処をしていくのか?」

君島「イギリスがEUから離脱する国民投票結果の影響で金融市場が不安定になっている。そのうち安定化していくと思うが、当面は円高に動いていて、任天堂としては保有している外貨資産が為替差損でマイナスとなる。また、イギリスにNINTENDO UKがあるが、今までは安全規格や個人情報などの規格がEU基準で行っていたものが、EUから離脱するとなるとイギリス基準に変わる可能性がある。十分注視して準備を進めていく」

当然出てくると思われた質問。先週末の話だし、予測の付かない事態なので、現時点で会社として動いているわけではなく動向を見守るしかないし、君島社長としてはこう言うしかないよねという感じではある。
任天堂は海外市場のウェイトが大きいので為替相場の変動はダイレクトに決算に響くのよね…。どうなることやら。

社長が訊くについて

株主「(略)"社長が訊く"というコンテンツがあったが、今後宮本さんなどがやってもらうことは可能か?」

君島「私は開発出身ではないので、私が"社長が訊く"をやっても面白くならない」

宮本「岩田と『そろそろマンネリだよね』という話をしていたことがあり、"社長が訊く"をどうするか考えている。まずはニンテンドーダイレクトを森本に引き継いだ。先ほど質問していただいた女性に関して、役員に女性はいないが開発スタッフの女性の数は世界で一番多いのではないかと考えている」

以前の株主総会でも、"社長が訊く"は一部の人たちにしかリーチしていないという話が出ていたので、ユーザ層の拡大という面においては寄与していないコンテンツだったから、同じスタイルを継続する意味はないのかなと思う。マニアとしては継続を望むのだけど。
女性スタッフが活躍していることを示すという意味でも、女性スタッフへのインタビューも掲載されていた"社長が訊く"に替わるものは必要だろう。

事業報告を生の声で行わなかったことについて

株主「事業報告がスクリーンの映像で行われた。今までのように社長の生の声でやって欲しい」

君島「私の声だと聞き取りづらい可能性があり、今年は試行錯誤として試しにやってみた。貴重なご意見ありがとうございます」

岩田さんと比べると確かに君島さんはプレゼン慣れしていないので淡々としているし、ナレーションのほうがわかりやすい感じはした。ただ、事業報告はどうせ後日Webに載るので会場に来ている株主としては生の声で聞きたいところではある。

VRについて

株主「Wii UでHD(高精細画像)に対応したが、その影響で開発が難航したという話がある。今後VRなどの新技術導入をしていくとして同様の事態にならないか?NXは大丈夫か?」
※これに付随して別の質問もあったがよく聞き取れなかったので省略

宮本「E3というイベントで、Wii UとNXでリリースする次回のゼルダを紹介した。その映像をご覧いただきたい」

(E3のゼルダブースの紹介映像・ブースに大勢の人が走りこんでいく)

高橋伸也「ご覧いただいているのは、3日目の映像。1日目・2日目での口コミの影響で、一瞬で整理券がなくなった。それだけの反響が出ている。Wii U版を展示したが、NXでも同じ体験ができる」

宮本「ゼルダの伝説は30周年で、欧米で非常に人気がある。マンネリにならないようにゼルダを見なおそうとして、我々が"オープンエアー"とよんでいるが、物理エンジンを使って、遠方の山まで画面切り替えなしで自由に移動できるゲームにした。Wii Uでお見せして、同じものをNXでも体験できるとE3で紹介した。
時期的には今回NXを紹介するのが普通だったが、ユニークな機能を備えており、他社に真似される心配があったからお披露目は先に伸ばした。そのため、今回はゼルダだけを展示し、ひとり30分遊べるようにした。ゲーム雑誌からE3の展示でNo.1の評価を受けた。
E3ではVRが話題の中心になると見られていたので、注意して見ていたが、思ったより話題にならなかった。我々もVRやARに関する基礎研究をしていて、長時間使うことに課題があり、短時間でも楽しめるものに限定される。子供がVRデバイスをつけて遊んでいるのを見て親が心配するなど課題が多い」

