先月から新卒6期生たちが福岡研修を開始し、つい先日修了して東京に戻って行きました。ペパボの福岡研修プログラムには、各部署やサービスごとの研修や座学などがあります。僕はそのなかで「誰のためのデザイン?」を読む読書会の監督として1ヶ月間毎日(時にはサボりつつ)研修に関わってきました。今回はその話をします。
誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
- 作者: D. A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2015/04/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
どのように行ったのか
簡単に読書会の形式についてご紹介します。
今回行った読書会は、全職種対象でしたので、全職種で役に立ちそうな広義のデザインを取り扱う書籍を数冊ピックアップし、そのなかで読んでもらうものを決めました。それが「誰のためのデザイン?」でした。ちょっと難しい内容でしたが、最終日までに全体の7割くらいまで頑張って読んでくれました。
ちなみにピックアップした本は他にこんなのもありました。
サービスデザイン ユーザーエクスペリエンスから事業戦略をデザインする
- 作者: Andy Polaine,Lavrans Løvlie,Ben Reason,長谷川敦士,赤羽太郎
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2014/05/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 村田智明
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2015/09/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る
またやり方についてですが、1時間実施する場合は20分黙読、20分内容についてのディスカッション、残り時間で「読書担当」に要約や議論の内容などをまとめてもらいます。読書担当の役割は、司会業とログまとめ業です。ログはGitHub上のissueにまとめてもらいます。
読書会最終日には時間内でできる範囲で感想文をissue上で提出してもらいます。テーマは事前に決めた読書会の目的に関するものを設定します。
という感じ。もし不都合が出るようであれば柔軟に変えてみてもいいかも。
読書会のねらい
もともと読書会は技術書を読むトレーニングとして位置づけられているものだったのですが、今年は「新卒が共通知識として学んでおいたほうがいいことを、書籍を活用して体系的にしっかりと学ぶ場」というのをメインに位置付けて実施しました。
読書会の特性上そういったことがやりやすかったこともあり、だったら全職種で役に立ちそうな「デザイン」についての理解を深めてもらおう!というねらいです。また、全職種同じ空間にいるので他の職種からの視点をクロスさせて議論を行うことで、多角的にデザインについて考えることができるようになってくれるといいな〜という意図もあります。
結果的にどうなったのか
最終日のアウトプットを見たり聞いたりする限り、以下のような変化がありました。
- デザイン=見た目 → デザイン=なんかもっと広い範囲をカバーしてるものっぽいぞ
- デザイナーに必要なのはセンス → デザインってすごくロジカルなものだぞ
- デザインはデザイナーがやるもの! → なんかデザインにはいろんな人が関わってくるっぽい
- これを操作できないのは使い手が悪い! → これを操作できないのはそもそもデザインが良くないのだろう
- 今まで良いデザインに会ったことあったかな... → もしかして自然に使えてたものって良いデザインだったのでは
- このデザイン良くないな → このデザインはこういったところで良くないな
などなど、他にも実際に仕事に生かすときにどうすればいいだろう?といったことまで突っ込んでいたので、デザインというキーワードを中心にいろいろ学んだり気づいたりしてくれてたのかなあという印象でした。
デザインを早い段階から教えること
個人的には、このように早い段階から共通知識として広義のデザインやデザイン的思考を教えるということは大切なことだと思っています。というのも、デザインは身近なものでありながら、先述のように、誤解したり認識不足だったりしがちなもののひとつだからです。
変化前の状態の「デザイン観」のまま配属されたとしてもすぐには大きな問題は起きないでしょう。なぜなら、業務では役割の範囲が決められ、いわゆるスタイリング的な意味でのデザインが、デザイナーと呼ばれる人たちによって行われるのは基本的には制作プロセスの下流の方にあるからです。これまでだったらそのやり方でもうまくまわっていました。
ただ、長期的な視点で見ると、そのままでは広義のデザイン文化が醸成されません。これまではデザインはプロセス上のひとつのステップに過ぎず、特定の役割の人間が行う限定的なものになってしまっていました。しかし、いま周りを見回してみれば、UXDやHCDが重要視され、制作プロセス全体だけでなくチーム・会社全体としてデザインに取り組むことが重要であるとも言われています。
そうした取り組みを行いやすくするために、広義のデザイン文化が必要だと考え、研修や座学などを通して早期からしっかりと広義のデザインやデザイン的思考を教えることが大切だと思うのです。会社の未来をつくっていく人たちだからね!
すごくダラダラと抽象的なことを書いてしまいましたが、別にデザイン以外のものを否定したり、デザインこそ至高である!といった洗脳をしたりする意図はありません。ただ、もうちょっとデザインについて知ってもらえたら、自分たちにも新卒たちにも良いことがあるんじゃないかな、と思った次第です。
おわります!さよなら!