「どうして映画を撮り始めたのですか?」
―最初はほんとうに偶然というか、自分が映画を撮るとは思っていなかったんです。 英語の授業で知り合った女の子に、「今映研に入れば部室が使えるからやろうよ」って言われて、 いいよ?ってふんわりした感じで入ったら、その子がそのまま離脱して、全然そういうタイプじゃなかったのに、部長になってしまって(笑)
でもやるならちゃんとしなくちゃなあと思って、そのまま春に部員を集めて、女の子ばかりのサークルで休み時間を利用して撮ったり、夏休みに集まって撮ったり…。 その処女作が映画祭で賞を頂いて、観てくれた方のおかげで、劇場公開したり、新作を作る流れに入って行きました。
「山戸さんはどんな大学生だったのですか?」
―大学では哲学科で倫理学を専攻していました。 哲学科で学んだことをそのままスライドするわけではないけれど、哲学者の思考体系からは少なからず影響を受けていると思います。
ただ、言葉の世界では成立することが、映画では成立しなかったり、あるいはその逆が、映画を撮っていると頻繁に起こるんですね。 その体験がとても鮮烈で、社会と世界の狭間が音を鳴らしている感じに、すごく惹かれましたね。
「山戸結希」と「映画」について
―「何かを表現したい!」という強い意気込みがあったわけではないんですけど、 それでも、もともと映画に限らず表現物が好きだったので、その中で先鋭化されていったものはあるかもしれません。
いろいろな方と出会う機会が増えて、自分の映画を買ってくれる物好きな人と出会って、 そうやってなにか感じあうものが似ている方たちとひとつのものを作り上げていくのは、やっぱり純粋に楽しいですね。
「思春期の女の子が登場するのはなぜですか」
―初めて映画を撮るときに出てくれるのは友達だったから、必然的に歳の近い女の子が登場する映画でしたね。 あとは普通に、今物語として冷静に観られる記憶の範囲が、少女期にあるからというのもあるかもしれません。 最近の作品は、商業的要請を受けて思春期の女の子を撮る側面が強く、近未来もそうなっていく感じがありますね。
「女の子の「性」について、どう考えているのですか。」
―女の子の性については、表現する側としては、ジェンダー的抑圧から目を逸らさずに作りたいという思いがあります。 とくに映画において、そういう抑圧は透明化されてしまいやすい。
日本においては、まだ女性からのジェンダーへの対抗は、発展途中にありますね。 でも発展途中だからこそこれからさらによくなると思うので、特に映画においては男性スタッフに助けてもらいながら、 女優さんと一緒に、まっすぐに映画を作り出してゆきたいです。
「「5つ数えれば君の夢」をとるにあたって大切にしたことはありますか。」
―東京女子流の女の子5人のうちだれか一人だけを特別に撮るということはしたくなくて、 5人それぞれの魅力を、一人一人を特別に見つめようと思って撮りました。 みんな素直で良い子だから、変に指示しすぎたり怒ったりするのは良くないと思って、そのへんにいる年上の女の人ってくらいの立場で接するようにしました。
「インディペント映画とメジャー映画について、思うところを教えてください。」
―インディペンデントでも、面白いものを作れば必ず火がつく状況にあると思います。 SNSの普及もあってアンテナの高い人も増えているのを感じますし、 そうしたインディぺントの良い気運に、観客としてもコミットしていけたらいいなと思います。
そして同時に、監督として自分のできることはしなければ、と思わされますね。 田舎に住んでいたので、メジャー映画しか伝わってこない世界にいたからこそ、 そこまで届けられなければ映画をつくったところで無いのと同じだという気持ちもあり、なんとかそこまで行きたいなと思っています。
「山戸さんの作品には女の子が口の端いお米をつけている表現が多いのですがなにか意味はあるのですか?」
―そんな細かいところまで…!気づいてくれてありがとうございます(笑)嬉しいです。 米…米は……、女の子をフェティッシュに撮りたいっていう気持ちの現れなんでしょうかね。 フェティッシュな可愛さって異性からの目線を孕んではいるのですが、と同時に可愛い女の子って、やっぱり良いものですよね(笑) 男性の視線を内在化しつつ、それを女の子が映像の側からまた観客に向けて表現して…って循環を象徴しているのかもしれないです。 そういう循環形式において、たとえば新しいロールモデルを女の子の側が示して、変な話ですけどそこに男性が欲望を感じてしまうのって面白くないですか(笑) jagzziと同じで、一種の挑戦ですよね。あんな小さな米粒にもそんな気持ちがこめられていたんですよ?。って、いま考えたんですけどね(笑)
「普段の山戸さんについて教えてください!」
―もう、ほんとうにごくごくふつうに過ごしてます(笑) 本を読むことが昔から好きですね。今生きている社会の外部にあるものを、本から受け取っていたと思います。
「大学生へのアドバイスを教えてください。」
―本当に当たり前のことになってしまいますが、やりたいことをやるのが一番だと思います。 私は器用じゃなかったのでやりたいことや学業を、全てバランスよく計算して進められたわけではなかったのですが、 なんとなくで始めてしまったことが、それが職業になりつつあって… あまり躊躇せずに、ひとつのことに夢中になっても大丈夫なのかもしれません。
「最後に、山戸さんにとっての「刺激」とはなにか教えてください。」
―SNSの普及で、すぐに映画の感想が飛んできたり、そういう反響が受け取れることにすごく刺激を頂いています。 こんなに早く反応がもらえることは、今までとは全く違う状況にあると思いますね。 どんな意見でも、その意見が存在するということは、善いことだと思います。 届いているということだから、出会っているということだから。 そうやって受け取った刺激を、自分の血肉や真実に反映していけたらいいなと思いますね。
ありがとうございました!
山戸有希監督 最新作
「5つ数えれば君の夢」放映情報
(C)2014『5つ数えれば君の夢』製作委員会
公開表記: 5月3日〜6日まで東京都写真美術館にて、特別上映決定!他全国順次公開中
■プロフィール
山戸結希(やまと ゆうき)
上智大学出身の
処女作「あの娘が海辺で踊ってる」が
東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞し
「次世代のファンタジスタ」と
呼ばれる新進気鋭の若手映画監督。
東京女子流の5人を主演に迎えた
「5つ数えれば君の夢」が絶賛放映中
■リンク
「5つ数えれば君の夢」公式サイト