中露首脳会談 国益優先だけの連携か
英国が欧州連合(EU)からの離脱を決め、国際秩序の流動化が懸念される中、日米欧に対抗するロシアと中国が連携の強さを見せつけた。
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談し、国際問題で一層協調していくことを確認する共同声明を発表した。
声明は南シナ海をめぐる中国と日米欧の対立を念頭に「紛争は当事者間の交渉と合意に基づき平和的手段で解決すべきだ」と強調し、問題の「国際化」や「外部からの干渉」に強く反対する姿勢を打ち出した。米国の「航行の自由作戦」や、主要7カ国(G7)の対中非難などに対する抗議と受け止めていいだろう。
声明はまた「国連安保理で合意されていない一方的な制裁の発動は国際法の規範に合致しない」として、ロシアによるクリミア半島の一方的編入などウクライナへの介入に対する日米欧の対露制裁を非難した。
中露は必ずしも互いの行動を全面的に支持しているわけではないが、日米欧による締め付けには連携して対抗するという姿勢である。
だがロシアのウクライナへの介入や中国の南シナ海進出は、力を背景に現状を変更しようとする、国際秩序への挑戦である。中露は一方的な自己正当化をやめ、まず国際社会の懸念をきちんと受け止めるべきだ。
両首脳はまた北朝鮮に核・ミサイル開発の中止を呼びかける一方で、これに対抗して日米韓が進めているミサイル防衛計画を「域外勢力による軍事プレゼンスの強化」だとして改めて反対を表明した。これも北朝鮮の脅威に直面する日韓から見れば受け入れがたい。
今年は中露が「戦略的パートナーシップ関係」を宣言してから20年、善隣友好協力条約の締結から15年にあたる。長い国境で接する両国が経済的な利害対立を抱えながらも協力関係を強化してきたことは地域の安定につながった。しかし、中露の連携が日米欧への対決姿勢を強めるばかりでは世界の安定は望めない。
中露首脳の公式会談に先立ち、両国が主導する上海協力機構の首脳会議が中央アジアのウズベキスタンで開かれた。来年にはインド、パキスタンも正式加盟する可能性が高い。プーチン大統領はまた、旧ソ連の一部に中国、インドを取り込んだ「大ユーラシア経済パートナーシップ」構想も打ち出している。新たな国際秩序作りへ主導権を握ろうという強い意志がにじむ。
むろん、中露は国際秩序の重要な担い手だ。しかし、国益を優先するだけの連携では国際社会の理解は得られない。欧州の変動で不安感が広がっている時だからこそ、世界の安定に資する行動を求めたい。