英がEU離脱の場合 経済・政治で大きな影響

英がEU離脱の場合 経済・政治で大きな影響
イギリスで、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票が23日に行われます。イギリスが離脱した場合、EUにとっては発足以来初めての加盟国脱退となり、経済、政治の両面で大きな影響が及ぶものとみられます。
まず、EU域内でドイツに次いで2番目の経済規模を持つイギリスが離脱すれば、EUのGDP=域内総生産は17%以上縮小する見通しです。また、イギリスは、ドイツとフランスに次いでEUの予算への拠出額が大きく、離脱によって、EUの予算全体のおよそ12%(日本円で1兆3000億円)以上が減ることになります。

このほか、EUは域外の国や地域と30を超える貿易協定を結んでおり、現在はアメリカ、そして日本との自由貿易協定で年内に大筋合意できるかが最大の焦点になっていますが、交渉で主導的な役割を果たしてきたイギリスが離脱すれば、EUの交渉力が大きくそがれるという指摘も出ています。

さらに、EUは政治面の影響を強く懸念しています。EUに対しては、去年以降、急増する難民や移民の問題への対応や、財政危機に陥ったギリシャへの巨額の金融支援などを巡り、批判が高まっています。こうした世論の不満を追い風に、フランスやドイツなど各国で反EUを掲げる政党が勢いを増していて、イギリスが離脱を決めれば、さらに支持を伸ばす可能性があります。また、デンマークやオランダでは、市民団体などがイギリスに続いてEU離脱の賛否を問う国民投票の実施を呼びかける動きも生まれています。

ヨーロッパ各国の共存共栄を目指し、単一市場や単一通貨、それに政治共同体としての機能を拡充し続けてきたEUですが、加盟国が離脱するという初めての事態が起きれば、統合の流れに逆行する動きがさらに強まっていく可能性があります。

金融市場に直ちに影響

イギリスのEUからの離脱が決まった場合、直ちに金融市場に影響が出るものとみられます。

このうち、外国為替市場では、イギリスの通貨ポンドや単一通貨ユーロが売られ、比較的安全な資産とされる日本の円が買われて、円高が急速に進むおそれがあるほか、株式市場でも、投資家の間でリスクを避けようという動きが強まって、世界的な株安を招くとみられています。さらに、銀行どうしが資金のやり取りをする短期金融市場で資金が調達しづらくなれば、金融機関の破綻にもつながりかねません。

このため、イギリスの中央銀行のイングランド銀行は、ヨーロッパ中央銀行や日銀、それにアメリカのFRB=連邦準備制度理事会など、各国の中央銀行と緊密に連携して対応する方針です。

また、中長期的には、貿易などイギリスの実体経済への影響も懸念されます。イギリスの輸出の半分近くはEU向けで、EUから離脱すれば、現在はかかっていない関税が課される可能性があるほか、EUが自由貿易協定を結ぶ50を超える国との貿易でも、協定のメリットを得られず、輸出産業が打撃を受けるおそれがあります。

イギリス財務省は、離脱した場合、輸出や海外からの投資の落ち込みなどで、2030年のGDP=国内総生産は、残留した場合と比べ6.2%前後縮小するという試算を発表しています。一方、イギリスはEU域内でドイツに次いで2番目の経済規模があり、EUの予算についてもドイツ、フランスに次いで3番目に拠出額が大きいことから、離脱はイギリスだけでなく、ヨーロッパ全体の経済にも影響を与えるとみられます。

また、ロンドンにある国際的な金融センター「シティー」で多くの金融機関が事業を縮小し、パリやフランクフルトなどEUのほかの都市に移転するおそれがあり、金融センターとしての地位が低下するのではないかという懸念も広がっています。