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若い貧困者が「生活保護はズルい」と思うワケ

東洋経済オンライン 6月29日(水)4時40分配信

 「でも生活保護とかズルくないっすか?」

 この質問は、取材活動の中でも端々で聞かれる。しかも、貧困の中で育った若者や、貧困者に近しい環境にいた者からも聞かれる。

貧困報道を「トンデモ解釈」する困った人たちがいる

 たとえば前回の冒頭で「もし食い物万引きしちゃいけないって言うなら、3日間公園の水だけ飲んで暮らしてみればいいんすよ。非行少年なんか、親が3日飯食わせなかったら誰だってなるんすよ」と発言した青年もそうだった。

 取材時に25歳だったK君は、まさにかつて子どもの貧困の当事者だった青年だ。母親と父親のなれそめは、母親がキャバクラでバイトをしながら専門学校に通っていたときで、父親は年の離れた元客だった。父の仕事は不動産の営業だったが、バブルの崩壊で父親は借金を抱えて失職し、母親へのDVもあったために離婚。

 小学校に上がったばかりだったK君は母親とともに、某県の公営住宅で独り暮らしをしていた母の父親のところに身を寄せたという。

■ 働かず毎日ワンカップを飲んでる祖父

 「それで、ジジイが生活保護(受給者)だったんですけど、初めて部屋入ったときの臭いは忘れられない。リアルにうんこ。汚物の臭いで、俺、絶対こんなとこじゃ寝れないって思った。ばあちゃんはもう死んでて、ジジイは働かないで生活保護受けて、毎日ワンカップ飲んでるんですよ。母親は美容師の専門学校を途中でやめちゃった人なんで資格とか特になくて、地元に戻ったのはもともと付き合ってた男が狙いだったみたいで、ジジイの生活保護の金をむしって遊んでました。あとからわかったことですけど。でも当然、俺、母親の代わりにジジイに殴られますよね。金返せって」

 殴られるのが嫌だから、祖父の部屋には帰りたくない。そう母親に言ったのは小学3年生の夏休み中。すると母親はK君に千円を渡して自力で何とかしろと言った。

 「そっから母親は1週間帰ってきませんでした。夏休み中だったから給食もなくて、小学3年でホームレスですよ、俺は。千円なんか駄菓子食ってるだけで4日でなくなりましたよね。そのころは地元の友達もあんまりいなかったし、むしろ俺はジジイの部屋の臭いが服に移って、臭いって言われてたし。それで、母ちゃんいつ帰ってくるんだろうって、母親が帰ってきたらすぐにわかる団地の近くの公園でブラブラして、夜だけジジイの部屋の超臭い玄関で寝て、ジジイが起きる前に部屋逃げ出すんですよ」

■ 祖父を頼らず、食べ物を万引き

 渡された千円がなくなり、3日空腹に耐えたが母親は帰ってこなかった。母親は、さすがに金がなくなれば祖父が飯を食わすと思ったのだろうか。だがK君は祖父を頼らず、近くの食材店で食べ物を万引きして、その場で店員に保護されたのだという。

 「母親じゃなくてジジイが迎えに来て、歯が1本しかねえ汚ねぇ口で“今度やるときは酒盗んで来いや”って言われた。母親にはあとからフルタコ(ぼこぼこ)にされました」

 その後のK君は、一時的に児童養護施設に預けられたり母親の友人女性宅に置き去りにされたりしつつ、中学生のときにはしっかり鬼剃りパンチ(こめかみを極端に剃り込んだパンチパーマ)の不良少年のできあがり。

 度重なる補導に少年院を経験し、その少年院人脈を頼って17歳で上京独立。それからは振り込め詐欺界隈で「仕事」をし、現在では飲食店の共同経営者をしているという。

 「中学校のころは、同じ団地の友達でやっぱ親とかジジイとかが生活保護受けてる奴がけっこういて、生活保護の受給日になるとジジイ捕まえてフルタコにして、金奪って地元の先輩への納金とかカンパとかに当ててましたね。そうしたらジジイ、無駄に体力あるんで“その金持ってかれたら酒が飲めねえだろ、パチンコ行けねえだろ”ってえれえ形相で追っかけてくるんですよ。そんとき俺は思いましたよね。ジジイてめえ、そんだけフルタコ食って走れる元気あるなら働けよって。母親も結局まともに仕事しないで生活保護受けてたときありましたしね。鈴木さん、これでも生活保護受けてる奴ってズルくないって思いますか?」

 やばい。これは強敵である。

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最終更新:6月29日(水)7時35分

東洋経済オンライン

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