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2016-06-26

シンポジウム「ライブラリアンの見た世界の大学と図書館〜図書館利用行動を中心に〜」に行ってきた。

| 10:41 | シンポジウム「ライブラリアンの見た世界の大学と図書館〜図書館利用行動を中心に〜」に行ってきた。を含むブックマーク

こういうのに行ってきた。

2016年 6月25日(土)15:00〜17:00

2016年度 科学研究費によるシンポジウムライブラリアンの見た世界の大学と図書館図書館利用行動を中心に〜」

http://www.slis.doshisha.ac.jp/event/20160625.html

 という訳で、以下はxiao-2の聞きとれた/理解できた/メモできた/覚えていた範囲でのメモ。敬称は「氏」に統一。誤記・誤解もあるだろう。そのうち記録とか動画とか出るんじゃないかなと思う*1ので、きちんと知りたい人はそういったものを見ることをお勧めする。

  • Hiroyuki Nagahashi Good : グッド長橋広行氏(University of Pittsburgh ピッツバーグ大学図書館
    • 図書館紹介
      • ピッツバーグ大学は学部生25,000名、院生9,700名。アメリカでは中規模の大学。
      • 社会・人文・自然科学のすべての分野をカバーする総合図書館に600万の蔵書。ヒルマン図書館、9つの専門図書館アーカイブ、さらに法学図書館医学図書館
      • これらに加えて電子書籍があり、毎日増えている。蔵書が少ないので電子に頼っている。
      • 日本語資料は東アジア図書館にある。中国・日本・コリア資料40万冊。うち日本資料13万冊。購入継続中のもので雑誌が80タイトル。電子化とともに減っている。
      • 電子書籍は少し前に200冊くらいテストで購入。そのあと最近になってからDDA*5を導入。これは購入していない資料も目録に上がってきて、学生がクリックすると買うことになるという仕組み。英語の資料だと3回クリックされたら買うことになっている。
      • 日本語資料については電子書籍の方が紙より高いため利用が少ない。
    • やっている仕事
      • 蔵書構築。最近はリエゾンライブラリアンといって、ビブリオグラファーだった人が先生とコミュニケートして仕事する傾向。
      • 英語資料についてはDDAが進んでいるため、選書におけるライブラリアンの役割が低下している。engineeringの担当者などはインストラクションやレファレンスがメインの業務。
      • 日本研究については書籍の存在感がまだ大きい。
      • 日本研究といってもひとつの学科ではない。様々な学科の先生が、その中で日本を扱う。なのであらゆる分野の資料が必要。年間の予算600万で、新刊リスト等から選ぶ。
      • 先生のテーマが狭ければ、その分野は徹底収集。たとえば宗教学の先生が内観療法*6の資料が必要になれば、その方面の雑誌収集や道場への問合せまで行う。
      • 他に、北米全体のライブラリアン組織の委員や、学内の司書委員会勉強会などもしている。
      • 社史の研究会もやっている。北米にある社史のデータベースを作った*7
    • ライブラリアンになった経緯
      • いまの仕事は10年くらいやっているが、その前は商社マンやテレビ局、博物館の通訳などいろいろやった。
      • その中で、UCLA司書と出会い、蔵書構築の面白さに惹かれた。それで図書館学位を取るために大学にいき、卒業した時にピッツバーグ大学のポジションに空きがあったため。

