東京ばかりに人が集まり、地方は過疎化が止まらない。こうした流れを変えるため、中央と地方の関係見直しは急務だ。

 昨年の国勢調査では、8割を超す市町村で人口が減った。安倍政権が進める「地方創生」の方向性は正しいのか。参院選を通じ、改めて考えてみる。

 ほぼ半数の自治体が消滅する可能性があるとの民間研究組織の推計が衝撃を広げ、安倍政権が「地方創生」を政策の柱に据えたのは2年前だった。

 ただ、矢継ぎ早に打ち出した施策からは、根強い中央集権的な考え方がうかがえる。

 典型は、JR東海のリニア中央新幹線計画への肩入れだ。

 安倍首相は今月、数兆円規模の公的資金を低利でJRに貸し付け、東京―大阪間の全線開業を前倒しする考えを表明した。整備新幹線の建設も急ぎ、全国を一つの経済圏に統合する「地方創生回廊」にしたいという。

 だが、すでに全人口の5割以上が集中する3大都市圏の直結が「地方創生」にどうつながるのだろう。田中角栄元首相が日本列島改造論を掲げた70年代以降、自民党政権が推し進めた新幹線や高速道路網の建設が、過疎化の歯止めにならなかった教訓を忘れてはなるまい。

 政権が地方創生の目玉として設けた交付金制度にも上意下達の性格が色濃い。自治体の提案した事業を国が評価し、予算を配分する仕組みだ。今年度までに計3700億円が計上されたが、観光振興や地場産業育成などの事業が並び、人の流れを変えられるか、心もとない。

 発想の転換が必要だ。一時的に金をばらまき、自治体を「元気にする」のではなく、恒久的な財源と権限を渡して「自立」を促す。そういう分権改革が今こそ必要ではないか。

 この点で野党側の公約も迫力を欠く。民進党は「地域主権改革」を掲げるが、民主党政権当時に進められなかった分権の具体策を示していない。おおさか維新の会は、大阪の副首都化で東京一極集中を打破すると説く。他の地方にどんな波及効果があるのか、見えにくい。

 「日本一の子育て村」構想を掲げ、積極的な子育て支援を打ち出している島根県邑南(おおなん)町、インターネット環境が整い、IT企業の進出が相次ぐ徳島県神山町など、近年注目される地域に共通するのは、お仕着せではなく、自発的な取り組みで人を引きつけていることだ。

 自治体の足腰を強くし、柔軟な発想を引き出す。そういう方向に国全体を変えていくことが、政治に期待される役割だ。