【インタビュー】編成部長に直撃! - 日テレ、盤石の三冠王は攻め続ける「もっと良くしていかなければ」
●クイズで行けるという勝算があった
テレビ局が一斉に衣替えを行う春の番組改編。今回も各局、課題の時間帯に新番組を投入したり、リニューアルを図ったりと、録画視聴が増える中でリアルタイム視聴を取り込むためのタイムテーブルを作成した。この戦略を考えるのが、"テレビ局の中枢"とも言われる「編成部」。今回は、民放キー局の「編成部長」に、春改編を総括してもらい、今後の展望についても語ってもらった。
まずは、ゴールデン(19〜22時)・プライム(19〜23時)・全日(6〜24時)の視聴率"三冠王"を走る、日本テレビ。プライム帯唯一のバラエティ新番組も堅調に推移し、圧倒的な強さを見せる日曜もさらに好調で、まさに、王者に死角なし!?
(視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区)
――春の改編でプライム帯バラエティの唯一の新番組として『究極の○×クイズSHOW!!超問!真実か?ウソか?』がスタートしました。こちらの手応えはいかがですか?
タイムテーブルの多様性を考えて、クイズ番組を置きたいとずっと思っていたんです。私はバラエティ制作出身で、日本テレビは昔から『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』や『マジカル頭脳パワー!!』など、クイズが得意な局と言われて育ってきた世代でもあるのですが、今の日テレのタイムテーブルを見ると実はクイズがない。やはり、いろんな球を視聴者の皆さまに投げないと、1週間を通して日テレを楽しんでもらえないだろうということと、うちの伝統であるクイズで行けるだろうという勝算があったので、企画開発をずっと続けてきました。そして、生まれたのが『超問!』です。ゴールデンタイムの特番で試して視聴率が13.5%とれたので、他局さんのソフトを分析して、このゾーンだったら行けるんじゃないかということで、TBSさんが強い金曜日の20時台に置きました。
――スタートして、視聴率的にはいかがですか?
1回目で12.2%、2回目も11%と2ケタをキープしたので、一定の成功と捉えています。あの時間帯にクイズを見たいというお客さんがいるということも再確認できたので、もっとブラッシュアップしながら、戦っていけるという手応えはあります。バラエティが当たると1クールだけじゃなく、長期的に視聴率を稼ぎながら視聴者の方に良いソフトを見てもらえるので、なんとか成功させたいです。
――金曜日は今改編で夕方の『女神のマルシェ』『それいけ!アンパンマン』を午前に移して『news every.』を拡大しまたし、ゴールデンは昨年秋改編で、19時台に『沸騰ワード10』を投入していましたよね。
夕方を改編して、金曜日の縦の流れ=視聴フローがすごく良くなりました。『沸騰ワード10』も、先日の放送で視聴率を2ケタに乗せましたし、課題の一つである金曜日は、形が見えてきているかなという感じです。
――改編が理想的な形で、順調に結果へ結びついていますね。
この2つのバラエティは、新しい有望なクリエイターに挑戦させています。『沸騰ワード10』の水嶋陽は、初めてGP(ゴールデン・プライム)帯で自分の企画を演出しているんです。『超問!』の河野雄平は、もともと『高校生クイズ』をやっていて、クイズ番組が得意なディレクターだったんです。構造が複雑ではない「2択」というどこから見てもすぐ入れる形と、プレゼンターが「回答者と視聴者を迷わせる」というところが発明品になり得ると思いまして、そこがうまくハマって2ケタに乗せているのだと思っています。
――バラエティ番組の戦力が増えていくのは、心強いですね。
「局の中にどれだけ数字がとれる総合演出がいるか」というのは、直接的に視聴率に関わってくるところなので、そういう人物が何人いるかが勝負だと思います。なので、なるべく若手にも勝負させて、その絶対数を増やしていきたいと思います。
――ドラマの話も伺いたいのですが、4月クールは嵐・大野智さんの『世界一難しい恋』が好調でしたね。
水曜22時台は、女性が共感できるドラマというコンセプトで、4月クールは大野さんがホテル社長を演じるドラマを編成し、最終回は16%を記録するなど高視聴率を獲得しました。7月も王道の"お仕事もの"路線で、北川景子さん主演の『家売るオンナ』をスタートさせます。
4月の土曜21時台は、ファミリーで楽しめる『お迎えデス。』でした。7月からは『時をかける少女』で、幅広い年代に知られる有名原作を、黒島結菜さんと菊池風磨さん、竹内涼真さんという若者に人気のフレッシュなキャストが演じます。今クールも家族で楽しめるドラマになれるかなと期待しています。
日曜22時30分は、M1(男性20〜34歳)・M2(男性35〜49歳)といった男性層にも、日曜夜に連続ドラマを楽しんでもらう枠というコンセプトですが、4月期の宮藤官九郎さん脚本『ゆとりですがなにか』は、配信でも相当数の数字になって手応えを感じています。7月は藤原竜也さん主演で『そして、誰もいなくなった』ですが、こちらもエッジの立った企画でスタートします。日曜の枠はまだ1年と少しなので発展途上ではあるのですが、3枠それぞれのブランディングと差別化が進んでいると思っています。
――4月クールのドラマは、プロデューサーが初めて3枠とも女性ということで話題になりましたが、次の7月クールもそうですよね。
はい。男性のプロデューサーももちろん頑張っていますが、若い女性のプロデューサーが育ってきています。そんな中で、連続ドラマの枠が久々に3枠に増えたので、男女関係なくチャンスが増え、結果的に3人が女性プロデューサーになったということです。
(C)NTV
●秋以降は"場が荒れる"と警戒
――平日朝の情報番組『ZIP!』も、2月から民放横並びトップを続けています。この躍進の背景はどう捉えていますか?