 以下、各パネリストからテーマによる発表。

  • グッド氏:学生の利用行動
    • ピッツバーグ大学で2013-2014年に行った調査に基づく*12
    • 来館頻度は「毎日」という人が50%超。以前に論文に書いた時*13には来館者が減っていたのが、2012年あたりから増加に転じてきた。
    • ヒルマン図書館のどこをよく利用するか?という質問では、1階(長方形テーブル)と2階(丸テーブル、グループ学習用)が多い一方で、5階(ついたてのある自習席)も人気。ちなみに1・2階は喋ってもいいゾーンで、うるさい。
    • 来館目的を見ると、個人で静かに自習すること、図書館の設備(PCやプリンタ)を使うことの需要が高い。グループ活用が多いという訳ではなさそう。
    • 図書館サービスの認知度では、ディスカバリーサービス、電子ジャーナルがよく使われている。それ以外、たとえば文献管理ツールやLibguideはあまり認知されていない。
    • 図書館資料への満足度はかなり高い。電子ジャーナルがよく利用されている一方で、書籍については電子より紙の需要が少し高い。
    • 2年前から、1週間のうち5日間は24時間オープンするようになった。それで23-6時に使った回数を聞くと、結構使われている。アメリカの大学生はキャンパス近隣の寮やシェアハウスに住んでいることが多く、バスも夜中まであるため。図書館の隣に飲食店もあり、夕食を食べてからくることもできる。
    • 40%くらいの学生はPCよりスマホから検索をしている。OPAC等もスマホ対応が必須。
  • バゼル氏:研究者の利用行動
    • Ithaka S+Rの調査*14による。これはアメリカ非営利団体で、2000年以降3年ごとに高等教育機関研究者を対象に行っている調査。
    • 研究の出発点。2003年から2015年にかけて「図書館内でのリサーチ」という回答が減っている。研究者図書館に来て研究を始めるのではない、という傾向がはっきりしている。
    • 一方で、図書館ウェブサイトや目録が出発点になるという回答は、2015年初めて上向きとなった。ディスカバリーサービスやウェブツールの発展によるものか。
    • 学問分野で見ると、人文科学社会科学自然科学医学、の順に、頼るものが図書館の目録等>電子ジャーナルやデータベース
    • 特定の文献を探す時には、特定の学術データベースを利用することが一番多い。図書館ウェブやカタログを利用するのは20パーセント。図書館員に尋ねるというのがほとんどないのは残念なところ。
    • 資料へのアクセス。「紙での購入をやめて電子書籍にしてもいいか?」という質問にOKと答えたのは、もっとも高い医学系で80%、低い人文系で50%。上昇傾向。
      • ちなみに、ハワイ大学アジア研究者にインタビューしてみた結果では「紙の資料と電子資料を選べるならどちらがいいか?」という質問に対し、紙が40%、電子が15%、どちらでもいいという人も。
      • その内容をよく聞くと、「自分がじっくり研究したい時は紙がいいが、学生に教えるなどの時は本文検索のできる電子がよい」という傾向。
    • 図書館に期待する役割は、BuyerやRepositoryが上位。これに加えて学部生のサポートを期待する傾向が顕著。
    • curation、management、preservation等は、図書館としては自分たちの役割としてアピールしたいが、研究者の90%は管理は自分でやりたいと考えており、ギャップがある。
  • 田中氏:学生の様子
    • 2010年-2014年ワシントン大学での留学生数を比較。2010年には日本からの留学生が150名程度に対して、中国が3,000名程度。
    • 各国の留学生数ランキングを見ると、2008年にはトップの中国が600名ほどだったのが、2014年には中国がトップは同じだが、人数は3,800名になっている。日本は2008年も2014年もランキングは6位で、人数もそれほど変わらない。普段の体感からすると日本人留学生が減っているように思ったが、数として減っているというより相対的なもの。
    • 図書館から留学生へのサポート。各国語での図書館使い方案内。日本語セッションは自分が担当。
    • どんな学習をしているか。近代日本の歴史を扱った講義のシラバスを紹介。
    • こうした課題をこなすため、学期の最初に図書館の使い方を教え、レポートのアイディアを一緒に考える。
    • レポート発表の練習の場もセッティング。各学部から日本をテーマにしている学生を集める。学部の壁を越えることで思わぬ視点が得られる。
  • マクヴェイ氏:学生の様子
    • 今回のために学部生3名にインタビューをした。適当に捕まえたので理系の学生ばかり。
      • 理系の学生にも基本教養という形で論文を書く講義は課されるので、その過程で必ず図書館資料は利用する。
      • 場としての図書館というのは好評。グループよりは一人で、個室の方が好まれる。
    • 院生は日本研究の人にインタビューした。
      • 21世紀においてブラウジングにはどういう意味があるのか。アメリカ大学図書館では開架スペースを伝統的に重視してきた。だがバゼルさんが発表されたとおり、いまや図書館の棚のブラウジングは研究の出発点にならない。
      • 日本研究については紙資料がまだ中心という特性があるが、学部生等では既に期待値が違う。必要な資料が図書館になければ、オンラインにあるものでなんとかする。
    • スキャン&デリバリーというサービスも行っているが、学部生となるとこれでももはや遅いと感じる。即時性を求める。
    • フロア
    • グッド
      • 不明。グループ学習がしやすいように設備を整えたのでそのためかと思ったが、実態はグループ学習用の部屋も一人で使っていたりする。
      • 2013年の調査では、図書館への要望の1位がスペース増、2位が開館時間延長だった。これに応じて2014年には雑誌や参考図書を書庫へ送るなど、開架資料を減らして座席を増やした。
    • フロア
      • 大学の役割が変化する中、図書館員の意識に変化はあるか。
    • バゼル
      • 大学全体が、院生だけでなく学部生の教育を重視する傾向になってきている。
      • 先生の教え方も変わっている。一度セミナーに出席してみたら、必要な資料を先生が既に探して案内してあるということがあった。資料探しよりその分討論に時間をかけたいという理由だったが、資料探しも学生にさせるよう働きかけた。教員と連携し、図書館を授業の中に入れてもらう。
    • フロア
    • 田中
      • そもそもアメリカでは転職自体が多いということもある。
      • ライブラリアンには、強みのある主題知識がないといけない。たとえば弁護士の資格を取った人が、裁判実務ではなくlaw librarianになるなど。また教える能力が求められるということで教員が転職したり、IT系からの転職もある。
    • グッド
      • 日本人がMLIS(図書館情報学修士号)を取っただけではだめで、さらに専門分野を持っている必要がある。
      • 一方MLISがなくてもなれるケースもある。IT系は人気。
      • 最近は博士号を持ったアメリカ人が、日本研究司書をやるケースが多い。以前は日本語能力重視だったが、言葉はあとから勉強してもいいということで、研究方法を学んだ人が求められる傾向。MLISも同じ、あとからでいい。
    • 江上
      • 図書館に求められるものが変化し、高度化、専門化している。その中で、今後どんな将来像を目指したいか。
    • グッド
      • 自分の館では1階にDigital scholarship commonsを作った。情報学学位を持ったサポータ等が常駐している。ここでビッグデータ、リサーチデータのマネジメントGIS分析ソフトの使い方などをサポートしている。
      • 学生にinformation literacyが身についているかどうかが、教員の評価につながる仕組みがある。Teaching facultyの先生と組んでサービスを行いたい。
    • 田中
      • アカデミアとは多様な考え方の存在を許すもの。図書館多様性を受入れ、発信できる場所となりたい。
    • 非白人の学生が増えている一方で、司書は白人・女性・中年というステロタイプがまだ健在。これを崩したい。
    • バゼル
      • 研究者が深くひとつの分野を追求しているのに対し、ライブラリアンである自分は広く全体を見ることができる。深く追求するひとはすぐ隣の分野が見えないこともある。色々な分野の先生と接することで、共通の関心などが分かる。つなげる役割。
    • マクヴェイ
      • 個人的には、special collectionの構築。出版物は比較的アクセスが容易なのに対し、一次史料をアクセスできるように。GLAM、資料を持つ機関がゆるやかに連携していくこと。
      • 全体的には、digital scholarshipのサポート。