取締役という立場上、しょうがないのだが他社との比較の話をする際の宮本さんはポジショントーク気味になる傾向がある。以前なら、大人数で長い開発期間をかけてゼルダ1本を作ってるような会社を批判していただろうし、NXにVR要素を組み込むなら他社のVRの展示に対してネガティブな感想を漏らさないだろう。
この発言から、ゼルダ以外にも重厚長大なソフトをリリースする予定があり、NXではVRに対応しないということが読み取れる。もしくは、発言中にあるような問題点を克服したVR機能が備わるかもしれない。

NXの生産体制について

株主「中国での人件費が高騰していて、ロボットによる自動化も増えているようだが、NXの生産についてどのようにコストを抑えていくのか」

進士「この10年で生産コストは高騰しているが中国に限った話ではなく、ASEAN各国で高騰している。ロボットというと一般に人型のものをイメージしがちだが、生産の自動化は以前から日本でも昔から行われていて、中国でも同様の流れとなっている。ただ、ゲーム機に関してはクリスマスシーズンで増産するなど、生産量に変動があり自動化が難しい製品となっている。NXについても生産の準備をしており自動化もどの程度対応できるか委託先と議論を重ねている」

情報が全く出ない中で、NXが2017年3月発売というのがどこまで信用できるか不安だったが、生産について言及されたので安心していいのかな?

開発コストの高騰について

株主「ゲーム開発は開発コストの高騰と、開発期間の長大化がある。どう対応していくのか、各取締役に聞きたい」

竹田「ゲームハードの性能を、今まではゲームの凄さをアピールするために使っていた。今後は、ソフトの開発しやすさ・生産性の向上にハードの性能を使っていくという時代が来ている」

宮本「開発費はどんどん高騰している。ブレス・オブ・ザ・ワイルドも、100人を超える体制作っていて、クレジットには300人の名前が載る(=延べ人数)。開発期間も5年かかった。これで物理エンジンを作れたので、次回からの開発に使える。採算のことを考えると、どれかが大ヒットすれば他が失敗しても回収できる。大ヒットするタイトルは少なくとも200万本単位で売れるものを作って、世界に売っていく。国内マーケットだけを考えると30万本でヒット扱いで回収できない。
今は、ゲームの細部に対する批判がネットで出回るので、自分が担当した部分が指摘されてしまうので、全員が頑張りすぎてしまう。ユーザーはゲーム全体としては満足しているのに、頑張りすぎて重厚長大になってしまうからメリハリが必要。先日も割と叩かれたが、悪くないゲームだと思っている」

高橋伸也「ゼルダで使ったリソースを他のソフトで流用したり、コンパクトなソフトをたくさん作ることもある。以前の話だと脳トレは小さいリソースでたくさん売れた。時間をかけて開発するもの、短時間で作るもの、自社製他社製問わずゲームエンジンを使用するなどいろいろ工夫している。NXでもそのあたりを考えている」

宮本さんが語っている、叩かれたゲームは、タイミング的にはスターフォックスゼロのことか?
コストや時間をかけて開発したソフトのリソースをほかで流用するから、そのコストや時間は無駄にならないという考えは、今まで任天堂が行っていた重厚長大なソフトへの批判の裏返しとなっている。ボリュームのあるソフトよりもコンパクトなソフトを出すというのが、WiiやDSの時代に成功した考えだが、その分野をスマホに奪われてしまって、今頃になって高コストなソフトを作ることになっている現状は、他社の後追いになっているのではないだろうか?

総括

全体的に、現在置かれている苦境に対し、言い訳に終始している印象。
一方で、NXの詳細がわかれば、不明瞭な部分もクリアになるんだろうなあという感じもある。
現状を考えるとそれほど楽観視出来ない感じなのに、あまり危機感を感じさせないのはNXに相当な自信があるものだと信じていいのだろうか。

あと、Miitomoがのスタートが好調とか言ってたけど、スタート以降はどうなの…?アップデートや企画次第でもうちょいうまく自社IPをアピールしつつ収益を上げるアプリだと思っていたのに、いまいちぱっとしない。

おみやげ

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マリオタオルとピカチュウクッキー。
タオル、前回と同じやつなんですが…。


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