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【茨城】

<参院選>貧困世帯向け学習塾 自治体任せに限界も

無料学習塾でボランティアの講師に算数を教わる子ども=日立市で

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 昨年四月の生活困窮者自立支援法の施行に基づき、国は貧困世帯の子どもたちの学習支援に乗り出した。県内でも無料学習塾の開設など、支援の輪は広がり始めているが、すべて自治体や民間団体任せでは、支援の限界も見え始めている。 (山下葉月)

 今月下旬の放課後、日立市内の無料学習塾には、小学四年生から中学三年生まで、十五人の児童生徒が長机に並び、市内に住む元小学校教諭ら五人のボランティアと一緒に、宿題に取り組んでいた。小学四年の女子児童(9つ)は「家で一人でいるより、みんなでいると勉強をしたいと思えます」と笑顔を見せる。

 無料学習塾は、市内のNPO法人「ウィズユー」が二〇一四年十一月に始めた。法律に基づき、今年五月から市の委託支援事業となり、教材や辞書の購入、会場の手配がしやすくなった。日立市の場合、基本的に生活保護受給世帯と、給食費の支払いが困難な準要保護世帯の小中学生が対象で、五月末現在で三十人が登録している。事務局長の田尻英美子さん(66)は「小学生で不登校になったり、ローマ字が分からなかったりする子もいる」と話す。登録している子どものほとんどが母子家庭という。学習塾が知られるにつれ、入塾希望者も増えているが、「丁寧に教えたいので、入塾を待ってもらっている状態」で、講師不足から希望者全員を受け入れられないでいる。

 県も法律の施行に合わせ、町村を対象に学習支援事業の実施を後押ししており、昨年度は阿見町に無料学習塾を開設した。一方、市は任意のため、昨年度、無料学習塾を開いたのは県内三十六市中、皆無だった。事業が進まない現状に県の担当者は「NPOなど、受け皿を探すのに苦労しているのでは」と分析する。県は各市を訪れ、事業の必要性を訴えて、市とともに受け皿を探した。その結果、本年度は九市が学習支援塾を開いている。

 日立市の担当者は、NPOの協力に感謝しながらも「任意事業まで手が回らなかったし、どのように支援を進めればよいか、悩んでいる自治体は多いと思う」と、自治体任せの問題点を指摘する。

 ウィズユーは、学習支援のほかに今後、母子家庭を支援する病後児保育や、臨床心理士を招いて母親の悩みを聞く相談会も開いていく。田尻さんは「学習支援だけでは貧困は解決しない。母子家庭への総合的な支援が今、最も必要だ」と訴える。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、二〇一二年時点で日本の「子どもの貧困率」(平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす十八歳未満の子どもの割合)は16・3%で、六人に一人が貧困家庭に暮らす。

 

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