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「合併反対33.9%」の衝撃 出光 創業家の乱

2016/6/28 16:55
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 出光興産の創業家が同社と昭和シェル石油との合併計画に「待った」をかけた。両社の合併構想は石油元売り業界の再編に火を付けたが、先行きは見通しにくくなった。今年に入り、創業家がトップ人事など会社の重要な意思決定に大きな影響を及ぼす例が相次ぐ。企業の経営者だけではなく、創業家というオーナーも含めた企業統治のあり方が問われている。

■「異質の企業体質を持つ」

 「合併に反対する理由の第一は、出光と昭和シェルが異質の企業体質を持つことだ」。創業家の代理人である弁護士は28日、こうした意見をつづった声明文を公表、出光経営陣との対立姿勢をあらわにした。

 弁護士によると、出光家出身者が率いる日章興産(持ち株比率16.95%)や出光文化福祉財団(同7.75%)、出光美術館(同5.0%)などが合併反対派。創業家側は合計33.92%の株式を保有するという。

 出光が28日に開いた株主総会では、合併計画を推進している現取締役10人の再任について創業家側が反対票を投じた。会社側によると、取締役の再任は可決されたというが、これで事態が落ち着いたわけではない。

 昭和シェルとの合併計画を進めるには、両社の株主総会で3分の2以上の株主が賛成する特別決議が必要。3分の1超の株式を保有する創業家側が合併計画への「拒否権」を発動すれば、合併に大きな障害になるからだ。

 出光と昭和シェル石油の合併構想は、後にJXホールディングスと東燃ゼネラル石油の統合交渉を誘発した。国内市場の伸び悩みと過剰設備の問題に悩む石油元売り業界を大きく動かしたが、創業家の動きで、出光と昭和シェルの計画の行方は分からなくなった。

■トップ人事の次は合併にも影響

 今年に入り、産業界では、創業家が重大な経営マターに関与する例が増えている。例えば、セブン&アイ・ホールディングス。5月の株主総会を前に、鈴木敏文会長(当時)が子会社であるセブン―イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(同)に退任を迫ったが、社外取締役らがこれを退けた。

 鈴木氏という「カリスマ経営者」が提示したトップ人事案に反対し、その退場を決定づけたとされるのが、セブン&アイの源流企業であるイトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊氏。現在はセブン&アイの名誉会長をつとめており、息子は同社取締役の順朗氏。同氏も鈴木氏の人事案に反対したという。鈴木氏は二人三脚で歩んできた創業家から支持を得られず、経営の第一線を退いた。

 料理レシピサイトで人気のクックパッドも1月、創業者の佐野陽光氏が自分以外の全取締役を交代させる議案を会社側に提案した。結局、3月の総会後に佐野氏が執行役に復帰する一方で、穐田誉輝氏は社長の座から降りた。

 セコムは5月、前田修司会長(同)と伊藤博社長(同)を解職した。会社側は否定しているものの、好業績が続く中での突然の退任劇に「創業者である取締役最高顧問の飯田亮氏の意向が働いたのでは」との臆測が飛び交った。

 いくら実績のある経営者でも、創業者の意向には逆らいにくい。出光の場合、出光佐三氏という創業者本人は他界しているものの、創業家は健在。今なお大株主として影響力は大きい。今回の反対表明が昭和シェルとの合併計画に影響を及ぼせば、企業の命運をかけた大型再編に創業家が影響を及ぼすケースとして産業史に刻まれる。

(武類雅典、中尚子)


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