2016-06-26
シンポジウム「ライブラリアンの見た世界の大学と図書館〜図書館利用行動を中心に〜」に行ってきた。
こういうのに行ってきた。
2016年 6月25日(土)15:00〜17:00
という訳で、以下はxiao-2の聞きとれた/理解できた/メモできた/覚えていた範囲でのメモ。敬称は「氏」に統一。誤記・誤解もあるだろう。そのうち記録とか動画とか出るんじゃないかなと思う*1ので、きちんと知りたい人はそういったものを見ることをお勧めする。
- 司会:江上敏哲(国際日本文化研究センター図書館)氏
- Kuniko Yamada McVey マクヴェイ山田久仁子氏(Harvard University ハーバード・イェンチン図書館)
- 図書館紹介
- ハーバード大学全体には73の図書館がある。分散型。総合図書館であるワイドナー図書館の他、ほとんどは専門図書館。
- 自分のいるイェンチン図書館は大きい方で、紙の資料が140万冊、雑誌が1万1千タイトル。中国・日本・コリアの東アジアコレクションがほとんど。加えて満州語、チベット語、ベトナム語の資料も少し。
- 源流は1928年設立のイェンチン研究所附属図書館。当時からハーバードのキャンパス内にあり、初代所長もハーバード大学の研究者だったりと縁が深い*2。
- 研究所設立前には、日本から受け入れた研究者の姉崎正治や服部宇之吉により日本コレクションが収集された。
- 初代のライブラリアンは中国人で、イェンチン分類という方法を作った。これは長く使われていたが、現在は議会図書館分類(LCC)を採用。
- ハーバード大学全体としては図書館は大所帯、現在のスタッフは800名程度。
- やっている仕事
- ライブラリアンになった経緯
- 図書館紹介
- Hiroyuki Nagahashi Good : グッド長橋広行氏(University of Pittsburgh ピッツバーグ大学図書館)
- 図書館紹介
- ピッツバーグ大学は学部生25,000名、院生9,700名。アメリカでは中規模の大学。
- 社会・人文・自然科学のすべての分野をカバーする総合図書館に600万の蔵書。ヒルマン図書館、9つの専門図書館、アーカイブ、さらに法学図書館・医学図書館。
- これらに加えて電子書籍があり、毎日増えている。蔵書が少ないので電子に頼っている。
- 日本語資料は東アジア図書館にある。中国・日本・コリア資料40万冊。うち日本資料13万冊。購入継続中のもので雑誌が80タイトル。電子化とともに減っている。
- 電子書籍は少し前に200冊くらいテストで購入。そのあと最近になってからDDA*5を導入。これは購入していない資料も目録に上がってきて、学生がクリックすると買うことになるという仕組み。英語の資料だと3回クリックされたら買うことになっている。
- 日本語資料については電子書籍の方が紙より高いため利用が少ない。
- やっている仕事
- 蔵書構築。最近はリエゾンライブラリアンといって、ビブリオグラファーだった人が先生とコミュニケートして仕事する傾向。
- 英語資料についてはDDAが進んでいるため、選書におけるライブラリアンの役割が低下している。engineeringの担当者などはインストラクションやレファレンスがメインの業務。
- 日本研究については書籍の存在感がまだ大きい。
- 日本研究といってもひとつの学科ではない。様々な学科の先生が、その中で日本を扱う。なのであらゆる分野の資料が必要。年間の予算600万で、新刊リスト等から選ぶ。
- 先生のテーマが狭ければ、その分野は徹底収集。たとえば宗教学の先生が内観療法*6の資料が必要になれば、その方面の雑誌収集や道場への問合せまで行う。
- 他に、北米全体のライブラリアン組織の委員や、学内の司書委員会で勉強会などもしている。
- 社史の研究会もやっている。北米にある社史のデータベースを作った*7。
- ライブラリアンになった経緯
- 図書館紹介
- Azusa Tanaka : 田中あずさ氏(University of Washington ワシントン大学図書館)
- 図書館紹介
- ワシントン大学は、西海岸にあるワシントン州シアトルの大学。ワシントンD.C.にあるのではない。
- 学生は4万人程度。
- UWLibraryのミッションは「人と知識を結ぶことで、知的発見を促し生活の質を向上する*8」。
- 大切にしているのはUser-Centericということ。図書館はキャンパス内に16あり、年間500万人の利用者がある。京都府の人口の倍くらい。
- 多様性。人種や年齢、ジェンダーなど様々な利用者に対応する。
