「何がどうなっているのか把握すらできない」
英国の欧州連合(EU)離脱が決まったと報じられた24日、日本の産業用センサーメーカー、オプテックスの東晃取締役は「現時点では今後の欧州情勢を見守るほかない」とため息をついた。売上高全体の3分の1を欧州で上げる同社は、英国のEU離脱でもはや円安の恩恵にはあずかれなくなった。
英国のEU離脱が決まると、すぐに泣くことになったのは日本だ。円相場が2年7カ月ぶりに取引時間中に1ドル=100円を割り込んで上昇。円高で輸出競争力が低下することを懸念した株式市場では株価が8%近くも暴落した。2012年末に就任した安倍晋三首相が4年間で200兆円を放出してつくり上げた円安相場がわずか4時間で原点に戻ったとの声も聞かれた。08年9月のリーマン・ショックの際にも円は80円台にまで急上昇した。
韓国は危機が訪れると、ウォン安に振れ、景気回復には追い風となる。しかし、危機のたびに円買いが進むため、日本経済は景気回復が遅れることになる。市場が混乱すれば、世界の投資家は日本を資金の避難先として選ぶが、日本の景気回復にとっては「毒」になる。
■借金漬け日本の円が安全資産?
単純に考えれば、円が「安全資産」だという言葉は信じられない。日本は1990年代以降、「失われた20年」と呼ばれる不況を経験している。景気浮揚のためにう財政出動を続けた結果、政府債務が国内総生産(GDP)の250%に迫っている。昨年9月、格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、日本の信用格付けを「シングルAプラス」へと1段階引き下げた。
しかし、危機のたびに避難目的に円を買う世界の投資家は、日本政府の借金だけを見て、円を評価するわけではない。日本は1991年以降、25年連続で世界トップの対外純債権国の地位を守っている。日本政府は借金漬けかもしれないが、日本の企業と家計はこれまで輸出で稼いだ巨額の資金を海外に貸し出したり、投資したりしている。昨年末現在で日本の純対外債権は339兆円(当時のレートで約2兆8200億ドル)で、世界最多だ。2位ドイツ(1兆6200億ドル)、3位中国(1兆6000億ドル)の1.5倍を超える。危機に備えた外貨準備高も4月時点で1兆2625億ドルあり、中国に次いで2位だ。外貨準備高の源泉となる経常収支は1981年以降、黒字が続いている。昨年の日本の経常収支黒字は16兆4120億円で、前年(3兆8800億円)の4倍に達した。