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「見せしめはもう勘弁」 夕張破綻から10年、35歳市長の覚悟

NIKKEI STYLE 6月28日(火)10時0分配信

 かつて炭鉱の街として栄え、約12万人が暮らした北海道夕張市。10年前の2006年6月20日、353億円の巨額赤字をかかえて財政破綻を表明、人口は今や1万人を割り込んだ。鈴木直道市長(35)は財政再建にまい進する半面、「住民は幸せになったのか」と自問する。今年を「勝負の年」と覚悟を決め、再生計画の見直しに舵(かじ)を切る。

「ミッション・インポッシブル」の返済計画

 夕張市は、来年3月6日に自治体の「倒産」に等しい財政再建団体(法律の変更で10年から「財政再生団体」)に移行してから10年の節目を迎えます。そして、当時の後藤健二市長が破綻自治体への移行を表明してから、ちょうど今月で10年です。

 夕張市は破綻した当時、353億円の赤字を18年間で返す計画を立てました。前年度末時点で予定通り95億円を返しています。かつて海外の記者に「この返済計画は『ミッション・インポッシブル(不可能な任務)』だ」と言われたことがあります。市税収入8億円の自治体が、いくら緊縮財政をしても無理な赤字だというのです。

 夕張市の財政再生計画はトータルで20年。それまで、財政破綻した自治体は数多くありましたが、1975年以降、10年を超えて借金を返し続けた自治体はありません。

 また、自治体が自分たちの裁量で使える財源の8倍もの金額をかかえて破綻したので、本来なら20年でも足りないほど、1年間あたりの返済額が重くなりました。前例のない長さであると同時に、借金の規模から見れば、前例のない短さでもあるのです。

 この厳しい計画を進めたらどんなことがおきるのか、ある種壮大な「検証実験」だったといえるかもしれません。「支出は、命にかかわること以外は全部削れないか」というスタンスでしたから、削れるものは、すべて削りました。

 もっとも大きかったのは職員の人件費です。260人いた市職員を半分以下の約100人に減らしました。市議会も議員数を18人から9人に減らし、報酬も40%カットしています。市民にも税はもちろんのこと、公共の施設の利用料も50%引き上げたり、水道料金も1.7倍に引き上げたりするなど、負担をお願いしました。厳しい緊縮財政の果てに、計画通り、ここまで借金を返すことができました。それでも、若い世代を中心に人口が3割減少するなど、大きな副作用に苦しむことになりました。

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最終更新:6月28日(火)10時0分

NIKKEI STYLE

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