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【社会】

高齢者の身体拘束 一般病棟では9割超 病院・介護施設調査

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 全日本病院協会(東京)が、厚生労働省作成の高齢者に関する「身体拘束ゼロへの手引き」の達成状況を調査した結果、回答があった約六百八十の病院や介護施設の六割超が、「体や手足をひもで縛る」など原則禁止として例示された十一行為のいずれかを行うことがあるとしたことが二十八日、分かった。このうち「一般病棟」は九割超が「ある」と回答、「介護施設」は三〜四割だった。

 同協会の木下毅常任理事は「身体拘束を受けることで気力が失われ、症状が悪化する恐れもある。施設の管理者が意識を高め、現場職員への指導を徹底する必要がある」と指摘。一方で「職員個人に判断を任せず、施設全体で患者や入所者の症状や行動を把握することが重要だ」としている。

 厚労省は取材に「不必要な身体拘束は依然なくなっていない。各施設の組織としての取り組みが重要で、手引の周知を徹底したい」と答えた。

 厚労省の手引は二〇〇一年作成。「徘徊(はいかい)しないよう車いすやベッドに体を縛る」「点滴チューブを抜かないよう手足をひもで縛る」「行動を落ち着かせるため向精神薬を過剰に服用させる」「自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する」といった十一の行為を、「身体拘束や行動を制限する」として原則禁止の対象として例示している。

 同協会は一五年十一月に調査を実施。約二千の病院や介護施設に質問状を送り、六百八十三施設から有効回答を得た。このうち十一行為の一つ以上を行うことがあると回答した施設は四百五十施設で66%。一般病棟(七十七施設)の中で「ある」としたのは94%、退院後、在宅復帰するまでにリハビリなどを提供する「老人保健施設」(七十三施設)では47%、要介護度が原則3以上の人が食事や排せつなどのケアを二十四時間受けられる「特別養護老人ホーム」(七十五施設)で33%、地域包括ケア病棟など(七十施設)では99%だった。

 十一行為への許容意識も調査。ベッドや車いすに縛り付ける行為には、全体の70%が「理由を問わず避けるべきだ」と回答した。一方で「手指の機能を制限するミトン型手袋などの着用回避」は25%で、医療事故防止のためやむを得ない場合は許容されると考える施設が多い実情もうかがえる。

 

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