英に早期離脱交渉要求 波及を警戒
【ベルリン中西啓介】英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選択したことを受け、ドイツ、フランス、イタリアなどEU前身組織の原加盟6カ国の外相が25日、ベルリンで会合を開き対応を協議した。離脱派勝利により世界経済の先行きに不透明感が拡大しており、6カ国外相は英国に対し、できる限り早期に離脱交渉を開始するよう求めた。また、国民投票実施が他の加盟国に連鎖することを懸念し、共同声明では英国を除く27カ国の連携と協調に全力を挙げる方針を確認した。
外相会合、協調確認
会合には独仏伊のほか、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの外相が参加した。シュタインマイヤー独外相は「(英国離脱という)欧州統合の転換点を、互いの意見に耳を傾けるチャンスにしなくてはならない」と述べ、EUが移民・難民問題や若者の失業問題などで解決能力を示すことが重要だと訴えた。
キャメロン英首相は10月の保守党大会までに次期首相を選び、EUとの離脱交渉を任せる方針を示している。週明けの27日に閣議を招集して今後の対応を決める考えだ。だが、長期化が必至の交渉が世界同時株安を招き、英国に進出するEU企業にも不安が広がっている。シュタインマイヤー氏は「英国が決断した今、可能な限り早く離脱のプロセスが開始されるべきだ」とし、エロー仏外相も「新首相任命は喫緊の課題だ」と、離脱による影響を最小限にとどめるよう英国に迅速な対応を求めた。
英国では移民問題などでEUが加盟国の決定権を奪い、政策を押しつけているという反発が離脱支持につながった。共同声明では「加盟国間で欧州統合への熱意に差異があることを認識すべきだ」と明記。金融危機で緊縮財政を強いられたギリシャや、難民問題で反発を強めるハンガリーなど東欧諸国に配慮を示した。
英国の投票結果を受け、他国でも反EU政党が国民投票を目指す動きを強めている。仏極右政党「国民戦線」やデンマーク第2党「デンマーク国民党」などは、EU離脱を問う国民投票の実施を要求。EU欧州委員会のユンケル委員長は25日の独紙ビルトで「大衆迎合主義者たちは反EU政策を広めるチャンスをみすみす見逃すわけがない」と述べ、離脱が現実味のある政治議論になることに強い懸念を表明した。
一方、メルケル独首相は25日、英国との今後の交渉について「交渉が実務的に行われることを望んでいる」と話し、離脱後もEUと英国との間で政治的・経済的友好関係が維持されることが重要との認識を示した。メルケル氏は27日夜、オランド仏大統領、レンツィ伊首相、トゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)とベルリンで会談し、離脱問題への対応を協議する。
【ことば】欧州連合(EU)拡大の歴史
仏、西独、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国が1952年、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立。67年に欧州共同体(EC)が発足し、英国、アイルランド、デンマークが73年に加盟。80年代にギリシャ、スペイン、ポルトガルも加わった。93年にEU発足。95年にオーストリアなどが参加。2004年に東欧やバルト諸国などの計10カ国が加盟し、13年のクロアチア加盟で計28カ国となった。