- アセスメント。図書館の家具ひとつ買うにもアンケートを取り、利用者の要望を反映。「図書館はライブラリアンではなく利用者の夢を叶える場所」と考えている。
- 24時間サービス。24時間開いている図書館もある。またオンラインレファレンスは24時間利用可能。なぜこんなことができるかというと、OCLCのチャットレファレンス*9に加盟しているため。時差を利用し、夜間など時間外の質問に対しては、いま昼間の国の図書館から回答してくれるというもの。
- Collaboration。学生によるライティングの指導や、協力して勉強のできるコモンズもある。
- Hathi Trust*10、Orbis cascade alliance*11にも参加。
- 東アジア図書館には68万のアイテムがあり、東アジア地域研究をサポート。うち日本関係資料は16万。文学や歴史などが多い。
- やっている仕事
- コレクション構築、レファレンス、ファンド探し(予算をとってくる)など。
- ライブラリアンになった経緯
- 図書館紹介
- Tokiko Yamamoto Bazzell : バゼル山本登紀子氏(University of Hawaii at Manoa ハワイ大学マノア校図書館)
- 図書館紹介
- ハワイは5つの島があり、ハワイ大学はそれぞれ分校を持っている。マノア校は一番大きいキャンパス。大学全体では5万人の学生のいる中で、2万人がいる。
- マノア校には50人近くの専門ライブラリアンがいる。教授と同じFacultyでテニュアトラック。初め4年間雇用されて、その時点で査定を受け、実績が充分であればテニュアがもらえる。かなり厳しい。
- 全体の蔵書は400万、その中のAsia Collection部を担当。中国・日本・コリアの他、東南アジア、南アジア、ロシア、沖縄、フィリピンなども。それぞれの部に専門ライブラリアンがいる。
- 日本研究をやっている研究者による教授会がある。この会のメンバーにライブラリアンも入っていて、相談や企画など。
- 組合が強く、各司書のステータスが厳密。図書館情報学の修士号は必須、これだけだとアシスタント。ダブルマスターだとAssociate librarian。博士号があっても図書館情報学の学位がないと駄目。
- ハワイ大学の歴史。1920年に同志社大学を退職した原田助氏が、ハワイ大学の蔵書構築に貢献した。これが日本研究の下地に。
- 当時は空の便がない。船で日本から欧米に行くときにはホノルルを経由。なので日本人の要人が滞在することも多く、蔵書構築に尽力。また現地に多かった日系人からの尽力もあった。
- やっている仕事は、他の方とおおむね同じなので省略。
- ライブラリアンになった経緯
- 図書館紹介
以下、各パネリストからテーマによる発表。
- グッド氏:学生の利用行動
- ピッツバーグ大学で2013-2014年に行った調査に基づく*12。
- 来館頻度は「毎日」という人が50%超。以前に論文に書いた時*13には来館者が減っていたのが、2012年あたりから増加に転じてきた。
- ヒルマン図書館のどこをよく利用するか?という質問では、1階(長方形テーブル)と2階(丸テーブル、グループ学習用)が多い一方で、5階(ついたてのある自習席)も人気。ちなみに1・2階は喋ってもいいゾーンで、うるさい。
- 来館目的を見ると、個人で静かに自習すること、図書館の設備(PCやプリンタ)を使うことの需要が高い。グループ活用が多いという訳ではなさそう。
- 図書館サービスの認知度では、ディスカバリーサービス、電子ジャーナルがよく使われている。それ以外、たとえば文献管理ツールやLibguideはあまり認知されていない。
- 図書館資料への満足度はかなり高い。電子ジャーナルがよく利用されている一方で、書籍については電子より紙の需要が少し高い。
- 2年前から、1週間のうち5日間は24時間オープンするようになった。それで23-6時に使った回数を聞くと、結構使われている。アメリカの大学生はキャンパス近隣の寮やシェアハウスに住んでいることが多く、バスも夜中まであるため。図書館の隣に飲食店もあり、夕食を食べてからくることもできる。
- 40%くらいの学生はPCよりスマホから検索をしている。OPAC等もスマホ対応が必須。
- バゼル氏:研究者の利用行動
- Ithaka S+Rの調査*14による。これはアメリカの非営利団体で、2000年以降3年ごとに高等教育機関の研究者を対象に行っている調査。
- 研究の出発点。2003年から2015年にかけて「図書館内でのリサーチ」という回答が減っている。研究者は図書館に来て研究を始めるのではない、という傾向がはっきりしている。
