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【千葉】

<参院選 大人って…>(上)世代と負担 借金膨張で若者にツケ重く

参院選で初めて選挙権を得た10代の若者たち(右側2人)と、シニア世代たち(左側2人)が日本の財政や憲法などについて語り合った座談会。中央は司会の矢尾板さん=千葉市で

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 十八、十九歳も新たに有権者に加わった参院選。経済は視界が晴れず、少子高齢化が進み社会保障の足元も揺らぐ中、「社会が変わると思わない」と選挙権の行使をためらう若者もいる。一票を託した政治家による相次ぐ政治資金の問題が政治不信に追い打ちをかける。政治参加の意義や持続可能な社会をどうつくるか。政治デビューを迎えた十代の若者二人が、戦後日本を築いた六十代のシニア二人と一緒に考えた。 (服部利崇、中山岳)

 日本の借金は膨らみ続け一千兆円を超えた。このままだと、そのツケは若者ら将来世代にも及ぶ。巨額の赤字を誰が、どう負担するのか。議論はここから始まった。

 藤本日向子さんは「いきなり(一千兆円もの)借金を見せられて『負担しろ』と言われたら、若者たちも怒り、憤る。ただ、今の生活があるのは先輩たちのおかげでもある」と負担の分かち合いに理解を示す。

 司会を務める矢尾板俊平さんは国の財政を家計にたとえ、借金が膨らむ仕組みの一端をこう説明する。

 「給料を上回る支出だけでなく、これまでの借金と利子の支払いもある。新たに借金をせねばならず、負担は雪だるま式に増える」

 また少子高齢化が、世代ごとの受益と負担の構造に格差を生じさせるという。このままだと将来世代は税や社会保障の負担が、政府のサービスや社会保障関連の受益を大きく上回る「支払い超過」に陥る可能性がある。矢尾板さんは「だから、声を出せない人、現在選挙権のない世代のことも考えないといけない」と訴える。

 斎藤哲大さんは政治家に注文をつける。「(将来に)不安がある若者を差し置き、高齢者向けの施策が多いと感じる。議員インターンをした時、支援者訪問は全員退職した人。まったく若者に目が向いていない印象を持った」

 伊藤譲一さんは「赤字がなぜここまでたまったか、政治家が説明できない。『しようがないから(若者は)引き継げ』と言っているようで乱暴だ」と指摘する。また「高齢者は負担を嫌っているのではない。ただ政治家や役人、優遇された人たちが(議員報酬や公務員給与の削減など)身を切るのが先」と話す。

 渡辺由紀子さんは「(世代間で)相応に負担していくのは立派。でも税金を預かる政府が公正に分配していないのが問題」と憤る。「社会から(利益を)吸い上げたから、社会に返す責任がある」と、利益を上げている大企業からまず取るべきだと訴える。

 安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げを再延期した。増税で充実させると約束した社会保障政策への悪影響はもちろん、負担先送りに伴う若者の痛みも増えかねない。

 「上げるべきだった。目先ばかり考える人間が多いから、将来の話につながらない」(斎藤さん)

 「私たちの下の世代の負担が少しでも減るのなら上げるべきだった」(藤本さん)

 若者二人はいずれも首相の判断に否定的だった。

 <斎藤哲大(さいとう・ひろき)さん> 19歳。学生らでつくるNPO法人「ドットジェイピー」スタッフ。千葉大法政経学部2年。柏市。

 <藤本日向子(ふじもと・ひなこ)さん> 19歳。商店街や祭りなど地域貢献活動に取り組む。淑徳大コミュニティ政策学部2年。千葉市中央区。

 <渡辺由紀子(わたなべ・ゆきこ)さん> 65歳。自然食品の店を経営。国会前デモにも頻繁に参加。浦安市。

 <伊藤譲一(いとう・じょういち)さん> 65歳。商社や外資系企業に勤務。定年退職後、「戦後日本の過ち」などを思索。千葉市中央区。

 <矢尾板俊平(やおいた・しゅんぺい)さん> 37歳。淑徳大コミュニティ政策学部准教授。専攻は総合政策論。若者の政治意識の研究や、高校などで主権者教育を企画。

 

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