朝に明るく気持ちよくというコンセプトを外さずに、4月も「朝だよ!貝社員」という新しいアニメをはじめたり、キャラバンコーナーもセレイナ・アンさんに代わったりと、本当にいい意味でうまく番組内リニューアルを続け、視聴者の皆さんを飽きさせない工夫をちゃんとやっていると、編成としては思っています。
――マイナビニュースで連載を持っているテレビ解説者の木村隆志さんが、「ネットサーフィンのようにコーナーがどんどん変わっていくテンポの良さが受けている」と分析しています。
スタッフもそこは意識していると思います。長尺物でドーンと見せるだけではなくテンポが良くて、あの明るさもネット世代に親和性が高い。『ZIP!』は、ネットやデジタル展開を見据えて、次の世代の朝の番組をコンセプトに立ち上げたものでもあるので、ネットサーフィンのような見方が生理的に合い始めてきているのかなという感じもしています。
――これまでフジテレビが『めざましテレビ』から『とくダネ!』『ノンストップ』への流れで視聴率トップでしたが、『ZIP!』がトップに立ったことで、後の『スッキリ!!』『PON!』への流れも良くなってきていますか?
はい。『スッキリ!!』は昨年に演出が代わって、4月から出演者にハリセンボンの近藤春菜さんが加わりましたが、うちの調査で近藤さんの好感度が相当高かったんです。数字的にも好調ですし、まだまだ伸びしろがあると思っています。それと、早朝の『Oha!4 NEWS LIVE』では、お天気テロップを『ZIP!』と共通化しました。世界観を合わせたことで、朝帯の縦の流れも良くなっているという感じです。
――日曜の夕方も、『真相報道バンキシャ!』が、2015年度で民放同時間帯トップに立ちました。フジの老舗アニメ『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』の牙城を崩したのは、大きいですよね。
30日曜夕方は『笑点』からの流れがもちろん良いのですが、関東ではその前の『チカラウタ』という小山慶一郎さんと羽鳥慎一さんの番組が相当良くなってきていて、先日も11.9%を獲得するまでになりました。『笑点』への流れにうまくハマったのではと思います。
――その『笑点』は、新司会者に春風亭昇太さん、大喜利の新メンバーに林家三平さんが加入されました。下馬評通りに、三遊亭円楽師匠や小遊三師匠で行くのではなく、ここで昇太さんとなったところに、日テレさんの攻めの姿勢を感じました。
「老舗番組のリ・ブランディング」は地上波にとって最重要な事です。歌丸師匠の最後で27.1%をとった5月22日の放送も、昇太さんの初司会で28.1%となった翌週29日の放送も、若い人がすごく見てくれたんです。年配層中心の視聴イメージがある中で、これをきっかけに若い人にも定着してもらい、そのまま『バンキシャ!』『ザ!鉄腕!DASH!!』を見てもらうという形ができてくると、いいなと思っています。現在も6週連続20%を超えています。(※6月20日現在)
――金曜日も朝帯も改善して、日曜日もさらに盤石です。もう課題がないように見えるのですが…。
テレ朝さんの朝帯も、流れが良くなってきています。『報道ステーション』も富川悠太アナに代わって、これからどう推移していくか。TBSさんの21時またぎ編成、CX(フジテレビ)さんの大幅改編、NHKさんも19時半にあった『クローズアップ現代』が22時に移って、20時またぎの番組ができて、『ニュース7』の層がどう流れていくのか…すごく注目しています。各局が数字を上げる施策を打たれているので、うちももっと良くしていかなければと思っています。
――いろいろお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。最後に10月改編に向けての展望を教えてください。
8月はリオ五輪がありますし、秋以降はテレ朝さんのスポーツ特番もかなり組まれますので、いわゆる"場が荒れる"予感がしています。10月改編では、さらに縦の流れを良くするための施策や、曜日ごとの各番組の連携などもより意識した「1週間を通して日テレを楽しんでもらう"習慣日テレ"」戦略で、日本テレビを見てもらえればと思っています。
(C)NTV
(中島優)