名古屋城天守閣の木造復元構想を巡り、名古屋市の河村たかし市長は27日、自身が掲げる2020年7月までの完成を目指す方針を事実上、断念する意向を明らかにした。開会中の市議会では、基本設計費を含む補正予算案について早期完成に慎重論が強い市議会から疑問が相次いでおり、賛同を得られないとして市長が譲歩する形となった。
河村市長は同日開いた市議会経済水道委員会で、「議会の議論や2万人アンケートの結果に耳を傾ける必要もある」と強調。木造復元を目指す時期について「(愛知県と共同招致を目指す)アジア大会が開催される26年や、リニア中央新幹線の開業する27年をめどに見直すことも名古屋にとって大きな起爆剤になり得る」と答弁した。
市は今年3月に竹中工務店を優先交渉権者に選定。今議会には同社を事業者とする前提で補正予算案を出している。河村市長は竹中案について「現時点では優先交渉権者の法的な位置づけの整理に時間を要する」と述べるにとどめ、議案取り下げには言及しなかった。
市議会の複数会派の幹部は同日、今議会で可否を決めず継続審議にする方針を確認した。28日の同委員会で意思決定し、29日の本会議で議決する見込みだ。今後、河村市長に設計予算案の取り下げを求めていく考えだ。
ある会派の幹部は「極めて常識的な回答を得た。議会の閉会中に論点を整理したい」と話した。別の市議は「(次の)9月議会で議案を取り下げて、11月にリスタートすべきだ。再公募するのが一番早い」と語った。
市は5月に2万人規模の市民アンケートを実施。木造復元自体には6割以上の支持があったが、20年7月完成への賛同は2割にとどまった。市議会からはアンケートの解釈や市の作成した収支計画などに異論が出ていた。議会の議論を受け、河村市長は21日の市議会本会議で「議会の話に耳を傾けたい」などと答弁し、態度を軟化させる考えを表明していた。