- 一方で、図書館のウェブサイトや目録が出発点になるという回答は、2015年初めて上向きとなった。ディスカバリーサービスやウェブツールの発展によるものか。
- 学問分野で見ると、人文科学>社会科学>自然科学>医学、の順に、頼るものが図書館の目録等>電子ジャーナルやデータベース。
- 特定の文献を探す時には、特定の学術データベースを利用することが一番多い。図書館のウェブやカタログを利用するのは20パーセント。図書館員に尋ねるというのがほとんどないのは残念なところ。
- 資料へのアクセス。「紙での購入をやめて電子書籍にしてもいいか?」という質問にOKと答えたのは、もっとも高い医学系で80%、低い人文系で50%。上昇傾向。
- 図書館に期待する役割は、BuyerやRepositoryが上位。これに加えて学部生のサポートを期待する傾向が顕著。
- curation、management、preservation等は、図書館としては自分たちの役割としてアピールしたいが、研究者の90%は管理は自分でやりたいと考えており、ギャップがある。
- 田中氏:学生の様子
- 2010年-2014年のワシントン大学での留学生数を比較。2010年には日本からの留学生が150名程度に対して、中国が3,000名程度。
- 各国の留学生数ランキングを見ると、2008年にはトップの中国が600名ほどだったのが、2014年には中国がトップは同じだが、人数は3,800名になっている。日本は2008年も2014年もランキングは6位で、人数もそれほど変わらない。普段の体感からすると日本人留学生が減っているように思ったが、数として減っているというより相対的なもの。
- 図書館から留学生へのサポート。各国語での図書館使い方案内。日本語セッションは自分が担当。
- どんな学習をしているか。近代日本の歴史を扱った講義のシラバスを紹介。
- こうした課題をこなすため、学期の最初に図書館の使い方を教え、レポートのアイディアを一緒に考える。
- レポート発表の練習の場もセッティング。各学部から日本をテーマにしている学生を集める。学部の壁を越えることで思わぬ視点が得られる。
- マクヴェイ氏:学生の様子
- フロア質問への応答(以下、敬称略)
- フロア
- マクヴェイ
- グッド
- 田中
- バゼル
- グッド
- フロア
- 田中
- グッド
メモは以上。大急ぎで書いたため、注の書き方等まちまちなのはご容赦。注記とかはあとから足す…かも(遠い目)。とりあえず、以下の2冊を読み返そう。
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- 作者: 江上敏哲
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*2:参考になりそうな文献:「アーカイヴス紹介 ハーバード・イェンチン図書館の歴史および日本語コレクションの特質」
*3:Libguidesとは何ぞや?という向きはこちらを参照:E1410 - つながるLibGuides:パスファインダーを超えて
*4:参考:日本研究者への情報提供--ハーバード大学現代日本研究資料センターの場合を中心に
*5:Document-driven acquisitions
*6:司会とパネリストのやりとりから補足。お坊さんの修行方法のひとつで、心理療法にも応用されているらしい。
*7:Shashi: the Journal of Japanese Business and Company History
*8:うろ覚えなので表現は不正確かも
*12:この調査結果は全文Webで見られるとのことだ。そのうち見つけたら追記。
*13:http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I9504325-00:title=グッド長橋広行. ウェブのユーザビリティ調査事例--ピッツバーグ大学. 情報の科学と技術 / 情報科学技術協会 [編].. 58(6) 2008]
*14:カレントアウェアネス-R:米・ITHAKA S+R、英国の研究者に関する調査報告(2015年版)を公開
*15:紀伊國屋書店の図書館向け電子書籍サービス。NetLibrary
*17:このへん予備知識がないのであまりよく理解していない。参考:Wikipedia|safe space
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