 メモは以上。大急ぎで書いたため、注の書き方等まちまちなのはご容赦。注記とかはあとから足す…かも(遠い目)。とりあえず、以下の2冊を読み返そう。

書物の日米関係―リテラシー史に向けて

書物の日米関係―リテラシー史に向けて

*1:特に根拠はないけど。

*2:参考になりそうな文献:「アーカイヴス紹介 ハーバード・イェンチン図書館の歴史および日本語コレクションの特質

*3:Libguidesとは何ぞや?という向きはこちらを参照:E1410 - つながるLibGuides:パスファインダーを超えて

*4:参考:日本研究者への情報提供--ハーバード大学現代日本研究資料センターの場合を中心に

*5:Document-driven acquisitions

*6:司会とパネリストのやりとりから補足。お坊さんの修行方法のひとつで、心理療法にも応用されているらしい。

*7Shashi: the Journal of Japanese Business and Company History

*8:うろ覚えなので表現は不正確かも

*9Question Point

*10Hathi Trust

*11Orbis cascade alliance

*12:この調査結果は全文Webで見られるとのことだ。そのうち見つけたら追記。

*13http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I9504325-00:title=グッド長橋広行. ウェブユーザビリティ調査事例--ピッツバーグ大学. 情報の科学と技術 / 情報科学技術協会 [編].. 58(6) 2008]

*14カレントアウェアネス-R:米・ITHAKA S+R、英国の研究者に関する調査報告(2015年版)を公開

*15紀伊國屋書店図書館向け電子書籍サービス。NetLibrary

*16Japan Knowledge

*17:このへん予備知識がないのであまりよく理解していない。参考:Wikipedia|safe space

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